「心房細動」の記事一覧

心不全患者における心房細動のカテーテルアブレーション。無作為化対照試験のメタアナリシス。
心不全患者における心房細動のカテーテルアブレーション。無作為化対照試験のメタアナリシス。
Catheter Ablation of Atrial Fibrillation in Patients With Heart Failure: A Meta-analysis of Randomized Controlled Trials Ann Intern Med 2019 Jan 1 ;170 (1):41 -50. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 この記事は訂正されました。原著(PDF)はSupplementとして本論文に添付されています。 【背景】心房細動(AF)と心不全(HF)はしばしば併存し、罹患率と死亡率のリスク上昇と関連している。 【目的】成人AFおよびHF患者において、カテーテルアブレーションと薬剤治療の有益性と有害性を比較することである。 【データ入手元】ClinicalTrials. gov、PubMed、Web of Science(Clarivate Analytics)、EBSCO Information Services、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Google Scholar、2005年1月1日から2018年10月1日までの各種学術会議セッションを対象とする。 【研究選択】英語で発表された、少なくとも6ヶ月のフォローアップがあり、成人の心房細動とHFにおけるカテーテルアブレーションと薬物療法の臨床転帰を比較した無作為化対照試験(RCT)。 【データ抽出】研究者2名が独立してデータを抽出し、研究の質を評価。 [Data Synthesis] 775例を含むRCT 6例が包括基準に合致した。薬物療法と比較して、心房細動アブレーションは全死亡(9.0% vs. 17.6%;リスク比[RR], 0.52[95% CI, 0.33~0.81]) およびHF入院(16.4% vs. 27.6%; RR, 0.60[CI, 0.39~0.93]) を減少させた。アブレーションにより,左室駆出率(LVEF)(平均差,6.95%[CI,3.0%~10.9%]),6分間歩行試験距離(平均差,20.93 m[CI,5.91~35.95 m]),ピーク酸素消費量(Vo2max)(平均差,3.95%[CI])が改善された.17 mL/kg/分[CI, 1.26~5.07 mL/kg/分])、QOL(Minnesota Living with Heart Failure Questionnaireスコアの平均差、-9.02点[CI, -19.75~1.71 点])であることがわかりました。重篤な有害事象はアブレーション群でより多かったが、アブレーション群と薬物療法群の差は統計的に有意ではなかった(7.2% vs 3.8%;RR、1.68 [CI, 0.58~4.85])[Limitation]Results driven primarily by 1 clinical trial, possible patient selection bias in the ablation group, lack of patient-level data, open-label trial design, and heterogeneous follow-up length among trials. 【結論】カテーテルアブレーションは、全死亡、HF入院、LVEF、6分間歩行試験距離、Vo2max、QOLの改善において従来の薬物療法より優れており、重篤な有害事象は統計的に有意に増加しなかった。 【Primary funding source】該当なし。 第一人者の医師による解説 RCTが4件進行中 アブレーション効果がより明確になることを期待 井上 博 富山県済生会富山病院顧問 MMJ.June 2019;15(3) 心房細動は、自覚症状、心臓ポンプ機能の低下、 心原性塞栓症、生命予後の悪化など、さまざまな不利益をもたらす。そこで、心房細動を抗不整脈薬で抑制(リズムコントロール)すれば、心拍数をコントロールするだけの治療(レートコントロール)に 比べメリットが得られるのではないかという仮説を検証するために、1990年代後半にいくつかの比較試験が行われた(例、AFFIRM(1))。しかし、いずれの試験でも治療効果の差は認められなかった。抗不整脈薬のもつ悪影響(心機能抑制、催不整脈作用)が原因と考えられた。心不全は心房細動を誘発し、 心房細動は心機能を抑制するという悪循環が形成される。また抗不整脈薬は心不全では使用しにくいという限界がある。心房細動に対するカテーテル・ アブレーションの有効性(洞調律維持効果)が確立されて以来、心不全を対象とした小規模な無作為比較試験(RCT)で、アブレーションが薬物療法に比べ心機能改善効果に優れ生命予後も良いことが示された。 そこで、本研究では心不全を合併した心房細動に対するアブレーションの効果を薬物療法(リズム、 レートコントロール)と比較したRCT 6件を対象にメタアナリシスを行った。結果、アブレーション群では薬物療法群に比べ、全死亡や心不全による入院の減少、左室駆出率や6分間歩行距離、QOLスコアの改善が認められた。 本研究はRCTのメタアナリシスを用いており、 方法論的にはエビデンスレベルは最高位にある。 しかしながら、患者数は全体で775人に過ぎず、1 試験当たりの人数も50~363人とばらつきが大きい。心不全による入院や左室駆出率、6分間歩行 距離の評価対象は500人余りかそれ以下で十分は言えない。さらにメタアナリシス全体の結果が最大の患者数をもつ1つの試験に大きく影響されていることにも注意が必要である。 心不全に限らず心房細動アブレーションの効果を検討したスウェーデンのコホート研究(対象 5,000人)では、薬物療法に比べてアブレーションは全死亡を抑制している(2)。最近のRCT(対象約 2,000人 )の結果でも、実際にその治療を受けた患者対象の解析において、アブレーションは薬物療 法に比べ死亡率を有意に抑制した(3)。 高周波エネルギーを用いた古典的な心房細動アブレーションに加えて、冷凍アブレーションやレーザーアブレーションといった新たな手技も導入されつつある。さらに心不全を合併した心房細動に対するアブレーションの効果を検討するRCTが4 件進行中である。近い将来、アブレーションの位置付けはより明確になることが期待される。 1. AFFIRM Investigators. N Engl J Med. 2002;347(23):1825-1833. 2. Friberg L, et al. Eur Heart J. 2016;37(31):2478-2487. 3. Packer DL, et al. JAMA. 2019;321(13):1261-1274.
