「前立腺がん」の記事一覧

根治的前立腺全摘除術後の放射線治療のタイミング(RADICALS-RT) 第III相無作為化比較試験
根治的前立腺全摘除術後の放射線治療のタイミング(RADICALS-RT) 第III相無作為化比較試験
Timing of radiotherapy after radical prostatectomy (RADICALS-RT): a randomised, controlled phase 3 trial Lancet. 2020 Oct 31;396(10260):1413-1421. doi: 10.1016/S0140-6736(20)31553-1. Epub 2020 Sep 28. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】前立腺がんの根治的前立腺全摘除術後の放射線治療の最適なタイミングは明らかになっていない。著者らは、前立腺特異的抗原(PSA)生化学的再発時の救済放射線療法と併用する経過観察と比較した補助放射線療法の有効性と安全性を比較すること。 【方法】根治的前立腺全摘除術後に生化学的進行が見られる1項目以上の危険因子(病理学的T分類3または4、グリーソンスコア7-10点、断端陽性、術前PSAが10ng/mL以上のいずれか)がある患者を組み入れた無作為化比較試験を実施した(RADICALS-RT試験)。試験は、試験実施の認可を受けたカナダ、デンマーク、アイルランドおよび英国の施設で実施した。患者を補助放射線療法とPSAで判定した再発(PSA 0.1ng/mL以上または連続3回以上で上昇)に応じて救済放射線療法を用いる経過観察に1対1の割合で無作為に割り付けた。盲検化は実効不可能と判断した。グリーソンスコア、切除断端、予定していた放射線スケジュール(52.5Gy/20分割または66Gy/33分割)および施設を層別化因子とした。主要評価項目は無遠隔転移生存期間に規定し、救済放射線療法(対照)による90%の改善から補助放射線療法による10年時の95%の改善を検出するデザイン(検出力80%)とした。生化学的無増悪生存期間、プロトコールにないホルモン療法非実施期間および患者方向転帰を報告する。標準的な生存解析法を用いた。ハザード比(HR)1未満を補助放射線療法良好とした。この試験は、ClinicalTrials.govにNCT00541047で登録されている。 【結果】2007年11月22日から2016年12月30日の間に、1396例を無作為化し、699例(50%)を救済放射線療法群、697例(50%)を補助放射線療法群に割り付けた。割り付け群は年齢中央値65歳(IQR 60-68)で釣り合いがとれていた。追跡期間中央値4.9年(IQR 3.0-6.1)であった。補助放射線療法群に割り付けた697例中649例(93%)が6カ月以内、救済放射線療法群に割り付けた699例中228例(33%)が8カ月以内に放射線療法を実施したことを報告した。イベント169件で、5年生化学的無増悪生存率が補助放射線療法群で85%、救済放射線療法群で88%であった(HR 1.10、95%CI 0.81-1.49、P=0.56)。5年時のプロトコールにないホルモン療法非実施期間が補助放射線療法群で93%、救済放射線療法群で92%であった(HR 0.88、95%CI 0.58-1.33、P=0.53)。1年時の自己報告の尿失禁は補助放射線療法群の方が不良であった(平均スコア4.8 vs. 4.0、P=0.0023)。が補助放射線療法群の6%、救済放射線療法群の4%に2年以内にグレード3-4の尿道狭窄が報告された(P=0.020)。 【解釈】この初期結果は、根治的前立腺全摘除術後の補助放射線療法のルーチンの実施を支持するものではない。補助放射線療法によって泌尿器合併症リスクが上昇する。PSA生化学的再発時に救済放射線療法を実施する経過観察を根治的前立腺全摘除術後の現行の標準治療とすべきである。 第一人者の医師による解説 適切な救済放射線治療により 補助放射線治療とPSA制御に差はない 伊丹 純 元国立がん研究センター中央病院放射線治療科科長 MMJ. April 2021;17(2):54 前立腺全摘術は前立腺がんに対する根治療法の1つであるが、高リスク患者では半分程度に前立腺特異抗原(PSA)再発が見られる。切除断端陽性、前立腺被膜外浸潤陽性、精嚢浸潤陽性、Gleason score8以上などの再発高リスク患者には、手術に引き続き補助放射線治療が実施されることがある。それに対して、術後は経過観察とし、PSA再発をきたした場合にのみ救済放射線治療を実施する方が、放射線治療の対象を限定することができ、長期成績は補助放射線治療と変わらないとするものもある。 今回報告されたRADICALS-RT試験は術後の補助放射線治療群と経過観察群を比較した無作為化第3相試験であり、対象は再発危険因子としてpT3/pT4、Gleason score 7~10、断端陽性、治療前PSA 10ng/mL以上のいずれか1個以上を持つ前立腺全摘術の前立腺がん患者で、通常の術後照射の対象より再発リスクの低い患者も含まれる。