「急性心筋梗塞」の記事一覧

急性心筋梗塞の誘因としてのクリスマス、国民の祝日、スポーツイベント、時間的要因。SWEDEHEART観察研究1998-2013。
急性心筋梗塞の誘因としてのクリスマス、国民の祝日、スポーツイベント、時間的要因。SWEDEHEART観察研究1998-2013。
Christmas, national holidays, sport events, and time factors as triggers of acute myocardial infarction: SWEDEHEART observational study 1998-2013 BMJ 2018 Dec 12 ;363:k4811 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】心筋梗塞の誘因としての概日リズムの側面、国民の祝日、主要なスポーツイベントを研究する。 【デザイン】全国冠動脈治療室登録、SWEDEHEARTを用いた後ろ向き観察研究 【設定】スウェーデン 【参加者】1998年から2013年までにSWEDEHEARTに報告された心筋梗塞283 014例。全例で症状発現日が記録され、88%で分単位の時刻が記録された。 【介入】クリスマス/ニューイヤー、イースター、夏至の祝日に症状発現した心筋梗塞を特定した。同様に、FIFAワールドカップ、UEFA欧州選手権、冬季・夏季オリンピック開催中に発生した心筋梗塞も同定した。休日の前後2週間を対照期間とし、スポーツイベントについては大会の前後1年間の同時期を対照期間とした。サーカディアン分析とサーカセプタン分析は、日曜日と24時を基準日と時間として行い、他のすべての日と時間とを比較した。発生率比はカウント回帰モデルを用いて算出した。 【MAIN OUTCOME MEASURES】心筋梗塞の日数 【RESULTS】クリスマスと真夏の休日は心筋梗塞の高いリスクと関連していた(発生率比 1.15, 95%信頼区間 1.12~1.19, P<0.001、および 1.12, 1.07~1.18, P<0.001, それぞれ)。最も高い関連リスクはクリスマスイブに観察された(1.37、1.29~1.46、P<0.001)。イースター休暇やスポーツイベント時には、リスクの増加は観察されなかった。心筋梗塞のリスクには循環器系と日内変動が認められ、早朝と月曜日にリスクが高かった。75歳以上の高齢者、糖尿病や冠動脈疾患の既往のある患者でより顕著であった。 【結論】16年間の心筋梗塞の入院患者を対象とし、症状発現を分単位で記録したこの全国実地調査において、クリスマスと真夏日は、特に高齢者や病気の患者で心筋梗塞リスクが高く、脆弱者における外部トリガーの役割を示唆している。 第一人者の医師による解説 ナショナルレジストリにより詳細なリスク解析が可能に 西村 邦宏 国立循環器病研究センター予防医学疫学情報部長 MMJ.June 2019;15(3) 心筋梗塞、心停止については、季節性、日内変動の影響がリスクとしてよく知られている。特に特定の休日(クリスマス)などについては多くの研究がなされている。しかし、先行研究では心筋梗塞による死亡、救急搬送情報、医療保険の請求データなど診断の正確性および発症時の詳細な臨床情報を欠く点に問題があった。 本研究はスウェーデンのナショナルレジストリであるSWEDEHEART(Swedish Web System for Enhancement and Development of Evidence- Based Care in Heart Disease Evaluated According to Recommended Therapies)を用いて、1998~2013年に報告された283,014人の心筋梗塞患者を対象に、クリスマスイブ、クリスマス当日、大晦日、新年などの特定休日、およびスポーツイベント(サッカー世界・ 欧州選手権、オリンピック)の発症への影響を検討した研究である。 本研究の最大の強みは、前向き登録によるナショナルレジストリによる検討により、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)および 非 ST上昇型心筋梗塞 (NSTEMI)の区別が明確で、喫煙、糖尿病などの危険因子および経皮的冠動脈形成術(PCI)/冠動脈バイパス術(CABG)などの既往歴についても正確な点である。特にSTEMIとNSTEMIを明確に区別した報告はなく画期的な内容となっている。 対象者の平均年齢は71.7歳、男性が64%、34%がSTEMI による発症であった。クリスマスイブ、クリスマス、 元日およびミッドサマー(お盆に相当する7月の休日)に特にリスクが高く、病型としてはNSTEMI が特に高かった。他の研究と異なりスポーツイベントとの関連は明確ではなく、月曜日および朝8 時前後がSTEMI/NSTEMIともに発症リスクが高いことが示された。また本研究の特徴として、豊富な背景因子の情報の解析から、周期性の変動による影響を受けやすい高リスクな集団として、75歳以上、糖尿病患者および冠動脈疾患の既往のある患者が挙げられている。 日本においても、院外心停止の悉皆登録であるウツタインレジストリや日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)内登録などから元日、季節、時間帯について同様の報告がなされている。脳卒中・循環器疾患対策基本法が2018年に成立し、循環器疾患登録に関する検討が進められているが、欧米諸国のレジストリと同等の悉皆性および質の高い臨床情報をともに備えたレジストリの整備はこれからの状況である。近年急速に進歩しつつある人工知能の進歩などを取り入れたビッグデータの整備が進むことにより、本研究と同様な質の高いエビデンスの構築が行われることを期待したい。