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虚血性脳卒中患者の心房細動検出に用いる植込み型ループレコーダーと体外式ループレコーダーの比較:PER DIEM無作為化臨床試験
虚血性脳卒中患者の心房細動検出に用いる植込み型ループレコーダーと体外式ループレコーダーの比較:PER DIEM無作為化臨床試験
Effect of Implantable vs Prolonged External Electrocardiographic Monitoring on Atrial Fibrillation Detection in Patients With Ischemic Stroke: The PER DIEM Randomized Clinical Trial JAMA. 2021 Jun 1;325(21):2160-2168. doi: 10.1001/jama.2021.6128. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約【重要性】体外式ループレコーダーまたは植込み型ループレコーダーを用いた心電図モニタリングによる虚血性脳卒中後の心房細動(AF)または心房粗動の相対検出率は明らかになっていない。【目的】虚血性脳卒中を発症して間もない患者で、植込み型ループレコーダーを用いた12カ月間のモニタリングが従来の体外式ループレコーダーを用いた30日間のモニタリングよりもAF発生を多く検出できるかを明らかにすること。【デザイン、設定および参加者】カナダ・アルバータ州の大学病院2施設および市中病院1施設で、2015年5月から2017年11月にかけて虚血性脳卒中発症6カ月以内でAFの既往歴がない患者300例を登録し、医師主導型非盲検無作為化臨床試験を実施した。最終追跡が2018年10月であった。【介入】参加者を植込み型ループレコーダー(150例)と体外式ループレコーダー(150例)による持続的心電図モニタリングに1対1の割合で無作為化により割り付けた。参加者は、経過観察のため30日後、6カ月後および12カ月後に受診した。【主要評価項目】主要評価項目は、AF確定(definite AF)またはほぼ確実なAF(highly probable AF)(無作為化後12カ月以内に2分以上持続する新たなAFの判定)とした。新規AFのtime to event解析、虚血性脳卒中の再発、頭蓋内出血、死亡および12カ月以内に発生した機器関連の重篤な有害事象などの8項目を事前に定めた副次評価項目とした。【結果】無作為化により割り付けた300例(年齢中央値64.1歳[四分位範囲、56.1~73.7];女性121例[40.3%];CHA2DS2-VASc[うっ血性心不全、高血圧、75歳以上、糖尿病、脳卒中または一過性虚血発作、血管疾患、65~74歳、性別]スコア中央値4点[四分位範囲、3~5]の原因不明の脳卒中66.3%)のうち273例(91.0%)が24時間以上の心臓モニタリングを完了し、259例(86.3%)が割り付けたモニタリングおよび12カ月間の経過観察を完遂した。主要評価項目は、植込み型ループレコーダー群の15.3%(150例中23例)、体外式ループレコーダー群の4.7%(150例中7例)に発現した(群間差、10.7%[95%CI、4.0~17.3%];リスク比、3.29[95%CI、1.45~7.42];P=0.003)。8項目の副次評価項目のうち、6項目に有意差が認められなかった。植込み型ループレコーダー群の5例(3.3%)に虚血性脳卒中が再発したのに対して、体外式ループレコーダー群では8例(5.3%)に再発を認めた(群間差、-2.0%[95%CI、-6.6~2.6%])。各群1例(0.7%)に頭蓋内出血が発生し(群間差、0%[95%CI、-1.8~1.8%])、各群3例(2.0%)が死亡し(群間差、0%[95%CI、-3.2~3.2%])、それぞれ1例(0.7%)と0例(0%)に機器関連の重篤な有害事象が発現した。【結論および意義】AFの既往歴がない虚血性脳卒中患者で、植込み型ループレコーダーによる12カ月間の心電図モニタリングのAF検出率が、30日間の体外式ループレコーダーによるモニタリングよりも有意に高かった。このモニタリング法による臨床成績および相対的な費用効果を比較する詳細な研究が必要である。 第一人者の医師による解説 社会的経済的状態と疾病の発症について 生活習慣との相互作用を含めた研究が必要 門脇 孝 虎の門病院院長 MMJ. December 2021;17(6):188 心原性脳塞栓症は最重症のノックアウト型脳梗塞をきたす。原因の大部分は高齢化で増加が予想される心房細動(AF)だが、幸い抗凝固療法によりリスクを約3分の1に低減することができる。したがって、AF診断の強化が要介護削減、健康寿命延伸のカギを握る。虚血性脳卒中(IS)は心原性に限らずAF有病率が高い。再発予防の観点からAF診断が重要だが、ホルター心電図などでは検出困難な発作性AFが多数潜在している。このような潜在性AFの検出には植込み型ループレコーダー(ILR)が極めて有用だが、その保険適用は発症原因が特定できない潜因性脳梗塞(CS)に限られる。本研究は、既知のAFがない発症半年以内のISを対象とし、4週間可能な限り体外式ループレコーダー(ELR)を装着する群と、ILRで1年間監視する群とに無作為に割り付け、2分間以上持続するAFの検出率を比較検討したものである(各群150人)。その結果、AF検出率はELR群の4.7%に対し、ILR群では15.3%と10.7%高く、リスク比は3.29であった(P=0.003)。ILRはELRより有意にAF検出率を高められるという結果が示されたことから、ILRの適応をすべてのISに拡大すべきかどうかが議論となるが、本研究の対象患者は66%がCSである上に、病型別の検出率も示されていないため、CS以外のISでの有用性は明らかでない。長時間の心電図モニタで病型別のAF検出率を検討した報告はほとんどない。参考までに、当院では入院時心電図でAFが認められないすべてのISに対し、原則1週間デュランタR(ZAIKEN)による非侵襲的心電図モニタを行っており、Stroke2021で筆者が当院の臨床データを発表した時点で7日目まで監視しえた患者は1,066人に達する(1)。