「プライマリケア」の記事一覧

プライマリーケアにおける高齢者の潜在的に不適切な処方の有病率と入院との関連:縦断的研究。
プライマリーケアにおける高齢者の潜在的に不適切な処方の有病率と入院との関連:縦断的研究。
Prevalence of potentially inappropriate prescribing in older people in primary care and its association with hospital admission: longitudinal study BMJ 2018 Nov 14 ;363 :k4524 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】高齢のプライマリケア患者(65歳以上)における入院が不適切な処方の可能性と関連するかどうか、またそのような処方が入院前よりも入院後に多く見られるかどうかを明らかにする。 【デザイン】一般診療記録からレトロスペクティブに抽出したデータの縦断研究 【設定】2012-15年にアイルランドで行われた一般診療44件 【参加者】参加診療所の65歳以上の成人。 【主要評価項目】高齢者処方スクリーニングツール(STOPP)バージョン2の45の基準を用いて評価した潜在的不適切処方の有病率、潜在的不適切処方の基準を満たす割合(層別Cox回帰)および潜在的不適切処方のバイナリ存在(ロジスティック回帰)の両方で分析し、患者の特性で調整した。感度分析では、患者の特徴と診断に基づいた傾向スコアによるマッチングを行った。 【結果】全体で38 229名の患者が含まれ、2012年の平均年齢は76.8歳(SD 8.2)、43%(13 212名)が男性であった。毎年、10.4~15.0%(2015年3015/29 077~2014年4537/30 231)の患者が少なくとも1回の入院を経験していた。潜在的に不適切な処方の全体の有病率は、2012年の患者の45.3%(13 940/30 789)から2015年の51.0%(14 823/29 077)までの範囲であった。年齢、性別、処方品目数、併存疾患、健康保険とは無関係に、入院は潜在的不適切処方の基準を明確に満たす高い割合と関連していた;入院の調整ハザード比は1.24(95%信頼区間1.20~1.28)であった。入院した参加者では、患者の特性とは無関係に、入院後に不適切な処方をする可能性が入院前よりも高かった;入院後の調整オッズ比は1.72(1.63〜1.84)であった。傾向スコアをマッチさせたペアの解析では,入院後のハザード比は1.22(1.18~1.25)とわずかに減少した。 【結論】入院は潜在的に不適切な処方と独立して関連していた。入院が高齢者に対する処方の適切性にどのような影響を及ぼすか、また入院による潜在的な悪影響をどのように最小化できるかを明らかにすることが重要である。 第一人者の医師による解説 不適切処方に対する教育・啓発と多職種協働による包括的取り組みが必要 小川 純人 東京大学大学院医学系研究科加齢医学准教授 MMJ.April 2019;15(2) 高齢者は加齢に伴う生理機能や身体機能の変化を認めやすく、自立生活障害や多臓器にわたる病 態、多彩な症候を呈しやすいことが特徴として挙げられる。また、概して高齢者では若年者に比べて薬物有害事象が認められやすいとされ、老年症候群の原因となりうる薬剤が比較的多く注意を要することが少なくない。また、高齢者は多疾患を有するためpolypharmacyの状態になりやすく、薬物 有害事象も起こりやすい。高齢者に対してはベネ フィットよりもリスクが高いなどの理由から、治療方針にかかわらず使用中止を検討する必要がある薬剤があり、それらはpotentially inappropriate medication(PIM)と呼ばれている。 PIMの薬物リストとして世界的には、米国のBeers 基準2015(1) や欧州のSTOPP/START ver 2(2)の2つが知られており、日本においても「高齢者の安全な薬物療法 ガイドライン 2015」として10年ぶりに内容が 改訂された(3)。「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015」は、系統的レビューによる科学的根拠に基づいており、STOPP/STARTと同様に「特に慎重な投与を要する薬物リスト」や「開始を考慮するべき薬物リスト」から構成されている。同ガイドラインは75歳以上高齢者やフレイル・要介護高齢 者に対する慢性期の薬物療法を適用対象とし、医師、 薬剤師、看護師など多職種による利用・活用が想定、 期待されている。 本研究では、65歳以上の高齢患者を対象に、高齢者の処方スクリーニングツール(STOPP criteria version 2)を用いてPIMと入院の関連を縦断研究 で検討したもので、PIMの割合は、患者全体の半数 前後に及んでいた。また、PIMの発生率上昇は入院 と関連し、患者特性によらず入院前より入院後の方がPIMが高い結果となった。入院が高齢患者への処 方の妥当性やPIMに及ぼす影響、ならびに入院によるこうした影響をどのように軽減、回避させるかといった多職種協働による連携、取り組みが重要である。日本においては、適切なpolypharmacy介 入の推進に向けて、平成28年度診療報酬改定において薬剤総合評価調整加算(入院患者向け)と薬剤 総合評価調整管理料(外来患者向け)が新設された。 そこでは、基本的に6種類以上使っていた薬を2種 類以上削減できた際に算定が認められており、今 入院や外来におけるpolypharmacy介入や減薬評価が一層進むものと期待される。 1. The American Geriatrics Society 2015 Beers Criteria Update Expert Panel. J Am Geriatr Soc. 2015;63(11):2227-2246. 2. O'Mahony D, et al. Age Ageing. 2015;44(2):213-218. 3. 日本老年医学会、日本医療研究開発機構研究費・高齢者の薬物治療の安全 性に関する研究研究班:高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015、メジ カルビュー社、東京、2015.
