「尿路感染症」の記事一覧

プライマリケアにおける高齢者の尿路感染症の抗生物質管理と血流感染症および全死因死亡率との関連:集団ベースのコホート研究
プライマリケアにおける高齢者の尿路感染症の抗生物質管理と血流感染症および全死因死亡率との関連:集団ベースのコホート研究
Antibiotic management of urinary tract infection in elderly patients in primary care and its association with bloodstream infections and all cause mortality: population based cohort study BMJ 2019 Feb 27 ;364:l525. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】プライマリケアにおける高齢患者の尿路感染症(UTI)に対する抗生物質治療と重度の有害転帰との関連を評価すること。 【デザイン】レトロスペクティブ集団ベースコホート研究。 【設定】Clinical Practice Research Datalink(2007-15)プライマリケア記録とイングランドの病院エピソード統計および死亡記録とをリンクさせる。 【参加者】2007年11月から2015年5月までに下部尿路結石の疑いまたは確認の診断を1つ以上受けて一般開業医を受診した65歳以上の成人157 264人。 【MAIN OUTCOME MEASURES】インデックスUTI診断後60日以内の血流感染、入院、全死因死亡率。 【結果】UTIエピソード312 896例(157 264ユニーク患者)のうち、7.2%(n=22 534)は抗生物質の処方記録がなく、6.2%(n=19 292)は抗生物質の処方の遅れを認めた。初回UTI後60日以内の血流感染症エピソードは1539件(0.5%)記録された。血流感染症の発生率は、抗生物質を処方されなかった患者(2.9%;n=647)、および初診時に抗生物質を処方された患者と比較して、抗生物質処方のために初診から7日以内に一般医を再訪した記録がある患者(2.2%<v>0.2%;P=0.001)で有意に高率であった。共変量で調整した後,患者は,即時抗生物質投与群と比較して,抗生物質投与延期群(調整オッズ比 7.12,95% 信頼区間 6.22~8.14) および抗生物質投与なし群(同 8.08,7.12~9.16) で血流感染症を経験する可能性が有意に高くなった.血流感染症の発生に対する必要数(NNH)は,即時抗生物質投与群と比較して,抗生物質無投与群(NNH=37)が遅延抗生物質投与群(NNH=51)よりも低い(リスクが大きい)ことが示された。入院率は,抗生物質無投与群(27.0%)および抗生物質投与延期群(26.8%)では,抗生物質即時投与群(14.8%)と比較して約2倍であった(P=0.001).全死因死亡のリスクは,60 日の追跡期間中のどの時点でも,抗生物質を延期した場合と抗生物質を処方しなかった場合では,即時処方の場合に比べて有意に高かった(調整ハザード比 1.16,95% 信頼区間 1.06~1.27,2.18,2.04~2.33, それぞれ).85歳以上の男性は、血流感染と60日間の全死因死亡の両方のリスクが特に高かった。 【結論】プライマリケアで尿路結石の診断を受けた高齢患者において、抗生物質投与なしと投与延期は、即時投与と比較して血流感染と全死因死亡の有意な増加と関連していた。イングランドにおけるEscherichia coli血流感染症の増加という背景から、高齢者におけるUTIに対する推奨ファーストライン抗生物質の早期投与開始が提唱される。 第一人者の医師による解説 プライマリケアでの尿路感染症 高齢患者には抗菌薬の即時投与を 東郷 容和 医療法人協和会協立病院泌尿器科 MMJ.August 2019;15(4) プライマリケアで尿路感染症と診断された高齢患者(65歳以上)に対して、抗菌薬遅延投与群と無 投与群では、その後の血流感染症の発生率が即時投与群と比較してそれぞれ約7倍と8倍になることが、今回のイングランドにおける大規模疫学調査で示された。 全世界において、薬剤耐性菌増加を抑止すべく、 抗菌剤の適正使用が叫ばれている中、英国内においても、同国のガイドラインや抗菌薬管理プログラムなどによる啓蒙活動が、2004~14年におけるプライマリケアでの高齢者の尿路感染症に対する広域抗菌薬処方の減少へつながったことが成果として示されている。一方で、グラム陰性菌の血流 感染症の発生率の上昇が報告され、2021年3月までに50%減少させる国家プロジェクトが打ちださ れた。 本研究は、2007年11月~15年5月の期間に、 英国のデータベースからプライマリケアにおいて下部尿路感染症と診断された高齢患者312,896 人を対象に、診断後60日以内の血流感染症の発生率、入院率、死亡率を調査した後ろ向きコホート研究である。 尿路感染症 の 診断後、血流感染症に至った頻度は0.5%であり、即時投与群が0.2%であったのに対して、遅延投与群および無投与群ではそれぞれ2.2%、2.9%であり、有意に上昇していた(P< 0.001)。入院患者の割合も、即時投与群が14.8% であるのに対し、遅延投与群および無投与群ではそれぞれ26.8%、27.0%と2倍高く、全死亡率においても、即時投与群の1.6%に対し、遅延投与群および無投与群ではそれぞれ2.8%、5.4%と有意に上昇していた(P<0.001)。 著者らは、高齢成人における無症候性細菌尿症の発生率の上昇(若年女性の5%未満に対し、65歳以 上の女性の20%超)もまた、尿路感染症のさらなる診断を困難とする一因と述べ、尿路感染症としての過剰診断や不要な治療について警鐘を鳴らしている一方で、イングランドで大腸菌血流感染症が増加している状況に鑑み、高齢者(特に85歳以上) における尿路感染症治療には推奨される第1選択 薬の早期開始が望まれると結論づけている。 高齢者における膀胱炎は若年女性と比較し、その治癒率は低く、再発率は高いとされる。そのため、抗菌薬治療前には尿培養検査を行うことを推奨したい。
