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血清尿酸値に対する食事の幅広い寄与の評価:人口ベースコホートのメタアナリシス
血清尿酸値に対する食事の幅広い寄与の評価:人口ベースコホートのメタアナリシス
Evaluation of the diet wide contribution to serum urate levels: meta-analysis of population based cohorts BMJ 2018 Oct 10 ;363 :k3951 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】食事の構成要素と血清尿酸値との関連を系統的に検証し、血清尿酸値の集団分散に対する食事パターンの推定値と遺伝的変異の相対的寄与を評価する。 【デザイン】米国の断面データのメタ解析。 【データソース】5件のコホート研究。 【レビュー方法】米国のヨーロッパ系祖先16 760人(男性8414人、女性8346人)を解析に含めた。対象者は、18歳以上で、腎臓病や痛風がなく、尿酸降下薬や利尿薬を服用していない人であった。すべての参加者は、血清尿酸値の測定、食事調査データ、潜在的交絡因子に関する情報(性別、年齢、肥満度、1日の平均カロリー摂取量、教育年数、運動レベル、喫煙状況、閉経状況)、ゲノムワイド遺伝子型を持っていた。主なアウトカム指標は、血清尿酸値の平均値と血清尿酸値の分散であった。多変量線形回帰分析のβ値(95%信頼区間)およびボンフェローニ補正P値、回帰部分R2値を用いて関連を定量的に評価した。 【結果】男性、女性、または完全コホートにおいて、7つの食品が血清尿酸値上昇と関連し(ビール、酒、ワイン、ジャガイモ、鶏肉、ソフトドリンク、肉(牛、豚、ラム))、8つの食品が血清尿酸値低下と関連していた(卵、ピーナッツ、冷たいシリアル、脱脂乳、チーズ、ブラウンパン、マーガリン、非シトラス果実)。健康的な食事ガイドラインに基づいて構築された3つの食事スコアは血清尿酸値と逆相関し、4番目のデータ駆動型の食事パターンは血清尿酸値上昇と正相関したが、それぞれ血清尿酸値の分散の0.3%以下を説明することができた。これに対し、血清尿酸値の分散の23.9%は、一般的な、ゲノム幅の広い一塩基の変異によって説明された。 【結論】遺伝的寄与とは対照的に、食事は一般集団における血清尿酸値の変動をほとんど説明しない。 第一人者の医師による解説 塩基変異影響も踏まえ、アジア・日本でも各世代別 /性別での検討が必要 大内 基司(獨協医科大学医学部薬理学講座准教授)/安西 尚彦(千葉大学大学院医学研究院薬理学教授) MMJ.April 2019;15(2) 高尿酸血症は痛風の主要危険因子であり、さまざまな疾患と関連付けられている。尿酸は肝臓で生成され排出は腎臓からを主とし、腸管からも排出され体内の尿酸値が決定されている。体内尿酸のバランスは遺伝要因と環境要因で修飾される。今日まで、血清尿酸値に対する食事の寄与の系統的 解析は、大きなデータセットでは行われていない。 本研究は、血清尿酸値への食事全体の関連付け研究において個々の食事成分を系統的に解析し、また 血清尿酸値に食事全体とゲノムワイド一塩基変異 の相対的寄与を定量化することを目的とし、米国の 5つのコホート研究(ARIC、CARDIA、CHS、FHS、 NHANES III)を使用した。 食事質問票の記載が10%未満、摂取予想カロリー が600キロカロリー未満や4,200キロカロリー 超などの除外基準が定められ、5つのコホートの男女比はほぼ 同率(44.8~56.7%)で、平均血清 尿酸値 5.18~5.84mg/dL、平均年齢26~72 歳(CHS[参加者1,954人]が72±5歳)と幅があった。15の食品が尿酸値との関連で挙がり、まだ確立していない9食品で尿酸値上昇に鶏肉、ジャガイモ、低下にはチーズ、非柑橘類フルーツ、黒 パン、ピーナッツ、マーガリン、シリアル、卵が挙がった。しかし、それぞれは血清尿酸値分散の1% 未満を説明するのに過ぎなかったとし、同様に食事スコア(DASH diet(1) 0.28%、Healthy Eating diet 0.15%、Mediterranean diet 0.06%)も影響が非常に小さかったとしている。一方、一般的 な遺伝的変異体によって説明される遺伝率推定値 は23.9%(NHANES IIIを除く)(男性23.8%、 女性40.3%)で、ゲノムワイド関連研究でのトラ ンスポーター関連の一塩基多型含め30の変異体(2) からなる遺伝的リスクスコアは血清尿酸値分散の 7.9%を説明するとした。また、遺伝的リスクスコアと交互作用を示したのは、DASH dietスコアの 女性コホートのみであった(P=0.04)。したがって今回のデータセットでは、受け継がれた遺伝的変異と比較すると、食事全体による血清尿酸値分散への影響ははるかに少ないと報告している。 一方で、本研究では腎臓病、痛風、尿酸降下薬や 利尿薬服用を除外している。除外項目や平均尿酸値 から高尿酸血症の低含有率も予想される。また耐糖 能異常や糖尿病と尿酸値は複雑な関連性があり、本研究における5つのコホート研究の糖尿病有病率(低い順に0.53、1.01、3.92、5.39、6.22%)は米国の推測される糖尿病有病率(20歳以上の9.8% [1988~1994年]、12.4%[2011~2012年])(3) より低い中での検討であることに注意して解釈す べきである。糖尿病有無別の詳細な検討や、アジア・ 日本でも世代別・性別での検討を含め、今後さらなるデータ解析が待たれる。 1. Fung TT, et al. Arch Intern Med. 2008;168(7):713-720. 2. Köttgen A, et al. Nat Genet. 2013;45(2):145-154. 3. Menke A, et al. JAMA. 2015;314(10):1021-1029.