ライブラリー 寛解期の関節リウマチに用いる従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬の半用量と一定用量が再燃に及ぼす作用の比較:ARCTIC REWIND無作為化臨床試験
Effect of Half-Dose vs Stable-Dose Conventional Synthetic Disease-Modifying Antirheumatic Drugs on Disease Flares in Patients With Rheumatoid Arthritis in Remission: The ARCTIC REWIND Randomized Clinical Trial
JAMA. 2021 May 4;325(17):1755-1764. doi: 10.1001/jama.2021.4542.
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上記論文の日本語要約【重要性】従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬(csDMARD)を投与している関節リウマチ(RA)患者で寛解維持が達成可能な治療目標となっているが、臨床的寛解患者をどう治療するのが最適であるかは明らかになっていない。【目的】寛解を維持しているRA患者を対象に、csDMARD漸減が再燃リスクに及ぼす影響をcsDMARD一定量継続と比較すること。【デザイン、設定および参加者】ARCTIC REWINDは、ノルウェーの病院内リウマチ診療所10施設で実施した多施設共同並行群間非盲検無作為化非劣性試験であった。2013年6月から2018年6月までの間に、csDMARD一定用量を投与し12カ月間寛解を維持しているRA患者160例を登録した。最終来院は2019年6月であった。【介入】患者をcsDMARD半用量群(80例)とcsDMARD一定用量群(80例)に無作為化により割り付けた。【主要評価項目】主要評価項目は、試験開始から12カ月後の追跡調査までに再燃を認めた患者の割合とし、Disease Activity Score(DAS)スコア1.6超(RA寛解の閾値)、DASスコア0.6以上増加、腫脹関節数2カ所以上を再燃と定義した。このほか、患者および医師がともに臨床的に重大な再燃が生じたことを合意した場合も疾患の再燃とした。リスク差20%を非劣性マージンと定義した。【結果】登録した患者160例(平均年齢55.1歳[SD 11.9];女性66%)のうち、156例に割り付けた治療を実施し、このうち重大なプロトコールの逸脱が認められなかった155例を主要解析集団とした(半用量群77例、一定用量群78例)。csDMARD半用量群の19例(25%)が再燃したのに対して、一定用量群では5例(6%)に再燃を認めた(リスク差18%、95%CI 7-29)。半用量群の34例(44%)および一定用量群の42例(54%)に有害事象が発現したが、試験中止に至る患者はいなかった。死亡は認められなかった。【結論および意義】csDMARDを投与している寛解期RA患者で、12カ月間で再燃した患者の割合について、半用量による治療の一定用量に対する非劣性が示されなかった。一定用量群の方が再燃した患者数が有意に少なかった。以上の結果から、半用量投与は支持されない。
第一人者の医師による解説
寛解維持でリウマチ薬減量を希望する患者は多く 医師の丁寧な説明が必要
伊藤 聡 新潟県立リウマチセンター副院長
MMJ. December 2021;17(6):181
欧州リウマチ学会(EULAR)の推奨では、関節リウマチ(RA)患者が従来型抗リウマチ薬(csDMARDs)を使用し寛解を維持していた場合、csDMARDsの減量を考慮することが示唆されている(1)。しかしその根拠となる確固としたエビデンスはない。本論文は、ノルウェーの病院リウマチ科10施設で行われた、36カ月間の多施設共同、無作為化、非盲検、並行群間比較、非劣性試験(ARCTICREWIND試験)の報告である。寛解を維持しているRA患者を、csDMARDsを半量に減量する群と、減量しない群に分けて、再燃のリスクについて検討した。主要評価項目は、ベースラインから12カ月後までの再燃である。再燃の定義は、(1)DiseaseActivityScore(DAS)が1.6を超える(2)DASが0.6以上増加する(3)腫脹関節が2カ所以上ある(4)患者と主治医の双方が臨床的に再燃したと判断した──の組み合わせとし、非劣性マージンは20%とした。減量群77人、非減量群78人が主要評価項目の解析対象とされた。両群ともに、メトトレキサート(MTX)の単剤療法が多く(減量群:経口52人、皮下注14人、非減量群:経口51人、皮下注10人)、その他スルファサラゾピリジンやヒドロキシクロロキンの併用、他のcsDMARDsの単剤あるいは併用療法が行われていた。MTX使用量は平均で19mg/週程度であった。結果、再燃は減量群の25%、非減量群の6%に認められた(リスク差18%)。有害事象は減量群で44%、非減量群で54%に発現し、主に上気道感染などの軽度の感染症であった。重篤な有害事象の発現率は減量群5%、非減量群3%で、治療中止例や死亡例はなかった。本試験は、寛解維持患者においてcsDMARDsの半量減量は、12カ月間の再燃率に関して非減量に対する非劣性を示すことができず、再燃は非減量群で有意に少なかった。このことは、寛解を維持していても、csDMARDsを半量に減量する戦略を支持しない結果となった。RA患者は臨床的寛解を導入し維持できると、治療費、副作用の懸念などから抗リウマチ薬の減量や中止を希望することが多い。当院では生物学的製剤を中止する、いわゆるバイオフリーを実践し維持しているが(2)、本研究の結果からは、csDMARDsの減量は行わない方がよいだろう。筆者は、患者には「再燃すると再び寛解に導入するのは難しいので、寝た子は起こさないようにしましょう」と説明している。
1. Smolen JS,et al.Ann Rheum Dis.2020;79(6):685-699.2. Ito S,et al.Mod Rheumatol.2021;31(4):919-923.