ナトリウム-グルコースコトランスポーター-2阻害薬と重症尿路感染症のリスク。人口ベースのコホート研究。
ナトリウム-グルコースコトランスポーター-2阻害薬と重症尿路感染症のリスク。人口ベースのコホート研究。
Sodium-Glucose Cotransporter-2 Inhibitors and the Risk for Severe Urinary Tract Infections: A Population-Based Cohort Study Ann Intern Med 2019;171:248-256. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】ナトリウム-グルコースコトランスポーター2(SGLT-2)阻害薬による重症尿路感染症(UTI)のリスクを評価した先行研究では、相反する知見が報告されている。 【目的】SGLT-2阻害薬の使用を開始した患者が、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬やグルカゴン様ペプチド-1受容体(GLP-1)アゴニストの使用を開始した患者と比較して、重篤な尿路感染症(UTI)のリスクが高いかどうかを評価すること。 【デザイン】人口ベースのコホート研究 【設定】米国の大規模コホート研究2件(2013年3月)。症例数は1,000例を超えているが、そのうちの1,000例を超えているのは、1,000例以上である。対象者は18歳以上、2型糖尿病、SGLT-2阻害薬とDPP-4阻害薬(コホート1)またはGLP-1アゴニスト(コホート2)の使用を開始した患者であった。 測定 【方法】一次アウトカムは重篤なUTIイベントであり、一次UTI、UTIを伴う敗血症、腎盂腎炎の入院と定義した。 【結果】2つのデータベースの中から、傾向スコアを1:1でマッチングさせた後、コホート1では123,752人、コホート2では111,978人の患者が同定された。コホート1では、新たにSGLT-2阻害薬を投与された人の重篤なUTIイベントは61件(1000人年あたりの発生率[IR]1.76)であったのに対し、DPP-4阻害薬投与群では57件(IR、1.77)であった(HR、0.98[95%CI、0.68~1.41])。コホート2では、SGLT-2阻害薬投与群では73件(IR、2.15)のイベントが発生したのに対し、GLP-1アゴニスト群では87件(IR、2.96)(HR、0.72 [CI、0.53~0.99])であった。結果は、感度解析において、年齢、性別、虚弱性のいくつかのサブグループ内で、カナグリフロジンとダパグリフロジンを個別に投与した場合でも、ロバストなものでした。さらに、SGLT-2阻害薬は外来UTIリスクの増加とは関連していなかった(コホート1:HR、0.96 [CI、0.89~1.04]、コホート2:HR、0.91 [CI、0.84~0.99])。 【限界】本試験所見の一般化可能性は、商用保険加入患者に限定されている可能性がある。 【結論】日常臨床でみられる大規模コホートにおいて、SGLT-2阻害薬治療を開始した患者における重度および非重度の尿路イベントのリスクは、他の第2選択抗糖尿病薬による治療を開始した患者におけるリスクと同程度であった。 第一人者の医師による解説 高齢者などの高リスク患者 引き続き注意が必要 稲垣 暢也 京都大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌・栄養内科学教授 MMJ.February 2020;16(1) SGLT2阻害薬は性器感染症を増加させることは 広く認められているが、尿路感染症との関連については不明な点が多い。また、米食品医薬品局(FDA) は2015年、SGLT2阻害薬の添付書類に重症尿路 感染症に関する警告を加えたが、服用時にみられる尿路感染症の多くは軽度~中等度であり、重症尿路感染症との関係は不明である。 本論文は、2013年3月~ 15年9月に、米国の 2つの民間保険請求データベースを用いて、18歳 以上の2型糖尿病患者を対象に実施されたコホート研究の報告である。コホート 1(123,752人) では、SGLT2阻害薬 またはDPP-4阻害薬 を開始 した患者の間で、コホート 2(111,978人)では、 SGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬を開始 した患者の間で比較検討が行われた。それぞれのコホートにおいて、1:1の傾向スコアマッチングを 行っている。主要評価項目は重症尿路感染症(初回 尿路感染症、尿路感染症による敗血症、または腎盂腎炎による入院の複合)とし、副次評価項目は抗菌薬で外来治療を行った尿路感染症(非重症尿路感染 症)とした。 そ の 結果、主要評価項目 で あ る 重症尿路感染 症 の 発生率 は、コ ホ ー ト 1でSGLT2阻害薬群 1.76/1,000人・年、DPP-4阻害薬群1.77/1,000 人・年と有意差はなく(相対リスク[RR], 0.98; 95%信頼区間[CI], 0.68 ~ 1.41)、コホート 2で は、SGLT2阻害薬群2.15 /1,000人・年、GLP-1 受容体作動薬群2.96 /1,000人・ 年 で、SGLT2 阻害薬群においてやや低かった(RR, 0.72;95% CI, 0.53 ~ 0.99)。副次評価項目の非重症尿路感 染症についても、両コホートにおいて、SGLT2阻害薬群で有意に多いという結果は得られなかった。 SGLT2阻害薬を新たに開始した患者をそれぞれ5万人以上含むリアルワールドの本コホート研 究では、SGLT2阻害薬による重症・非重症の尿路感染症の増加は認められなかった。しかし、本研究では、尿路感染症の既往やリスク(水腎症、膀胱尿 管逆流、脊髄損傷、カテーテル使用など)がある患者、 腎機能障害や妊娠糖尿病、がんなどの患者、老人ホー ムやホスピス入所患者などが除外されている点や、 糖尿病の罹病期間、体格指数(BMI)、HbA1cなどに関する情報が不足している点に注意すべきである。 今後、重症尿路感染症のリスクが特に高い高齢者など、高リスク患者については、さらなるエビデンス が必要であるとともに、引き続き尿路感染症に注意する必要があると思われる。