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未熟児網膜症を有する超低出生体重児の治療に対するラニビズマブ対レーザー治療(RAINBOW):非盲検ランダム化比較試験。
未熟児網膜症を有する超低出生体重児の治療に対するラニビズマブ対レーザー治療(RAINBOW):非盲検ランダム化比較試験。
Ranibizumab versus laser therapy for the treatment of very low birthweight infants with retinopathy of prematurity (RAINBOW): an open-label randomised controlled trial Lancet 2019 ;394 (10208 ):1551 -1559 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】未熟児網膜症(ROP)治療における抗血管内皮増殖因子製剤の使用は世界的に増加しているが、その眼に対する効果、適切な薬剤と用量、再投与の必要性、長期の全身作用の可能性に関するデータはほとんどない。ROPの治療における硝子体内ラニビズマブの有効性と安全性をレーザー治療と比較して評価した 【方法】この無作為化、非盲検、優越性多施設、3群並行群間試験は26カ国の87新生児センターと眼科センターで行われた。網膜症の治療基準を満たした出生体重1500g未満の乳児をスクリーニングし、ラニビズマブ0-2mgまたはラニビズマブ0-1mgの両側静脈内単回投与、またはレーザー治療を受けるよう平等に(1:1:1)患者を無作為に割り付けました。コンピュータ対話型応答技術により,疾患領域と地理的地域によって層別化された.主要評価項目は,24 週間以内に活動性網膜症,好ましくない構造的転帰,または別の治療手段を必要としない生存率とした(レーザー療法に対するラニビズマブ 0-2 mg の優位性は両側 α=0-05 であった).解析は intention to treat で行った。本試験はClinicalTrials. gov、NCT02375971に登録されています。 【解釈】2015年12月31日から2017年6月29日の間に、225名の参加者(ラニビズマブ0-2mg n=74、ラニビズマブ0-1mg n=77、レーザー療法 n=74)を無作為に割り付けました。治療前に7名が離脱し(それぞれn=1、n=1、n=5)、各群4名の死亡を含む17名が24週までのフォローアップを完了しなかった。214人の乳児が主要アウトカムについて評価された(それぞれn=70, n=76, n=68)。治療成功は,ラニビズマブ 0-2 mg 投与群では 70 例中 56 例(80%)であったのに対し,ラニビズマブ 0-1 mg 投与群では 76 例中 57 例(75%),レーザー治療後では 68 例中 45 例(66%)で発生した.階層的検定戦略により、レーザー治療と比較して、ラニビズマブ0-2 mg投与後の治療成功のオッズ比(OR)は2-19(95% Cl 0-99-4-82、p=0-051)、ラニビズマブ0-1 mg投与後は1-57(95% Cl 0-76-3-26)、0-1 mgと比較して、ラニビズマブ 0-2 mgでは1-35(95% Cl 0-61-2-98)であった。ラニビズマブ0-2 mg投与群では構造的に好ましくない転帰をたどった乳児が1人いたが,ラニビズマブ0-1 mg投与群では5人,レーザー療法では7人であった.死亡、重篤および非重篤な全身性有害事象、および眼の有害事象は3群間で均等に分布した。 ROPの治療において、ラニビズマブ0-2mgはレーザー治療より優れており、レーザー治療より眼の有害事象が少なく、24週間の安全プロファイルが許容できるかもしれない。 第一人者の医師による解説 適切な適応の検討が必要だが 未熟児網膜症に新たな治療選択肢 東 範行 国立成育医療研究センター眼科診療部長・視覚科学研究室長 MMJ.February 2020;16(1) 未熟児網膜症は失明につながる疾患で、日本における発症数は年間およそ4,300人と推定されている。治療としては、これまでに網膜凝固(冷凍凝固、光凝固 )、硝子体手術、抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法が行われてきた。本論文で報告されたRAINBOW試験は、未熟児網膜症に対する抗 VEGF抗体薬ラニビズマブ(RBZ)硝子体内注射の有効性と安全性をレーザー光凝固療法との比較で評価した初めての国際共同治験である。RBZはすでに成人における加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫、 網膜静脈変性など眼底の病的血管新生疾患に使用されている。 対象は出生体重1,500g未満の両眼性の治療を要する未熟児網膜症で、225人が登録された。参加国は26カ国で登録数は日本が最多であった。患者はRBZ 0.2mg(成人用量の40%)群、RBZ 0.1mg 群、またはレーザー光凝固群にランダム化され、初回治療が両眼同時に行われた。初回治療後に網膜症が悪化した場合は、治療後28日以降であれば同じ治療の追加が各眼で2回まで許されるが、28日未満であればレスキューとして別の治療が行われた。 主要評価項目は、治療の成功であり、治療開始24 週後 , 両眼とも活動性の未熟児網膜症がなく、網膜の牽引や剥離など不良な形態学的転帰もないことと定義された。各群ともほぼ90%以上の患者で試験が完了した。 結果は、治療成功率がRBZ 0.2mg群で80%、 RBZ 0.1mg群で75%、レーザー群で66%であったが、有意差はなかった。しかしRBZ 0.2mg群 で治療後20週に脱落した1人の結果を加えると、 RBZ 0.2mg群とレーザー群の間に有意差が認められた。0.1 mg群では有意差がなく、0.2mgの使用が推奨された。治療成功率において、患者の性、人種、年齢(出生週数、治療週数)、未熟児網膜症の病期分布による差はなかった。 眼合併症は結膜出血、網膜出血などで、成人の硝 子体注射でみられるものと差はなく、いずれも軽微であった。全身合併症は、未熟児特有の全身の問 題が中心で、治療によって惹起されたと思われる ものはなかった。VEGFは発生や成長に関連するため、眼内投与のRBZが血中に回って全身性に影響することが危惧されたが、RBZ投与直後以降の血中 VEGF値に低下はみられなかった。 本試験では、その後5年間にわたって眼底の変化や視力、全身への影響が追跡されるが、今回の結果を踏まえて、日本でも未熟児網膜症におけるRBZ の使用が最近承認された。RBZに関しては血管増 殖組織の収縮や網膜症の再燃などの問題も報告されており、適切な適応についてはさらなる検討を要するが、未熟児網膜症は新たな治療選択肢を得たことになる。