「睡眠時無呼吸症候群」の記事一覧

慢性不眠症障害と閉塞性睡眠時無呼吸症候群の管理について。2019年米国退役軍人省および米国国防総省の臨床実践ガイドラインのあらすじ。
慢性不眠症障害と閉塞性睡眠時無呼吸症候群の管理について。2019年米国退役軍人省および米国国防総省の臨床実践ガイドラインのあらすじ。
The Management of Chronic Insomnia Disorder and Obstructive Sleep Apnea: Synopsis of the 2019 U.S. Department of Veterans Affairs and U.S. Department of Defense Clinical Practice Guidelines Ann Intern Med 2020 Mar 3;172(5):325-336. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【説明】2019年9月、米国退役軍人省(VA)と米国国防総省(DoD)は、慢性不眠症障害と閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の患者を評価・管理するための新しい共同臨床診療ガイドラインを承認した。このガイドラインは、医療チームに、これらの疾患のいずれかを有するVAおよびDoD患者の個々のニーズや嗜好をスクリーニング、評価、治療、管理するための枠組みを与えることを目的としている。 【方法】2017年10月、VA/DoD Evidence-Based Practice Work Groupは、臨床関係者を含み、信頼できる臨床実践ガイドラインのためのInstitute of Medicineの10etsに準拠したVA/DoD合同ガイドライン作成作業を開始した。ガイドラインパネルは、キー・クエスチョンを設定し、体系的に文献を検索・評価し、1ページのアルゴリズムを3つ作成し、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)システムを用いて41の推奨事項を進めた。 [推奨事項]本シノプシスは、OSAと慢性不眠症の診断と評価、OSAの治療と管理、慢性不眠症の治療と管理の3つの分野におけるガイドラインの主要な推奨事項をまとめたものである。また、3つの臨床実践アルゴリズムも掲載しています。 第一人者の医師による解説 長期的な心血管系合併症抑制について 患者の納得を得る必要 巽 浩一郎 千葉大学真菌医学研究センター 呼吸器生体制御学研究部門特任教授 MMJ.August 2020;16(4) 睡眠呼吸障害(SDB)を内科的視点から評価・治療してきた医師向けの解説になることを最初にお断りしておく。今回発表された米国の診療ガイドラインは診療担当医のみでなく医療チーム構成員のために作成されたものだ。日本では、「眠れない」は心療内科専門医、「眠くて日常生活に支障がある」は睡眠時無呼吸疑いで呼吸器内科医・耳鼻科医の中で睡眠医療に従事している医師への受診が一般的である。しかし、不眠・傾眠を含めたSDBに関係する症状は混在していることもあり、これらを全体としてどのように捉えるべきかの基本的考え方が本ガイドラインでは以下のように解説されている。 不眠などの精神症状を主に訴える患者に対して、ベンゾジアゼピン系薬剤による薬物療法は簡便であるが推奨されていない。心の健康を害している患者は、現実の世界での心の悩みを適切に認知できなくなっている。つらいと感じていることからの逃避が起きている。認知行動療法は、心の悩みを自分自身で適切に認知できるような手助けをする、そしてどのような思考をするとより心が楽になれるかの手助けをする治療法である。 筆者は、閉塞型睡眠時無呼吸により眠気を感じている、無呼吸を放置したために脳血管障害などの心血管系合併症を比較的若年で起こした患者に遭遇することがある。本ガイドラインでは、閉塞性無呼吸に対する持続陽圧呼吸療法(CPAP)の有用性は確立されており、適応例にはまず試みるべき治療であると述べている。 しかし、CPAPはマスク装着が困難、鼻閉が生じる、口が渇く、睡眠中に覚醒してしまうなどさまざまの有害事象が生じうる。CPAPアドヒアランスを向上させるために、教育的指導が必要になる場合もある。CPAPは無呼吸低呼吸指数(AHI)を低下させる効果がある。しかし眠気の改善が得られない、血圧の値が下がらない(筆者は脳血管障害イベント抑制に役立てば問題なしと考える)、生活の質(QOL)が改善しない場合もある。それでもCPAP治療を継続すべきが基本的な考え方である。長期的に心血管系合併症を抑制する可能性が高いという利点を患者に納得していただく必要がある。 AHI≧15の中等症以上の無呼吸患者で、明らかな眠気がない場合、CPAPを開始して初めて自覚症状の改善に気づく場合もある。CPAP継続が困難な場合、マウスピース作成という手がある。AHI低下効果はCPAPほどではないが、自覚症状など十分な効果が期待できる。筆者の経験から、マウスピースの最大の問題点は自歯がないと作成が困難なことであり、高齢者では作成できない場合もある。