ライブラリー 痛風患者における発作は発作後の近い将来の心血管イベントと関連する
Association Between Gout Flare and Subsequent Cardiovascular Events Among Patients With Gout
JAMA. 2022 Aug 2;328(5):440-450. doi: 10.1001/jama.2022.11390.
上記論文のアブストラクト日本語訳
※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。
【重要】痛風は心血管疾患と関連があります。痛風の再燃と心血管イベントとの時間的関連性は調査されていません。
[目的]最近の痛風の再燃後に心血管イベントのリスクが一時的に増加するかどうかを調査すること。
[デザイン、設定、および参加者]レトロスペクティブな観察研究が実施されました。 1997 年 1 月 1 日から 2020 年 12 月 31 日までの英国の Clinical Practice Research Datalink からの電子カルテを使用。季節と年齢、痛風の再燃と心血管イベントを有する1421人の患者の間で実施されました。急性心筋梗塞または脳卒中。最近の以前の痛風再燃との関連性は、ネストされたケースコントロール研究で 95% CI の調整済みオッズ比 (OR) を使用し、自己管理型ケース シリーズで 95% CI の調整済み発生率比 (IRR) を使用して測定されました。痛風の新たな診断を受けた患者 (平均年齢、76.5 歳、男性 69.3%、女性 30.7%) では、心血管イベントが発生した 10,475 人の患者が、心血管イベントのない 52,099 人の患者と一致しました。心血管イベントが発生した患者は、心血管イベントが発生しなかった患者と比較して、0~60 日以内に痛風が再燃する確率が有意に高かった (204/10 475 [2.0%] vs 743/52 099 [1.4%]; 調整済み OR , 1.93 [95% CI, 1.57-2.38]) および過去 61 日から 120 日以内 (170/10 475 [1.6%] vs 628/52 099 [1.2%]; 調整済み OR, 1.57 [95% CI, 1.26- 1.96])。過去 121 日から 180 日以内に痛風再発のオッズに有意差はありませんでした (148/10 475 [1.4%] vs 662/52 099 [1.3%]; 調整済み OR、1.06 [95% CI、0.84-1.34] )。自己管理された症例シリーズ (N = 1421) では、0 日から 60 日までの 1000 人日あたりの心血管イベント発生率は 2.49 (95% CI 2.16-2.82) でした。 2.16 (95% CI、1.85-2.47) 61 日から 120 日以内。痛風の再燃後 121 日から 180 日以内に 1.70 (95% CI 1.42-1.98)、150 日または 181 日以内の 1000 人日あたりの心血管イベント発生率は 1.32 (95% CI 1.23-1.41)痛風の再燃から540日後まで。痛風再燃の 150 日前または 181 ~ 540 日後と比較すると、心血管イベントの発生率の差は 1,000 人・日あたり 1.17 (95% CI、0.83 ~ 1.52) であり、調整済み IRR は 1.89 (95% CI、1.54) でした。 -2.30) 0 日から 60 日以内。 1000 人日あたり 0.84 (95% CI、0.52-1.17)、61 ~ 120 日以内に 1.64 (95% CI、1.45-1.86)。
[結論と関連性] 痛風の患者のうち、痛風を経験した人心血管イベントは、そのようなイベントを経験しなかった人と比較して、前の日に最近痛風が再発する可能性が有意に高かった.これらの調査結果は、痛風の再燃が、再燃後の心血管イベントの一時的な増加と関連していることを示唆しています。
第一人者の医師による解説
最も肝心なのは生活習慣改善などによる痛風発作の予防
脇野 修 徳島大学大学院医歯薬学研究部腎臓内科学分野教授
MMJ.February 2023;19(1):20
心血管イベントの基盤病態には炎症が存在する。痛風は特に高齢者に多い全身性の炎症疾患で(1)、痛風患者は心血管イベントの発症率が高い(2)。日本のガイドラインによれば、痛風は高尿酸血症を必須条件とし、尿酸 -ナトリウム結晶による急性関節炎(痛風発作)をすでに生じた状態である(3)。痛風関節炎を伴わない無症候性高尿酸血症とは区別される。痛風自体は微小炎症を特徴とし、炎症性サイトカイン、血中活性酸素濃度の上昇、neutrophil extracellular trapの形成、内皮障害、血小板活性化などの病態を認め、動脈硬化性塞栓症発症の基盤となる。さらに、痛風発作はNAPL3インフラマソームの活性化により生じ、NAPL3インフラマソーム阻害薬は心血管イベントの発症を予防することが示されている。以上のことより痛風発作はその後の心血管イベント発症と関連があることが推測されるが、時間的因果関係の証明はなされていない。
そこで本研究では、英国の電子医療記録を用いて、痛風診断後に心血管イベント(急性心筋梗塞または脳卒中)を起こした患者(症例)と、年齢、性、罹病期間を一致させた心血管イベントを起こしていない患者(対照)を比較することで、痛風発作後に一時的に心血管イベント発症が増加するかどうかを検討した。その結果、症例群では対照群に比べ0~60日前および61~120日前の痛風発作の出現が有意に高かった(それぞれオッズ比1.93および1.57)。一方、121~180日前の痛風発作の出現には群間差がなかった。痛風発作と心血管イベントを発症した症例のみで行ったself-controlled case series解析によると、1,000人・年あたりの心血管イベント発症数は痛風発作後0~60日は2.49件、61~120日は2.16件、121~180日は1.70件、一方、150日前か181~540日後は1.32件であった。150日前か181~540日後をベースラインとして算出した心血管イベントの調整発症率比は、痛風発作0~60日後1.89、61~120日後1.64、121~180日後1.29であった。以上より、痛風患者において心血管イベントを発症した患者はその前の近いうちに痛風発作を起こしている可能性が高い。すなわち、痛風発作を起こした場合はその後の心血管イベント発症に関連することが明らかとなった。
本研究の感度分析では、標準的治療であるコルヒチン、非ステロイド系抗炎症薬、ステロイドの各使用群でも痛風発作に伴う心血管イベント増加が認められていることから、追加治療の潜在的な役割も期待される。ただし、リスクの絶対差は痛風発作後0~60日で0.6%(2.0%[症例群] 対 1.4%[対照群])であり、最も肝心なのは生活習慣改善などによる痛風発作の予防である。
1. Roth GA, et al. J Am Coll Cardiol. 2020;76(25):2982-3021.
2. Choi HK, et al. Circulation. 2007;116(8):894-900.
3. 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第 3 版(2019 年改訂)