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心不全患者における心房細動のカテーテルアブレーション。無作為化対照試験のメタアナリシス。
心不全患者における心房細動のカテーテルアブレーション。無作為化対照試験のメタアナリシス。
Catheter Ablation of Atrial Fibrillation in Patients With Heart Failure: A Meta-analysis of Randomized Controlled Trials Ann Intern Med 2019 Jan 1 ;170 (1):41 -50. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 この記事は訂正されました。原著(PDF)はSupplementとして本論文に添付されています。 【背景】心房細動(AF)と心不全(HF)はしばしば併存し、罹患率と死亡率のリスク上昇と関連している。 【目的】成人AFおよびHF患者において、カテーテルアブレーションと薬剤治療の有益性と有害性を比較することである。 【データ入手元】ClinicalTrials. gov、PubMed、Web of Science(Clarivate Analytics)、EBSCO Information Services、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Google Scholar、2005年1月1日から2018年10月1日までの各種学術会議セッションを対象とする。 【研究選択】英語で発表された、少なくとも6ヶ月のフォローアップがあり、成人の心房細動とHFにおけるカテーテルアブレーションと薬物療法の臨床転帰を比較した無作為化対照試験(RCT)。 【データ抽出】研究者2名が独立してデータを抽出し、研究の質を評価。 [Data Synthesis] 775例を含むRCT 6例が包括基準に合致した。薬物療法と比較して、心房細動アブレーションは全死亡(9.0% vs. 17.6%;リスク比[RR], 0.52[95% CI, 0.33~0.81]) およびHF入院(16.4% vs. 27.6%; RR, 0.60[CI, 0.39~0.93]) を減少させた。アブレーションにより,左室駆出率(LVEF)(平均差,6.95%[CI,3.0%~10.9%]),6分間歩行試験距離(平均差,20.93 m[CI,5.91~35.95 m]),ピーク酸素消費量(Vo2max)(平均差,3.95%[CI])が改善された.17 mL/kg/分[CI, 1.26~5.07 mL/kg/分])、QOL(Minnesota Living with Heart Failure Questionnaireスコアの平均差、-9.02点[CI, -19.75~1.71 点])であることがわかりました。重篤な有害事象はアブレーション群でより多かったが、アブレーション群と薬物療法群の差は統計的に有意ではなかった(7.2% vs 3.8%;RR、1.68 [CI, 0.58~4.85])[Limitation]Results driven primarily by 1 clinical trial, possible patient selection bias in the ablation group, lack of patient-level data, open-label trial design, and heterogeneous follow-up length among trials. 【結論】カテーテルアブレーションは、全死亡、HF入院、LVEF、6分間歩行試験距離、Vo2max、QOLの改善において従来の薬物療法より優れており、重篤な有害事象は統計的に有意に増加しなかった。 【Primary funding source】該当なし。 第一人者の医師による解説 RCTが4件進行中 アブレーション効果がより明確になることを期待 井上 博 富山県済生会富山病院顧問 MMJ.June 2019;15(3) 心房細動は、自覚症状、心臓ポンプ機能の低下、 心原性塞栓症、生命予後の悪化など、さまざまな不利益をもたらす。そこで、心房細動を抗不整脈薬で抑制(リズムコントロール)すれば、心拍数をコントロールするだけの治療(レートコントロール)に 比べメリットが得られるのではないかという仮説を検証するために、1990年代後半にいくつかの比較試験が行われた(例、AFFIRM(1))。しかし、いずれの試験でも治療効果の差は認められなかった。抗不整脈薬のもつ悪影響(心機能抑制、催不整脈作用)が原因と考えられた。心不全は心房細動を誘発し、 心房細動は心機能を抑制するという悪循環が形成される。また抗不整脈薬は心不全では使用しにくいという限界がある。心房細動に対するカテーテル・ アブレーションの有効性(洞調律維持効果)が確立されて以来、心不全を対象とした小規模な無作為比較試験(RCT)で、アブレーションが薬物療法に比べ心機能改善効果に優れ生命予後も良いことが示された。 そこで、本研究では心不全を合併した心房細動に対するアブレーションの効果を薬物療法(リズム、 レートコントロール)と比較したRCT 6件を対象にメタアナリシスを行った。結果、アブレーション群では薬物療法群に比べ、全死亡や心不全による入院の減少、左室駆出率や6分間歩行距離、QOLスコアの改善が認められた。 本研究はRCTのメタアナリシスを用いており、 方法論的にはエビデンスレベルは最高位にある。 しかしながら、患者数は全体で775人に過ぎず、1 試験当たりの人数も50~363人とばらつきが大きい。心不全による入院や左室駆出率、6分間歩行 距離の評価対象は500人余りかそれ以下で十分は言えない。さらにメタアナリシス全体の結果が最大の患者数をもつ1つの試験に大きく影響されていることにも注意が必要である。 心不全に限らず心房細動アブレーションの効果を検討したスウェーデンのコホート研究(対象 5,000人)では、薬物療法に比べてアブレーションは全死亡を抑制している(2)。最近のRCT(対象約 2,000人 )の結果でも、実際にその治療を受けた患者対象の解析において、アブレーションは薬物療 法に比べ死亡率を有意に抑制した(3)。 高周波エネルギーを用いた古典的な心房細動アブレーションに加えて、冷凍アブレーションやレーザーアブレーションといった新たな手技も導入されつつある。さらに心不全を合併した心房細動に対するアブレーションの効果を検討するRCTが4 件進行中である。近い将来、アブレーションの位置付けはより明確になることが期待される。 1. AFFIRM Investigators. N Engl J Med. 2002;347(23):1825-1833. 2. Friberg L, et al. Eur Heart J. 2016;37(31):2478-2487. 3. Packer DL, et al. JAMA. 2019;321(13):1261-1274.