「N95マスク」の記事一覧

医療従事者のインフルエンザ予防におけるN95レスピレータと医療用マスクの比較.無作為化臨床試験。
医療従事者のインフルエンザ予防におけるN95レスピレータと医療用マスクの比較.無作為化臨床試験。
N95 Respirators vs Medical Masks for Preventing Influenza Among Health Care Personnel: A Randomized Clinical Trial JAMA 2019 Sep 3 ;322 (9):824 -833. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】医療従事者(HCP)の職場ウイルス性呼吸器感染症の発症予防におけるN95レスピレータと医療用マスクの効果について、臨床研究では結論が出ていない。 【目的】HCPのインフルエンザおよびその他のウイルス性呼吸器感染症の予防に関するN95レスピレータと医療用マスクの効果を比較する。 【デザイン、設定および参加者】米国の7医療センターの137外来研究施設で2011年9月から2015年5月に実施し、最終フォローアップが2016年6月となるクラスター無作為化実用的効果試験であった。毎年4年間、ウイルス性呼吸器疾患のピークである12週間の期間に、各センター内の外来患者施設のペア(クラスター)をマッチングし、N95レスピレーター群と医療用マスク群に無作為に割り付けた。 【介入】全体として、189クラスタの1993人がN95呼吸器装着群(観察期間2512HCP-seasons)に、191クラスタの2058人が医療用マスク装着群(2668HCP-seasons)に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムと測定】主要アウトカムは実験室で確認されたインフルエンザ発症率であった。副次的アウトカムは、急性呼吸器疾患、実験室で検出された呼吸器感染症、実験室で確認された呼吸器疾患、およびインフルエンザ様疾患の発生率であった。 【結果】無作為化された参加者2862名(平均[SD]年齢、43[11.5]歳、2369[82.8%]女性)中、2371名が研究を完了し、5180名のHCP-seasonsを占めた。実験室で確認されたインフルエンザ感染イベントは,N95 レスピレータ群で 207 件(HCP-seasons の 8.2%),医療用マスク群で 193 件(HCP-seasons の 7.2%)( 差は 1.0%,[95% CI,-0.5% ~ 2.5%],P = 0.18)( 調整オッズ比 [OR]:1.18[95% CI,0.95 ~ 1.45] )であった.呼吸器群の急性呼吸器疾患イベント 1556 件対マスク群の 1711 件(差、1000 HCP シーズンあたり -21.9 件 [95% CI、-48.2 ~ 4.4]; P = .10); 呼吸器群の実験室検出呼吸器感染 679 件対マスク群の 745 件(差、1000 HCP シーズンあたり -8.9 件 [95% CI、-33.3 ~ 15.4]; P = .47); 呼吸器感染と診断された実験室検出感染 371 件(差、1 HCP シーズンあたり -4.0 件 [95% CI、0.1 ~ 0.2]、 P = 0.9); 呼吸器感染と診断された実験室検出感染 2 件47)、呼吸器群371件対マスク群417件(差、1000HCP-シーズン当たり-8.6件[95%CI、-28.2~10.9]、P = 0.39)、呼吸器群128件対マスク群166件(差、1000HCP-シーズン当たり-11.3件[95%CI、-23.8~1.3]、P = .08)、検査で確認される呼吸器疾患事象がありました。呼吸器群では、89.4%の参加者が「いつも」または「時々」指定された器具を着用したと報告したのに対し、マスク群では90.2%であった。 【結論と関連性】外来医療従事者において、この試験の参加者が着用したN95呼吸器と医療用マスクは、実験室で確認されたインフルエンザの発生率に有意差をもたらさなかった。 【試験登録】臨床試験番号(CCT):National ClinicalTrials. gov ID。NCT01249625。 第一人者の医師による解説 インフルエンザ流行期の外来医療スタッフ マスク着用が望ましい 関 雅文 東北医科薬科大学医学部感染症学教室教授 MMJ.February 2020;16(1) 呼吸器ウイルス疾患、特にインフルエンザに対するマスク着用の有用性が長年議論されている。 手指衛生のほか、マスク着用による感染予防効果が多数報告されている一方、粒子径の小さい多くの呼吸器ウイルス感染で、一般的なサージカルマスクでの感染予防効果への疑問もあった(1),(2)。 本研究では、結核など空気感染が懸念される際に使用されるN95マスクと、一般に使用されるサージカルマスクを着用した際の、外来医療スタッフにおけるインフルエンザ・その他呼吸器ウイルス 疾患の予防効果を前向きに比較・検討している。米国の7つの大規模医療センターに属する137の外来センターで2011年9月~15年5月に医療スタッフ 2,862人をN95マスク群、サージカルマスク 群にランダムに割り付け、最終的に2016年6月 まで追跡した。 主要評価項目であるインフルエンザ感染の発生は、N95マスク群で207人(8.2%)、サージカルマスク群で193人(7.2%)であった(P=0.18)。 副次評価項目では、急性呼吸器症状の出現がN95 マスク群で1,556イベント、サージカルマスク群で1,711イベント(P=0.10)、無症状時も含めて呼吸器ウイルスが同定されたのはN95マスク群 で679イベント、サージカルマスク群で745イベ ント(P=0.47)、呼吸器症状および呼吸器ウイル ス感染が確認されたのはN95マスク群で371イベント、サージカルマスク群で417イベント(P= 0.39)、インフルエンザ様疾患はN95マスク群で128イベント、サージカルマスク群で166イベント(P=0.08)であった。 これらの結果からは、主に外来で働く医療スタッフにおいて、インフルエンザ・その他呼吸器ウイルス疾患の予防に関して、N95マスクとサージカルマスクで、その効果には有意差はないことが示唆された。一方、N95マスク群とサージカルマスク群で比較した急性呼吸器症状の発生確率(IRR)は intention-to-treat集団で0.99であるのに対し、インフルエンザ様症状のIRRは0.86であり、N95 マスクによる一定のインフルエンザ予防効果が存在する可能性も示されたと言えよう。なお、N95 マスク群では89.4%、サージカルマスク群では90.2%の医療スタッフが「常に」~「時々」と一定以上、それぞれのマスクを装着しており、本研究の質は比較的担保されている。 以上の結果を総合すると、インフルエンザやその他の呼吸器ウイルス感染にさらされる危険性の高い外来医療スタッフは、N95マスクを装着する必要はないが、サージカルマスク装着での勤務は望ましいであろう。 1. MacIntyre CR et al. In¬fluenza Other Respir Viruses. 2017;11(6):511-517. 2. Loeb M et al. JAMA. 2009;302(17):1865-1871.