無作為割り付け後、補助放射線治療群は2カ月以内に前立腺床に対する放射線治療を開始し、経過観察群はPSAが2回続けて0.1ng/mL以上に上昇した場合、2カ月以内に救済放射線治療を開始した。救済放射線治療はPSA 0.2ng/mL以下でより有効であることが示されており当試験の重要なポイントである。補助放射線治療、救済放射線治療ともに前立腺床±骨盤リンパ節に66Gy/33分割、または52.5Gy/20分割(約62Gy/31分割相当)の照射が実施された。2007年11月~16年12月に英連邦諸国およびデンマークから1,396人が登録され、追跡期間中央値は4.9年。無作為割り付け後5年で経過観察群のうち32%の患者で救済放射線治療が開始されていた。5年PSAの無増悪生存率は 補助放射線治療群で85%、経過観察群88%で有意差はなかった。しかし、泌尿器症状、消化器症状などは2年以内の早期およびそれ以降の晩期ともに経過観察群で有意に少なかった。 今回の試験と同時期にLancet Oncologyに同様な2件の第3相試験(1),(2)が報告され、それらを併せた3試験のメタアナリシス(3)も発表された。いずれの報告でもPSA値が0.2ng/mL程度の段階で救済療法が実施されれば経過観察群はPSA無増悪生存率で補助放射線治療群と差はないという結果であった。術後照射を必要とする高リスク群も抽出できなかった。これら3件の第3相試験とそのメタアナリシスを踏まえると、前立腺全摘術後の補助放射線治療はルーティンで実施されるべきではなく、救済療法はPSAが0.2ng/mL程度の段階で早期に開始すべきである。また、救済放射線治療の際にはホルモン療法の同時併用も考慮されるべきである。 1. Kneebone A, et al. Lancet Oncol. 2020;21(10):1331-1340. 2. Sargos P, et al. Lancet Oncol. 2020;21(10):1341-1352. 3. Vale CL, et al. Lancet. 2020;396(10260):1422-1431.
限局性前立腺がん患者の15年間のQOL転帰 オーストラリアの住民対象前向き研究
限局性前立腺がん患者の15年間のQOL転帰 オーストラリアの住民対象前向き研究
Fifteen year quality of life outcomes in men with localised prostate cancer: population based Australian prospective study BMJ. 2020 Oct 7;371:m3503. doi: 10.1136/bmj.m3503. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】限局性前立腺がんの診断後15年間の治療関連QOLの変化を評価すること。 【デザイン】追跡期間15年以上の住民対象前向きコホート研究。 【設定】オーストラリア・ニューサウスウェールズ州。 【参加者】ニューサウスウェールズ州の有権者名簿から無作為に募集し、New South Wales Prostate Cancer Care and Outcomes Study(PCOS)に登録した70歳未満の限局性前立腺がん患者1642例と対照786例。 【主要評価項目】12項目のShort Form Health Survey(SF12)尺度、カリフォルニア大学ロサンゼルス校前立腺がん指数、拡張前立腺がん複合指標(EPIC-26)を用いて、15年間で7回の測定時に一般的な健康状態と疾患別QOLを自己申告した。比較群とした対照との調整平均差を算出した。ベースラインスコアから標準偏差(SD)の3分の1と定義した最小重要差をもって、調整平均差の臨床的重要性を評価した。 【結果】15年時、全治療群が高水準の勃起不全を報告し、62.3%(積極的監視・経過観察、53例中33例)から83.0%(神経非温存根治的前立腺摘除、141例中117例)までと治療によって異なるが、いずれも対照群(42.7%、103例中44例)よりも高率であった。1次治療に外部照射法、高線量率近接照射療法、アンドロゲン除去療法を実施した患者に腸管障害の報告が多かった。外科手術を施行した患者で特に尿失禁の自己申告率が高く、アンドロゲン除去療法を実施した患者で、10~15年時に排尿障害の報告が増加した(10年目:調整平均差-5.3、95%信頼区間-10.8~0.2、15年目:-15.9、-25.1~-6.7)。 【結論】初期に積極的治療を受けた限局性前立腺がん患者で、前立腺がん診断を受けていない対照と比べて、自己報告による長期QOLが全般的に悪化した。根治的前立腺摘除術を受けた患者では特に、長期的な性生活転帰が不良であった。治療方法を決定する際、このような長期的QOLを考慮すべきである。 