英国のプライマリーケアにおける検査利用の時間的傾向(2000-15年):2億5000万件の検査のレトロスペクティブ分析。
英国のプライマリーケアにおける検査利用の時間的傾向(2000-15年):2億5000万件の検査のレトロスペクティブ分析。
Temporal trends in use of tests in UK primary care, 2000-15: retrospective analysis of 250 million tests BMJ 2018 Nov 28 ;363 :k4666 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】英国のプライマリケアにおける検査使用の時間的変化を評価し、使用量が最も増加した検査を特定する。 【デザイン】英国のプライマリケア。 【参加者】Clinical Practice Research Datalinkの英国の一般診療所に登録された全患者、2000/1から2015/16。[主なアウトカム指標】検査使用の時間的傾向、総検査使用率および44の特定検査の粗・年齢・性別標準化率。 【結果】71 436 331人年にわたる262 974 099件の検査が解析された。年齢と性別で調整した使用量は毎年8.5%増加し(95%信頼区間7.6%~9.4%)、2000/1の1万人年当たり14869検査から2015/16年には49267検査と3.3倍に増加した。2015/16年の患者は年間平均5回の検査を受けたが、2000/1では1.5回であった。また,検査使用量は,男女ともに,すべての年齢層で,すべての検査タイプ(検査室,画像,雑多)で,特に調査した44検査のうち40検査で,統計的に有意に増加した。 【結論】総検査使用量は,男女ともに,すべての年齢層で,検査タイプ(検査室,画像,雑多),特に調査した44検査のうち40検査で,時とともに顕著な増加をしている。毎年少なくとも1回の検査を受けた患者のうち、2回以上の検査を受けた患者の割合は、時間の経過とともに有意に増加した。 第一人者の医師による解説 医師の負担と医療費の増加を示唆 日本でも大きな課題 村田 満 慶應義塾大学医学部臨床検査医学教授 MMJ.June 2019;15(3) 英国国民保健サービス(NHS)は今、予想を超える支出増加に直面している。これまで英国の一般開業医(GP)による検査のコストに関する統計報告はない。本研究は、GPによる検査利用数の動向を調査し、最も増加している検査を特定することを目的とし、英国人口の約7%をカバーする電子カルテデータであるClinical Practice Research Datalink (CPRD)に2000~16年に登録された情報を後 方視的に解析した。素検査数、年齢・性で補正した検 査数を検査全体と特定の44検査について集計した。 検査数 は2000年 の10,000人・ 年 あたり 14,869回から15年には49,267回と約3.3倍 (年率8.5%)増加した。この増加は年齢、性、検査 の種類(検体検査、画像検査、その他検査[消化管内 視鏡、心電図、呼吸機能、子宮頸部スメア等])にかかわらず、また44検査中解析された40検査で統 計学的に有意であった。特に85歳以上では4.6倍 増で、高齢者で増加率が顕著であった。検査種別の 年間増加率は検体検査8.7%、画像検査5.5%、その他検査6.3%であった。 検査数増加の背景は多様であるがGPからのコンサルテーション増加も一因と思われ、患者を安心させるため、コンサルテーションを終了するためなど非医学的理由も考えられる。また医療システムの変遷、例えば慢性疾患モニタリングに対するインセンティブなどの影響、さらに患者からの検査要望の増加も要因と思われる。 検査数増加の要因を問わず、今回の解析結果はプライマリケア医の労務負担の増加を示唆する。既報をもとに試算すれば、患者7,000人に対しGP 3人を想定した場合、医師は1日あたり1.5~2時間を検査結果解釈に費やすことになる。2015年を例にあげればNHS支出として直接経費のみで 28億ポンド(検体検査18億ポンド、画像診断4億 ポンド、その他6億ポンド)が費やされたことになる。 今回の結果はNHSの財政が逼迫する中、今後の医 療資源に関する1つの方向性を示していると思われる。 これらの結果を、医療制度がまったく異なる日本に当てはめることは困難であるが、少子高齢化の進行、生活習慣病の増加、複数医療機関の受診、医療技術の進歩に伴う医療費の高騰は日本でも最大の課題である。同様の問題に直面する米国でも頻回の受診、画像検査・処置の過剰利用など、約30% が「無駄」な医療費とする報告もある(1)。一方で、診断や治療追跡に加え、より「精密な」医療を求める社会的要請に対する検査の役割が増加していることも事実であり、効率的かつ安全・安心な医療提供のための検査のあり方について今後議論が活性化される必要があろう。 1. Yong PL, et al. Eds. The Healthcare Imperative:Lowering Costs and Improving Outcomes:Workshop Series Summary. National Academies Press (US);2010.
