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妊娠中のβ-ブロッカー使用と先天性奇形のリスク。国際コホート研究
妊娠中のβ-ブロッカー使用と先天性奇形のリスク。国際コホート研究
β-Blocker Use in Pregnancy and the Risk for Congenital Malformations: An International Cohort Study Ann Intern Med 2018 Nov 20 ;169 (10 ):665 -673 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】β-ブロッカーは、妊娠中によく使用される降圧薬の一種である。 【目的】β-ブロッカーへの第1期曝露に関連する主要な先天奇形のリスクを推定する。 【デザイン】コホート研究 【設定】北欧5か国の健康登録および米国のメディケイドデータベース 【患者】高血圧の診断を受けた妊婦およびその子孫。 【測定】ベータブロッカーの第1期への曝露が評価された。アウトカムは、主要な先天性奇形、心奇形、唇裂または口蓋裂、中枢神経系(CNS)奇形とした。 【結果】北欧コホートでは高血圧性妊娠の女性3577人,米国コホートでは14900人のうち,それぞれ682人(19.1%),1668人(11.2%)が第1期にβブロッカーに曝露されていた。β遮断薬に関連するプールされた調整相対リスク(RR)および1000人曝露あたりのリスク差(RD1000)は、1.07(95%CI、0.89から1.30)および3.0(CI、-6.6から12.6)であった。6)、心奇形では1.12(CI, 0.83~1.51) と2.1(CI, -4.3~8.4) 、唇裂または口蓋裂では1.97(CI, 0.74~5.25) と1.0(CI, -0.9~3.0) であった。中枢神経系奇形については,調整済みRRは1.37(CI,0.58~3.25),RD1000は1.0(CI,-2.0~4.0)であった(米国のコホートデータのみによる) 【Limitation】解析対象が生児に限られており,曝露が調剤に基づいており,唇または口蓋裂と中枢神経系奇形はアウトカム数が少ないことが示された。 【結論】母親の妊娠第1期におけるβ遮断薬の使用は、測定された交絡因子とは無関係に、奇形全体や心奇形のリスクの大きな上昇と関連しないことが示唆された。 【Primary funding source】Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human DevelopmentおよびSöderström König Foundation。 第一人者の医師による解説 大規模データによる国際コホート研究ならではの重要な知見 犬塚 亮 東京大学医学部附属病院小児科講師(外来医長) MMJ.April 2019;15(2) 高血圧合併妊娠の頻度は全妊婦の0.5~5%とされるが(1)、加重型妊娠高血圧腎症・常位胎盤早期 剥離・早産・胎児発育不全の増加などのさまざまな周産期リスクと関連することが知られているため、 適切な降圧薬治療により高血圧の重症化を防止することが重要である。β遮断薬は、Ca拮抗薬やメチルドパと並び妊娠中に使用される頻度が高い降圧薬であるが、妊婦への投与に関する安全性のデータはまだ十分でない。 妊娠中のβ遮断薬投与の影響に関して、現在得られているヒトのデータの多くは観察研究によるもので、β遮断薬への曝露の有無でリスクを比較すると、高血圧などの背景疾患の有病率が異なるため、 β遮断薬の投与による影響と背景疾患の違いによる影響を区別することができない。特に著者らの先行研究において、高血圧の合併自体が先天奇形のリスク上昇に関係することが示されており、β遮断薬への曝露の影響を知るためには、「高血圧」と いう交絡因子を除く必要がある。 本研究は、高血圧合併妊婦 を対象にした 北欧・ 米国6カ国の国際コホート研究である。北欧では 3,577人中682人(19.1%)、米国では14,900 人中1,668人(11.2%)で妊娠第1期にβ遮断薬 が使用されていた。β遮断薬投与群と降圧薬無投与 群で傾向スコアを用いてマッチングして比較したところ、先天奇形全般、先天性心疾患、口唇口蓋裂、 中枢神経異常のいずれの発生率においても、有意差を認めなかった。 本研究では、大規模データを用いることで、高血圧合併妊娠のみを解析対象とすることができ、重 要な交絡因子である「高血圧」の有無に関して、2群 の背景をそろえることができている。また、傾向スコアを用いることで、β遮断薬を実際に使用された群と、使用されてもおかしくなかった(が実際に は投与されなかった)群を比較することで、その他の背景因子についても補正している。医療習慣の 異なる北欧と米国で同様の結果が得られたことも 研究結果の正しさを支持している。一方で、研究の限界として、収集されていない背景因子については補正ができていないこと、妊娠中のβ遮断薬の使用に関して臨床的により問題になる胎児発育不全に関する解析が行われていないこと、などが挙げられる。しかし、本研究の結果は倫理的にランダム化比較試験を行うことが困難である妊娠という状況において、β遮断薬の安全性を支持する非常に重要な知見である。 1. 妊娠高血圧症候群の診療指針 2015̶Best Practice Guide̶日本妊娠高血圧学会