第一人者の医師による解説 長期的な性機能低下と尿失禁に関して 事前に十分な情報提供が必要 米瀬 淳二 公益財団法人がん研究会有明病院泌尿器科部長 MMJ. April 2021;17(2):55 前立腺がんは、前立腺特異抗原(PSA)検診により早期発見が増え男性のがんの中で肺がんに次いで2番目に高い罹患率となった。転移のない限局がんの予後は一般的に良好で、10年の疾患特異的生存率は本論文にもあるように、ほぼ100%である。良好な生存率の陰には不必要な過剰治療が生活の質(QOL)を低下させるという反省があり、低リスク限局性前立腺がんには監視療法が行われるようになった(1)。一方、米国では過剰な早期診断は益よりも害をもたらすとして2012年にPSA検診は有害とする勧告が出され、近年転移性前立腺がんの再増加が観察されている(2)。 住民に対するPSA検診の是非はさておき、先進国では毎日多くの男性が限局性前立腺がんと診断される。この早期発見が害ではなく益をもたらすためには、早期限局がんの治療選択において本論文のようなQOL調査の結果が参考になる。限局性前立腺がんの治療には、そのリスクに応じて、即座に根治治療を行わない監視療法から、前立腺全摘術、外照射、小線源治療、内分泌療法などの選択肢がある。これまでの前立腺がん治療後のQOL調査と同様、前立腺全摘では、尿失禁、性機能障害が長期にわたって継続し、外照射では腸のわずらわしさが他の治療より強く、小線源では排尿のわずらわしさが強く、時間経過とともに性機能低下はやがて受け入れられていくという結果が示されている。この点は実臨床での印象どおりで、やはりそうかと思わせるものである。 一方、本論文の限界としては初回治療後の追加治療に関する情報がないことである。監視療法も15年の間には半数以上が何らかの介入を受けている可能性があり、外照射のほとんどは一時的なホルモン療法が先行および併用されていると考えられる。このため、これらの初回治療群のQOLの結果の解釈に注意が必要と思われる。例えばホルモン療法群に腸のわずらわしさが多いのは放射線療法を受けた患者が多く含まれていると考えられ、逆に外照射の早期の性機能低下は内分泌療法併用の影響もあるのではないかと推測される。もちろん前立腺全摘術も再発時には追加治療を受けているのでどの群でも複数治療の影響があると思われる。しかし初回治療の選択から追加治療を含めての長期QOLは貴重なデータであり、治療選択の際には提示すべき結果である。ただあくまで個人的見解であるが、15年先のQOLよりもより短期間のQOLを重視する患者さんも多いと感じている。 1. Chen RC, et al. J Clin Oncol. 2016;34(18):2182-2190. 2. Butler SS, et al. Cancer. 2020;126(4):717-724.
深層学習と標準法を用いた生殖細胞系列遺伝子検査による前立腺がんと悪性黒色腫患者の病原性変異検出の比較
深層学習と標準法を用いた生殖細胞系列遺伝子検査による前立腺がんと悪性黒色腫患者の病原性変異検出の比較
Detection of Pathogenic Variants With Germline Genetic Testing Using Deep Learning vs Standard Methods in Patients With Prostate Cancer and Melanoma JAMA. 2020 Nov 17;324(19):1957-1969. doi: 10.1001/jama.2020.20457. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【重要性】検出可能な生殖細胞系列変異があるがん患者が10%に満たず、これは病原性変異の検出が不完全であることが原因の一つになっていると思われる。 【目的】深層学習によってがん患者の病原性生殖細胞系列変異がさらに多く特定できるかを評価すること。 【デザイン、設定および参加者】2010年から2017年の間に米国と欧州で組み入れた前立腺がんと悪性黒色腫の2つのコホートの便宜的標本で、標準生殖細胞検出法と深層学習法を検討する横断的研究。 【曝露】標準法または深層学習法を用いた生殖細胞系列変異の検出。 【主要評価項目】主要評価項目は、がん素因遺伝子118個の病原性変異の検出能とし、感度、特異度、陽性適中率(PPV)および陰性適中率(NPV)で推定した。副次評価項目は、米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)が指定している治療可能な遺伝子59個および臨床的に重要なメンデル遺伝子5197個の検出能とした。感度および真の特異度は、標準基準がないため算出できなかったが、真陽性変異と真陰性変異の割合を推定することとし、いずれかの方法で有効と判断した全変異で構成された参照変異一式の中から各方法を用いて特定した。 【結果】前立腺がんコホートは1072例(診断時の平均[SD]年齢63.7[7.9]歳、欧州系857例[79.9%])、悪性黒色腫コホートは1295例(診断時の平均[SD]年齢59.8[15.6]歳、女性488例[37.7%]、欧州系1060例[81.9%])を組み入れた。