プライマリケアにおける高齢者の尿路感染症の抗生物質管理と血流感染症および全死因死亡率との関連:集団ベースのコホート研究
プライマリケアにおける高齢者の尿路感染症の抗生物質管理と血流感染症および全死因死亡率との関連:集団ベースのコホート研究
Antibiotic management of urinary tract infection in elderly patients in primary care and its association with bloodstream infections and all cause mortality: population based cohort study BMJ 2019 Feb 27 ;364:l525. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】プライマリケアにおける高齢患者の尿路感染症(UTI)に対する抗生物質治療と重度の有害転帰との関連を評価すること。 【デザイン】レトロスペクティブ集団ベースコホート研究。 【設定】Clinical Practice Research Datalink(2007-15)プライマリケア記録とイングランドの病院エピソード統計および死亡記録とをリンクさせる。 【参加者】2007年11月から2015年5月までに下部尿路結石の疑いまたは確認の診断を1つ以上受けて一般開業医を受診した65歳以上の成人157 264人。 【MAIN OUTCOME MEASURES】インデックスUTI診断後60日以内の血流感染、入院、全死因死亡率。 【結果】UTIエピソード312 896例(157 264ユニーク患者)のうち、7.2%(n=22 534)は抗生物質の処方記録がなく、6.2%(n=19 292)は抗生物質の処方の遅れを認めた。初回UTI後60日以内の血流感染症エピソードは1539件(0.5%)記録された。血流感染症の発生率は、抗生物質を処方されなかった患者(2.9%;n=647)、および初診時に抗生物質を処方された患者と比較して、抗生物質処方のために初診から7日以内に一般医を再訪した記録がある患者(2.2%<v>0.2%;P=0.001)で有意に高率であった。共変量で調整した後,患者は,即時抗生物質投与群と比較して,抗生物質投与延期群(調整オッズ比 7.12,95% 信頼区間 6.22~8.14) および抗生物質投与なし群(同 8.08,7.12~9.16) で血流感染症を経験する可能性が有意に高くなった.血流感染症の発生に対する必要数(NNH)は,即時抗生物質投与群と比較して,抗生物質無投与群(NNH=37)が遅延抗生物質投与群(NNH=51)よりも低い(リスクが大きい)ことが示された。入院率は,抗生物質無投与群(27.0%)および抗生物質投与延期群(26.8%)では,抗生物質即時投与群(14.8%)と比較して約2倍であった(P=0.001).全死因死亡のリスクは,60 日の追跡期間中のどの時点でも,抗生物質を延期した場合と抗生物質を処方しなかった場合では,即時処方の場合に比べて有意に高かった(調整ハザード比 1.16,95% 信頼区間 1.06~1.27,2.18,2.04~2.33, それぞれ).85歳以上の男性は、血流感染と60日間の全死因死亡の両方のリスクが特に高かった。 【結論】プライマリケアで尿路結石の診断を受けた高齢患者において、抗生物質投与なしと投与延期は、即時投与と比較して血流感染と全死因死亡の有意な増加と関連していた。イングランドにおけるEscherichia coli血流感染症の増加という背景から、高齢者におけるUTIに対する推奨ファーストライン抗生物質の早期投与開始が提唱される。 第一人者の医師による解説 プライマリケアでの尿路感染症 高齢患者には抗菌薬の即時投与を 東郷 容和 医療法人協和会協立病院泌尿器科 MMJ.August 2019;15(4) プライマリケアで尿路感染症と診断された高齢患者(65歳以上)に対して、抗菌薬遅延投与群と無 投与群では、その後の血流感染症の発生率が即時投与群と比較してそれぞれ約7倍と8倍になることが、今回のイングランドにおける大規模疫学調査で示された。 