病型別のAF検出率は、TIA0%、ラクナ梗塞3.9%、アテローム血栓性脳梗塞5.4%、CS10.5%であり、CS以外の病型におけるAF検出率はCSのおよそ半分以下となっている。したがって、CS以外のISではILRによるAF検出率の上乗せ効果はさほど大きくなく、侵襲的で高額なILRの適応をすべてのISに拡大するほどのメリットは得られないと予想される。潜在性AFの検出は「Thelonger,thebetter」であり、検出力の観点からはILRが最も優れるものの検査数は限られる。重要なのは検出数を増やすことであり、まずは広く実施可能で、検出力も比較的高い非侵襲的長時間心電図モニタによるAF監視の強化を優先すべきであろう。 1. 第 46 回日本脳卒中学会学術集会:虚血性脳卒中急性期の非侵襲的長時間心電図モニタによる悉皆的心房細動スクリーニングの有用性(抄録番号:卒中 O-061-2)
心房細動の初期治療に用いる冷凍アブレーションと薬物療法
心房細動の初期治療に用いる冷凍アブレーションと薬物療法
Cryoablation or Drug Therapy for Initial Treatment of Atrial Fibrillation N Engl J Med. 2021 Jan 28;384(4):305-315. doi: 10.1056/NEJMoa2029980. Epub 2020 Nov 16. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】ガイドラインでは、心房細動患者にカテーテルアブレーションを検討する前に1種類以上の抗不整脈薬を試すことが推奨されている。しかし、1次治療にアブレーションを用いた方が洞調律の維持に有効であると思われる。 【方法】未治療の症候性発作性心房細動患者303例を、冷凍バルーンを用いたカテーテルアブレーション実施群と、初期の洞調律回復を目的とした抗不整脈薬投与群に無作為化した。心房頻脈性不整脈を検出するため、全例に植込み型心臓モニタリング機器を留置した。追跡調査期間は12カ月であった。主要評価項目は、カテーテルアブレーション実施後または抗不整脈薬投与開始91~365日後のあらゆる心房頻脈性不整脈(心房細動、心房粗動または心房頻拍)再発の初回記録とした。副次評価項目は、症候性不整脈がないこと、心房細動の負荷、QOLとした。 【結果】1年時、アブレーション群154例中66例(42.9%)、抗不整脈薬群149例中101例(67.8%)に心房頻脈性不整脈の再発が認められた(ハザード比0.48、95%CI 0.35~0.66、P<0.001)。アブレーション群の11.0%、抗不整脈薬群の26.2%に症候性の心房頻脈性不整脈の再発が認められた(ハザード比0.39、95%CI 0.22~0.68)。心房細動が発生していた時間の割合の中央値は、アブレーション群0%(四分位範囲0~0.08)、抗不整脈薬群0.13%(四分位範囲0~1.60)であった。アブレーション群の5例(3.2%)と抗不整脈薬群の6例(4.0%)に重篤な有害事象が発生した。 【結論】症候性発作性心房細動の初期治療を受けた患者を継続的な心調律モニタリングで評価した結果、カテーテルによる冷凍バルーンアブレーションの心房細動再発率が抗不整脈薬による薬物療法よりも有意に低かった。 第一人者の医師による解説 第1選択とするには安全性が非常に重要 侵襲的な手技のリスクは常に念頭に置く必要あり 五十嵐 都 筑波大学医学医療系循環器先進治療研究部門准教授/家田 真樹 筑波大学医学医療系循環器内科教授 MMJ. August 2021;17(4):114 発作性心房細動の初回治療として、ガイドラインでは抗不整脈薬をまず投与し無効な場合にカテーテルアブレーションを行うべきと記載されている(1)。しかしながら、薬物療法の心房細動抑制効果は十分とはいえず、副作用も懸念される。一方、カテーテルアブレーションを薬物療法の無効例に対して行った場合、洞調律維持に有効であったとの報告がある(2)。 今回報告されたEARLY-AF試験では、未治療の発作性心房細動患者を対象に初回治療として冷凍焼灼術(クライオバルーンアブレーション)による心房不整脈の再発抑制効果を抗不整脈薬と比較した。全患者に植込み型心電図記録計(ICM)を植え込み、不整脈を正確に検出できるようにした。その結果、1年の時点で主要評価項目である心房不整脈の再発率はアブレーション群の方が有意に低かった。副次評価項目である心房細動発症の累積時間率(burden)もアブレーション群の方が低かった。有害事象に関して両群間に有意差はなかった(アブレーション群5人:横隔神経麻痺3人、徐脈2人、抗不整脈薬群6人:wide QRS頻拍2人、失神1人、心不全1人、徐脈2人)。 先行研究では、薬物療法でコントロールが不良であった患者への後治療としてアブレーションを行っており、アブレーションの有効性が過大評価されていた可能性がある。本研究の特徴は初回治療としてアブレーションと薬物療法を比較している点と、ICMにより長期間の正確なモニターを行った点である。 最近の研究ではリズムコントロールを早期に行うことは、脳卒中を含む心血管イベントを抑制すると報告されている(3)。また心房細動は進行性の疾患であるため、早期にアブレーションを行うことで心房の線維化など組織的な変化を抑制し長期的な予後を改善させるかもしれない。しかしながら、アブレーションを第1選択とするには安全性が非常に重要な点である。本研究では有害事象発生率は2群間で差がなくアブレーションに関連した死亡、血栓塞栓イベントはなかったが、侵襲的な手技のリスクは常に念頭に置く必要がある。また、心房細動の累積時間率に関して2群間の差はそれほど大きくなくアブレーションを強く勧める根拠にはならないかもしれない。本研究は追跡期間が短いため、アブレーションの長期的な効果を含め、今後のさらなる検討が期待される。 1. Hindricks G, Eur Heart J. 2021;42(5):373-498. 2. Wilber DJ, et al. JAMA. 2010;303(4):333-340. 3. Kirchhof P, et al. N Engl J Med. 2020;383(14):1305-1316.
脳卒中の予防を目的とした心臓手術中の左心耳閉鎖術
脳卒中の予防を目的とした心臓手術中の左心耳閉鎖術
Left Atrial Appendage Occlusion during Cardiac Surgery to Prevent Stroke N Engl J Med. 2021 Jun 3;384(22):2081-2091. doi: 10.1056/NEJMoa2101897. Epub 2021 May 15. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】手術による左心耳の閉鎖は、心房細動患者の虚血性脳卒中を予防すると言われているが、証明されていない。この手技は、別の理由による心臓手術中に施行することが可能である。 【方法】別の理由による心臓手術を予定しており、CHA2DS2-VAScスコア(0~9、スコアが高いほど脳卒中リスクが高いことを示す)が2点以上の心房細動を有する患者を対象に、多施設共同無作為化試験を実施した。患者を無作為化により、手術中に左心耳閉鎖術を施行するグループと左心耳閉鎖術を施行しないグループに割り付けた。全患者に追跡期間中、経口抗凝固薬など通常の治療を実施する予定とした。主要評価項目は、虚血性脳卒中(神経画像検査で所見がみられる一過性脳虚血発作を含む)または全身性塞栓症の発生とした。患者、試験担当者および(外科医を除く)プライマリケア医に試験群の割り付けを伏せた。 【結果】主解析は、閉鎖群2,379例、非閉鎖群2,391例を対象とした。平均年齢は71歳、CHA2DS2-VASc平均スコアは4.2点だった。参加者を平均3.8年間追跡した。92.1%が割り付けた手術を受け、76.8%が3年時点で経口抗凝固薬服用を継続していた。閉鎖群の114例(4.8%)、非閉鎖群の168例(7.0%)が脳卒中または全身性塞栓症を発症した(ハザード比、0.67;95%CI、0.53~0.85;P=0.001)。周術期出血、心不全または死亡の発生率には両試験群間に有意差は認められなかった。 【結論】心臓手術を施行した心房細動患者で、ほとんどが経口抗凝固薬の服用を継続しており、虚血性脳卒中または全身性塞栓症のリスクは心臓手術中に左心耳閉鎖術を同時に施行した方が左心耳を閉鎖しないよりも低かった。 第一人者の医師による解説 左心耳閉鎖術は抗凝固療法の脳梗塞予防効果を増強 さらなる研究を期待 浅井 徹 順天堂大学医学部心臓血管外科学教授 MMJ. February 2022;18(1):9 心房細動は高齢者によくみられ、脳梗塞の原因のうち約25%を占めている。心原性脳塞栓症の多くは心房細動に起因し、左心房にある左心耳が血栓塞栓物の発生部位と考えられている(1)。経口抗凝固薬は左心耳内の血栓形成抑制効果を有する安全な薬剤であり、心房細動のある患者で脳梗塞発症率をおよそ3分の2に低下させることが明らかになっている。しかし実際には、投薬の中断や用量のコントロールが不十分であるといった問題がある。これに対し、左心耳閉鎖術は心房細動合併患者の脳梗塞発症リスクを半永久に低下させる効果が期待されているが、ランダム化試験ではまだ証明されていない。 本論文は、心臓手術を受ける患者のうち心房細動を有するCHA2DS2-VAScスコア2以上の患者を対象に追加手技として左心耳閉鎖術の実施群(2,379人)と非実施群(2,391人)で術後遠隔期までの脳梗塞発症を比較した多施設ランダム化試験(LAAOS III試験)の報告である。左心耳閉鎖術の方法は、切除閉鎖(推奨)、ステイプラーによる切除、デバイスによる閉鎖、または左心房内からの閉鎖が用いられ、術中経食道心エコーによる確認が推奨された。手術後の患者は経口抗凝固薬を含めた通常の薬物療法を受けた。平均追跡期間は3.8年、術後3年の時点で全体の76.8%の患者が経口抗凝固療法を継続していた。その結果、主要評価項目である脳梗塞または他臓器の塞栓症の発症率は、左心耳閉鎖術実施群4.8%、非実施群7.0%であった(ハザード比 , 0.67;95%信頼区間 , 0.53~0.85;P=0.001)。また、周術期の出血合併症、心不全、死亡率で両群間に有意差はなかった。著者らは、心房細動を有する患者が心臓手術を受ける際に左心耳閉鎖術を併施した場合、併施しない場合と比較して、術後の脳梗塞または他臓器の塞栓症の発症リスクが低くなると結論づけている。 左心耳は心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の産生部位であり、左心耳の切除によって腎における塩と水の排出が損なわれ心不全が増悪する懸念があるが、今回の試験では術後早期も遠隔期も心不全による入院や死亡率に関して両群間で差を認めなかった。LAAOS III試験は、左心耳閉鎖術自体と経口抗凝固療法を比較した研究ではないため、左心耳閉鎖術が経口抗凝固療法の代用となりうるとは解釈できないが、左心耳閉鎖術が経口抗凝固療法の脳梗塞発症率をさらに3分の2ほどに低下させる効果があることを示しており、今後のさらなる研究結果が待たれるところである。 1. Blackshear JL, et al. Ann Thorac Surg. 1996;61(2):755-759.
大血管または小血管の病変に起因する脳卒中患者の心房細動検出に用いる長期心臓モニタリングと通常治療の効果の比較:STROKE-AF無作為化試験
大血管または小血管の病変に起因する脳卒中患者の心房細動検出に用いる長期心臓モニタリングと通常治療の効果の比較:STROKE-AF無作為化試験
Effect of Long-term Continuous Cardiac Monitoring vs Usual Care on Detection of Atrial Fibrillation in Patients With Stroke Attributed to Large- or Small-Vessel Disease: The STROKE-AF Randomized Clinical Trial JAMA. 2021 Jun 1;325(21):2169-2177. doi: 10.1001/jama.2021.6470. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【重要性】大血管または小血管の病変に起因する虚血性脳卒中患者では、心房細動(AF)のリスクが高いと考えられておらず、この集団でのAF発症率は明らかになっていない。 【目的】12ヵ月間の追跡で検討した大血管または小血管の病変に起因する虚血性脳卒中患者のAF検出で、長期心臓モニタリングが通常治療より有効性が高いかどうかを明らかにすること。 【デザイン、設定および参加者】STROKE-AF試験は無作為化(1対1)多施設共同(米国の33施設)臨床試験であり、2016年4月から2019年7月までに患者496例を登録し、2020年8月まで主要評価項目を追跡した。60歳以上の患者または脳卒中の危険因子が1つ以上ある50~59歳の患者で、植込み型心臓モニタ(ICM)植込み前10日以内に大血管または小血管の病変に起因する指標となる脳卒中を発症した患者を適格とした。 【介入】患者を無作為化により、指標となる脳卒中から10日以内にICMを植え込む介入群(242例)、12誘導心電図やホルター心電図によるモニタリング、遠隔モニタリング、発作時心電図記録計などの施設ごとの標準治療を実施する対照群(250例)に割り付けた。 【主要評価項目】12ヵ月間での30秒以上持続したAFの発症。 【結果】無作為化した492例(平均[SD]年齢、67.1[9.4]歳;女性185例[37.6%])のうち、417例[84.8%]が12ヵ月間の追跡を終了した。CHA2DS2-VASc(うっ血性心不全、75歳以上、糖尿病、脳卒中または一過性脳虚血発作、血管疾患、65~74歳、性別)スコア中央値(四分位範囲)は5(4~6)であった。12ヵ月時点のAFの検出率は、ICM群の方が対照群よりも有意に高かった(27例[12.1%] vs 4例[1.8%];ハザード比、7.4[95%CI、2.6~21.3];P<0.001)。ICMを植え込んだICM群の221のうち、4例(1.8%)にICM処置に起因する有害事象が発現した(植込み部位感染1例、切開部出血2例、挿入部痛1例)。 【結論および意義】大血管または小血管の病変に起因する虚血性脳卒中患者にICMモニタリングを植え込んだ方が通常治療よりも12ヵ月間でAFを多く検出した。 第一人者の医師による解説 臨床的に将来の心原性脳塞栓症の発症予防に寄与するか否かはさらなる研究が必要 秋山 久尚 聖マリアンナ医科大学内科学(脳神経内科)病院教授 MMJ. February 2022;18(1):8 潜因性脳卒中・脳梗塞(cryptogenic stroke)、塞栓源不明脳塞栓症(ESUS)患者における心房細動(AF)の検出に長時間植込み型心臓モニター(ICM)が有用であることはCRYSTAL-AF試験で報告され、現在の治療ガイドラインでも継続的な心臓モニターが推奨されるに至っている。一方、大血管アテローム硬化(以下、アテローム血栓性脳梗塞)または小血管閉塞(以下、ラクナ梗塞)での発症機序は一般に動脈硬化、リポヒアリノーシスとされ、AFの寄与が高くないという考えから、長時間心臓モニターを含めたAFの検索は通常行われず、AFの検出(率)とその臨床的意義は不明である。 今回報告されたSTROKE-AF試験では、米国の包括的脳卒中センター 33施設において、2016年4月~ 2019年7月にかけてTOAST分類により心原性脳塞栓症、cryptogenic stroke、ESUSではなく、アテローム血栓性脳梗塞またはラクナ梗塞と診断された60歳以上、または50 ~ 59歳で、1つ以上の脳卒中危険因子(うっ血性心不全、高血圧、糖尿病、90日以上前の脳梗塞、その他の虚血性血管疾患など)を有する患者496人のうち4人を除外した492人(平均67.1歳、女性37.6%)を対象として登録している。これらを介入群と対照群1:1に無作為化し、介入群(242人)ではアテローム血栓性脳梗塞またはラクナ梗塞の発症後10日以内に長時間 ICM(Reveal LINQ™[Medtronic社])を植込み、対照群(250人)では短時間心電波形モニター(12誘導心電図、ホルタ心電図、テレメトリーまたはイベントレコーダー)を行い、2020年8月まで(平均331.4±90.9日)の観察期間中、どちらがAF(30秒以上持続)を検出する上で有用かを検討した。 その結果、12カ月間の追跡期間中、ICM群では27人(12.1%)、対照群では4人(1.8%)にAFが検出され(ハザード比 , 7.4)、検出時期の中央値はそれぞれ99日目と181日目、AF最長持続時間の中央値はICM群で88分であった。アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞の2病型群でのサブグループ解析では、AF検出率もICM群(それぞれ11.7%、12.6%)、対照群(2.3%、1.0%)と病型にかかわらずICM群の方が有意に高値であったが、ICM群の両病型間では有意差はなかった。また事後解析で、12カ月間における脳梗塞再発率は介入群と対照群との間で有意差はなかった。 本試験では、アテローム血栓性脳梗塞またはラクナ梗塞でのAF検出においても長時間 ICMが有用なことが明らかとなった。長時間心臓モニタリングの汎用はAF検出の重要性に新しい視点を示したが、アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞におけるAF検出が、臨床的に将来の心原性脳塞栓症の発症予防に寄与するか否かはさらなる研究が必要である。
動脈血栓塞栓症のリスクが高い患者に用いる低分子ヘパリンによる術後橋渡し療法(PERIOP2試験):二重盲検無作為化比較試験
動脈血栓塞栓症のリスクが高い患者に用いる低分子ヘパリンによる術後橋渡し療法(PERIOP2試験):二重盲検無作為化比較試験
Postoperative low molecular weight heparin bridging treatment for patients at high risk of arterial thromboembolism (PERIOP2): double blind randomised controlled trial BMJ. 2021 Jun 9;373:n1205. doi: 10.1136/bmj.n1205. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【目的】心房細動患者および機械弁を留置した患者を対象に、待期手術のためにワルファリン投与を一時的に中止した場合のダルテパリンによる術後橋渡し療法について、プラセボと比較した有効性および安全性を明らかにすること。 【デザイン】前向き二重盲検無作為化比較試験。 【設定】2007年2月から2016年3月までのカナダおよびインドの血栓症研究機関10施設。 【参加者】手術前にワルファリンを一時中止する必要がある18歳以上の心房細動患者および機械弁を留置した患者計1,471例。 【介入】手術後、無作為化によりダルテパリン群(821例;1例が無作為化直後に同意撤回)またはプラセボ群(650例)に割り付けた。 【主要評価項目】術後90日以内の主要な血栓塞栓症(脳卒中、一過性脳虚血発作、近位深部静脈血栓症、肺塞栓症、心筋梗塞、末梢血管塞栓症または血管死)およびInternational Society on Thrombosis and Haemostasis基準に基づく大出血。 【結果】術後90日以内の主要な血栓塞栓症発生率は、プラセボが1.2%(650例中8件)、ダルテパリン群が1.0%(820例中8件)であった(P=0.64、リスク差-0.3%、95%CI -1.3~0.8)。大出血発生率は、プラセボ群が2.0%(650例中13件)、ダルテパリン群が1.3%(820例中11件)であった(P=0.32、同-0.7%、-2.0~0.7)。結果は、心房細動群および機械弁群で一致したものであった。 【結論】手術のためワルファリンを一時的に中止した心房細動患者および機械弁留置患者に術後のダルテパリンによる橋渡し療法を実施しても主要な血栓塞栓症予防に対して有意な便益は認められなかった。 第一人者の医師による解説 術前にヘパリン置換を行った場合機械弁患者群でも術後ヘパリン置換は血栓塞栓症予防に必要ないことを示唆 松下 正 名古屋大学医学部附属病院輸血部教授 MMJ. February 2022;18(1):20 心房細動や機械式心臓弁を有し、観血的手技のためにワルファリンの中断が必要な場合、ヘパリンによるブリッジング(いわゆるヘパリン置換)が有益であるかどうかは議論が続いている。2015年発表のBRIDGE試験では、低分子ヘパリン(LMWH)によるブリッジングは必要ないとの結論に至ったが(1)、同試験の対象者として機械弁や最近の血栓症、大出血既往や高出血リスク手技、腎機能障害など複雑なケアを受ける患者は除外されていた。本論文の著者らは、今回報告されたPERIOP2試験に先立つ単群多施設共同パイロット試験(2)において、LMWH(ダルテパリン;日本ではフラグミン®として発売。ただし保険適用は体外循環時血液凝固防止[透析]と播種性血管内凝固症[DIC]のみ)によるブリッジングを検討し、手技後の血栓症発生(発生率3.1%)の75%は手技後の出血事象により抗凝固療法を中止した患者に発生しており、一方で術前の投与は安全であると考えられたことから、今回術前にLMWHを投与し、術後のLMWHもしくはプラセボ投与による、出血イベントおよび血栓塞栓症の発生率を比較する無作為化対照試験を実施した。なおこの試験の対象者には、BRIDGE試験で除外された機械弁患者は含まれていたが、複数の機械弁、機械弁ありで脳卒中または一過性虚血発作歴のある患者は除外された。そのほか、活動性出血、血小板数10万未満、脊椎や脳外科手術、腎機能障害患者は本試験でも除外された。 対象は心房細動または機械式心臓弁を有する18歳以上の患者1,471人で、CHADS2スコアの平均は2.42、患者の41.2%が3.0以上であった。アスピリンは24.5%の患者が服用していた。手術後90日以内の国際血栓止血学会(ISTH)基準による重大な血栓塞栓症の発生率はプラセボ群1.2%(8/650)、ダルテパリン群1.0%(8/820)で有意差はなく(リスク差-0.3%;95%信頼区間[CI],-1.3 ~ 0.8;P=0.64)、大出血の発生率もプラセボ群2.0%(13/650)、ダルテパリン群1.3%(11/820)と有意差がなかった(リスク差-.7;95% CI,-2.0~0.7;P=0.32)。この結果は心房細動群と機械式心臓弁群でも一貫していた。機械弁患者には依然としてビタミン K拮抗薬が抗凝固薬として選択されており、この患者群でも重大な血栓塞栓症の予防に術後ブリッジングが必要ないことが示された。 1. Douketis JD, et al. N Engl J Med. 2015;373(9):823-833. 2. Kovacs MJ, et al. Circulation. 2004;110(12):1658-1663.
心電図の読み方:これって心房細動?
心電図の読み方:これって心房細動?
Point ①レントゲンでは肺野と心臓の状況をチェックしましょう ・肺野:辺縁、CP angle、横隔膜の高さ、肺の過膨張、気管の変異、骨折の有無 ・心臓:縦隔の拡大、右の1・2弓、左の1・2・3・4弓の腫脹の有無 ⇒ 今回はどちらも異常は無いが、だからといって、心房細動を否定することにはならない ②心電図では肢誘導・胸部誘導に分けてチェックしましょう 【肢誘導】1) Ⅱ・Ⅲ誘導のP派 ⇒ P派が見えづらく、洞停止または心房細動が疑われる  さらにR-R間隔が不正の場合は、心房細動の可能性が高い 2) Ⅰ,Ⅱ誘導の電位の向き ⇒ どちらも上向きの電位の方が高いので、軸は正常 3) Ⅲ誘導・aVF誘導のT派 ⇒ 増高不良があり、心筋障害を疑う 【胸部誘導】1) V2誘導のP派(心房レート) ⇒ 心房レート300程度であり、心房細動(心房レート400-600程度)ではなさそう 2) 300を”R-R間隔の目盛り数”で割り、心拍数の算出 ⇒ 心拍数75~100であり、何らかの不整脈が起こっている 結論 高齢+心房レート200〜300回/分の不整脈をみたら心房頻拍を疑う。心房細動の合併があるかもしれず、ホルター心電図やエコーで評価をしよう ハトミルさんへの相談はこちら » 心不全の診断や治療法について悩みを抱える医師を循環器専門医がサポートします。 匿名かつ非公開で、専門医と直接やりとりできるので、「こんなこと聞いてもいいの?」という質問でも構わず、なんでも気軽に相談してください。 このチャンネルでは、心不全に関するお悩みを循環器専門医が解決します。医用の診療相談サービス「心不全相談 ハトミルさん」に寄せられた質問を基に、専門医が解説を行っています。ハトミルさんは、医師のための臨床互助ツール「ヒポクラ × マイナビ」を管理する株式会社エクスメディオが運営しています。医師免許をお持ちの方であれば、「ヒポクラ × マイナビ」に会員登録いただくと、無料で使うことができます。 「ヒポクラ × マイナビ」についてはこちら 「株式会社エクスメディオ」についてはこちら
植込み型ループレコーダーによる心房細動スクリーニングは予後を改善せず
植込み型ループレコーダーによる心房細動スクリーニングは予後を改善せず
Implantable loop recorder detection of atrial fibrillation to prevent stroke (The LOOP Study): a randomised controlled trial Lancet. 2021 Oct 23;398(10310):1507-1516. doi: 10.1016/S0140-6736(21)01698-6. Epub 2021 Aug 29. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】 心房細動のスクリーニングと、心房細動が検出された場合のその後の抗凝固剤による治療が、脳卒中を予防できるかどうかは不明である。植え込み型ループレコーダー(ILR)を用いて心電図を継続的に監視することで,無症状の心房細動エピソードの検出が容易になる。我々は,心房細動のスクリーニングと抗凝固薬の使用が,高リスクの人の脳卒中を予防できるかどうかを調べることを目的とした。 【方法】我々は,デンマークの4施設で無作為化対照試験を行った。対象は心房細動のない70~90歳の人で,少なくとも1つの脳卒中リスク因子(すなわち,高血圧,糖尿病,脳卒中の既往,心不全)を追加した人であった。参加者は、オンラインシステムを介して、ILRモニタリング群と通常のケア(コントロール)群に1:3の割合で無作為に割り付けられ、センターに応じて4人または8人のブロックサイズで層別された順列ブロックで行われた。ILR群では、心房細動が6分以上続いた場合、抗凝固療法が推奨された。主要評価項目は,最初の脳卒中または全身性動脈塞栓症を発症するまでの時間であった。本試験はClinicalTrials. gov, NCT02036450に登録されている。 【結果】2014年1月31日から2016年5月17日までに、6205人が対象としてスクリーニングされ、そのうち6004人が対象となり、無作為に割り付けられた。1501人(25-0%)をILRモニタリングに、4503人(75-0%)を通常ケアに割り付けた。平均年齢は74~7歳(SD 4~1)、2837人(47~3%)が女性で、5444人(90~7%)が高血圧症だった。追跡調査で失われた参加者はいなかった。中央値64-5カ月(IQR 59-3-69-8)の追跡期間中、1027人の参加者に心房細動が診断された。ILR群1501人中477人(31-8%)に対し,対照群4503人中550人(12-2%)であった(ハザード比[HR]3-17[95%CI 2-81-3-59],p<0-0001)。経口抗凝固療法が開始されたのは1036名であった。経口抗凝固療法が開始されたのは1036名で,ILR群445名(29-7%)対対照群591名(13-1%)(HR 2-72 [95%CI 2-41-3-08]; p<0-0001),主要転帰が発生したのは318名(脳卒中315名,全身性動脈塞栓症3名)で,ILR群67名(4-5%)対対照群251名(5-6%)(HR 0-80 [95%CI 0-61-1-05]; p=0-11)であった。大出血は221名に発生しました。脳卒中の危険因子を有する人において,ILRスクリーニングにより心房細動の検出および抗凝固療法の開始が3倍に増加したが,脳卒中および全身性動脈塞栓症のリスクは有意に減少しなかった。これらの知見は,すべての心房細動がスクリーニングに値するわけではなく,また,スクリーニングで検出されたすべての心房細動が抗凝固療法に値するわけではないことを示唆しているかもしれない。 【FUNDING】Innovation Fund Denmark,The Research Foundation for the Capital Region of Denmark,The Danish Heart Foundation,Aalborg University Talent Management Program,Arvid Nilssons Fond,Skibsreder Per Henriksen,R og Hustrus Fond,The AFFECT-EU Consortium (EU Horizon 2020),Lage Sophus Carl Emil Friis og hustru Olga Doris Friis’ Legat,Medtronic。 第一人者の医師による解説 短時間の心房細動発作に対する抗凝固療法の意義は再検討が必要 香坂 俊 慶應義塾大学医学部循環器内科専任講師 MMJ. April 2022;18(2):39 本論文は、脳卒中危険因子(いわゆるCHADSスコアでカウントされる項目のうち心不全、高血圧、糖尿病、脳卒中の既往のいずれか1つ以上)を有するが、心房細動(AF)とは診断されていない70〜90歳の患者を対象に行われたランダム化対照試験(LOOP試験)の報告である。登録患者は植込み型ループレコーダー(ILR)群もしくは通常ケア(対照)群に割り付けられ、ILR群でAFが検出され、発作が6分以上持続する場合には抗凝固療法が推奨された。 両群の患者は中央値で64.5カ月間追跡され、その期間内にILR群の31.8%、対照群の12.2%がAFと診断された(ハザード比[HR], 3.17;95%信頼区間[CI], 2.81〜3.59;P<0.0001)。そして、各群の29.7%と13.1%に経口抗凝固薬が開始された(HR, 2.72;95% CI, 2.41〜3.08;P<0.0001)。しかし、主要評価項目である脳卒中または全身性動脈塞栓症の発生率は、ILR群が4.5%、対照群が5.6%(HR, 0.80;95% CI, 0.61〜1.05;P=0.11)と有意な差は認めなかった。さらに、ILR群の4.3%、対照群の3.5%に出血イベントが発生していた(HR, 1.26;95% CI, 0.95〜1.69;P=0.11)。 AF発作が「6分以上持続した場合に抗凝固療法を推奨する」という規定の時間枠が緩すぎたのではないかとの批判がなされているが、おそらくは的を射ているように感じられる。実際、このLOOP試験と同じ時期に発表された、高齢者を対象とした14日間にわたる心電図スクリーニング検査の効果を検討したランダム化対照試験(STOPSTROKE試験)では、介入に関して比較的有利な結果が得られている(HR, 0.96;95% CI, 0.92〜1.00;P=0.045)(1)。このほかに周術期のAFに関しては、診療ガイドラインなどでは「30分」というカットオフが用いられ、それ以下であれば一過性の可逆的なAF、それ以上ならばその後も抗凝固療法などのケアが必要なAF、といった形で線引きがなされることが多いようである。 今後 Apple Watchなどのスマートデバイスを用いたAFの検出が広く行われていくようになることが予想される(2)。本研究の結果に鑑みても、こうしたスマートデバイスを用いたAFの診断を行う際にも、時間的なAF burden(負荷)を考慮することが大切であると考えられる。抗凝固療法は高リスク AF患者において塞栓系のイベントを抑制するために極めて有効な治療法であるが、そのリスクに対する考え方は診断の進歩と共に変化していくものと予想される。 1. Svennberg E, et al. Lancet. 2021;398(10310):1498-1506. 2. Perez MV, et al. N Engl J Med. 2019;381(20):1909-1917.
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.4(2022年6月16日号)
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.4(2022年6月16日号)
乳製品やカルシウム摂取量と前立腺がんの発症リスクの関連性:前向きコホート研究 乳製品または食事性カルシウムと前立腺がんの因果関係が示唆されているものの、そのエビデンスは限定的である。米国およびカナダのセブンスデー・アドベンティスト(=キリスト教の一派)男性2万8,737人(黒人民族:6,389人)に対し、前向きコホート研究を行った。The American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2022年6月8日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 心房細動に対するモバイルヘルス介入の設計と根拠 心房細動患者の慢性疾患自己管理を支援するために,デジタルや健康リテラシーに関係なく利用可能な、スマートフォンと連動する機器AliveCor Kardia を開発した。経口抗凝固療法へのアドヒアランスが向上するか、単一施設並行群無作為化臨床試験で検討を行った。American Heart Journal誌オンライン版2022年6月9日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 食事の匂いに反応して分泌されたセロトニンとドパミンが老化を調節する? 食事制限と長寿の関係はよく研究されている。食事摂取自体ではなく、食事の匂いの有無が老化を調節するのではないかを線虫を用いてシグナル伝達経路を分析した。Nature communications誌2022年6月7日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む モルヌピラビルに入院率、死亡率の改善以外のベネフィットはあるか? MOVe-OUT試験で、モルヌピラビル(製品名:ラゲブリオ)は軽度から中等度のCOVID-19外来患者の入院率、死亡率を有意に減少させることが報告された。他の潜在的な臨床上のベネフィットを明らかにするため、CRP値、SpO2値、呼吸介入の必要性、退院までの時間についてMOVe-OUT試験の二次解析を行った。Annals of Internal Medicine誌オンライン版2022年6月7日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 中国人におけるアルコール摂取と心血管疾患罹患率・全死亡率との因果関係 適度なアルコール摂取が心血管疾患に及ぼす因果関係については、特に冠動脈心疾患に対して継続的に議論されている。アルコール摂取と心血管疾患罹患率および全死因死亡率との因果関係を探索することを目的とし、4万386人の中国人男性を対象に、前向きコホート研究が行われた。The American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2022年6月10日の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.3(2022年6月9日号) 運動は脳内RNAメチル化を改善し、ストレス誘発性不安を予防する ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.2(2022年6月2日号) 6〜11歳の子供におけるmRNA-1273Covid-19ワクチンの評価 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.1(2022年5月26日号) SARS-CoV-2オミクロンBA.2株の特性評価と抗ウイルス感受性 ≫その他4本
心房細動に対する抗凝固療法の臨床的純益に及ぼす脳卒中発症率のばらつきの影響
心房細動に対する抗凝固療法の臨床的純益に及ぼす脳卒中発症率のばらつきの影響
Effect of Variation in Published Stroke Rates on the Net Clinical Benefit of Anticoagulation for Atrial Fibrillation Ann Intern Med. 2018 Oct 16 ;169 (8 ):517 -527 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】抗凝固療法を受けていない非弁膜症性心房細動(AF)患者の脳卒中発症率は、発表された研究によって大きく異なり、その結果、AFにおける抗凝固療法の正味の臨床的利益に与える影響は不明である。 【目的】発表されたAFの脳卒中発症率のばらつきが、抗凝固療法の正味の臨床的利益に与える影響を明らかにする。ワルファリンをベースケースとし,非ビタミンK拮抗薬の経口抗凝固薬(NOAC)を二次解析でモデル化した。 【設定】地域在住の成人。【対象】心房細動を発症した成人33 434人。 【測定】質調整生命年(QALYs)。 【結果】33 434人のうち,CHA2DS2-VASc(うっ血性心不全,高血圧,年齢,糖尿病,脳卒中,血管疾患)のスコアが2以上であったのは27 179人であった。これらの患者に対するワルファリンによる抗凝固療法の人口利益は,ATRIA(AnTicoagulation and Risk Factors In Atrial Fibrillation)試験の脳卒中発生率を用いた場合に最も少なく,Danish National Patient Registryの脳卒中発生率を用いた場合に最も多かった(6290QALYs[95%CI,±2.3%] vs. 24 110QALYs[CI,±1.9%],P<0.001)。抗凝固療法の最適なCHA2DS2-VAScスコアの閾値は、ATRIAの脳卒中率を用いて3以上、スウェーデンのAFコホート研究の脳卒中率を用いて2以上、SPORTIF(Stroke Prevention using ORal Thrombin Inhibitor in atrial Fibrillation)研究の脳卒中率を用いて1以上、デンマークのNational Patient Registryの脳卒中率を用いて0以上であった。NOACによる頭蓋内出血の割合が低いことを考慮すると、CHA2DS2-VAScスコアの最適な閾値は減少したが、これらの閾値はまだ大きく異なっていた。 【Limitation】測定された利益は他の集団に一般化しない可能性がある。 【結論】抗凝固療法を受けていない患者の心房細動による脳卒中発生率の公表値のばらつきは、抗凝固療法の正味の臨床的利益に何倍ものばらつきをもたらしている。ガイドラインは、抗凝固療法を推奨するための現在の脳卒中リスクスコアの閾値の不確実性をよりよく反映すべきである。[主要な資金源]なし。 第一人者の医師による解説 抗凝固療法のNCBを勘案したスコアの日本版推奨閾値の検討必要 矢坂 正弘 国立病院機構九州医療センター脳血管センター部長 MMJ.April 2019;15(2) 抗凝固療法未施行の非弁膜症性心房細動(AF)患者における公表されている脳卒中発症率は研究ごとに大きく異なるが、その変動が抗凝固療法のnet clinical benefit(NCB)に及ぼす影響は明らかにされていない。そこで、著者らは代表的な4つの研究(ATRIA、SPORTIF、Swedish AFコホート研究、 Danish National Patient Registry)から抗凝固療法未施行の非弁膜症性 AF患者における公表されているCHA2DS2 -VAScスコアごとの脳梗塞発症率を調べ、既報の脳梗塞、頭蓋内出血、頭蓋外大出血の発症率などを用い、マルコフモデルを作成し、 質調整生存年(QALY)を指標としたNCBをAF患者33,434人で算出した。4研究間でQALYが異なるか否かを明らかにするとともに、抗凝固療法で最大の益が得られるCHA2DS2 -VAScスコア閾値を求めた(1)。 その結果、CHA2 DS2 -VAScスコア 2以上に 27,179人が該当し、ワルファリンを用いた抗凝固療法のQALYは、ATRIAデータを用いた場合が最も小さく(6,290 QALY;95% CI, ±2.3%)、 Danish National Patient Registryデータを用いた場合が最も大きく(24,110 QALY;95% CI, ±1.9%)、両者で約4倍の差があった(P< 0.001)。ワルファリンによる抗凝固療法のため最適 CHA2DS2 -VAScスコア閾値は、ATRIAを用いると3以上、Swedish AFコホートでは2以上、 SPORTIFで は1以上、Danish National Patient Registryで は0以上であった。直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)を 用いた抗凝固療法 のQALYは ATRIAデータを用いた場合が最も小さく(7,080 QALY;95 % CI, ±1.5 %)、Danish National Patient Registryデータを用いた場合が最も大きく(24,770 QALY;95% CI, ±2.0%)、両者 で約4倍の差があった。抗凝固療法のための最適 CHA2DS2 -VAScスコア閾値は、ATRIAを用いる と2以上、Swedish AFコホートやSPORTIFでは 1以上、Danish National Patient Registryでは0 以上となった。著者らは、抗凝固療法未施行の非弁膜症性 AF患者における脳卒中発症率の変動は、抗凝固療法のNCBに影響を及ぼすので、ガイドラインではこの脳梗塞発症率の不確実性をリスク閾値の設定に反映させるべきであると結んでいる。 日本ではAF有病率が米国 の3分の2程度(2)で、 同等のリスクスコアでも脳梗塞発症率は低いと報告されている(3)ことから、日本でもワルファリンやDOACのNCBを勘案したCHADS2スコアや CHA2DS2 -VAScスコアの至適推奨閾値の検討が望まれる。 1. Shah SJ, et al. Ann Intern Med. 2018;169(8):517-527. 2. 日本循環器学会「心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版)」 委員会:http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_inoue_h.pdf(2019 年 3 月 4 日閲覧) 3. Suzuki S, et al. Circ J. 2015;79(2):432-438.