心房細動に対するアブレーションは 精神的ストレスの改善にも有効
心房細動に対するアブレーションは 精神的ストレスの改善にも有効
Atrial Fibrillation Catheter Ablation vs Medical Therapy and Psychological Distress: A Randomized Clinical Trial JAMA. 2023 Sep 12;330(10):925-933. doi: 10.1001/jama.2023.14685. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】精神衛生の結果に対する心房細動(AF)カテーテルアブレーションの影響はよく理解されていません。 【目的】AFカテーテルアブレーションが、医学療法のみと比較して、心理的苦痛のマーカーのより大きな改善に関連しているかどうかを判断する。 【設計、設定、および参加者】心房細動(修復)研究における心理的苦痛に対するカテーテルアブレーションの影響のランダム化された評価は、2018年6月から2021年3月の間にオーストラリアの2つのAFセンターで実施された症状のある参加者のランダム化試験でした。 【介入】参加者は無作為化され、AFカテーテルアブレーション(n = 52)または医学療法(n = 48)を投与されました。 【曝露】主な結果は、12か月での病院不安とうつ病スケール(HADS)スコアでした。二次的な結果には、重度の心理的苦痛の有病率(HADSスコア> 15)、不安HADSスコア、うつ病HADSスコア、およびベックうつ病インベントリII(BDI-II)スコアの追跡評価が含まれていました。不整脈の再発とAF負荷データも分析されました。 【結果】合計100人の参加者が無作為化されました(平均年齢、59 [12]年; 31 [32%]女性、54%が発作性AF)。成功した肺静脈分離は、アブレーショングループのすべての参加者で達成されました。結合されたHADSスコアは、6か月(8.2 [5.4]対11.9 [7.2]; p = .006)で、アブレーショングループ対医療グループでは低かった(7.6 [5.3] vs 11.8 [8.6];グループの違い、-4.17 [95%CI、-7.04〜 -1.31]; p = .005)。同様に、重度の心理的苦痛の有病率は、アブレーション群と6ヶ月(14.2%対34%、P = .02)で、12か月(10.2%対31.9%; P = .01)での医学療法群では低かった、6か月で不安HADSスコア(4.7 [3.2]対6.4 [3.9]; p = .02)および12か月(4.5 [3.3]対6.6 [4.8]; p = .02);うつ病は3か月で得点(3.7 [2.6]対5.2 [4.0]; p = .047)、6か月(3.4 [2.7]対5.5 [3.9]; p = .004)、および12か月(3.1 [2.6)] vs 5.2 [3.9]; p = .004);6か月でのBDI-IIスコア(7.2 [6.1]対11.5 [9.0]; p = .01)および12か月(6.6 [7.2]対10.9 [8.2]; p = .01)。アブレーション群の中央値(IQR)AF負担は、医学療法グループよりも低かった(0%[0%-3.22%]対15.5%[1.0%-45.9%]; p <.001)。 【結論と関連性】症候性AFの参加者のこの試験では、不安とうつ病の心理的症状の改善がカテーテルアブレーションで観察されましたが、医学療法は観察されませんでした。 【試行登録】ANZCTR識別子:ACTRN12618000062224 第一人者の医師による解説 不安や抑うつ症状軽減に果たす役割は大きく 治療方針決定でも考慮すべき重要な要因 五十嵐 都 筑波大学医学医療系循環器内科准教授 MMJ.April 2024;20(1):8 本論文に報告されたREMEDIAL試験では症候性の心房細動(AF)患者をアブレーション群と薬物療法群に割り付け、精神的ストレス状態の評価指標HADSスコア、重症な精神的ストレス状態(HADSスコア 15超)の患者の割合などさまざまな指標について登録時と治療後の複数時点において両群間で比較した。AF再発の有無および累積時間率(burden)についても解析した。 登録時には評価項目に関して両群間に有意差はなかった。重症の精神的ストレス状態は32%の患者に認められ、不安症や抑うつ的な性格(タイプD)およびAF症状の重症度を示す指標 AFSSSとも関連があった。12カ月の経過でアブレーション群では薬物療法群に比べAFの再発が有意に少なく(47% 対 96%)、burden中央値も少なかった(0%対 15.5%)。その結果アブレーション群では抗不整脈薬を中止する傾向にあった(登録時90%、12カ月時点30%)。12カ月時点でアブレーション群では薬物療法群よりHADSスコア中央値が有意に低く(7.6 対 11.8)、重症の精神的ストレス状態の患者も少なかった(10.2% 対 31.9%)。 本試験ではまずAFがメンタルヘルスに悪影響を及ぼすことが示された。過去には逆に緊張や不安といった精神的ストレスがAF発症に関わるといった報告があり(1)、AFと精神的ストレスは両方向性に作用し悪循環を招く。その悪循環を断ち切るためにもAFの適切な治療は重要である。本試験では、精神的ストレス状態が薬物療法よりもアブレーションにより経時的に改善されることが明らかとなった。このことはAFの再発がないこと、抗不整脈薬やβ遮断薬の中止と関連があった。AFの症状を解消することが精神的ストレスを改善した可能性はあるが、抗不整脈薬やβ遮断薬の使用はうつや不眠、倦怠感などさまざまな神経精神症状に影響を与えることが知られているため(2)、これらの中止による直接の影響もあるかもしれない。 カテーテルアブレーションは侵襲的な治療ではあるが、3Dマッピングシステムやコンタクトフォースセンシング付きカテーテルなどテクノロジーの進歩に伴い有効性と安全性が年々向上している。そのため日本のガイドラインでも以前は「薬剤抵抗性症候性心房細動患者」に対してclass IIa適応であったが、現在は「薬剤抵抗性」という文言は削除された(3)。一方で有症候性 AFに対する薬物療法は国際的なガイドラインでもclass Iaのままである。本試験の結果から、カテーテルアブレーションがAF患者の不安や抑うつ症状を軽減するために果たす役割は大きいことが示され、このことは今後治療方針を決定する際に考慮すべき重要な要因であるといえる。 1. Eaker ED, et al. Psychosom Med. 2005;67(5):692-696. 2. von Eisenhart Rothe A, et al. Europace. 2015;17(9):1354-1362. 3. Nogami A, et al. Circ J. 2021;85(7):1104-1244.
テストステロン補充療法はプラセボに対して心血管系有害事象の発生率で非劣性
テストステロン補充療法はプラセボに対して心血管系有害事象の発生率で非劣性
Cardiovascular Safety of Testosterone-Replacement Therapy N Engl J Med. 2023 Jul 13;389(2):107-117. doi: 10.1056/NEJMoa2215025. Epub 2023 Jun 16. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】性腺機能低下症の中高年男性におけるテストステロン補充療法の心臓血管への安全性はまだ確認されていない。 【方法】多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照非劣性試験において、心血管疾患の既往またはリスクが高く、性腺機能低下症の症状を報告し、空腹時テストステロンが2つある45~80歳の男性5,246人を登録した。 1デシリットルあたり300ng未満のレベル。患者は、1.62%テストステロンゲル(テストステロンレベルを1デシリットルあたり350~750ngに維持するように用量を調整した)を毎日経皮投与するか、プラセボゲルを投与するかに無作為に割り当てられた。心血管安全性の主要評価項目は、発生までの時間分析で評価された、心血管死、非致死性心筋梗塞、または非致死性脳卒中による死亡の複合要素の最初の発生であった。二次心血管エンドポイントは、イベント発生までの時間分析で評価された、心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、または冠動脈血行再建術の複合要素の最初の発生であった。非劣性には、テストステロンまたはプラセボを少なくとも 1 回投与された患者のハザード比の 95% 信頼区間の上限が 1.5 未満である必要がありました。 【結果】平均(±SD)治療期間は21.7±14.1ヶ月、平均追跡期間は33.0±12.1ヶ月でした。主要な心血管エンドポイントイベントは、テストステロン群の患者 182 人(7.0%)、プラセボ群の患者 190 人(7.3%)で発生しました(ハザード比、0.96、95% 信頼区間、0.78 ~ 1.17、p<0.001)。非劣性)。同様の所見は、テストステロンまたはプラセボの中止後のさまざまな時点でイベントに関するデータが打ち切られた感度分析でも観察されました。