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米国南部の大規模レストランフランチャイズにおけるカロリーメニュー表示が購入カロリーに及ぼす影響の推定:準実験的研究。
米国南部の大規模レストランフランチャイズにおけるカロリーメニュー表示が購入カロリーに及ぼす影響の推定:準実験的研究。
Estimating the effect of calorie menu labeling on calories purchased in a large restaurant franchise in the southern United States: quasi-experimental study BMJ 2019 Oct 30;367:l5837. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】大規模レストランチェーンにおけるメニューのカロリー表示が、取引ごとの平均購入カロリーの変化と関連するかどうかを評価する。 【デザイン】準実験的縦断研究。 【設定】2015年4月から2018年4月まで米国南部(ルイジアナ、テキサス、ミシシッピー)にある3種類のレストランチェーンを有する全米規模のファーストフード企業の大規模フランチャイズ。 【参加者】2017年4月に店内およびドライブスルーメニューにカロリー情報を追加し、ラベル付け前(2015年4月から2017年4月)とラベル付け後(2017年4月から2018年4月)の実施期間に週次集計した売上データを持つ104のレストランを対象。 【主要アウトカム指標】主要アウトカムは、線形混合モデルを用いた中断時系列分析を用いて、反実仮想(すなわち、介入がなければ介入前のトレンドが持続していたという仮定)と比較したカロリー表示実施後の取引ごとの平均購入カロリーの全体の水準および傾向の変化とした。副次的アウトカムは、品目別(メインディッシュ、サイドディッシュ、砂糖入り飲料)であった。サブグループ分析では、レストランの国勢調査対象地域(国勢調査で定義された地域)の社会人口統計学的特性によって定義された層におけるカロリー表示の効果を推定した。3年間で、104のレストランで、49062 440の取引が行われ、242 726 953のアイテムが購入された。ラベリング実施後、60カロリー/取引(95%信頼区間48~72、約4%)の水準減少が観察され、その後、実施後1年間はベースラインの傾向とは独立して0.71カロリー/取引/週(95%信頼区間0.51~0.92)の増加傾向が観察された。これらの結果は、感度分析における異なる分析仮定に対して概ね頑健であった。レベルの低下と実施後の傾向の変化は、サイドディッシュや砂糖入り飲料よりもサイドメニューの方が強かった。水準の低下は、所得の中央値が高い国勢調査区と低い国勢調査区の間で同様であったが、取引あたりのカロリーの実施後の傾向は、高所得の国勢調査区(0.50、0.19から0.81)よりも低所得(カロリー/取引/週の変化0.94、95%信頼区間0.67から1.21)でより高かった。 【結論】大規模フランチャイズのファーストフード店においてカロリー表示を実施すると、1取引当たりの平均購入カロリーに小さな減少が認められた。この減少は、1年間のフォローアップで減少した。 第一人者の医師による解説 長期的な影響や表示方法の検討も必要 日本でも求められる研究 丸山 広達1)、磯 博康2) 1)愛媛大学大学院農学研究科地域健康栄養学分野准教授、2)大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学教授 MMJ.June 2020;16(3) 栄養成分表示は、消費者の健康的な食生活の質の向上の一手段として用いられている(1)。米国では、 2018年5月からAffordable Care Act(患者保護 および医療費負担適正化法)により、エネルギーの過剰摂取による肥満や慢性疾患の改善を最終目標として、大手外食企業で提供するすべての商品に対してエネルギー(kcal)表示が求められるようになった。そこで、本研究では準実験デザインにより、エネルギー表示が大手外食企業において消費者 が購入した商品のエネルギー量に対する影響について解析した。 本研究では、エネルギー表示の導入前2年間、導入後1年間の、約5000万件近い購入取引のデータを用いた。ニューヨーク市保健精神衛生局(NYC Health)が開発した、米国における大手外食企業の商品の栄養成分値を収載している“Menustat”と いうデータベースより、各商品のエネルギー量を把握した。エネルギー表示導入前後の消費者が購入した商品のエネルギー量、その後の推移との関連は分割時系列分析により評価した。 エネルギー表示前(1,440 kcal)に比べて、表示後は平均して1取引当たりのエネルギー量で4% に相当する約60 kcal(95%信頼区間[CI], 48~ 72 kcal)の減少がみられたが、その減少は短期間にとどまり、その後1取引当たりのエネルギー量は 漸増傾向にあった(0.71 kcal /週 /1取引;95% CI, 0.51~0.92)。 商品別にみると、表示後平均して最も減少したのは副菜で40 kcal / 1取引、次いで主菜の11 kcal / 1取引であり、清涼飲料水では変化はみられなかった。表示後の1取引当たりのエネルギー量の漸増傾向は、平均世帯収入の低い地域でより強かった。 米国では、1日のエネルギーの約3分の1を外食から摂取していると推定されており、60 kcal/1 取引の減少はわずかに食事の質の向上に貢献した 可能性はあるが、その後の1取引当たりのエネルギー量は漸増傾向であり、長期的な影響についてはさらなる研究が必要である。また、他の研究では表示方法によって効果が異なる可能性も示されていることから表示方法の検討も必要である。 世界的に、表示が求められている大手企業の外食や調理済み加工食品などの表示の効果を調べた研究は少ない(2)。日本でも、食品表示法により、加工食品についてはエネルギーなどの表示が義務付けられており、このような研究の実施が制度の評価と充実を図るために必要であると考える。 1. Crockett RA et al.Cochrane Database Syst Rev. 2018 Feb 27;2:CD009315. 2. Bleich SN et al. Obesity (Silver Spring). 2017;25(12):2018-2044.