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米国における45歳までのヒトパピローマウイルスワクチン接種の有効性と費用対効果。
米国における45歳までのヒトパピローマウイルスワクチン接種の有効性と費用対効果。
Effectiveness and Cost-Effectiveness of Human Papillomavirus Vaccination Through Age 45 Years in the United States Ann Intern Med 2020 Jan 7;172(1):22-29. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】米国では、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの定期接種年齢は11~12歳であり、女性は26歳まで、男性は21歳までキャッチアップ接種が可能である。成人女性および男性に対する9価HPVワクチンの使用に関する米国の接種方針が見直されている。 【目的】米国の現行のHPV接種プログラムを27歳から45歳の女性および22歳から45歳の男性に拡大した場合の集団レベルの追加効果と費用対効果を評価する。 【デザイン】HPV感染と関連疾患の個人ベースの感染動態モデルであるHPV-ADVISE (Agent-based Dynamic model for VaccInation and Screening Evaluation) を用い、年齢別の米国データにキャリブレーションした。 【データソース】公開データ。【対象者】米国の27歳から45歳の女性、22歳から45歳の男性【時間軸】100年【視点】ヘルスケア部門【介入】9価HPVワクチン接種【アウトカム指標】予防したHPV関連アウトカムと費用対効果比 【基本ケース分析結果】モデルは、現在の米国でのHPVワクチン接種プログラムが、HPV関連アウトカムの予防と費用対効果比率を高めると予測するものであった。米国のHPVワクチン接種プログラムは、100年間で性器いぼとグレード2または3の子宮頸部上皮内新生物の診断数をそれぞれ82%、80%、59%、39%、子宮頸がんおよび非子宮頸部HPV関連がんの症例を減らし、コスト節約(対接種なし)となることを予測する。一方,ワクチン接種を 45 歳の女性および男性に拡大すると,これらのアウトカムをそれぞれさらに 0.4,0.4,0.2,0.2 パーセントポイント減少させると予測される.30歳、40歳、45歳までの女性および男性へのワクチン接種は、得られる質調整生命年あたり、それぞれ83万ドル、184万3000ドル、147万1000ドルの費用がかかると予測される(現行のワクチン接種と比較して)。 【感度解析結果】結果は、自然免疫および感染後の進行率、過去のワクチン接種率、ワクチン効果に関する仮定に対して最も敏感であった。 【限界】26歳以降の感染によるHPV関連疾患の割合や、現行のHPVワクチン接種プログラムによる群発効果の程度については不確実である。 【結論】現行のHPVワクチン接種プログラムは費用節約になると予測される。ワクチン接種を高齢者まで拡大しても、追加的な健康上の利益は小さく、現在の推奨よりも増分費用効果比が大幅に高くなると予測される。 【Primary funding source】疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention.) 第一人者の医師による解説 各国の実情に合わせた接種年齢設定が重要 日本での接種再普及時には幅広い年齢へのキャッチアップ接種の検討必要 上田 豊 大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学講師 MMJ.August 2020;16(4) ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは2006 年にHPV-6・11・16・18 型に対する4 価ワクチン、2007年にはHPV-16・18型に対する2価ワクチンが海外で承認された。さらに、HPV-6・11・16・18・31・33・45・52・58型のHPV感染を予防する9価ワクチンが2014年に米国で承認され、現在では70を超える国・地域で承認されている。HPVワクチンにより子宮頸がんなどの減少が期待されるが、男性に多い中咽頭がんの多くもHPV感染が原因とされ、海外では男子への接種も進んでいる。男子への接種は集団免疫の観点からも意義が大きい。 性交渉が感染経路として重要であるため、初交前にワクチン接種を行うことが効果的である。米国では11 ~ 12歳の男女を標準的な接種対象としており、他の国々でも同様のプログラムが組まれている。また、その時期に接種が行われなかった場合には、米国では女性には26歳、男性には21歳までの9価ワクチンのキャッチアップ接種が承認されている。 本研究では、米国でのこれまでの接種状況などをもとにHPV-ADVISE (Agent-based Dynamic model for Vaccination and Screening Evaluation)を用いて、接種上限年齢を男女とも45歳まで引き上げることの有効性および費用対効果の予測が行われた。 現状のプログラムにより、生涯のコンジローマ、子宮頸部前がん病変(CIN2・3)、子宮頸がんおよびHPV関連がんの診断数はそれぞれ82、80、59、39%減少させられるが、接種上限年齢を男女とも45歳に引き上げることによる追加減少効果はそれぞれ0.4、0.4、0.2、0.2%分と予測された。一方、30、40、45 歳までの女性と男性へのワクチン接種には、現在のプログラムと比較して、質調整生存年(QALY)あたりそれぞれ830 ,000、1,843 ,000、1,471,000ドルのコストがかかると算出された。 これらの結果からは、HPVワクチンの接種上限年齢を45歳まで引き上げるメリットは限定的と考えられるが、本研究で行われていた感度分析においては、費用対効果がワクチンの接種率や有効性に大きく依存することも示されている。日本ではHPVワクチンは積極的勧奨の差し控えにより、事実上停止状態となっており、9価ワクチンや男子への接種も承認されていない(執筆時点)。日本におけるHPVワクチン再普及時には対象年齢への接種に加え、幅広い年齢へのキャッチアップ接種についても検討する必要があるものと考えられる。