「MMRワクチン」の記事一覧

はしか、おたふくかぜ、風疹のワクチン接種と自閉症。全国規模のコホート研究。
はしか、おたふくかぜ、風疹のワクチン接種と自閉症。全国規模のコホート研究。
Measles, Mumps, Rubella Vaccination and Autism: A Nationwide Cohort Study Ann Intern Med. 2019 Apr 16;170(8):513-520. doi: 10.7326/M18-2101. Epub 2019 Mar 5. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】麻疹・おたふくかぜ・風疹(MMR)ワクチンと自閉症との関連性の仮説は、引き続き懸念を引き起こし、ワクチン接種を困難にしている。 【目的】MMRワクチンが、子ども、子どものサブグループ、接種後の時間帯で自閉症のリスクを高めるかどうかを評価する。 【デザイン】全国規模のコホート研究。 【設定】デンマーク。 【参加者】1999年から2010年12月31日までにデンマークで生まれた657 461人の小児を対象とし、1歳以降2013年8月31日まで追跡調査を行った。 測定 【方法】デンマークの人口登録を用い、MMRワクチン接種、自閉症診断、他の小児ワクチン、自閉症の兄弟歴、自閉症危険因子に関する情報をコホート内の小児と関連づけた。Cox比例ハザード回帰を用いた自閉症診断までの期間の生存分析により,年齢,出生年,性別,他の小児用ワクチン,兄弟の自閉症歴,自閉症リスク因子(疾患リスクスコアに基づく)を調整し,MMRワクチン接種状況に応じた自閉症のハザード比を推定した。 【結果】5025 754人年の追跡期間に,6517名が自閉症と診断された(発生率,10万人年当たり129.7名分)。MMRワクチン接種児とMMRワクチン非接種児を比較すると、完全調整済み自閉症ハザード比は0.93(95%CI、0.85~1.02)であった。同様に、自閉症の兄弟歴、自閉症リスク因子(疾患リスクスコアに基づく)、他の小児予防接種、または接種後の特定の期間によって定義された小児のサブグループにおいても、MMR接種後の自閉症リスクの増加は一貫して認められなかった。 【限定】個々の医療カルテのレビューは行わなかった。 【結論】本研究は、MMR接種が自閉症リスクを増加させず、感受性児の自閉症を誘発せず、接種後の自閉症例の集積と関連がないことを強く支持するものであった。統計的検出力を高め、感受性の高いサブグループと症例の集積の仮説に取り組むことで、これまでの研究に新たな一歩を踏み出すことができた。 第一人者の医師による解説 大規模コホートで示された 臨床的に非常に重要な知見 宇野 洋太 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神疾患病態研究部室長 MMJ.June 2019;15(3) 本研究の目的は、麻疹・ムンプス・風疹(MMR) ワクチンと自閉症発症の関係を調べることである。 MMRと 自閉症発症 の 関係 は、1998年 にLancet 誌に掲載され、後に取り下げとなった論文に端を発した仮説である。その後、2014年にはワクチン 接種と自閉症発症の関係を調べたメタアナリシス が発表された。解析に採用されたMMRと自閉症の 関係を調査した研究(2編のコホート研究および4 編の症例対照研究)はすべて両者が無関係であることを報告しており、当然メタアナリシスの結果 も同様であった。さらにその後、2編の研究(1),(2)が報告されているが、そのいずれも同様の結果を述べている。つまり最初の仮説が提唱された後、今日に至るまでの20年以上の間、主要な観察研究のいずれにおいてもMMR接種後、自閉症発症リスクの上昇がみられることを示したものはない。それにもかかわらず、この仮説への懸念やワクチン接種への抵抗感は十分払拭されたとはいえないため本研究が実施されるに至った。 本研究ではデンマークの全国コホートを用い、 1999~2010年に生まれた子ども657,461人 を1歳から2013年8月31日まで、自閉症の診断、 MMRを含むワクチンの接種歴、自閉症の同胞(兄 弟姉妹)歴などに関して調べた。 観察されたのは5,025,754人・年で、6,517 人が自閉症と診断された。MMR非接種児と比較し、 MMR接種児における自閉症の補正ハザード比は 0.93(95%信頼区間[CI], 0.85~1.02)であった。 その他、同胞歴、自閉症の危険因子、他のワクチン 接種歴、ワクチン接種から診断に至るまでの期間などを考慮したサブグループでも同様の結果であった。つまり本研究もMMRの接種が自閉症発症のリスクを上昇させないというこれまでの先行研究の結果を強く支持するものであった。 本論文の仮説となっているLancet誌に掲載された論文は、方法論的、また倫理的な問題から取り下げとなり、その筆者は医師免許剥奪となっている。 さらに日本を含む世界各国で広く観察研究、また動物を使っての介入研究も実施されたが、いずれにおいてもネガティブな結果が示されている。つまり科学的に仮説としてすら成立していないわけであるが、それが発展し、MMRのみならずチメロサール含有ワクチン、混合ワクチン、生後早期のワクチン接種などと自閉症発症リスクの問題が都市 伝説的に不安視され、それに基づく除去療法なども行われている現状がある。著者の述べる通り、これらの不安に対し引き続き科学的根拠を示すことが必要で、臨床的に非常に重要な知見が本論文によってさらに重ねられた。 1. Jain A, et al.JAMA. 2015;313(15):1534-1540.(MMJ, February 2016;12, 1: 40-41) 2. Uno Y, et al.Vaccine. 2015;33(21):2511-2516.