全世界において、薬剤耐性菌増加を抑止すべく、 抗菌剤の適正使用が叫ばれている中、英国内においても、同国のガイドラインや抗菌薬管理プログラムなどによる啓蒙活動が、2004~14年におけるプライマリケアでの高齢者の尿路感染症に対する広域抗菌薬処方の減少へつながったことが成果として示されている。一方で、グラム陰性菌の血流 感染症の発生率の上昇が報告され、2021年3月までに50%減少させる国家プロジェクトが打ちださ れた。 本研究は、2007年11月~15年5月の期間に、 英国のデータベースからプライマリケアにおいて下部尿路感染症と診断された高齢患者312,896 人を対象に、診断後60日以内の血流感染症の発生率、入院率、死亡率を調査した後ろ向きコホート研究である。 尿路感染症 の 診断後、血流感染症に至った頻度は0.5%であり、即時投与群が0.2%であったのに対して、遅延投与群および無投与群ではそれぞれ2.2%、2.9%であり、有意に上昇していた(P< 0.001)。入院患者の割合も、即時投与群が14.8% であるのに対し、遅延投与群および無投与群ではそれぞれ26.8%、27.0%と2倍高く、全死亡率においても、即時投与群の1.6%に対し、遅延投与群および無投与群ではそれぞれ2.8%、5.4%と有意に上昇していた(P<0.001)。 著者らは、高齢成人における無症候性細菌尿症の発生率の上昇(若年女性の5%未満に対し、65歳以 上の女性の20%超)もまた、尿路感染症のさらなる診断を困難とする一因と述べ、尿路感染症としての過剰診断や不要な治療について警鐘を鳴らしている一方で、イングランドで大腸菌血流感染症が増加している状況に鑑み、高齢者(特に85歳以上) における尿路感染症治療には推奨される第1選択 薬の早期開始が望まれると結論づけている。 高齢者における膀胱炎は若年女性と比較し、その治癒率は低く、再発率は高いとされる。そのため、抗菌薬治療前には尿培養検査を行うことを推奨したい。
インフルエンザ~BIBGRAPH SEARCH(2022年10月11日号)
インフルエンザ~BIBGRAPH SEARCH(2022年10月11日号)
過去2年間、国内での流行がなかったインフルエンザですが、今シーズンはどうなるのでしょうか。日本感染症学会からの提言においても「2022-2023年シーズンは、インフルエンザの流行の可能性が大きい」とされています。そこで今回は、インフルエンザを取り上げました。インフルエンザ流行による日本の医療リソース利用状況やワクチン接種を促す方法、ワクチン効果を高める方法など注目の論文をご紹介します。(エクスメディオ 鷹野 敦夫) 『BIBGRAPH SEARCH』では、エクスメディオが提供する文献検索サービス「Bibgraph」より、注目キーワードで検索された最新論文をまとめてご紹介しています。 日本人高齢者の季節性インフルエンザによる医療リソース利用はどの程度か~レトロスペクティブ研究 Hagiwara Y, et al. PLoS One. 2022; 17: e0272795. ≫Bibgraphを読む インフルエンザワクチン接種を繰り返すとその効果が薄れるのか~メタ分析 Jones-Gray E, et al. Lancet Respir Med. 2022 Sep 21. [Online ahead of print] ≫Bibgraphを読む プライマリケア医がインフルエンザワクチン接種患者を増やすための効果的な方法は? Patel MS, et al. Am J Health Promot. 2022 Oct 4. [Online ahead of print] ≫Bibgraphを読む 毎日より多くの光を浴びるとインフルエンザワクチン接種の効果が高まる~認知症高齢者を対象とした研究 Munch M, et al. Brain Behav Immun Health. 2022; 26: 100515. ≫Bibgraphを読む インフルエンザ菌の抗生物質薬剤耐性~フランス急性中耳炎患者調査 Taha A, et al. J Glob Antimicrob Resist. 2022 Oct 1. [Online ahead of print] ≫Bibgraphを読む 参考:一般社団法人日本感染症学会 提言 2022-2023年シーズンのインフルエンザ対策について(医療機関の方々へ) 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら