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電子タバコやベイプに関連した肺損傷の臨床症状、治療、短期転帰:前向き観察コホート研究。
電子タバコやベイプに関連した肺損傷の臨床症状、治療、短期転帰:前向き観察コホート研究。
Clinical presentation, treatment, and short-term outcomes of lung injury associated with e-cigarettes or vaping: a prospective observational cohort study Lancet 2019 Dec 7;394(10214):2073-2083. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】電子タバコまたはベイプに関連した肺損傷(E-VALIまたはVALIとも呼ばれる)の進行中のアウトブレイクが、2019年3月に米国で開始された。この疾患の原因,診断,治療,経過は依然として不明である。 【方法】この多施設,前向き,観察,コホート研究では,2019年6月27日から10月4日の間に,米国ユタ州に拠点を置く統合医療システム,Intermountain Healthcareで受診した電子タバコまたはベイプに関連する肺損傷の全患者のデータを収集した。米国ユタ州ソルトレイクシティを拠点とするテレクリティカルケアは、症例検証、公開報告、およびシステム全体の専門知識の普及のための中央リポジトリとして使用され、電子タバコまたはベイプに関連する肺損傷の診断・治療ガイドラインの提案が含まれた。ユタ州保健局(米国ユタ州ソルトレイクシティ)が実施したカルテレビューと患者へのインタビューから、患者の提示、治療、短期フォローアップ(退院後2週間)に関するデータを抽出した。 【FINDINGS】統合医療システム内の13病院または外来診療所において、60人の患者が電子タバコまたはベイプに関連した肺損傷を呈した。60人中33人(55%)が集中治療室(ICU)に入院した。60人中53人(88%)が体質的症状、59人(98%)が呼吸器症状、54人(90%)が消化器症状を呈していた。60人中54人(90%)に抗生物質が投与され,57人(95%)にステロイドが投与された.60人中6人(10%)が2週間以内にICUまたは病院に再入院し、そのうち3人(50%)はベイプまたは電子タバコの使用で再発した。2週間以内にフォローアップを受けた患者26名のうち,臨床的・X線的な改善は全員に見られたものの,胸部X線写真(15名中10名[67%])および肺機能検査(9名中6名[67%])で異常が残存している者が多かった.2名の患者が死亡し,電子タバコまたはベイプに関連する肺損傷は,両者とも死因ではないが一因であると考えられた。認知度の向上により、抗生物質やステロイドで治療された患者の重症度が幅広く確認されるようになった。改善されたものの、短期間のフォローアップでは多くの患者に異常が残存していた。電子タバコやベイプに関連した肺損傷は、感染症や他の肺疾患と症状が重なるため、依然として臨床診断が困難である。この疾患に対する高い疑い指数を維持することは,これらの患者の原因,最適な治療,および長期転帰を理解するための作業が続く中で重要である. 第一人者の医師による解説 日本では改正健康増進法が完全施行 たばこ対策の強化を 欅田 尚樹 産業医科大学産業保健学部産業・地域看護学講座教授 MMJ.June 2020;16(3) 電子たばこはプロピレングリコール(PG)やグリセロール(GLY)を基剤としさまざまな香料を添加したリキッドを電気的に加熱してエアロゾルを発生・吸煙する。海外ではニコチンを含むものが大半で若人を中心に急速に普及しているが、国内では、薬機法でニコチン含有は規制されている。一方、たばこ葉を電気的に加熱しニコチンを吸引する加熱式たばこは、たばこ事業法の製造たばことして、世界に先駆けて販売拡大しているが、構造も法規制 も異なる。 米国 で は2019年3月 よ り 電子 た ば こ ま た は ベ イ ピ ン グ に 関連した 肺傷害(lung injury associated with e-cigarettes or vaping; E-VALI)が急増したが、原因、診断、治療、経過は 不明のままであり社会問題にもなった。 本論文は、2019年6月27日~ 10月4日に米国ユタ州で収集したE-VALI全症例を解析した多施設共同前向き観察コホート研究の結果とともに実用的な臨床ガイドラインを提示している。死亡2人を含む患者 60人の多くは全身症状、呼吸器症状のみならず消化器症状を呈し、33人は集中治療室(ICU)管理を要した。その多くはステロイド治療を受けたが、診断の不確実性から抗菌薬の投与例も多かった。重症度は多岐にわたり、症状が改善しても胸部 X線写真や肺機能検査に異常が残存していた。患者の多くは大麻成分のテトラヒドロカンナビノール(THC) を含むリキッドを使用していたが、それ以外にもさまざまなものが使用されていた。 その後の調査で、多くのE-VALI患者の気管支肺胞洗浄液では、THCあるいはその代謝物とともに、 ビタミン Eアセテートが検出され、原因物質と考えられている(1)。米国疾病対策予防センター(CDC)の報告では、THCを含む電子たばこ・リキッドのリスク認知の広がり、ビタミン Eアセテートの使用禁止などさまざまな規制が実施され患者は減少したが、2020年2月18日現在、全米で死亡68人を含む2,807人の患者が報告されている。    電子たばこのエアロゾルには、PGやGLYの熱分解により生成したホルムアルデヒドに代表される発がん物質が高濃度に発生するものがあり、中には紙巻きたばこ主流煙より高濃度を示すものもある(2)。 日本呼吸器学会からは、「加熱式たばこや電子たばこによる健康影響は不明」であり「リスクが低いという証拠はない」、さらに「使用の際には二次曝露対策が必要である」、と見解と提言が出されている。 また現在パンデミックとなり問題となっている新型コロナウイルス肺炎の危険因子として喫煙(3)がある。国内でも受動喫煙対策を義務化した改正健康増進法が完全施行される中、たばこ対策の強化が求められる。 1. Blount BC et al. N Engl J Med. 2020;382(8):697-705. 2. Uchiyama S et al. Chem Res Toxicol. 2020;33(2):576-583. 3. Guan WJ et al. N Engl J Med. 2020 Feb 28. doi: 10.1056/NEJMoa2002032.