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子宮不妊症のレシピエントに対する死亡ドナーからの子宮移植後の生着。
子宮不妊症のレシピエントに対する死亡ドナーからの子宮移植後の生着。
Livebirth after uterus transplantation from a deceased donor in a recipient with uterine infertility Lancet 2018 Dec 22 ;392 (10165 ):2697 -2704 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】生ドナーからの子宮移植は、2014年のスウェーデンでの成功により不妊治療の現実となり、世界中の子宮移植センターとプログラムに刺激を与えている。しかし、我々の知る限り、死亡ドナー子宮を介した生着例はなく、長期の虚血後も子宮が生存しているかなど、その実現可能性と生存率に疑問が投げかけられている。 【方法】2016年9月、ブラジル・サンパウロ大学ダス・クリニカス病院にて、先天性子宮欠如(Mayer-Rokitansky-Küster-Hauser[MRKH]症候群)の32歳女性が、くも膜下出血で死亡したドナーからの子宮移植を受けた。ドナーは45歳で、過去に3回の経膣分娩の経験があった。レシピエントは移植4ヶ月前に体外受精を1回行い、8個の凍結保存胚盤胞が得られた。 【所見】レシピエントは術後順調に回復し、8日間の入院観察後に退院した。免疫抑制はプレドニゾロンとチモグロブリンで行い、タクロリムスとミコフェナール酸モフェチル(MMF)で移植後5カ月まで継続し、MMFに代わってアザチオプリンが投与された。初潮は移植後37日目に起こり、その後は定期的(26-32日ごと)に起こった。移植後7ヶ月目に最初の単一胚移植を行い、妊娠した。ドップラー超音波による子宮動脈、胎児臍帯動脈、中大脳動脈の血流速度波形異常はなく、妊娠中の胎児発育障害もなかった。移植後および妊娠期間中に拒絶反応は認められなかった.2017年12月15日、妊娠36週付近で帝王切開分娩が行われた。出生時の女児は2550gで、妊娠年齢に相応しく、アプガースコアは1分9、5分10、10分10で、母体とともに産後7カ月経過後も健康で正常に発育している。子宮は出産と同じ手術で摘出され、免疫抑制療法は中止された。 【解釈】我々の知る限り、MRKH症候群の患者において、死亡ドナーからの子宮移植後に出産した世界初の症例を報告するものである。この結果は、死体ドナーからの移植による子宮不妊治療の概念実証であり、生体ドナーや生体ドナー手術を必要とせず、すべての子宮因子不妊の女性に健康な妊娠への道を開くものです。 【FUNDING】Fundação de Amparo à Pesquisa do Estado de São Paulo and Hospital das Clínicas, University of São Paulo, Brazil. 第一人者の医師による解説 挙児希望の新たな選択肢 社会、倫理、経済的課題の解決必要 末岡 浩 慶應義塾大学医学部産婦人科准教授 MMJ.June 2019;15(3) 生殖補助技術を代表とする生殖医療の発展は、めざましいものがあり、多くの不妊患者に対する治療法が開発され、多様な原因への対策がとれるようになった。しかし、子宮を持たない女性に対する子どもを産むための解決法はなく、代理母による出産が唯一の手段であった。これに対し、提供者からの子宮を移植し、自身で妊娠・出産をする子宮移植の技術が新たな選択肢として検討されてきた。 本論文はブラジルで死亡女性から摘出した子宮を子宮無形成の女性に移植し、その後、体外受精によって作製し、凍結、保存していた胚を子宮に移植して妊娠・出産した経験を報告したものである。本法については医学的な課題のみならず、社会、倫理的な課題も多く存在し、さらに経済的課題も議論されている。 医学的な課題を1つひとつ経験しながら解決するために、摘出子宮の条件、保管方法と時間、手術の方法とその後の免疫抑制、感染防止、血栓の防止、児への影響など新たな疑問について多く議論され、 報告されている。これまでサウジアラビア、トルコ、 スウェーデンで実施された子宮移植の報告がなされている。子宮移植はとりもなおさず妊娠のため の手術であるため、その後の妊娠・出産の報告も行われてきた。しかし、なお多くの条件を解析する必要があり、今後のデータ集積が待たれるところで ある。本事例が過去の報告と異なる点は、移植した 子宮が死亡した女性から摘出したものであったことである。 脳出血で死亡した45歳の女性から摘出した子宮を、32歳の先天的に子宮が形成されていないMayer-Rokitansky-Küster-Hauser症候群の女性に移植し、7カ月後に凍結胚をその子宮に戻して妊娠し、妊娠35週の時点で予定された帝王切開で分娩したものである。この条件として提供者の子宮に病変はなく、3回の分娩を経験している良好な子宮であり、移植者についても卵巣からの排卵に問題はなく、全身状態に課題はないことが確認されている。子宮摘出から移植完了までに要した時間は7時間50分であり、子宮組織への障害の面では妊娠成立の成功から8時間程度までは可能であることを示している。また、妊娠経過は良好で、児の発育に問題はなく、出生時の児体重は2,550g であり、妊娠中の合併症の発生もなかったことが報告されている。 先天的・後天的な理由で子宮を有さない女性が 挙児を希望する際の新たな選択肢として今後のマイルストーンとなることが示された。その一方で、 技術の確立のみならず、実施するうえでの環境整備もまた、大きな解決すべき課題と考えられる。