深層学習法の法が標準法よりも、がん素因遺伝子の病原性変異が多く検出された(前立腺がん:198個 vs. 182個、悪性黒色腫:93個 vs. 74個)。感度は、前立腺がん94.7% vs. 87.1%(差7.6%、95%CI 2.2~13.1%)、悪性黒色腫74.4% vs. 59.2%(同15.2%、3.7~26.7%)、特異度は、前立腺がん64.0% vs. 36.0%(同28.0%、1.4~54.6%)、悪性黒色腫63.4% vs. 36.6%(同26.8%、95%CI 17.6~35.9%)、PPVは前立腺がん95.7% vs. 91.9%(同3.8%、-1.0~8.4%)、悪性黒色腫54.4% vs. 35.4%(同19.0%、9.1~28.9%)、NPVは前立腺がん59.3% vs. 25.0%(差34.3%、10.9~57.6%)、悪性黒色腫80.8% vs. 60.5%(同20.3%、10.0~30.7%)であった。ACMG遺伝子をみると、前立腺がんコホートでは両方法の感度に有意差がなかったが(94.9 vs. 90.6%[差4.3%、95%CI -2.3~10.9%])、悪性黒色腫コホートでは、深層学習法の方が感度が高かった(71.6% vs. 53.7%[同17.9%、1.82~34.0%])。深層学習法はメンデリアン遺伝子でも感度が高かった(前立腺がん99.7% vs. 95.1%[同4.6%、3.0~6.3%]、悪性黒色腫91.7% vs. 86.2%[同5.5%、2.2~8.8%])。 【結論および意義】前立腺がん患者と悪性黒色腫患者を組み入れた2つの独立のコホートから成る便宜的標本で、深層学習を用いた生殖細胞系列遺伝子検査による病原性変異検出の感度および特異度が、現行の標準遺伝子検査法よりも高かった。臨床転帰の観点からこの結果の意義を理解するには、さらに詳細な研究が必要である。 第一人者の医師による解説 バリアントの検出手法は 新たな手法によって改善する余地あり 水上 圭二郎(研究員)/桃沢 幸秀(チームリーダー) 理化学研究所生命医科学研究センター基盤技術開発研究チーム MMJ. June 2021;17(3):92 現在行われている遺伝学的検査の多くは、患者のDNAを次世代シークエンサーと呼ばれる機械を用いて解読し、そのデータをコンピュータを用いて解析することによって、患者の遺伝子における塩 基配列の違い(バリアント)を検出する。このようにして検出されたバリアント情報は、疾患との関連性などの臨床的な解釈を付与された後、検査結 果として報告される。医師はこの検査結果に基づき疾患の発症予測や予後判定、治療方針の決定などを行う。遺伝学的検査の過程をバリアント検出と臨床的な解釈付けの2つに分けた場合、一般的に前者は高い正確性があると認識されているため、多くの研究は後者に焦点を当てたものになっているのが現状である。 しかしながら、前者についても重要な研究が行われており、2018年にGoogle Brainチームという人工知能の研究チームより、DeepVariantというバリアント検出に深層学習を用いたソフトウエア が報告された1 。このソフトウエアは、次世代シークエンサーの生データからバリアントを検出するまでの途中過程で生じる画像を大量に学習し、未知のバリアント検出に利用するという、とてもユニークな手法を用いている。本研究では、前立腺がんとメラノーマ患者由来の大規模データを用いて、このソフトウエアとヒトゲノム解析において世界の中心的な役割を果たしてきているBroad Instituteが開発したGenome Analysis Toolkit(GATK)のHaplotypeCallerという現在最も汎用されているソフトウエアを、臨床的に重要な遺伝子のバリアントに着目し、バリアント保有者数 、感度 、特異度 、陽性・陰性的中率について比較した。 これら2つの手法を比較した結果、特にBRCA1/2などの遺伝性腫瘍関連遺伝子群において、DeepVariantは全評価項目において従来法のHaplotypeCallerに比べ性能が良いことが示された。例えば、前立腺がん患者データにおいて検出されたバリアント保有者は、DeepVariantで198人、従来法で182人だった。この要因の1つとして、DeepVariantでは集団において保有者が1人しかいないような極めて頻度が低いバリアントも高感度に検出できたことが挙げられる。一方、 DeepVariantだけ検出できないバリアントも存在したことから、検出感度を最大にするためには両者の併用も考慮する必要があるとしている。 以上のように、バリアントの検出手法はすでに確立されたものと一般的には考えられているが、深層学習など新たな手法を用いることによってま だまだ改善する余地が残されていることが、本論文では示されていた。 1. Poplin R, et al. Nat Biotechnol. 2018;36(10):983-987.