二次エンドポイント事象の発生率、または複合一次心血管エンドポイントの各事象の発生率は、2 つのグループで同様であるように見えました。テストステロン群では、心房細動、急性腎障害、肺塞栓症の発生率が高いことが観察されました。 【結論】性腺機能低下症を患い、心血管疾患の既往またはリスクが高い男性において、テストステロン補充療法は、重大な心臓有害事象の発生率に関してプラセボよりも劣りませんでした。 (AbbVie およびその他によって資金提供されています。TRAVERSE ClinicalTrials.gov 番号、NCT03518034。)。 第一人者の医師による解説 非致死的不整脈、心房細動、急性腎障害、肺塞栓症の既往がある場合は注意 佐々木 春明 昭和大学藤が丘病院泌尿器科教授 MMJ.April 2024;20(1):20 性腺機能低下症の中高年男性におけるテストステロン補充療法の心血管系への影響は確定されていない(1)。これまでの報告では、心血管リスクの上昇を示す研究もあれば、リスクの低下を示す研究もあり、相反する結果が示されている(1)。 本論文 は、米国 の316施設で実施された第4相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、非劣性試験(TRAVERSE試験)の報告である。45~80歳、性腺機能低下症状を有し、心血管疾患の既往があるか心血管リスクが高く、かつ午前11時までの採血による空腹時血清テストステロン値が300 ng/dL(10.4 nmol/L)未満が対象とされた。患者は、1.62%のテストステロンゲルを連日経皮投与する群(T群)またはプラセボ群(P群)に1:1で割り付けられた。安全性の主要評価項目は主要心血管イベント、あるいは心血管疾患・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中による死亡までの期間とした。最大の解析対象集団(FAS)は5,204人(T群2,601人、P群2,603人)で、安全性解析対象は5,198人(T群2,596人、P群2,602人)であった。 12カ月時点の血清テストステロン値のベースラインからの上昇中央値はT群148 ng/dL、P群14ng/dLであった。平均(± SD)治療期間は21.7±14.1カ月、平均追跡期間は33.0±12.1カ月であった。主要心血管イベントは、T群で182人(7.0%)、P群で190人(7.3%)に発生した(ハザード比 ,0.96;95%信頼区間[CI];0.78 ~ 1.17;非劣性に関してP<0.001)。前立腺特異抗原(PSA)値はT群で有意に上昇したが(P<0.001)、前立腺がんの発生率は同程度であった(0.5% 対 0.4%;P=0.87)。T群では治療介入が必要な非致死的不整脈(5.2% 対 3.3%;P=0.001)、心房細動(3.5%対 2.4%;P=0.02)、急性腎障害(2.3% 対 1.5%;P=0.04)、肺塞栓症(0.9% 対 0.5%)が多かった。 本論文では、心血管疾患の既往があるか心血管リスクが高い男性性腺機能低下症において、テストステロン補充療法はプラセボに対して心血管系の有害事象の発生率に関して非劣性であったと結論している。また、前立腺がんの発生率も有意に上昇しなかったことが確認された。ただし、治療介入が必要な非致死的不整脈、心房細動、急性腎障害、肺塞栓症の既往がある場合は注意を要する。 日本でも男性性腺機能低下症が広く認知されるようになり、対象となる患者が増加しているので、安全に投与できることを再確認できた。 1. Bhasin S, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2018;103(5):1715-1744.
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.25(2022年11月10日号)
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.25(2022年11月10日号)
キツい筋トレは筋肥大に効果があるのか? 一般的に、筋肥大にはmuscle failure(一時的な筋力低下)を起こすまでのトレーニングが必要であると言われている。著者らは、筋トレによるmuscle failureが筋肥大に及ぼす影響について調査するため、PubMed、SCOPUS、SPORTDiscusデータベースの文献検索による、システマティックレビューを行った。Sports Medicine 誌オンライン版2022年11月5日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む DOACの大規模比較 現在のガイドラインでは、心房細動(AF)患者において、ワルファリンよりも直接経口抗凝固薬(DOAC)の使用が推奨されているが、DOACの選択の指針となるような直接比較試験のデータは存在しない。著者らは、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカの2億2,100万人をカバーする5つの医療データベースを用いて、2010年〜2019年に新たにAFと診断され、DOACの処方を受けた患者の虚血性脳卒中、全身性塞栓症、頭蓋内出血、消化管出血、全死亡の出現率を比較した。Annals of Internal Medicine誌オンライン版2022年11月1日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む Long COVIDに高気圧酸素療法(HBOT)は有効か? Long COVIDの一般的な症状は、疲労、労作後倦怠感、認知機能障害である。現在、有効な治療法はなく、根本的なメカニズムは不明であるが、いくつかの仮説が存在し、慢性炎症が共通項であるとされている。前向き研究において、高気圧酸素療法(HBOT)は、慢性疲労症候群や線維筋痛症などの類似した症候群の治療に有効であることが示唆されている。Long COVIDに対するHBOTを検討するための無作為化プラセボ対照臨床試験のプロトコールが公表された。BMJ Open誌2022年11月2日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 大人の愛着とメンタルヘルスの関係 愛着理論は、対人関係、ストレス、健康との相関を理解するための枠組みであり、成人の愛着はメンタルヘルスの重要な予測因子である。しかし、成人の愛着とメンタルヘルスのポジティブおよびネガティブな指標との関連を同時に検討したシステマティックレビューは不足している。そこで、ランダム効果によるロバストな分散推定を用いて、成人の愛着とメンタルヘルスとの関連を検討した224件の研究をメタ分析した。Journal of Personality and Social Psychology誌2022年11月1日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 2022 ACC/AHA 大動脈疾患の診断と管理に関するガイドライン 米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)から、複数の臨床症状のサブセット(無症状、安定した症状、急性大動脈症候群)にわたる大動脈疾患患者の診断、遺伝子評価と家族スクリーニング、薬物療法、血管内治療、外科治療、長期監視において臨床医の指針となる推奨事項を示した「2022 ACC/AHA 大動脈疾患の診断と管理に関するガイドライン」が発表された。Circulation誌オンライン版2022年11月2日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.24(2022年11月3日号) AIによる膵臓がん予後予測は有用か? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.23(2022年10月27日号) 蚊を寄せ付ける体臭は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.22(2022年10月20日号) 片頭痛には有酸素運動、筋トレどちらが有効か? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.21(2022年10月13日号) 妊婦の"超加工食品"摂取は子供の神経心理学的発達に影響を及ぼすか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.20(2022年10月6日号) CRPはがんのバイオマーカーになるか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.19(2022年9月29日号) 免疫チェックポイント阻害剤の奏効率は、食事によって変わるのか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.18(2022年9月22日号) メタボを防ぐ腸内細菌に対して、最も悪影響を及ぼす食事は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.17(2022年9月15日号) セレブからも注目されているプチ断食は、ダイエットや心血管代謝に良い影響を及ぼすのか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.16(2022年9月8日号) 長生きできる紅茶の摂取量は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.15(2022年9月1日号) 顔が似ていると、遺伝情報も似ている!? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.14(2022年8月25日号) ゼロカロリー甘味料は、耐糖能に影響を及ぼさないのか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.13(2022年8月18日号) 運動後の摂取はゆで卵、生卵どちらの摂取が有用か? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.12(2022年8月11日号) 慢性腰痛を軽減する最良の運動オプションとは~RCTのネットワークメタ解析 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.11(2022年8月4日号) サル痘の臨床的特徴~最新症例報告 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.10(2022年7月28日号) 小児におけるオミクロンに対するファイザー社製COVID-19ワクチンの有効性 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.9(2022年7月21日号) 慢性便秘症に効果的な食物繊維摂取量は?:RCTの系統的レビュー&メタ解析 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.8(2022年7月14日号) COVID-19後遺症の有病率、その危険因子とは ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.7(2022年7月7日号) 糖尿病の有無が影響するか、心不全に対するエンパグリフロジンの臨床転帰 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.6(2022年6月30日号) 老化をあざむく方法は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.5(2022年6月23日号) 座位時間と死亡率および心血管イベントとの関連性:低~高所得国での違いはあるか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.4(2022年6月16日号) 乳製品やカルシウム摂取量と前立腺がんの発症リスクの関連性:前向きコホート研究 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.3(2022年6月9日号) 運動は脳内RNAメチル化を改善し、ストレス誘発性不安を予防する ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.2(2022年6月2日号) 6?11歳の子供におけるmRNA-1273Covid-19ワクチンの評価 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.1(2022年5月26日号) SARS-CoV-2オミクロンBA.2株の特性評価と抗ウイルス感受性 ≫その他4本
PCI後の心房細動に用いる2剤併用療法と3剤併用療法の比較 系統的レビューとメタ解析
PCI後の心房細動に用いる2剤併用療法と3剤併用療法の比較 系統的レビューとメタ解析
Dual Versus Triple Therapy for Atrial Fibrillation After Percutaneous Coronary Intervention: A Systematic Review and Meta-analysis Ann Intern Med . 2020 Apr 7;172(7):474-483. doi: 10.7326/M19-3763. Epub 2020 Mar 17. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の非弁膜症性心房細動(AF)に用いる3剤併用療法(ビタミンK拮抗薬+アスピリン+P2Y12阻害薬)と比較した2剤併用療法(直接経口抗凝固薬[DOAC]+P2Y12阻害薬)の安全性と有効性は明らかになっていない。 【目的】PCI後のAFで、3剤併用療法と比較した2剤療法が出血と虚血性転帰にもたらす効果を明らかにすること。 【データ入手元】PubMed、EMBASE、Cochrane Library(開始から2019年12月31日まで)およびClinicalTrials.govの言語の制約なしの検索、医学雑誌のウェブサイト、文献一覧。 【試験の選択】PCI後のAF成人患者を対照に、2剤併用療法と3剤併用療法が出血、死亡率および虚血性事象にもたらす効果を比較した無作為化比較試験。 【データ抽出】独立した調査員2人がデータを要約し、根拠の質を評価し、根拠の質を等級付けした。 【データ合成】7953例を検討した試験4件を選択した。追跡期間中央値は1年、高度の根拠の質で、3剤併用療法と比べると、2剤併用療法で大出血のリスクが低下した(リスク差-0.013、95%CI -0.025--0.002)。低度の根拠の質で、3剤併用療法と比べると、2剤併用療法によって全死亡(同0.004、-0.010-0.017)、心血管死(同0.001、-0.011-0.013)、心筋梗塞(同0.003、同-0.010-0.017)、ステント血栓症(同0.003、-0.005-0.010)および脳卒中(同-0.003、-0.010-0.005)のリスクが低下した。この効果の信頼区間の上限値は2剤併用療法でのリスク上昇の可能性対応する。 【欠点】試験デザイン、DOAC用量およびP2Y12阻害薬の種類の異質性。 【結論】PCI後の成人AFで、2剤併用療法で3剤併用療法に比べて出血リスクが低下するが、死亡と虚血性事象のリスクにもたらす効果はいまだに明らかになっていない。 第一人者の医師による解説 血栓事象や死亡は不変だが 2剤併用療法選択のエビデンスは強固に 清末 有宏 東京大学医学部附属病院循環器内科助教 MMJ. December 2020;16(6):168 冠動脈ステント留置後のステント血栓症予防療法については、冠動脈ステントが実用化された1990年ごろから現在まで実に30年来の議論が続いており、いまだ最終結論にたどり着いていない。その主な理由としては、次々と新しい冠動脈ステント(金属ステント→第1~3世代薬剤溶出性ステント)および抗血栓薬が登場していることが推察される。また日本では経皮的冠動脈形成術(PCI)施行患者の高齢化が進み、心房細動(AF)合併率が上昇していることも抗血栓療法を取り巻く状況をさらに複雑化している。PCI施行患者レジストリーのCREDO-Kyotoで は8.3%にAFの合併が(1)、心房細動患者レジストリーのJ-RHYTHMでは10.1%に冠動脈疾患の合併が報告されており(2)、合併率は年々上昇していると考えられる。AF合併患者においてはPCI後に標準的な抗血小板療法に、AFに標準的な抗凝固療法を加えた適切な抗血栓療法を考える必要があり、一部効果がオーバーラップするため、その併用はそれぞれの単独療法とは別途検討が必要になる。  本論文はこのような背景の下、AF合併のPCI施行患者について、近年非弁膜症性AFに標準的に用いられるようになった直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)にP2Y12阻害薬のみを併用する2剤併用療法と、古典的にワルファリンに抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)、つまりアスピリンとP2Y12阻害薬を併用する3剤併用療法を比較して、出血事象、血栓事象、死亡のそれぞれをメタアナリシスで検討している。最終的に選定された解析対象は、現在日本で発売されている4種のDOACのそれぞれの主要大規模ランダム化対照試験であるPIONEER AF-PCI、RE-DUAL PCI、AUGUSTUS、ENTRUST-AF PCIの4試験であった。結果として、2剤併用療法の選択により統計学的有意な出血事象の減少を認め、血栓事象および死亡は有意差を認めなかった。これはRE-DUAL PCIとAUGUSTUSのそれぞれの単独試験と全く同じ結果であり、残りのPIONEER AF-PCIとENTRUST-AF PCIでも同様の傾向であった。研究の限界として各試験のDOAC投与量や投与方法の不均一性が指摘されており、それに対する統計解析方法における既報との細かい差異などが述べられているが、実臨床家の治療方針選択行動に大きく影響する内容ではないと考える。  以上の結果を踏まえ、DOAC各単独試験の結果を踏まえ、すでに各国ガイドラインで採用されている2剤併用療法の優越性が本論文によって強化されたと言え、筆者は実臨床家が2剤併用療法を選択する際のエビデンスがより強固なものとなったと考える。 1. Goto K, et al. Am J Cardiol. 2014;114(1):70-78. 2. Atarashi H, et al. Circ J. 2011;75(6):1328-1333.
