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未病の消化不良に対する管理戦略の有効性:系統的レビューとネットワークメタ解析。
未病の消化不良に対する管理戦略の有効性:系統的レビューとネットワークメタ解析。
Effectiveness of management strategies for uninvestigated dyspepsia: systematic review and network meta-analysis BMJ 2019 Dec 11;367:l6483. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】uninvestigated dyspepsiaに対する管理戦略の有効性を明らかにすること。 【デザイン】系統的レビューとネットワークメタ分析。 【データソース】言語制限なしで、開始時から2019年9月までのMedline, Embase, Embase Classic, the Cochrane Central Register of Controlled Trials, clinicaltrials. gov 。2001年から2019年までのConference proceedings。 [ELIGIBILITY CRITITERIA FOR SELECTING STUDIES]成人参加者(年齢18歳以上)における未調査の消化不良に対する管理戦略の有効性を評価した無作為化対照試験。対象となる戦略は、迅速な内視鏡検査、Helicobacter pyloriの検査と陽性者への内視鏡検査、H pyloriの検査と陽性者への除菌治療(「検査と治療」)、経験的酸抑制、または症状に基づいた管理であった。試験は、最終フォローアップ(12ヶ月以上)における症状状態の二値的評価を報告した。 【結果】レビューでは、成人被験者6162人を含む15の適格無作為化対照試験が特定された。データは、ランダム効果モデルを用いてプールされた。戦略はPスコアに従って順位付けされた。Pスコアとは、ある管理戦略が他の管理戦略よりも優れているという確信の程度を平均したもので、競合するすべての戦略に対して平均されたものである。「検査と治療」は第1位(症状残存の相対リスク0.89、95%信頼区間0.78~1.02、Pスコア0.79)、「迅速内視鏡検査」は第2位で、同様の成績(同 0.90 0.80~1.02 、Pスコア0.71)であった。しかし、どの戦略も "test and treat "よりも有意に低い効果を示さなかった。"test and treat "に割り当てられた参加者は、症状に基づいた管理(相対リスクv 症状に基づいた管理 0.60, 0.30~1.18) を除く他のすべての戦略よりも内視鏡検査を受ける確率が有意に低かった(相対リスクv 内視鏡検査の促進 0.23, 95%信頼区間 0.17~0.31, P score 0.98).管理に対する不満は、「検査と治療」(相対リスクv0.67、0.46~0.98)、および経験的酸抑制(相対リスクv0.58、0.37~0.91)よりも、迅速内視鏡検査(Pスコア0.95)のほうが有意に低かった。上部消化管癌の発生率は、すべての試験で低値であった。感度分析でも結果は安定しており、直接結果と間接結果の間の矛盾は最小限であった。個々の試験のバイアスリスクは高かった;実用的な試験デザインのため、盲検化は不可能であった。 【結論】「Test and treat」は、迅速内視鏡検査と同様のパフォーマンスを示し、他のどの戦略よりも優れていなかったが、第1位であった。「検査と治療」は、症状に基づく管理を除く他のすべてのアプローチよりも内視鏡検査を少なくすることにつながった。しかし、参加者は症状の管理戦略として迅速な内視鏡検査を好む傾向が見られた。[SYSTEMATIC REVIEW REGISTRATION]PROSPERO登録番号CRD42019132528。] 第一人者の医師による解説 理にかなうピロリ菌検査 内視鏡検査なしの実施は医療保険適用外に留意 近藤 隆(講師)/三輪 洋人(主任教授) 兵庫医科大学消化器内科学 MMJ.August 2020;16(4) 内視鏡検査未施行のディスペプシア症状のある患者で、警告症状・徴候のない場合、どのような治療戦略を選ぶべきかについて、臨床現場では判断に迷うことが多い。実際の治療戦略としては以下が挙げられる:(1)直ちに内視鏡検査を実施する(2)ピロリ菌検査を行い、陽性者に内視鏡検査を実施する(3)ピロリ菌検査を行い、陽性者に除菌治療を実施する(4)全症例に酸分泌抑制薬を投与する(5)ガイドラインの推奨もしくは医師の通常診療として、症状に応じた治療を実施する。 これまでに、個々の治療戦略同士を比較したランダム化対照試験(RCT)はいくつか実施されているが、どの戦略も効果は同程度であり、初期管理のアプローチ選択については意見が分かれているのが現状である。 本論文の系統的レビューでは、内視鏡検査未施行のディスペプシア患者に対する長期マネージメントとして、プライマリーケアレベルでどの戦略を行うのが良いかについて、ネットワークメタアナリシスの手法を用いて15件のRCT(ディスペプシア患者計6,162人)を対象に解析している。その結果、プライマリーケアレベルにおいて、ピロリ菌検査を行い陽性者に除菌治療を実施する治療戦略(3)が症状残存の相対リスクが最も低く(相対リスク, 0 .89;95% CI, 0 .78~1.02;P=0 .79)、さらに内視鏡検査の施行を有意に減らすことが判明した。 一方で、患者の満足に関しては、直ちに内視鏡検査を実施する治療戦略(1)が有意に高く、ディスペプシア患者は内視鏡検査を好む傾向にあるといえる。ただ、今回のメタアナリシスでは、ディスペプシア患者におけるがん発見率に関しては、上部消化管がんの割合は0.40%と低く、この結果からは少なくとも警告症状・徴候のないディスペプシア患者に対して、急いで内視鏡検査を実施する必要はないことを意味しており、費用対効果の観点からも同様のことが言えよう。 また、日本の「機能性消化管疾患診療ガイドライン2014̶機能性ディスペプシア(FD)」では、ピロリ菌除菌から6~12カ月経過後に症状が消失または改善している場合はH. pylori関連ディスペプシアとし、FDと異なる疾患と定義されている。したがって、まずピロリ菌の有無を調べる方法は、H.pylori関連ディスペプシアを除外し、本当のFD患者を選定するには理にかなった戦略と言えるだけでなく、将来に生じうる胃がんの予防的観点からも有用であると考える。 ただ、日本におけるディスペプシア症状に対するピロリ菌除菌の有効性は欧米よりは高いとはいえ10%程度と限定的であること、さらに内視鏡検査なしにピロリ菌検査を行う場合、医療保険が適用されないことに留意する必要がある。