前立腺がんの救済放射線治療の決定に用いる18F-フルシクロビンPET/CT検査と従来の画像検査単独の比較:単一施設、非盲検、第II/III相無作為化比較試験
前立腺がんの救済放射線治療の決定に用いる18F-フルシクロビンPET/CT検査と従来の画像検査単独の比較:単一施設、非盲検、第II/III相無作為化比較試験
18 F-fluciclovine-PET/CT imaging versus conventional imaging alone to guide postprostatectomy salvage radiotherapy for prostate cancer (EMPIRE-1): a single centre, open-label, phase 2/3 randomised controlled trial Lancet. 2021 May 22;397(10288):1895-1904. doi: 10.1016/S0140-6736(21)00581-X. Epub 2021 May 7. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】前立腺がんの治療の決定や計画分子イメージングを用いることが多くなっている。著者らは、救済放射線治療の癌制御率改善に果たす18F-フルシクロビンPET/CT検査の役割を従来の画像検査(骨シンチグラフィとCT検査またはMRI検査)を比較することを目的とした。 【方法】単一施設非盲検第II/III相無作為化試験、EMPIRE-1では、前立腺摘除後に前立腺特異抗原(PSA)が検出されたが従来の画像検査結果で陰性(骨盤外転移、骨転移なし)であった前立腺がん患者を放射線治療決定に従来の画像検査単独に用いるグループと放射線治療+18F-フルシクロビン-PET/CT検査を用いるグループに割り付けた。コンピュータが生成した無作為化をPSA濃度、異常が示唆される病理学的所見およびアンドロゲン除去療法の意図で層別化した。18F-フルシクロビン-PET/CT検査群では、標的の描写にも用いたPET画像で放射線治療を厳格に決定した。主要評価項目は3年無事象生存率とし(生化学的再発または進行、臨床的再発または進行、全身療法の開始を事象と定義)、放射線治療を受けた患者で単変量解析および多変量解析を実施した。この試験は、ClinicalTrials.govにNCT01666808として登録されており、患者の登録が終了している。 【結果】2012年9月18日から2019年3月14日にかけて165例を無作為化により割り付け、追跡期間が中央値3.52年(95%CI 2.98~3.95)となった。PET検査の結果から、18F-フルシクロビン-PET-CT検査群の4例が放射線治療を回避し、この4例は生存解析から除外した。生存期間中央値は、従来検査群(95% CI 35.2~未到達;81例中33%に事象発生)、18F-フルシクロビン-PET/CT検査群(95%未到達~未到達;76例中20%に事象発生)ともに未到達であり、3年無事象生存率が従来検査群63.0%(95%CI 49.2~74.0)、18F-フルシクロビン-PET-CT検査群75.5%(95%CI 62.5~84.6)であった(差difference 12.5; 95%CI 4.3~20.8;P=0.0028)。調整した解析で、試験群(ハザード比2.04[95%CI 1.06~3.93]、P=0.0327)に無事象生存との有意な関連が見られた。両群の毒性がほぼ同じであり、最も多い有害事象が遅発性頻尿および尿意切迫感(従来検査群81例中37例[46%]、PET群76例中31例[41%])および急性下痢(11例[14%]、16例[21%])であった。 【解釈】前立腺摘除後の救済放射線治療の方針決定や計画に18F-フルシクロビン-PET/CT検査を用いることによって生化学的再発や持続のない生存率が改善した。前立腺がん放射線治療の方針決定や計画に新たなPET放射性核種を組み込むことについて、新たな試験で検討する必要がある。 第一人者の医師による解説 新しいPET放射性核種を使用した治療決定や治療計画を期待 吉田 宗一郎 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科腎泌尿器外科学講師 MMJ. October 2021;17(5):148 前立腺がんに対する前立腺全摘除後の放射線治療は、術後追加治療、または生化学的再発が認められた際の救済治療として行われることが多い。これらの放射線治療を行うかどうか、またいつ行うかの判断は、リスク群や病理所見、術後前立腺特異抗原(PSA)の推移などに応じて検討されている。18 F-フルシクロビン -PET/CTは、生化学的に再発した前立腺がんの再病期診断において、CTやMRIよりも優れた診断性能を有し、前立腺全摘除術後の生化学的再発に対し、3分の1以上の患者で、18 F-フルシクロビン -PET/CTにより救済放射線治療の方針が変更になることが報告されている(1)。 今回報告されたEMPIRE-1試験の目的は、前立腺全摘除後にPSA上昇が検知されるも、従来の画像検査が陰性である患者を対象とした単施設、非盲検、第2/3相無作為化試験により、18 F-フルシクロビン -PET/CTが、3年間の無イベント生存率を改善させるかどうかを明らかにすることである。対象患者は、PSA値、病理組織学的所見、ホルモン療法実施の意図で層別化され、従来の画像診断のみで行う放射線治療群、もしくは従来の画像診断に加え18 F-フルシクロビン -PET/CTを併用する放射線治療群に割り付けられた。主要評価項目は3年無イベント生存率で、イベントの定義は生化学的または臨床的な再発・進行、あるいは全身療法の開始とした。結果として、165人の患者が割り付けられ、追跡期間の中央値は3.52年であった。3年無イベント生存率は、従来の画像診断群の63.0%に対し、18 F-フルシクロビン -PET/CT群では75.5%と有意に高かった。