日常診療で心房細動患者に用いるリバーロキサバンと比較したアピキサバンの有効性と安全性 コホート研究
日常診療で心房細動患者に用いるリバーロキサバンと比較したアピキサバンの有効性と安全性 コホート研究
Effectiveness and Safety of Apixaban Compared With Rivaroxaban for Patients With Atrial Fibrillation in Routine Practice: A Cohort Study Ann Intern Med . 2020 Apr 7;172(7):463-473. doi: 10.7326/M19-2522. Epub 2020 Mar 10. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】アピキサバンとリバーロキサバンは成人心房細動患者に最もよく処方される直接経口抗凝固薬であるが、安全性と有効性を直接比較したデータはない。 【目的】非弁膜症性心房細動の成人患者でアピキサバンとリバーロキサバンの安全性と有効性を比較すること。 【デザイン】新規使用者、実薬対照、後ろ向きコホート研究。 【設定】2012年12月28日から2019年1月1日までの米国の全国民間健康保険請求データベース 【参加者】新たにアピキサバン(5万9172例)またはリバーロキサバン(4万706例)を処方された成人。 【評価項目】主要有効性評価項目は、虚血性脳卒中または体塞栓の複合とした。主要安全性評価項目は、頭蓋内出血または症渇感出血の複合とした。 【結果】アピキサバンを新たに処方された3万9351例をリバーロキサバンを新たに処方された3万9351例と傾向スコアでマッチさせた。平均年齢が69歳、40%が女性で、平均追跡期間が新規アピキサバン使用者288日、新規リバーロキサバン使用者291日であった。虚血性脳卒中または体塞栓の発生率は、リバーロキサバンを処方された成人で1000人年当たり8.0であったのに比較すると、アピキサバンを処方された成人で1000人年当たり6.6であった(HR 0.82、95%CI 0.68-0.98、1000人年当たりの率比-1.4、CI 0.0-2.7)。このほか、アピキサバンを処方された成人で、消化管出血または頭蓋内出血の発生率(1000人年当たり12.9)がリバーロキサバンを処方された成人(1000人年当たり21.9)よりも低く、ハザード比0.58(CI, 0.52 to 0.66)と1000人年当たりの率比-9.0(同6.9-11.1)に相当した。 【欠点】未測定の交絡因子、検査データが不完全な点。 【結論】日常診療で、アピキサバンを処方した心房細動の成人患者がリバーロキサバンを処方した患者と比べると、虚血性脳卒中や体塞栓、出血の発生率が低かった。 第一人者の医師による解説 用量の違いに注意必要だが NVAF患者へのDOAC選択はアピキサバンが最適か 児玉 隆秀 虎の門病院循環器センター内科部長 MMJ. December 2020;16(6):167 経口抗凝固薬は心房細動に関連する虚血性脳卒中のリスクをおよそ70%低下させることができる。日本では現在4種類の直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)が使用可能で、世界的に最も処方数が多いのはアピキサバンとリバーロキサバンである。今までこの2剤の安全性と有効性を直接比較した大規模データは発表されていなかった。  本研究では米国の保険データベースを用いて、アピキサバンまたはリバーロキサバンを新規に処方された非弁膜症性心房細動(NVAF)患者を対象に、傾向スコア解析法を用いて有効性と安全性を検証した。有効性の主要評価項目は虚血性脳卒中またはその他塞栓症の複合イベント、安全性のそれは頭蓋内出血または消化管出血の複合イベント。アピキサバン群59,172人、リバーロキサバン群40,706人の中から傾向スコアマッチング(1:1)を行った結果、各群の患者数は39,351人で傾向性は良好に調整された。有効性評価項目のイベント発生率はアピキサバン群6.6/1,000人・年,リバーロキサバン群8.0/1,000人・年(ハザード比[HR], 0.82)、安全性評価項目のイベント発生率はアピキサバン群12.9/1,000人・年,リバーロキサバン群21.9/1,000人・年(HR, 0.58)とアピキサバン群の方が有効性・安全性ともに優れていた。70歳以上に対象を絞り込んだサブグループ解析でも同様の結果であった。  本研究は傾向スコア解析法を用いたコホート研究であり、収集不可能なパラメータがある以上、すべての交絡因子を完全に排除することはできない。しかしながら、それぞれ4万人近い患者を可能な限りのパラメータを用いて厳密に交絡因子を調整した解析結果と考えれば、リアルワールドデータとして実臨床に応用可能である。注意すべき点としては、日本におけるリバーロキサバンの用量は15mg1日1回で海外の用量(20mg 1日1回)と異なるため、海外のデータをそのまま適応しづらい点にある。ただし、本研究から有効性のみでなく安全性においてもリバーロキサバンに対しアピキサバンが優位であることを考えると、用量の少ない日本の臨床に適応できるデータと考える。日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同の「不整脈薬物療法ガイドライン2020年改訂版」でも大出血リスクの低いDOACとしてリバーロキサバンは選択肢から除外されており(クラス IIa)、1日2回投与という服薬コンプライアンスに影響を与える因子を排除できれば、NVAF患者にリバーロキサバンではなくアピキサバンを選択することは妥当であるといえよう。
救急外来を受診した急性心房細動患者に用いる電気的除細動と薬物的除細動の比較(RAFF2) 部分要因無作為化試験
救急外来を受診した急性心房細動患者に用いる電気的除細動と薬物的除細動の比較(RAFF2) 部分要因無作為化試験
Electrical versus pharmacological cardioversion for emergency department patients with acute atrial fibrillation (RAFF2): a partial factorial randomised trial Lancet. 2020 Feb 1;395(10221):339-349. doi: 10.1016/S0140-6736(19)32994-0. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】急性心房細動は、救急部で治療する最も頻度の高い不整脈である。著者らの主要目的は、電気駅除細動前の薬物による除細動(薬物ショック)と電気的除細動単独(ショック単独)の洞調律復帰を比較することであった。第二の目的は、電気的除細動時の2つのパッド位置の有効性を比較することであった。 【方法】カナダの大学病院11施設の救急部で、急性心房細動患者を対象とした2通りのプロトコールを用いた部分要因試験を実施した。成人急性心房細動患者を組み入れた。プロトコール1では、プロカインアミド静注(15mg/kgを30分かけて投与)による薬物的除細動後の必要に応じた電気的除細動実施(3回まで、いずれも200J以上)とプラセボ投与後の電気的除細動実施を無作為化プラセボ対照盲検下で比較した。電気的除細動を実施する際、前後と前外側のパッド位置を無作為化非盲検コホート内で比較するプロトコール2を用いた。プロトコール1では、オンライン電子データ収集システムを用いて現場の研究員が患者を無作為に(1対1の割合、試験施設で層別化)割り付けた。薬物投与30分後に洞調律に復帰しない患者をプロトコール2で無作為化し、試験施設とプロトコール1の割り付けで層別化した。患者を全研究員と救急部職員にプロトコール1の治療割り付けを伏せた。主要転帰は、無作為化後30分以降および3回のショック直後の正常洞調律復帰とした。プロトコール1はintention-to-treatで解析し、プロトコール2は電気的除細動を実施しなかった患者を除外した。この試験はClinicalTrials.govにNCT01891058番で登録されている。 【結果】2013年7月18日から2018年10月17日にかけて、396例を組み入れ、追跡脱落例はなかった。薬剤ショック群(204例)では196例(96%)、ショック単独群(192例)では176例(92%)が洞調律に復帰した(絶対差4%、95%CI 0-9、P=0.07)。退院した患者の割合は、97%(198例)と95%(183例)だった(P=0.60)。薬物ショック群の106例(52%)が、薬物注入単独で洞調律に復帰した。追跡中、重度の有害事象が発現した患者はいなかった。