ライブラリー メタボリック症候群のエネルギーを制限した地中海食遵守に栄養および行動への介入がもたらす効果 PREDIMED-Plus無作為化試験の中間解析
Effect of a Nutritional and Behavioral Intervention on Energy-Reduced Mediterranean Diet Adherence Among Patients With Metabolic Syndrome: Interim Analysis of the PREDIMED-Plus Randomized Clinical Trial
JAMA . 2019 Oct 15;322(15):1486-1499. doi: 10.1001/jama.2019.14630.
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上記論文の日本語要約
【重要性】質の高い食習慣によって慢性疾患を予防することができるが、栄養および行動への介入が食習慣にもたらす効果を検討した無作為化試験のデータはほとんどない。
【目的】食事の質に関する栄養と運動の教育プログラムの効果を評価すること。
【デザイン、設定および参加者】進行中の無作為化試験の予備的探索的中間解析。スペインの研究センター23施設で、2013年3月から2016年21月にかけて、メタボリック症候群があり心血管疾患がない55-75歳の男女6874例を組み入れ、2019年3月に最終データを収集した。
【介入】参加者をエネルギーを制限した地中海食を推奨し、運動を促進し、行動支援を提供する介入群(3406例)とエネルギーを制限しない地中海食を推奨する対照群(3468例)に無作為に割り付けた。全例にエクストラバージンオリーブオイル(1カ月当たり1L)とナッツ(1カ月当たり125g)を無料で至急した。
【主要評価項目】主要評価項目は、エネルギーを制限した地中海食(er-MedDiet)スコアの12カ月間の変化(範囲0-17点、スコアが高いほど遵守度が高いことを示す、最小重要差1ポイント)。
【結果】無作為化した参加者6874例(平均年齢[SD]65.0[4.9]歳、3406例[52%]が男性)、6583例(96%)が12カ月間の追跡を完遂し、主要解析の対象とした。平均(SD)er-MedDietスコアは、介入群で追跡開始時8.5(2.6)点、12カ月時13.2(2.7)点(4.7点増加、95%CI 4.6-4.8)、対照群で8.6(2.7)点と11.1(2.8)点(2.5点増加、95%CI 2.3-2.6)であった(群間差2.2点、95%CI 2.1-2.4点、P<0.001)
【結論および意義】この進行中の試験の予備的解析では、エネルギーを制限した地中海食と運動を推奨する介入によって、エネルギーを制限しない地中海食に従う助言のみの対照と比べて、12カ月後の食事法遵守率が優位に上昇した。長期的な心血管にもたらす作用を詳細に評価する必要がある。
第一人者の医師による解説
エネルギー制限か、丁寧な個別介入による効果かは判断し難い
武見 ゆかり 女子栄養大学栄養学部食生態学研究室教授
MMJ. December 2020;16(6):178
地中海食は、循環器疾患、がん、糖尿病などの生活習慣病との関連で、“健康食”として世界中で高い評価を得ている。地中海食の遵守度は、もともとは9項目のMediterranean Diet Score(MDS)により判定され、さらに調理法などの観点を加えた14項目のMediterranean Diet Adherence Screener(MEDAS)も使われてきた。本研究ではこれらに加え、エネルギー制限を伴う17項目の17 -item energy-reduced Mediterranean diet(er-MedDiet)スコアを用いて、スペインのメタボリックシンドロームに該当する55~75歳の男女6,874人を対象とした無作為化対照試験の1年後の中間評価が行われた。
介入群には約600kcal/日減のエネルギー制限を伴う地中海食と身体活動の支援が行われ、対照群には伝統的な地中海食が推奨された。介入群には、赤身肉・加工肉、バター・マーガリン・クリーム、甘い炭酸飲料の厳しい制限、飲み物に砂糖を加えないこと、精製された穀類ではなく全粒穀類の摂取が推奨された。er-MedDietの項目は、MEDASの14項目(摂取推奨の項目:主たる調理油としてオリーブオイルの使用、野菜、果物、豆類、魚、ナッツ類の摂取、sofrito[トマト、にんにく、玉ねぎなどをオリーブオイルで炒めたスペイン料理の基本ソース]の使用、赤身肉より鶏肉・七面鳥肉を好むか、ワイン。摂取を控えるべき項目:赤身肉・加工肉、バター・マーガリン・クリーム、甘い炭酸飲料、市販の菓子パンや菓子類)に加え、全粒穀類の摂取、飲み物への砂糖添加の制限、精製された白パン・パスタ・米の摂取を控えることが追加されている。
1年後の評価では、介入群は対照群に比べ、これらすべての食事評価スコアが有意に高くなり介入効果がみられた。また、体重、腹囲、BMI、総コレステロール、HDLコレステロール、血圧などの循環器系危険因子も有意に改善した。
著者らは、本試験の目的を、エネルギー制限を伴う地中海食と伴わない伝統的な地中海食の介入効果の比較としているが、実際には、介入の支援方法もかなり異なる。介入群は、具体的な減量目標を設定し、食事内容だけでなく身体活動の促進も推奨された。一方、対照群は、エネルギー制限のない伝統的な地中海食にそった食事を推奨された。さらに、介入群は1年間、集団学習、動機づけ面接による支援、毎月1回の電話支援を受けたのに対し、対照群は年に2回だけ個人指導、集団指導、電話を受けた。
エネルギー制限を伴う地中海食の推奨だから効果があるのか、具体的な減量目標を設定した上で丁寧な介入を行ったことによる効果なのかは判断し難い。本報告は大規模介入試験の中間解析とのことなので、最終結果を注視していく必要がある。