調整後解析では、18 F-フルシクロビン -PET/CTの併用が無イベント生存率と有意に関連していた(ハザード比 , 2.04;95%信頼区間 ,1.06?3.93)。毒性は両群でほぼ同様であり、主な有害事象は遅発性の頻尿・尿意切迫感、急性下痢であった。 これまでも新規 PET放射性核種による診断精度や治療方針決定の変化についての検討が行われてきたが、今回の制がん効果を主要評価項目とした初めての前向き無作為化試験によって、前立腺全摘除術後の放射線治療の決定プロセスにおける18 Fフルシクロビン -PET/CTの導入が無イベント生存率を改善する可能性が示唆された。現在、多くの研究により前立腺特異的膜抗原を標的としたPSMAPETの良好な診断精度が示され、前立腺全摘除後の再発巣検知でもその有効性に大きな関心が寄せられている。今後、新しいPET放射性核種を使用した治療決定や治療計画についてさらなる研究が必要である。 1. Abiodun-Ojo OA, et al. J Nucl Med. 2021;62(8):1089-1096
急性尿閉とがんのリスク:デンマークの住民を対象としたコホート試験
急性尿閉とがんのリスク:デンマークの住民を対象としたコホート試験
Acute urinary retention and risk of cancer: population based Danish cohort study BMJ. 2021 Oct 19;375:n2305. doi: 10.1136/bmj.n2305. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】急性尿閉初回診断後の泌尿生殖器がん、大腸がんおよび神経系がんのリスクを評価すること。 【デザイン】全国民を対象としたコホート試験。 【設定】デンマークの全病院。 【参加者】1995年から2017年までに急性尿閉のため初めて入院した50歳以上の患者75,983例。 【主要評価項目】一般集団と比較した急性尿閉患者の泌尿生殖器がん、大腸がんおよび神経系がんの絶対リスクおよび超過リスク。 【結果】急性尿閉初回診断後の前立腺がんの絶対リスクは、3ヵ月時点で5.1%(3,198例)、1年時点で6.7%(4,233例)、5年時点で8.5%(5,217例)であった。追跡期間が3ヵ月以内の場合、1,000人年当たり218例の前立腺がん超過症例が検出された。3ヵ月から12ヵ月未満の追跡では、1,000人年当たり21例の超過症例数が増加したが、12ヵ月を超えるとこの超過リスクは無視できるものとなった。追跡3ヵ月以内の超過リスクは、尿路がんが1,000人年当たり56例、女性の生殖器がんが1,000人年当たり24例、大腸がんが1,000人年当たり12例、神経系がんが1,000人年当たり2例であった。検討したがん種の多くで、超過リスクは追跡3ヵ月以内に限られていたが、前立腺がんおよび尿路がんのリスクは、追跡期間が3ヵ月から12ヵ月未満でも依然として高かった。女性では、浸潤性膀胱がんの超過リスクが数年にわたって認められた。 【結論】急性尿閉は、泌尿生殖器がん、大腸がん、神経系不顕性がんの臨床マーカーであると考えられる。急性尿閉を発症し、原因がはっきりと分からない50歳以上の患者では、不顕性がんの可能性を検討すべきである。 第一人者の医師による解説 急性尿閉では潜伏がんを考慮すべき 見落とし減らすため画像検査の実施も考慮 宮﨑 淳 国際医療福祉大学医学部腎泌尿器外科主任教授 MMJ. February 2022;18(1):17 急性尿閉は、突然の痛みを伴う排尿不能を特徴とし、直ちに導尿などを行い、膀胱の減圧が必要である。男性における急性尿閉の発症率は年間1,000人当たり2.2 ~ 8.8人で、推定発症率は70代では10%、80代では30%と、年齢とともに著しく上昇する(1)。男女比は13:1と推定されている。急性尿閉の根本的な原因のほとんどは良性であるが、急性尿閉は前立腺がんの徴候でもあり、他の泌尿器がん、消化器がんおよび神経系がんの徴候である可能性を示唆する研究もある。 そこで本論文では、デンマーク全国規模コホートから得たデータを用いて、急性尿閉による初回入院患者約76,000人における泌尿生殖器がん、大腸がん、神経系がんのリスクを一般集団と比較・検討した。その結果、急性尿閉の初診後の前立腺がんの絶対リスクは、3カ月後で5.1%、1年後で6.7%、5年後で8.5%であった。追跡期間3カ月以内において、前立腺がんの過剰症例が1,000人・年当たり218人検出された。さらに追跡期間3カ月~12カ月未満において1,000人・年当たり21人の過剰症例が検出されたが、12カ月を超えると過剰リスクは無視できる程度になった。追跡期間3カ月以内において、尿路系がんの過剰リスクは1,000人・年当たり56人、女性の生殖器系がんは1,000人・年当たり24人、大腸がんは1,000人・年当たり12人、神経系がんは1,000人・年当たり2人であった。ほとんどのがんで、過剰リスクは追跡期間3カ月以内に限定されたが、前立腺がんと尿路系がんのリスクは追跡期間3カ月~12カ月未満でも高いままであった。結論として、急性尿閉は、潜伏性尿路性器がん、大腸がん、神経系がんの臨床マーカーとなる可能性があるため、急性尿閉を呈し、明らかな基礎疾患を持たない50歳以上の患者には、潜伏がんを考慮すべきであると考えられた。 本研究が使用したデンマーク全国患者登録(Danish National Patient Registry)には人口約580万人の同国内のあらゆる病院に入院したすべての患者のデータが含まれていることから、今回のような全国規模の研究が可能である。この人口ベースのコホート研究において、泌尿生殖器がん、大腸がん、神経系がんが急性尿閉の原因となることが示唆された。我々泌尿器科医は、急性尿閉の患者を診察した際に前立腺肥大症と前立腺がんは常に念頭においているが、なかなか大腸がんや神経系疾患まで考慮することは少ない。見落としを減らすためにも、CTなどの画像検査を行うように心がける必要があるかもしれない。 1. Oelke M, et al. Urology. 2015;86(4):654-665.