プロトコール2(244例)の2通りのパッド位置の洞調律復帰率は同等であった[前後群127例中119例(94%)と前外側群117例中108例(92%)]。 【解釈】救急部を受診した急性心房細動患者で、薬物ショックとショック単独戦略ともに洞調律復帰の有効性が高く、迅速で安全で、再受診を回避できた。薬物注入は、約半数に有効であり、電気的除細動を要する資源集約的な処置時の鎮静が回避できた。このほか、電気的除細動時の前後と前外側のパッド位置による有意な差は見られなかった。救急部を受診する急性心房細動の即時洞調律維持が良好な転帰をもたらすことになる。 第一人者の医師による解説 Ic群抗不整脈薬の効果はより高いと推測 日本の救急現場での治療方針は妥当 井上 博 富山県済生会富山病院顧問 MMJ. October 2020; 16 (5):127 心房細動発作で救急受診した患者では、血圧低下や心不全悪化など特別な事情がなければ、まず抗不整脈薬を静注し30分ほど様子をみて、洞調律化しない場合は電気的除細動を試みることが通例である。この2段階のアプローチは臨床現場では特に疑問視されることなく行われているが、最初から電気的除細動を試みるアプローチと厳密に比較した成績は乏しい。  本試験は、カナダの大学病院救急外来11施設で、2013年7月~18年10月に行われた無作為対照試験(RAFF2)である。心房細動が3時間以上持続し、除細動を必要とする、状態の安定した成人患者396人(平均年齢60歳)を対象とした。プロトコール1では、プロカインアミド 15mg/kg(最大1,500mg)を30分で静注し無効な場合に電気的除細動(二相性波形、200J以上で3回まで)を行うdrug-shock群(204人)と最初から電気的除細動を行うshock群(192人)に無作為化した。プロトコール2では、プロトコール1で電気的除細動を行う患者を電極配置が前-後(右鎖骨下と左肩甲骨下)と前-外側(右鎖骨下と左前腋窩)の2群に無作為化した。その結果、除細動され洞調律が30分以上持続した患者は、drug-shock群で196人(96%)、shock群で176人(92%)と両群間で有意差はなかった(P=0.07)。Drug-shock群の52%では、プロカインアミド静注のみで静注開始から中央値で23分後に洞調律化した。14日間の追跡期間終了時点で306人(77%)が洞調律であり、重篤な有害事象や脳卒中の発生はみられなかった。2種類の電極配置の間で洞調律化率に差はなかった(前-後群92% 対 前-外側群94%;P=0.68)。  発症後間もない心房細動発作を救急外来で除細動する場合、薬理学的除細動+電気的除細動あるいは電気的除細動のみを行う方法のいずれも、高い有効性と安全性を示した。薬理学的除細動のみで約半数の患者で洞調律化が可能であったことから、臨床現場ではまず薬理学的除細動を試み、無効な場合に電気的除細動を行う方針が効果的と考えられる。電極の配置は洞調律化率には影響しない。  以上の結果は、日本の救急現場で経験的に行われる治療方針が妥当であることを無作為化対照試験で改めて示したものである。注意すべき点は、わが国では心房細動の洞調律化にはプロカインアミドが使用されることはまれで、Ic群抗不整脈薬などが選択されることが多く、薬理学的除細動率は本試験の成績より高いと推測される。また、除細動とは別の治療方針として、発症後間もない心房細動発作は薬物による心拍数コントロールのみで48時間以内に69%が洞調律化するという報告(1)もあり、救急現場ではこれらの成績も考慮に入れて治療方針を選択することが望ましい。 1. Pluymaekers NAHA et al. N Engl J Med 2019;380(16):1499-1508.
発作性心房細動と高血圧を有する患者の心房細動の再発に対する腎除神経とカテーテルアブレーションの併用とカテーテルアブレーションのみの併用の効果。The ERADICATE-AF Randomized Clinical Trial.
発作性心房細動と高血圧を有する患者の心房細動の再発に対する腎除神経とカテーテルアブレーションの併用とカテーテルアブレーションのみの併用の効果。The ERADICATE-AF Randomized Clinical Trial.
Effect of Renal Denervation and Catheter Ablation vs Catheter Ablation Alone on Atrial Fibrillation Recurrence Among Patients With Paroxysmal Atrial Fibrillation and Hypertension: The ERADICATE-AF Randomized Clinical Trial JAMA 2020 Jan 21;323(3):248-255. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】腎除神経は心臓の交感神経活動を低下させ、心房細動に対する抗不整脈効果をもたらす可能性がある。 【目的】肺静脈隔離術に腎除神経を追加することで、長期的な抗不整脈効果が高まるかどうかを検討する。 【デザイン、設定、参加者】Evaluate Renal Denervation in Addition to Catheter Ablation to Eliminate Atrial Fibrillation(ERADICATE-AF)試験は、ロシア連邦、ポーランド、ドイツの心房細動のカテーテルアブレーションを行う5つの紹介センターで行われた、研究者主導の多施設、単盲検、無作為化臨床試験である。2013年4月から2018年3月までに、少なくとも1種類の降圧薬を服用しているにもかかわらず高血圧で、発作性心房細動があり、アブレーションの予定がある患者302人が登録された。フォローアップは2019年3月に終了した。 【介入】患者を肺静脈隔離単独(n=148)または肺静脈隔離+腎除神経(n=154)に無作為に割り付けた。肺静脈の電位をすべて除去することをエンドポイントとした完全な肺静脈隔離と、灌流チップ付きアブレーションカテーテルを用いて、両腎動脈の遠位から近位までスパイラルパターンで個別の部位に高周波エネルギーを供給する腎除神経。 【主なアウトカムと評価】主要エンドポイントは、12ヵ月後の心房細動、心房粗動、または心房頻拍からの解放であった。 【結果】無作為化された302名の患者(年齢中央値60歳[四分位範囲55~65歳]、男性182名[60.3%])のうち、283名(93.7%)が試験を完了した。全員が指定された手術を無事に受けた。12ヵ月後の心房細動,粗動,頻脈の消失は,肺静脈隔離術のみを受けた148例中84例(56.5%)と,肺静脈隔離術と腎除神経術を受けた154例中111例(72.1%)に認められた(ハザード比,0.57;95%CI,0.38~0.85;P=0.006).事前に規定された5つの副次的エンドポイントのうち、4つが報告され、3つはグループ間で差がありました。ベースラインから12ヵ月後の平均収縮期血圧は,隔離のみの群では151 mm Hgから147 mm Hgに,腎除神経群では150 mm Hgから135 mm Hgに低下した(群間差:-13 mm Hg,95% CI,-15~-11 mm Hg,P < 0.001).手続き上の合併症は、隔離のみのグループで7人(4.7%)、腎除神経グループで7人(4.5%)に発生した。 【結論と関連性】発作性心房細動と高血圧を有する患者において、カテーテルアブレーションに腎除神経を追加した場合、カテーテルアブレーションのみの場合と比較して、12ヵ月後に心房細動が起こらない可能性が有意に増加した。本試験の結果を解釈する際には、正式なシャムコントロールの腎除神経術が行われていないことを考慮する必要がある。 【臨床試験登録】ClinicalTrials. gov Identifier:NCT01873352。 第一人者の医師による解説 交感神経活性の抑制 降圧とともに臨床的に有用と示した点に意義 藤田英雄 自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長・総合医学第1講座主任教授 MMJ.June 2020;16(3) 発作性心房細動に対するカテーテルアブレーションによる肺静脈隔離の有効性は確立されているが、 10~30%の再発率があり改善の余地がある。交感神経活性を抑制する腎デナベーション治療(腎交 感神経除神経術)を加えることで有効性が向上するか否かを検証するため、多施設単盲検無作為化試験 「ERADICATE-AF」が研究者主導で実施され、その 成績が本論文に報告された。 