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早すぎる自然閉経および手術による閉経と心血管疾患の発症との関連性
早すぎる自然閉経および手術による閉経と心血管疾患の発症との関連性
Association of Premature Natural and Surgical Menopause With Incident Cardiovascular Disease JAMA 2019 Dec 24;322(24):2411-2421. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】最近のガイドラインでは、中年女性の動脈硬化性心血管疾患リスク評価の精緻化のために、40歳以前の閉経歴を用いることが推奨されている。この集団における心血管疾患リスクに関する確固たるデータは不足している。 【目的】40歳前の自然閉経および外科的閉経を有する女性における心血管疾患の発症と心血管リスク因子を検討する。 【デザイン,設定,参加者】2006年から2010年に募集した英国の成人居住者によるコホート研究(UK Biobank)である。試験登録時に40~69歳で閉経後の女性のうち,144 260人が組み入れ対象となった。フォローアップは2016年8月まで行われた。 【曝露】自然早発閉経(卵巣摘出術を行わない40歳前の閉経)および外科的早発閉経(40歳前の両側卵巣摘出術)。早発閉経のない閉経後女性を参照群とした。 【主要評および測定法】主要アウトカムは、冠動脈疾患、心不全、大動脈弁狭窄、僧帽弁閉鎖不全症、心房細動、虚血性脳卒中、末梢動脈疾患、静脈血栓塞栓症の発症を複合したものであった。副次的アウトカムには,主要アウトカムの個々の要素,高血圧,高脂血症,2型糖尿病の発症が含まれた。 【結果】対象となった閉経後女性144 260名(登録時の平均[SD]年齢,59.9[5.4]歳)のうち,自然早発閉経は4904(3.4%),外科的早発閉経は644(0.4%)であった。参加者は中央値で 7 年間追跡された(四分位範囲,6.3~7.7).主要転帰は、早発閉経を認めなかった女性5415人(3.9%)(発生率、5.70/1000人年)、自然早発閉経の女性292人(6.0%)(発生率、8.78/1000人年)(早発閉経なしとの差、+3.08/1000人年[95])に発生した。08/1000女性年[95% CI, 2.06-4.10];P < 0.001)、および外科的早発閉経(発生率、11.27/1000女性年)49女性(7.6%)(早発閉経なしとの差、+5.57/1000女性年[95% CI, 2.41-8.73];P < 0.001 )であった。主要アウトカムについては、従来の心血管疾患リスク因子および更年期ホルモン療法の使用で調整した後、自然および外科的早発閉経は、それぞれ1.36(95%CI、1.19-1.56;P < .001)および 1.87(95%CI, 1.36-2.58;P < .001)のハザード比と関連していた。【結論と関連性】自然および外科的早発閉経(40歳前)は、閉経後女性における心血管疾患の複合リスクとわずかではあるが統計的に有意な増加と関連していた。これらの関連性の根底にあるメカニズムを理解するために、さらなる研究が必要である。 第一人者の医師による解説 エストロゲン低下が心血管疾患の病態に直接関与することを示唆 武谷 雄二 東京大学名誉教授・医療法人レニア会理事長(アルテミスウイメンズホスピタル産婦人科) MMJ.June 2020;16(3) 先進諸国における中高年女性の主要な死因は心血管疾患である。日本でも高齢女性の死因の第2位、 3位はそれぞれ心疾患、脳卒中であり、合わせると悪性腫瘍に匹敵する。 エストロゲン(E)の血中濃度は閉経数年前から徐々に低下傾向がみられ、閉経後4~5年程度で検出限界に近づき、その後は低値を維持する。閉経年齢は50~52歳が平均的である。10%程度の女性は45歳未満に閉経を迎える。40歳未満の閉経は約1%であり早発閉経(premature menopause; PM)と呼ばれる。 閉経年齢が若いほどE欠落症状 (骨粗鬆症、動脈硬化など)が早期に現れる。さらに Eの低下は心血管疾患の危険因子としても注目されている。 本研究は、PMはい か な る 心血管疾患 のリスク を高めるかを調査した。対象は英国在住の閉経女性144,260人(40~69歳、平均年齢59.9歳、 約95%は白人)で約7年間前向きに心血管疾患の発症を調査した。3.8%はPMで、そのうち外科的 PM(卵巣切除)は10%強であった。 そ の 結果、何 ら か の 心血管疾患 が 非 PM群 の 3.9%、自然 PM群の6.0%、外科的 PM群の7.6% に発生した。いずれのPM群も非 PMと比較し、心血管疾患の発生率が有意に高く(P<0.001)、喫煙、Eの補充療法、高血圧、2型糖尿病、高脂血症などの有無で補正しても、ハザード比はそれぞれ1.36、 1.87と有意に高かった(P<0.001)。PM群で高 頻度にみられた心血管疾患は、冠動脈疾患、心不全、 大動脈弁狭窄症、心房細動、心虚血性発作、静脈血栓 塞栓症,虚血性脳卒中(特に自然 PM群)などであった。なお、末梢動脈疾患は閉経年齢との関連は乏しかった。全体として、閉経年齢は心血管疾患、メタボリックシンドローム関連疾患(高血圧、2型糖尿病、 高脂血症)などの発生率と逆相関を示し、特にPM 群ではいずれも高率であった。 早期のEの低下が、虚血性心疾患のみならず、脳卒中を含む多様な心血管疾患およびメタボリックシンドローム関連疾患のリスクを高めることは新たな知見である。しかし、PM群ではメタボリックシンドローム関連疾患の有無で補正しても心血管疾患のリスクは高く、Eの低下が心血管疾患の病態に直接関与することが示唆される。 外科的 PMの方が自然 PMと比べ、心血管疾患やメタボリックシンドローム関連疾患の発生率が高かった。この説明として、自然 PMの卵巣では、閉経後も微量のEとある程度のテストステロン(T) の分泌は保たれており、Tは脂肪組織などでEに転換される。一方、外科的PMではEやTの分泌はなく、 そのため血中E濃度はより低値であったことが考えられる。