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コロナ禍の2022年前半の英国で小児に重症急性肝炎が流行
コロナ禍の2022年前半の英国で小児に重症急性肝炎が流行
Clinical Spectrum of Children with Acute Hepatitis of Unknown Cause N Engl J Med. 2022 Aug 18;387(7):611-619. doi: 10.1056/NEJMoa2206704. Epub 2022 Jul 13. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】2022年1月以降、小児における原因不明の急性肝炎の報告が増加しています。症例は複数の大陸で報告されていますが、ほとんどは英国で報告されています。原因物質を特定するための調査が進行中です。血清に関連して、A型肝炎からE型肝炎ではなく、代謝的、遺伝的、遺伝的、先天的、または機械的原因を持たない、確認された急性肝炎の英国健康安全保障局の症例定義を満たす肝炎を持っていた1リットルあたり500 IUを超えるアミノトランスフェラーゼレベル。医療記録をレビューし、人口学的特徴、臨床的特徴、肝生化学的検査、血清学的検査、肝向性ウイルスやその他のウイルスの分子検査の結果、および放射線学的および臨床的転帰を文書化しました。結果は、状態の改善、肝移植、または死亡として分類されました。年齢の中央値は 4 歳 (範囲、1 ~ 7 歳) でした。一般的な症状は、黄疸 (93% の子供)、嘔吐 (54%)、下痢 (32%) でした。ヒトアデノウイルスの分子検査を受けた30人の患者のうち、27人(90%)が陽性でした。劇症肝不全は 6 人の患者 (14%) で発生し、その全員が肝移植を受けました。死亡した患者はいなかった。肝移植を受けた 6 人を含むすべての子供は退院した.この病気は確立されていません。 第一人者の医師による解説 アデノウイルス 41Fとアデノ随伴ウイルス 2型のツインデミックが関与か 森内 浩幸 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科小児科学教授 MMJ.February 2023;19(1):6 2022年初頭、英国から原因不明の小児重症肝炎が多発していると報告され、世界を驚かせた。その後世界中から同様の症例が世界保健機関(WHO)に登録され、9月29日までに555例が集まったが、そのほとんどは地域的(スコットランド)・時間的(1~6月[ピーク 3~4月])に集積していた。 本論文は英国の小児肝移植センターで2022年1月1日~4月11日に経験された重症急性肝炎44人の報告である。いずれも従来は健康な1~7歳児で、6人に肝移植が行われた。既知の原因は否定されたが、30人中27人(90%)でアデノウイルスが検出された。肝組織中にウイルス封入体やアデノウイルス抗原は検出されなかったが、肝組織粉砕液からは6人中3人でアデノウイルス DNAがPCR法で検出され、塩基配列よりアデノウイルス41Fと推定された。アデノウイルスは免疫健常宿主に肝炎を起こさず、41Fは胃腸炎ウイルスに過ぎない。その後も英国ではアデノウイルスが過半数の症例から検出され、その多くが41Fであった(1)。 その後の知見に基づく仮説はこうだ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防策の緩和後、スコットランドにおいてアデノウイルス 41Fとアデノ随伴ウイルス 2型(AAV2)が同時流行した。AAV2は単独では増殖できず、ヘルパーウイルスを必要とし、アデノウイルスは代表的なヘルパーウイルスである。この2つのウイルスに同時感染した子どもの肝臓でAAV2が活発に増殖し、感染した肝細胞に対して宿主免疫系(特に細胞性免疫)が攻撃を加えることによって肝炎が起こる。このような免疫攻撃はある種のヒト白血球抗原(HLA)(DRB1*04:01)を有する人に起こりやすい。このHLA型は北欧に多く、スコットランド人の15.6%が保有する。スコットランドの研究では患児の多くからAAV2が検出されたが、健常対照児からは検出されなかった。また患児の89%が上述のHLA型であった(2)。 このような機序の肝炎には前例がある。D型肝炎ウイルスもB型肝炎ウイルスというヘルパーウイルスがいなければ増殖できず肝炎は起こせない。またウイルス性肝炎の多くは、ウイルスが直接肝細胞を破壊するのではなく、ウイルス感染肝細胞を宿主の細胞性免疫が認識して破壊する。そしてHLA型と感染症との相性も以前から知られている(HIV、C型肝炎など)。まだ完全に証明されたわけではないが、これが本当ならコロナ禍に生じた各 種感染症の疫学の乱れから起こったツインデミック(アデノウイルス 41FとAAV2)が起こした現象だったと言える。「新興感染症」が既知の2種類のウイルスと宿主の遺伝背景の組み合わせでも起こるかもしれないということだ。 1. Gong K, et al. Front Pharmacol. 2022;13:1056385. 2. Ho A, et al. medRxiv 2022.07.19.22277425.