本試験では、高血圧合併発作性心房細動患者302人をカテーテルアブレーション単独群(148人)と 併用群(154人)に無作為に割り付け、12カ月後の心房細動+心房粗動+心房頻拍 の 無再発 を 主要評価項目とした。 主要エンドポイントは単独群84人 (56.5%)、併用群111人(72.1%)で得られ(ハザー ド 比[HR], 0.57;95 % 信頼区間[CI], 0.38~ 0.85;P=0.006)、併用群で有意に無再発例が多く、さらに副次評価項目の1つである治療後の平 均収縮期血圧値の低下は、単独群では151mmHg (ベースライン)から147mmHgであったのに対し、 併用群 で は150mmHgか ら135mmHgへ と より大幅な低下が示された(群間差:-13mmHg; 95% CI,-15 ~-11mmHg;P<0.001)。手技関連合併症は、単独群7人(4.7%)、併用群7人 (4.5%)ですべてがアブレーションによるものであった。 これらの結果から著者らは、単独群にシャム手術を施行していない限界を考慮しつつも高血圧合併発作性心房細動患者に対し、カテーテルアブレーションは腎デナベーションの併用によって心房性不整脈の再発を有意に抑制できたと結論づけた。 今回の結果は、腎デナベーション併用治療の有効性を示唆し、その機序として交感神経活性の抑制 が降圧とともに臨床的に有用であることを示した点に意義がある。腎デナベーション治療はかつて 薬物治療抵抗性高血圧への非薬物療法としての期待を集めたが、2014年のSIMPLICITY-HTN3試験において有効性を示すことができなかった。 しかしながら、その後カテーテル開発競争の中で改良が進み、SPYRAL HTN-OFF MED Pivotal試験(1) では薬物投与なく有意な降圧効果が確認されるなど新たな治療法として復活しつつあり、現状ではその広い適応は医療経済的に困難であるとしても、 心房細動治療の今後の方向性を示す貴重な試験結 果といえよう。 1.Böhm M et al. Lancet. 2020 May 2;395(10234):1444-1451.
洞調律中の心房細動患者を識別するための人工知能を用いた心電図アルゴリズム:転帰予測のレトロスペクティブな分析。
洞調律中の心房細動患者を識別するための人工知能を用いた心電図アルゴリズム:転帰予測のレトロスペクティブな分析。
An artificial intelligence-enabled ECG algorithm for the identification of patients with atrial fibrillation during sinus rhythm: a retrospective analysis of outcome prediction Lancet 2019 ;394 (10201):861 -867. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】心房細動は無症状であることが多く、そのため発見が遅れているが、脳卒中、心不全、死亡と関連している。既存のスクリーニング法は長時間のモニタリングを必要とし、コストと低い収率によって制限されている。我々は,機械学習を利用して心房細動患者を迅速かつ安価に特定するポイントオブケア手段を開発することを目的とした。 【方法】我々は,10秒間の標準的な12誘導心電図を用いて正常洞調律中に存在する心房細動の心電図シグネチャを検出するために,畳み込みニューラルネットワークを用いた人工知能(AI)対応の心電計(ECG)を開発した。1993年12月31日から2017年7月21日の間にMayo Clinic ECG研究所で仰臥位で取得したデジタルで正常洞調律の標準10秒12誘導心電図を少なくとも1枚有する18歳以上の患者を対象とし、循環器医の監督下で訓練を受けた担当者によってリズムラベルが検証されたものを使用した。心房細動または心房粗動のリズムを持つ心電図が少なくとも1つある患者を心房細動陽性と分類した。心電図をトレーニング、内部検証、テストデータセットに7:1:2の割合で割り付けた。内部検証データセットの受信者操作特性曲線の曲線下面積(AUC)を算出して確率の閾値を選択し,これをテストデータセットに適用した.AUCと精度,感度,特異度,F1スコアを両側95%CIで算出し,テストデータセットにおけるモデル性能を評価した. 【所見】解析対象として正常洞調律心電図を持つ患者180 922人,649 931件を含む.テストデータセットの3051人(8-4%)の患者は、モデルによってテストされた正常洞調律ECGの前に心房細動が確認された。1回のAI対応ECGで心房細動を識別した場合のAUCは0-87(95% CI 0-86-0-88)、感度79-0%(77-5-80-4)、特異度79-5%(79-0-79-9)、F1スコア39-2%(38-1-40-3)、全体精度79-4%(79-0-79-9)であった.各患者の関心領域(すなわち、研究開始日または最初に記録された心房細動ECGの31日前)の最初の月に取得されたすべてのECGを含めると、AUCは0-90(0-90-0-91)、感度は82-3%(80-9-83-6)、特異度は83-4%(83-0-83-8)、F1スコアは45-4%(44-2-46-5)、全体の精度は83-3%(83-0-83-7)へと上昇しました. 【解説】正常洞調律時に取得されたAI対応心電図は、心房細動患者のポイントオブケアでの同定を可能にする。 第一人者の医師による解説 リスクの根拠は説明できず 現状の深層学習の問題点 津本 周作 島根大学医学部医学科医療情報学講座教授 MMJ.February 2020;16(1) 本論文で著者は、心房細動の発症1カ月前に構造 的変化が起こっているという仮説に基づき、心房細 動が発症した患者の1カ月前の正常洞性リズムから、心房細動が発症するかどうかを予測する人工知能(AI)分類器の性能を調べた。彼らは、これ以前に左室不全のリスクを心電図から推測する分類器を作成、曲線下面積(AUC)0.93, 感度86.3% , 特異度85.7%という好成績を収め、このAI分類器が陽性と診断した患者はオッズ比4.1のリスクを持っていることを示している(1)。 今回の対象は、メイヨークリニックで1993年 12月~2017年7月 に10秒 の12誘導心電図検 査(500Hz)を受けた患者210,414人(心電図数 1,000,000)から、洞性でない患者、データが不 完全な患者、心房細動より前に洞性リズムが観測 されていない患者を除外した180,992人(心電 図数649,931)からなり、これを70%の訓練標本、 10%の検証標本、20%のテスト標本にランダムに 割り付け、深層学習のアルゴリズムに適用した。分 類器はTensorfl owを用いたKerasパッケージで設 計、R3.4.2で解析した(2) (Appendix参照)。 訓練標本(正常例では最初に記録された心電図を indexとし、それ以降のすべての心電図、心房細動 例では心房細動が初めて観測された波形をindex とし、31日前以降のすべての心電図)で学習が行われた。訓練によってできあがった分類器で用いられるパラメータ(確率の閾値など)を最適化するため、検証標本を用いた。ただし、検証標本は、正常例は最初の波形、心房細動の症例は発症31日前以降の最初の洞性リズムのみである。最適なパラ メータを設定後、完成した分類器に対して、テスト標本(こちらも検証標本と同様の波形)のみで、心 房細動が1カ月後に発症するかどうかを判定した。 結果では2つの評価方法が示されている。第1 に、対象 と な る1つ 目 の 心電図 の み で の 評価 で AUC 0.87、感度79.0%、特異度79.5%、正答率79.4%。第2の複数の心電図(洞性のみを選んで)を用いた評価では、AUC 0.90、感度 82.3%、 特異度83.4%、正答率83.3%に改善している。 精度は他の検査、例えば心不全での脳性ナトリウム利尿ペプチドよりも高く、スクリーニングとしては有効ではないかと論じた。 また、メイヨーの別 の研究チームが心電図のさまざまな指標では高い分類精度が得られないことを示していることから、 何らかの心電図上の微妙な変化を深層学習で捉えられたかもしれないと論じている。ただし、今回どうしてこのような精度が得られたかは説明できていない。分類器に波形を与えれば、心房細動のリス クを予想するが、その理由が説明できない。これが 現状の深層学習の方法の問題点でもある。 1. Attia ZI et al. Nat Med. 2019;25(1):70-74. 2. François Chollet、J. J. Allaire(瀬戸山 雅人監訳、長尾 高弘訳). R と Keras によるディープラーニング . オライリージャパン、2018.