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.4(2022年6月16日号)
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.4(2022年6月16日号)
乳製品やカルシウム摂取量と前立腺がんの発症リスクの関連性:前向きコホート研究 乳製品または食事性カルシウムと前立腺がんの因果関係が示唆されているものの、そのエビデンスは限定的である。米国およびカナダのセブンスデー・アドベンティスト(=キリスト教の一派)男性2万8,737人(黒人民族:6,389人)に対し、前向きコホート研究を行った。The American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2022年6月8日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 心房細動に対するモバイルヘルス介入の設計と根拠 心房細動患者の慢性疾患自己管理を支援するために,デジタルや健康リテラシーに関係なく利用可能な、スマートフォンと連動する機器AliveCor Kardia を開発した。経口抗凝固療法へのアドヒアランスが向上するか、単一施設並行群無作為化臨床試験で検討を行った。American Heart Journal誌オンライン版2022年6月9日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 食事の匂いに反応して分泌されたセロトニンとドパミンが老化を調節する? 食事制限と長寿の関係はよく研究されている。食事摂取自体ではなく、食事の匂いの有無が老化を調節するのではないかを線虫を用いてシグナル伝達経路を分析した。Nature communications誌2022年6月7日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む モルヌピラビルに入院率、死亡率の改善以外のベネフィットはあるか? MOVe-OUT試験で、モルヌピラビル(製品名:ラゲブリオ)は軽度から中等度のCOVID-19外来患者の入院率、死亡率を有意に減少させることが報告された。他の潜在的な臨床上のベネフィットを明らかにするため、CRP値、SpO2値、呼吸介入の必要性、退院までの時間についてMOVe-OUT試験の二次解析を行った。Annals of Internal Medicine誌オンライン版2022年6月7日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 中国人におけるアルコール摂取と心血管疾患罹患率・全死亡率との因果関係 適度なアルコール摂取が心血管疾患に及ぼす因果関係については、特に冠動脈心疾患に対して継続的に議論されている。アルコール摂取と心血管疾患罹患率および全死因死亡率との因果関係を探索することを目的とし、4万386人の中国人男性を対象に、前向きコホート研究が行われた。The American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2022年6月10日の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.3(2022年6月9日号) 運動は脳内RNAメチル化を改善し、ストレス誘発性不安を予防する ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.2(2022年6月2日号) 6〜11歳の子供におけるmRNA-1273Covid-19ワクチンの評価 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.1(2022年5月26日号) SARS-CoV-2オミクロンBA.2株の特性評価と抗ウイルス感受性 ≫その他4本
限局性前立腺癌のアンドロゲン抑制療法実施の有無別にみた積極的監視、手術、小線源療法、放射線外部照射療法の5年にわたる患者報告転帰
限局性前立腺癌のアンドロゲン抑制療法実施の有無別にみた積極的監視、手術、小線源療法、放射線外部照射療法の5年にわたる患者報告転帰
Patient-Reported Outcomes Through 5 Years for Active Surveillance, Surgery, Brachytherapy, or External Beam Radiation With or Without Androgen Deprivation Therapy for Localized Prostate Cancer JAMA. 2020 Jan 14;323(2):149-163. doi: 10.1001/jama.2019.20675. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【重要性】低リスクおよび高リスク限局性前立腺癌に用いる現在の治療戦略の有害作用を理解することで、治療選択に有用な情報を得ることができると思われる。 【目的】前立腺がん治療後5年間の転帰を機能的転帰を比較すること。 【デザイン、設定および参加者】2011年から2012年の間に診断を受けた低リスク(臨床分類cT1~cT2bN0M0、PSA 20ng/mL以下、グレードグループ1~2を満たす)前立腺癌患者1385例と高リスク(臨床分類cT2cN0M0、PSA 20~50ng/mL、グレードグループ3-5のいずれかに該当)前立腺癌患者619例を対象とした前向き住民対象コホート研究。