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乳製品摂取と女性および男性の死亡リスクとの関連:3つの前向きコホート研究。
乳製品摂取と女性および男性の死亡リスクとの関連:3つの前向きコホート研究。
Associations of dairy intake with risk of mortality in women and men: three prospective cohort studies BMJ 2019 Nov 27;367:l6204. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】乳製品の消費と女性および男性の総死亡および原因別死亡のリスクとの関連を検討する。 【デザイン】食生活とライフスタイルの要因を繰り返し測定する3つの前向きコホート研究。 【主要評価項目】州のバイタルレコード、全国死亡インデックス、または家族や郵便システムから報告された死亡を確認した。最大32年間の追跡期間中に、51,438名の死亡が記録され、そのうち12,143名が心血管疾患による死亡、15,120名が癌による死亡であった。多変量解析では、心血管疾患およびがんの家族歴、身体活動、全体的な食事パターン(alternate healthy eating index 2010)、総エネルギー摂取量、喫煙状況、アルコール摂取量、更年期障害の有無(女性のみ)、閉経後のホルモン使用(女性のみ)をさらに調整した。乳製品の総摂取量が最も少ないカテゴリー(平均0.8皿/日)と比較して、総死亡率の多変量プールハザード比は、乳製品の摂取量が2番目のカテゴリー(平均1.5皿/日)で0.98(95%信頼区間0.96~1.01)、1.00(0.97~1.03)であった。1.00(0.97~1.03)、3位(平均2.0皿/日)、4位(平均2.8皿/日)では1.02(0.99~1.05)、最高カテゴリー(平均4.2皿/日)では1.07(1.04~1.10)であった(P for trend <0.001)。乳製品の総消費量が最も多いカテゴリーと最も少ないカテゴリーを比較すると、心血管死亡率のハザード比は1.02(0.95~1.08)、がん死亡率は1.05(0.99~1.11)であった。乳製品のサブタイプでは、全乳の摂取は、総死亡(0.5食/日追加あたりのハザード比1.11、1.09~1.14)、心血管死亡(1.09、1.03~1.15)、がん死亡(1.11、1.06~1.17)のリスクを有意に高めた。食品代替分析では、乳製品の代わりにナッツ類、豆類、全粒穀物を摂取すると死亡率が低くなり、乳製品の代わりに赤身肉や加工肉を摂取すると死亡率が高くなった。 【結論】大規模コホートから得られたこれらのデータは、乳製品の総摂取量の多さと死亡リスクとの間に逆相関があることを支持していない。乳製品の健康効果は、乳製品の代わりに使用される比較食品に依存する可能性がある。わずかに高いがん死亡率は、乳製品の消費と有意ではなかったが、さらなる調査が必要である。 第一人者の医師による解説 日本では牛乳摂取が多いと全死亡リスクは低下 欧米との相違は検討課題 於 タオ1)、小熊 祐子2)1)慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科、2)慶應義塾大学スポーツ医学研究センター・大学院健康マネジメント研究科准教授 MMJ.June 2020;16(3) 乳製品は蛋白質をはじめ、各種微量栄養素の摂取 源として重要である一方で、飽和脂肪酸やコレステロールの含有量が多く、健康への悪影響も懸念される。乳製品の摂取は高血圧、2型糖尿病、循環器 疾患などの発症と負の関連が報告されているが、 前立腺がん(男性)、卵巣がん(女性)とは正の関連が報告されている。また、死亡率については前向き観察研究が実施されているものの、結果は一貫しない。 本研究は乳製品摂取と全死亡率および原因別死 亡率との関連を明らかにするため、米国で白人医 療職を対象に行われた3つの大規模コホート研究 (Nurses’Health Study, Nurses’Health Study II, Health Professionals Follow-up Study)のうち、登録時の心血管疾患患者・がん患者を除外した 217,755人(男性:49,602人、女性:168,153 人)を対象とした。乳製品の摂取は食品頻度調査票 (FFQ)で推定し、死亡は戸籍、国民死亡記録で追跡し、家族または郵便制度による報告で補完した。 最長32年間の追跡期間中、心血管死12,143人、 がん死15,120人を含む51,438人の死亡が確認された。全死亡のハザード比は、乳製品総摂取量の五分位数で摂取量が最も少ない群 Q1(平均0.8 SV# /日)と比較し、Q2(平均1.5 SV/日)で0.98、 Q3(平均2.0 SV/日)で1.00、Q4(平均2.8 SV/日)で1.02、Q5(平均4.2 SV/日)で1.07であり、 非線形関係であるが、乳製品総摂取量が多くなると死亡リスクが有意に上昇した。がん死亡リスクでもほぼ同じ傾向が確認された。 乳製品の種類別にみると、全乳の摂取増加は全死亡リスク、心血管疾 患死、がん死のリスク上昇と有意に関連した。低脂 肪乳は全死亡リスクのみと有意に関連し(ハザード 比 , 1.01;P<0.001)チーズはいずれとも関連していなかった。さらに、乳製品の摂取をナッツ類、 豆類あるいは全粒穀類の摂取に置き換えた場合は 死亡リスクが低下し、一方、赤身肉・加工食肉に置き換えた場合は死亡リスクが上昇した。 本研究は対象者に起因する測定誤差や慢性疾患による生活習慣の変化に起因する因果の逆転の可能性を反復測定値を用いることなどで最小限に抑えている。また、サンプルサイズが大きく解析力は十分であり、研究の質は担保されている。日本では牛乳の摂取が多いと全死亡リスクが低くなることが大規模コホート研究から報告されている(1)。欧米人と摂取量自体も異なるため、この相違をどう捉えるか、引き続き、検討すべき重要な課題の1つである。 ※ SV(serving)は食品の摂取量を示す単位。本研究の定義では、無脂肪牛 乳、低脂肪牛乳あるいは全乳は 240mL、クリームは 6g、シャーベット、 フローズンヨーグルト、アイスクリーム、カッテージチーズ・リコッタチーズは 120mL、クリームチーズ・その他チーズについては 30mL を 1SV と している。 1. Wang C. et al. J Epidemiol. 2015;25(1):66-73