心房細動患者における血栓塞栓症予防のための介入。システマティックレビュー。
心房細動患者における血栓塞栓症予防のための介入。システマティックレビュー。
Interventions for Preventing Thromboembolic Events in Patients With Atrial Fibrillation: A Systematic Review Ann Intern Med 2018 Dec 4 ;169 (11):774 -787. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】心房細動(AF)における血栓塞栓性合併症を予防する治療法の安全性と有効性の比較は依然として不明である。 【目的】非弁膜症AFの成人における血栓塞栓性イベントと出血性合併症を予防する内科治療と手技療法の有効性を比較する。 【データソース】複数のデータベースにおける2000年1月1日から2018年2月14日までの英語による研究。 【研究選択】2名の査読者が独立して引用文献をスクリーニングし、血栓塞栓または出血性合併症を報告した非弁膜症性AFの成人における脳卒中を予防する治療の比較研究を特定した。 データ抽出]2名の査読者が独立してデータを抽出し、研究の質および適用性の評価を行い、エビデンス強度を評価した。 データ統合]220編の論文のデータを対象とした。脳卒中または全身性塞栓症の予防において、ダビガトランとアピキサバンはワルファリンより優れており、リバーロキサバンとエドキサバンは同程度であった。大出血のリスク低減については,アピキサバンとエドキサバンが優れており,リバーロキサバンとダビガトランはワルファリンと同程度であった.ダビガトランの治療効果は腎機能障害のある患者でも同様であり(相互作用 P > 0.05),75 歳未満の患者ではダビガトランの方が出血率が低かった(相互作用 P < 0.001).アピキサバンによる治療の有益性は,腎機能障害,糖尿病,脳卒中の既往を含む多くのサブグループで一貫していた(すべてで交互作用P > 0.05).出血リスクの減少は,糸球体濾過量が 50 mL/min/1.73 m2 未満の患者で最も大きかった(P = 0.003).脳卒中,糖尿病,心不全の既往のある患者では,リバーロキサバンとエドキサバンに同様の治療効果が認められた(すべてで相互作用P>0.05)。 【限定】不均一な研究集団,介入,結果。 【結論】利用できる直接作用型経口抗凝固薬(DOACs)は非弁膜症性AF患者において,少なくともウォルファリンと同等以上に有効かつ安全であった。DOACは、いくつかの患者サブグループで同様の効果を示し、幅広い非弁膜症性心房細動の患者に対して安全で有効であると思われた。(PROSPERO: CRD42017069999). 第一人者の医師による解説 間接比較だが DOAC間にも有効性と安全性で優劣ある可能性 後岡 広太郎(特任講師)/下川 宏明(教授) 東北大学大学院医学系研究科循環器内科学 MMJ.August 2019;15(4) 心房細動(atrial fibrillation;AF)による全身性塞栓症の予防にワルファリンが 使用され てきたが、近年、直接型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant;DOAC)が 登場し、DOACとワルファリンを比較した大規模比較試験(ROCKET AF、ARISTOTLE、RE-LY、ENGAGE AF)が行われた(1)。 本研究は上記4試験を含む6の臨床試験と111 の観察研究から系統的レビューを行い、AF患者におけるDOACとワルファリンと左心耳閉鎖デバイスの全身性塞栓症予防の有効性と安全性を比較した。本研究の知見として以下の4つが挙げられる: ①脳梗塞または全身性塞栓症の予防効果において、 ワルファリンと比較して、ダビガトランとアピキサバンの優越性が示され、リバーロキサバンとエドキサバンは同程度であった②大出血のリスクは ワルファリンと比較して、アピキサバンとエドキ サバンはリスクを低下させ、リバーロキサバンとダビガランは同程度であった③ワルファリンと比較して第Ⅹ a因子阻害薬全体としては、脳出血・ 頭蓋内出血・全死亡の減少と関連した④ワルファリンと比較して、左心耳閉鎖デバイスは大出血のリスクが低く、脳梗塞減少の傾向を認めたが、植え込みに伴う合併症が多かった。 本研究結果からAFの塞栓症予防においてDOAC はワルファリンと有効性と安全性が少なくとも同等であることが示された。いくつかのDOACは他のDOACに比べて有効性や安全性で優れている可能性が示唆され、本研究結果は臨床医のDOACの 選択に影響するかもしれない。また、左心耳閉鎖バイスは出血リスクが非常に高い患者への1つの選択肢にとどまることが示唆された。 本研究 の 問題点 は、間接比較 で あ り、各臨床試 験の研究デザイン、患者背景、主要評価項目の定義の違いを考慮していない点が挙げられる。例えばRE-LYやARISTOTLEはCHADS2ス コ ア0点 以上 のAF患者 が 登録 さ れ た が、ROCKET AFと ENGAGE AFでは、より塞栓リスクが高い2点以 上のAF患者が登録された(1)。また、日本のリアルワールドデータである伏見 AFレジストリからは DOACとワルファリン間で脳梗塞・大出血イベント発生率に違いはなかったことが報告され(2)、実臨床ではDOAC開始時に薬剤の選択よりも用量の選 択やアドヒアランスの確認を行うことがより重要と考えられる。 1. Camm AJ, et al. Europace. 2018;20(1):1-11. 2. Yamashita Y, et al. Circ J. 2017;81(9):1278-1285.