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健康的なライフスタイルとがん、心血管疾患、2型糖尿病のない寿命:プロスペクティブ・コホート研究
健康的なライフスタイルとがん、心血管疾患、2型糖尿病のない寿命:プロスペクティブ・コホート研究
Healthy lifestyle and life expectancy free of cancer, cardiovascular disease, and type 2 diabetes: prospective cohort study BMJ 2020 Jan 8;368:l6669. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】健康的なライフスタイルが主要な慢性疾患のない寿命とどのように関連しているかを検討する。 【デザイン】前向きコホート研究。 【設定および参加者】Nurses’ Health Study(1980-2014、n=73 196)およびHealth Professionals Follow-Up Study(1986-2014、n=38 366)。 【主要評価項目】低リスクライフスタイル5因子:喫煙しない、ボディマス指数 18.5-24.9、中程度から活発な身体活動(≧30分/日)、適度なアルコール摂取(女性:5-15g/日、男性:5-30g/日)、高い食事の質スコア(上位40%)。 MAIN OUTCOME]Life expectancy free of diabetes, cardiovascular diseases, and cancer.(糖尿病、心血管疾患、がんに罹患しない寿命)。 【結果】50歳時点での糖尿病、心血管疾患、がんにかからない寿命は、低リスクの生活習慣を採用していない女性では23.7年(95%信頼区間22.6~24.7)であったが、4~5個の低リスク要因を採用した女性では34.4年(33.1~35.5)であった。50歳の時点で、これらの慢性疾患のいずれにもかかっていない寿命は、低リスクの生活習慣を採用していない男性では23.5年(22.3-24.7年)、4つまたは5つの低リスクの生活習慣を採用している男性では31.1年(29.5-32.5年)であった。現在喫煙している男性で喫煙量が多い人(15本/日以上)、肥満の男性・女性(肥満度30以上)では、50歳時点での無病寿命が総人生に占める割合は最も低かった(75%以下)。 【結論】人生半ばでの健康的なライフスタイルの遵守は、主要慢性疾患のない寿命の延長と関連していた。 第一人者の医師による解説 日本政府の健康寿命延伸プランの実現可能性を示唆する成果 辻 一郎 東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野教授 MMJ.August 2020;16(4) 健康寿命は「あるレベル以上の健康状態で生存する期間」と定義される。健康の定義・基準が多様であるため、さまざまな健康寿命が計算されている。日本の厚生労働省は「日常生活に制限のない期間」を健康寿命の主指標、「自分が健康であると自覚している期間」を副指標、「日常生活動作が自立している期間」を補完的指標と定義しているが、本研究は「がん・心血管疾患・2型糖尿病のいずれもない状態での生存期間」に着目している。この考えは米国の健康づくり運動“ Healthy People 2020”でも取り上げられている。 本研究の目的は、健全な生活習慣の実践により健康寿命がどの程度延伸するかについて、前向きコホート研究により解明することである。対象は、米国の女性看護師73 ,196 人(1980 年開始)、男性医療従事者38 ,366人(1986年開始)である。自記式アンケートにより、5つの健全な生活習慣(非喫煙、体格指数[BMI]18 .5 ~ 24 .9、中等度以上の身体活動を1日30分以上、適量のアルコール摂取[女性1日5~15 g、男性5 ~ 30 g]、質の高い食事摂取)の実践状況を調査した後、がん・心筋梗塞・脳卒中の発症と死亡の状況を2014年まで追跡した。多段階生命表法により、上記の生活習慣の実践数とがん・心血管疾患・2型糖尿病のいずれもない状態での平均余命との関連を解析した。 その結果、がん・心血管疾患・2型糖尿病のいずれもない状態での平均余命(50歳)は、健全な生活習慣の実践数と強く関連した。女性では、実践数ゼロの群で23.7(95%信頼区間[CI], 22.6~24.7)年に対して4つ以上の群では34.4(95%CI, 33 .1~ 35 .5)年と10 .7 年の差があった。男性でも、23 .5(95 % CI, 22 .3 ~ 24 .7)年と31.1(95%CI 29.5~32.5)年で7.6年の差があった。一方、上記3疾病のいずれかを抱えて生存する期間は、健全な生活習慣の実践数によらず、ほぼ一定であった。 本硏究は、健全な生活習慣の実践による主要3疾患(がん、心血管疾患、2型糖尿病)の発症リスク低下は発症年齢の遅れを伴うことを実証し、健康寿命が7~10年延伸する可能性を示した。日本政府は2019年に発表した「健康寿命延伸プラン」で、2040年までに健康寿命を3年以上延伸させるという目標を掲げたが、本研究はその実現可能性を示唆するものと言えよう。