Surveillance, Epidemiology and End Results(SEER)プログラム5施設および米前立腺がん登録から開始し、2017年9月まで追跡した。 【曝露】低リスク患者への積極的監視(363例)、神経温存前立腺全摘除(765例)、放射線外部照射療法(EBRT、261例)または低線量率小線源療法(87例)による治療、高リスク患者への前立腺全摘除(402例)またはアンドロゲン抑制療法併用EBRT(217例)。 【主要転帰および評価項目】26項目からExpanded Prostate Index Composite(0~100点)を基に判定した治療5年後の患者報告機能。調査開始時の機能、患者背景および腫瘍の特徴を回帰モデルで調整した。性機能10~12点、尿失禁6~9点、排尿刺激症状5~7点、排便およびホルモン機能4~6点を臨床的に意義がある最重要差とした。 【結果】計2005例が適格基準を満たし、追跡開始時と開始後1回以上の調査を完了した(年齢中央値64歳、77%が非ヒスパニック系白人)。低リスク前立腺癌患者では、神経温存前立腺摘除が積極的監視療法と比べて5年時の尿失禁(調整平均差-10.9、95%CI -14.2~-7.6)および3年時の性機能(同-15.2、-18.8~-11.5)が不良だった。低線量率小源線療法は、積極的監視療法と比べると1年時の排尿刺激症状(同-7.0、-10.1~-3.9)、性機能(同-10.1 [95% CI, -14.6 to -5.7)および排便機能(同-5.0、-7.6~-2.4)が不良だった。EBRTは、5年間のいずれの時点でも、排尿機能、性機能および排便機能の変化に監視療法との臨床的に重要な差はなかった。高リスク患者では、前立腺全摘除と比べると、アンドロゲン抑制療法併用EBRTで6カ月時のホルモン機能(同-5.3、-8.2~-2.4)および1年時の排便機能(同-4.1、-6.3~-1.9)が低下したが、5年時の性機能(同12.5、6.2~18.7)および5年間の尿失禁(同23.2、17.7~28.7)が良好だった。 【結論および意義】限局性前立腺癌患者のコホートでは、現在の治療選択肢による機能的な差のほとんどが5年間で縮まった。しかし、前立腺全摘除を施行した患者はその他の選択肢と比べて5年間で臨床的に重要な差を認める尿失禁を報告し、前立腺全摘除を施行した高リスク患者はアンドロゲン抑制療法併用EBRTを実施した患者よりも5年時の性機能の悪化を報告した。 第一人者の医師による解説 各治療オプションにおける機能的アウトカム 患者説明において有用なデータ 神鳥 周也(講師)/西山 博之(教授) 筑波大学医学医療系腎泌尿器外科学 MMJ. October 2020; 16 (5):141 限局性前立腺がんの治療は、監視療法、手術や放射線治療など治療の選択肢が多く、10年がん特異的生存率はほぼ100%であり(1)、治療に伴う合併症による生活の質(QOL)低下が治療法を決定するうえで重要な因子の1つである。今回報告された前向きコホート研究では、米国のSurveillance,Epidemiology and End Results(SEER)プログラムおよび米国前立腺がん登録において2011~12年に限局性前立腺がんと診断された男性2,005人を対象とし、各治療から5年間の機能的アウトカム(排尿、排便、性、ホルモン機能)を限局性前立腺がん患者の健康関連 QOLの調査票であるExpanded Prostate Cancer Index Composite(EPIC)を用いて検証している。  低リスクの患者(cT1 ~ cT2bN0M0、前立腺特異抗原[PSA]20 ng/mL以下およびグレード分類1 ~ 2)では、監視療法(363人)、神経温存前立腺全摘術(675人)、外照射(261人)、低線量率小線源治療(87人)が行われていた。また、高リスクの患者(ステージ cT2cN0M0、PSA 20 ~50ng/mLまたはグレード分類3~5)では、前立腺全摘術(402人)、アンドロゲン除去療法(ADT)併用外照射(217人)が行われていた。  低リスクの患者では、神経温存前立腺全摘術は監視療法と比較して5年時の尿失禁(補正平均差 ,-10.9)、3年時の性機能(-15.2)の悪化を認めた。低線量率小線源治療は監視療法と比較して1年時の排尿刺激症状(-7.0)、性機能(-10.1)、排便機能(-5.0)の悪化を認めた。一方、外照射は監視療法と比較して5年間のいずれの時点でも排尿機能、性機能、排便機能に臨床的に重要な差は認められなかった。高リスクの患者では、ADT併用外照射は前立腺全摘術と比較して6カ月時点のホルモン機能(-5.3)や1年時の排便機能(-4.1)の悪化を認めたが、5年時の性機能(12.5)および5年 間の尿失禁(23.2)は良好であった。  本研究ではこれまでの報告(2),(3)とは異なり、多くの患者がロボット手術や強度変調放射線治療(IMRT)を受けており、新しい治療モダリティによる機能的アウトカムを示している。日本における限局性前立腺がん診療の現状に即したデータであり、臨床医が患者への治療オプションを説明する際に有用であると思われる。一方、これらの治療は期待余命が10年以上見込まれる患者に対して選択されるため、長期的なQOL調査の実施が期待される。 1. Hamdy FC, et al. N Engl J Med. 2016;375:1415-1424. 2. Sanda MG, et al. N Engl J Med. 2008;358:1250-1261. 3. Donovan JL, et al. N Engl J Med. 2016;375:1425-1437.