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ハイリスク患者における急性胆嚢炎に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術と経皮的カテーテルドレナージ(CHOCOLATE):多施設無作為化臨床試験。
ハイリスク患者における急性胆嚢炎に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術と経皮的カテーテルドレナージ(CHOCOLATE):多施設無作為化臨床試験。
Laparoscopic cholecystectomy versus percutaneous catheter drainage for acute cholecystitis in high risk patients (CHOCOLATE): multicentre randomised clinical trial BMJ 2018 Oct 8 ;363 :k3965 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】急性結石性胆嚢炎のハイリスク患者において、腹腔鏡下胆嚢摘出術が経皮的カテーテルドレナージよりも優れているかどうかを評価すること 【デザイン】多施設共同無作為化比較優位性試験。 【設定】オランダの11病院、2011年2月~2016年1月。 【参加者】急性結石性胆嚢炎のハイリスク患者142例を腹腔鏡下胆嚢摘出術(n=66)または経皮的カテーテルドレナージ(n=68)に無作為に割り付けた。高リスクとは、急性生理学的評価および慢性健康評価II(APACHE II)スコアが7以上と定義された。主要評価項目は、1年以内の死亡、1ヶ月以内の感染症および心肺合併症、1年以内の再治療の必要性(急性胆嚢炎に関連した手術、放射線治療、内視鏡治療)、1年以内の胆道疾患の再発と定義しました。 【結果】本試験は、予定されていた中間解析を経て早期に終了しました。死亡率は腹腔鏡下胆嚢摘出術群と経皮カテーテルドレナージ群で差はなかったが(3%v 9%、P=0.27)、重篤な合併症は66例中8例(12%)で胆嚢摘出術群に、68例中44例(65%)で経皮ドレナージ群に発現した(リスク比0.19、95%信頼区間0.10~0.37、P<0.001)。経皮的ドレナージ群では45例(66%)で再手術が必要であったのに対し、胆嚢摘出術群では8例(12%)であった(P<0.001)。経皮的ドレナージ群では胆道疾患の再発率が高く(53% v 5%、P<0.001)、入院期間中央値は長かった(9日 v 5日、P<0.001)。 【結論】腹腔鏡下胆嚢摘出術は経皮カテーテルドレナージと比較して、急性胆嚢炎のハイリスク患者における主要な合併症の発生率を減少させた. 【TRIAL REGISTRATION】Dutch Trial Register NTR2666. 第一人者の医師による解説 日本の経皮的胆囊ドレナージは安全に施行 グレードⅢでは第1選択 石崎 陽一 順天堂大学医学部附属浦安病院消化器・一般外科教授 MMJ.April 2019;15(2) これまで手術リスクの低い急性胆嚢炎に対しては早期の腹腔鏡下胆嚢摘出術(Lap-C)が治療の第 1選択であることに異論はなかったが、手術リスクの高い患者に対する治療に関しては一定の結論は出ていなかった。今回のオランダのCHOCOLATE 研究により手術リスクの高い患者でも経皮的胆嚢 ドレナージ(PGBD)は術後合併症が多く、Lap-Cが 推奨されることが示された。 APACHE IIスコア 7以上15未満の手術リスクを有する 急性胆嚢炎 の 患者 をLap-C群(n=66) とPGBD群(n=68)に盲検的ランダム化して治 療成績を比較検討した。主要評価項目 は1年以内 の死亡、1カ月以内の重篤な合併症(腹腔内膿瘍、肺炎、心筋梗塞、肺塞栓症)、1年以内の再治療の必要 性、および1年以内の胆道疾患の再燃である。死亡 例はLap-C群2人(3%)、PGBD群6人(9%)で発 生頻度に差がなかった。しかしながら、Lap-C群の 死亡例はいずれも治療と無関係(1例は食道がん、 1例は大腸がん)であったが、PGBD群の死亡6人 中3人は急性胆嚢炎または再発胆嚢炎による敗血 症であった。手技に関連した重篤な合併症はLap-C 群8人(12 %)、PGBD群44人(65 %)とPGBD 群で高率に発症した。1年以内に再治療を要したの はLap-C群8人(12%)、PGBD群45人(66%)と PGBD群で有意に多かった。また胆道疾患の再燃 はLap-C群3人(5 %)、PGBD群36人(53 %)と Lap-C群で有意に少なかった。またPGBD群では 経過観察中に11人(16%)で緊急胆嚢摘出術、20 人(29%)で待機的胆嚢摘出術が必要であった。1 人あたりの医療経費はLap-C群4,993ポンドに 対してPGBD群では7,427ポンドと高価であっ た。以上より手術リスクの高い急性胆嚢炎に対するPGBDは術後重篤な合併症が多く、Lap-Cを施行 すべきであるとしている。 日本 か ら は 急性胆嚢炎 に 対 す る 治療指針 としてTokyo Guidelines 2018が 提唱 さ れ て い る。 CHOCOLATE研究 では 急性胆嚢炎 の 重症度 が 記載されていないが、Tokyo Guidelinesでは急性胆 嚢炎の重症度に応じた治療アルゴリズムが示されている(1)。Grade I、IIでは早期のLap-Cが推奨されているが、Grade IIIでは経験豊富な内視鏡外科医に よるLap-Cが可能でない場合は治療の第1選択は PGBDであり、その後の待機的 Lap-Cが推奨されている(2)。日本ではPGBDは合併症も少なく安全に施行されており、最近では内視鏡的経乳頭的な胆嚢 ドレナージも治療選択肢の1つとされている(3)。 1. Yokoe M, et al. J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2018;25(1):41-54. 2. Mukai S, et al. J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2017;24(10):537-549. 3. Mori Y, et al. J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2018;25(1):87-95.