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ペニシリンアレルギーの評価と管理。総説。
ペニシリンアレルギーの評価と管理。総説。
Evaluation and Management of Penicillin Allergy: A Review JAMA 2019 Jan 15 ;321 (2 ):188 -199 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】β-ラクタム系抗生物質は、最も安全で最も有効な抗生物質の一つである。多くの患者がこれらの薬剤に対するアレルギーを報告し、その使用が制限されているため、抗菌薬耐性や有害事象のリスクを高める広域スペクトルの抗生物質が使用されている。 【観察】米国人口の約10%がβ-ラクタム薬ペニシリンに対するアレルギーを報告しており、高齢者や入院患者で報告率が高くなる。多くの患者がペニシリンに対してアレルギーがあると報告していますが、臨床的に重要なIgE介在型またはTリンパ球介在型のペニシリン過敏症はまれです(5%未満)。現在、IgE介在性ペニシリンアレルギーの割合は、非経口ペニシリンの使用が減少していること、およびアモキシシリン経口剤に対する重度のアナフィラキシー反応がまれであることから、減少している可能性があります。IgE介在型ペニシリン・アレルギーは時間の経過とともに減少し、10年後には80%の患者が耐性を獲得しています。ペニシリンとセファロスポリン系薬剤の交差反応が起こるのは約2%で、以前に報告された8%よりも少ない。患者の中には、ペニシリンに対するアレルギー反応を発症するリスクが低いことを示唆する病歴を持つ者もいます。低リスクの病歴には、胃腸症状などの孤立した非アレルギー症状を持つ患者、またはペニシリン・アレルギーの家族歴のみを持つ患者、発疹を伴わないそう痒症の症状、IgE介在反応を示唆する特徴を持たない遠隔(10年超)の未知の反応が含まれます。中等度リスクの既往歴には、蕁麻疹またはその他のそう痒性皮疹、IgE介在性反応の特徴を持つ反応が含まれます。高リスクの既往歴には、アナフィラキシー、ペニシリン皮膚テスト陽性、ペニシリン反応の再発、複数のβ-ラクタム系抗生物質に対する過敏症がある。ペニシリンに対するアレルギーが報告され、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌やバンコマイシン耐性腸球菌のリスクを含む抗菌薬耐性リスクを高める広域抗菌薬の使用につながる場合、抗菌薬スチュワードシップの目標は損なわれてしまう。また、広域抗菌薬はクロストリジウム・ディフィシル(別名クロストリジウム・ディフィシル)感染症の発症リスクも増加させます。アモキシシリンの直接投与は、低リスクのアレルギー歴のある患者に適しています。中等度リスクの患者は、ペニシリン皮膚試験で評価することができます。この試験の陰性的中率は95%を超え、アモキシシリン試験と併用することで100%に近づきます。ペニシリンアレルギーの評価を行う臨床医は、利用可能なリソースからどのような方法がサポートされているかを確認する必要がある。 【結論と関連性】多くの患者がペニシリンに対してアレルギーがあると報告しているが、臨床的に重大な反応を示す患者は少ない。ペニシリンや他のβ-ラクタム系抗生物質を使用しないことを決定する前にペニシリンアレルギーを評価することは、抗菌薬スチュワードシップにとって重要な手段である。 第一人者の医師による解説 臨床現場でのアレルギーの存在確認が重要 宮下 修行 関西医科大学内科学第一講座呼吸器感染症・アレルギー科診療教授 MMJ.June 2019;15(3) ペニシリンアレルギーは有名な言葉で、この記載が診療記録にある患者に対してβ-ラクタム薬は禁忌であると解釈している人が多い。そのため、ここ数年ペニシリンアレルギーに関する研究が実施され、誤った考え方を是正するデータが蓄積されている。本論文は、これまでの研究結果をまとめ、 ペニシリンアレルギーを申告する患者への対応を報告したものである。 ペニシリンアレルギーと記載されている患者の90%以上は、ペニシリンに対する即時型の過敏反応を起こさないことが報告されている。その大きな理由の1つとして、子どものウイルス感染症に不要な抗菌薬が投与された場合、ウイルス性発疹をアレルギーと誤認する、いわゆる誤診が挙げられる。 親の申告で「ペニシリンアレルギーの既往がある」 とされた小児を調べた研究結果が報告されている(1)。 小児救急を受診した小児597人(4~18歳)のうち発疹、嘔吐、下痢などの低リスクのペニシリンアレルギー症状のある100人を対象に、①皮膚試験 ②微量のペニシリンを注射する皮内反応試験③厳重な監視下でペニシリンを服用させる経口負荷試験、3種類の検査を実施。結果は、すべての小児で ペニシリンアレルギー反応は認められなかった。 同時期に成人でも同様の研究結果が報告されている。ただし全症例が誤認ではなく、当初は過敏性があったものの後に消失した症例も含まれる(2)。 アレルギー抗体(IgE)による急性ペニシリン反応が認められた患者でも、時間とともに抗体は減少し消失する。したがって、10年後にはほとんどの場合、皮膚試験は陰性になる。ペニシリン皮膚試験が陰性化した患者は、将来ペニシリンや他のβ-ラクタム薬に曝露しても、再びアレルギーを起こすリスクはごくわずかである。 実臨床では、ペニシリンアレルギーの記載のある患者に対して、β-ラクタム薬は使用せず、より広域スペクトルの抗菌薬が選択される場合が多い。 ペニシリンアレルギーという記載が公衆衛生面に及ぼす影響を、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA)感染とClostridium difficile(CD)感染のリスクという観点から評価した症例対照研究では、 ペニシリンアレルギー記載群で両感染症の発症率が高かったと報告されている(3)。 以上のようにペニシリンアレルギー記載例は、より広域スペクトルの抗菌薬に不必要に曝露することがあり、耐性菌のリスクを増大させ、医療費を増加させる。ペニシリンアレルギー申告者のほとんどは、ペニシリンに対して忍容性があるため、臨床現場ではアレルギーの存在を確認することが重要であると結論付けている。 1. Vyles D, et al. Pediatrics. 2017;140(2). pii:e20170471. 2. Trubiano JA, et al. JAMA. 2017;318(1):82-83. 3. Blumenthal KG, et al. BMJ. 2018;361:k2400.