心不全患者における心房細動のカテーテルアブレーション。無作為化対照試験のメタアナリシス。
心不全患者における心房細動のカテーテルアブレーション。無作為化対照試験のメタアナリシス。
Catheter Ablation of Atrial Fibrillation in Patients With Heart Failure: A Meta-analysis of Randomized Controlled Trials Ann Intern Med 2019 Jan 1 ;170 (1):41 -50. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 この記事は訂正されました。原著(PDF)はSupplementとして本論文に添付されています。 【背景】心房細動(AF)と心不全(HF)はしばしば併存し、罹患率と死亡率のリスク上昇と関連している。 【目的】成人AFおよびHF患者において、カテーテルアブレーションと薬剤治療の有益性と有害性を比較することである。 【データ入手元】ClinicalTrials. gov、PubMed、Web of Science(Clarivate Analytics)、EBSCO Information Services、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Google Scholar、2005年1月1日から2018年10月1日までの各種学術会議セッションを対象とする。 【研究選択】英語で発表された、少なくとも6ヶ月のフォローアップがあり、成人の心房細動とHFにおけるカテーテルアブレーションと薬物療法の臨床転帰を比較した無作為化対照試験(RCT)。 【データ抽出】研究者2名が独立してデータを抽出し、研究の質を評価。 [Data Synthesis] 775例を含むRCT 6例が包括基準に合致した。薬物療法と比較して、心房細動アブレーションは全死亡(9.0% vs. 17.6%;リスク比[RR], 0.52[95% CI, 0.33~0.81]) およびHF入院(16.4% vs. 27.6%; RR, 0.60[CI, 0.39~0.93]) を減少させた。アブレーションにより,左室駆出率(LVEF)(平均差,6.95%[CI,3.0%~10.9%]),6分間歩行試験距離(平均差,20.93 m[CI,5.91~35.95 m]),ピーク酸素消費量(Vo2max)(平均差,3.95%[CI])が改善された.17 mL/kg/分[CI, 1.26~5.07 mL/kg/分])、QOL(Minnesota Living with Heart Failure Questionnaireスコアの平均差、-9.02点[CI, -19.75~1.71 点])であることがわかりました。重篤な有害事象はアブレーション群でより多かったが、アブレーション群と薬物療法群の差は統計的に有意ではなかった(7.2% vs 3.8%;RR、1.68 [CI, 0.58~4.85])[Limitation]Results driven primarily by 1 clinical trial, possible patient selection bias in the ablation group, lack of patient-level data, open-label trial design, and heterogeneous follow-up length among trials. 【結論】カテーテルアブレーションは、全死亡、HF入院、LVEF、6分間歩行試験距離、Vo2max、QOLの改善において従来の薬物療法より優れており、重篤な有害事象は統計的に有意に増加しなかった。 【Primary funding source】該当なし。 第一人者の医師による解説 RCTが4件進行中 アブレーション効果がより明確になることを期待 井上 博 富山県済生会富山病院顧問 MMJ.June 2019;15(3) 心房細動は、自覚症状、心臓ポンプ機能の低下、 心原性塞栓症、生命予後の悪化など、さまざまな不利益をもたらす。そこで、心房細動を抗不整脈薬で抑制(リズムコントロール)すれば、心拍数をコントロールするだけの治療(レートコントロール)に 比べメリットが得られるのではないかという仮説を検証するために、1990年代後半にいくつかの比較試験が行われた(例、AFFIRM(1))。しかし、いずれの試験でも治療効果の差は認められなかった。抗不整脈薬のもつ悪影響(心機能抑制、催不整脈作用)が原因と考えられた。心不全は心房細動を誘発し、 心房細動は心機能を抑制するという悪循環が形成される。また抗不整脈薬は心不全では使用しにくいという限界がある。心房細動に対するカテーテル・ アブレーションの有効性(洞調律維持効果)が確立されて以来、心不全を対象とした小規模な無作為比較試験(RCT)で、アブレーションが薬物療法に比べ心機能改善効果に優れ生命予後も良いことが示された。 そこで、本研究では心不全を合併した心房細動に対するアブレーションの効果を薬物療法(リズム、 レートコントロール)と比較したRCT 6件を対象にメタアナリシスを行った。結果、アブレーション群では薬物療法群に比べ、全死亡や心不全による入院の減少、左室駆出率や6分間歩行距離、QOLスコアの改善が認められた。 本研究はRCTのメタアナリシスを用いており、 方法論的にはエビデンスレベルは最高位にある。 しかしながら、患者数は全体で775人に過ぎず、1 試験当たりの人数も50~363人とばらつきが大きい。心不全による入院や左室駆出率、6分間歩行 距離の評価対象は500人余りかそれ以下で十分は言えない。さらにメタアナリシス全体の結果が最大の患者数をもつ1つの試験に大きく影響されていることにも注意が必要である。 心不全に限らず心房細動アブレーションの効果を検討したスウェーデンのコホート研究(対象 5,000人)では、薬物療法に比べてアブレーションは全死亡を抑制している(2)。最近のRCT(対象約 2,000人 )の結果でも、実際にその治療を受けた患者対象の解析において、アブレーションは薬物療 法に比べ死亡率を有意に抑制した(3)。 高周波エネルギーを用いた古典的な心房細動アブレーションに加えて、冷凍アブレーションやレーザーアブレーションといった新たな手技も導入されつつある。さらに心不全を合併した心房細動に対するアブレーションの効果を検討するRCTが4 件進行中である。近い将来、アブレーションの位置付けはより明確になることが期待される。 1. AFFIRM Investigators. N Engl J Med. 2002;347(23):1825-1833. 2. Friberg L, et al. Eur Heart J. 2016;37(31):2478-2487. 3. Packer DL, et al. JAMA. 2019;321(13):1261-1274.