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先天性胆汁酸代謝異常症~知っておきたい希少疾患
先天性胆汁酸代謝異常症~知っておきたい希少疾患
 先天性胆汁酸代謝異常症は、肝臓において胆汁酸の生合成を担う酵素群のいずれかの遺伝子が欠損している先天性疾患である。毒性のある中間代謝物(異常胆汁酸または胆汁アルコール)が肝細胞内に蓄積する進行性の疾患であり、適切な治療を行わなければ重度の肝疾患により生命を脅かす可能性がある。今回は、先天性胆汁酸代謝異常症およびその治療薬であるオファコル Ⓡ[一般名:コール酸]についての取材内容を紹介する。 肝障害を呈する「先天性胆汁酸代謝異常症」  先天性胆汁酸代謝異常症は、胆汁酸生合成の過程に関与するいずれかの酵素が遺伝的に欠損することにより、毒性のある中間代謝物(異常胆汁酸または胆汁アルコール)が肝細胞内に蓄積し、肝機能障害を生じる進行性の疾患であること、また生命活動において必要不可欠な胆汁酸を自ら生合成することができないことから、適切な治療を行わなければ死亡に至るケースも少なくない。先天性胆汁酸代謝異常症は12種類の疾患に分類されるが、本邦で報告されている症例は、HSD3B欠損症、AKR1D1欠損症、CYP7B1欠損症、脳腱黄色腫症(CTX)の4種類である1~5) 。早期に治療されれば予後は比較的良好であるが、発見が遅れれば肝移植の適応となり予後が悪いと言われている。 非常に稀な疾患も新生児~成人にかけて診断される可能性あり  先天性胆汁酸代謝異常症は、非常に稀な疾患であり、本邦における先天性胆汁酸代謝異常症患者数は、HSD3B欠損症、AKR1D1欠損症、CYP7B1欠損症の3疾患合わせて10人未満、CTXで60人程度の報告にとどまっており、欧米と比較し本邦では報告症例が少なく、これまで発見されていない症例もあると考えられる。拡大新生児スクリーニングの普及や今回の治療薬の承認を機に、今後の診断率の向上による早期発見が期待される。 原因不明の肝障害や黄疸、尿検体から異常胆汁酸を測定  以下のような所見がみられる場合には先天性胆汁酸代謝異常症を疑う。  ・原因不明の肝障害、肝疾患  ・家族性の肝疾患(特に兄弟例など)  ・新生児肝炎と診断された後、症状の改善が見られない  ・胆汁うっ滞があるにもかかわらず‘かゆみ’ がない  ・慢性下痢を伴う発育不全のある乳児(軟便のこともあり)  ・脂溶性ビタミン欠乏症状(頭蓋内出血、原因不明のくる病など)  ・若年性白内障、黄色腫  注目すべきは閉塞性黄疸が存在するにかかわらず血清総胆汁酸とγ-GTP が正常か低値という特徴がみられる点である。異常胆汁酸の測定には、液体クロマトグラフ質量分析法による胆汁酸分析が有用である。検体には、血清、尿、便、胆汁などが用いられるが、採取の容易さと排出量からも尿検体が最も適切であると考えられる。また、異常胆汁酸が検出された場合には、遺伝子解析を実施し、確定診断を行う。 先天性胆汁酸代謝異常症の標準治療薬「コール酸」、承認までの道のり  海外では、コール酸は先天性胆汁酸代謝異常症の治療薬としての使用実績があり、古くから臨床研究報告が発表され経験的に有効性及び安全性が確認されてきた歴史がある。このことから欧米では、コール酸が先天性胆汁酸代謝異常症の適応で承認されており、標準的治療法とされている6~9)。 一方、日本ではコール酸製剤は無く、ケノデオキシコール酸は胆石溶解薬としてのみ承認されていた。そのため、日本小児栄養消化器肝臓学会および日本先天代謝異常学会からの要望を受け、厚生労働省の「未承認薬・適応外薬検討会議」より開発企業の募集が行われ、株式会社レクメドは仏CTRS社(現:THERAVIA社)と共同で本剤の国内開発に着手し、2020年8月に先天性胆汁酸代謝異常症に対し希少疾患用医薬品指定を受け、2023年3月に本邦で初めて「先天性胆汁酸代謝異常症」を効能効果とするオファコル Ⓡカプセル50mg(製造販売元:株式会社レクメド)が承認された。 日本初の先天性胆汁酸代謝異常症治療薬オファコルⓇカプセルが登場  オファコル Ⓡは、コレステロールから胆汁酸への生合成ステップを促進する最初の酵素(Cholesterol-7 α-hydroxylase)に対して負のフィードバックをかけて毒性のある中間代謝物の生成を抑制する。また、欠乏するコール酸を補充することで、胆汁流量を増加させ、肝臓内に蓄積した毒性物質の排出を促進し、胆汁うっ滞を改善する。さらに、脂溶性ビタミンと脂肪の吸収を促進し、成長障害等を改善する。  承認にあたり、4名の日本人患者を対象にオファコル Ⓡを5~15mg/kg/日、74週間経口投与を行う国内第III相臨床試験を実施した。4名とも既にケノデオキシコール酸による治療を受けており、治験開始時にコール酸への切換えを行った。4名中1名でコール酸投与開始後に尿中および血清中の異常胆汁酸濃度の低下、肝機能検査値の改善、血清中ビタミンD濃度の上昇が認められた。他の3名では、ケノデオキシコール酸の治療により治験開始時に既に症状が安定しており、コール酸への切換え後も尿中および血清中の異常胆汁酸濃度は概ね安定して推移し、AST、ALTおよび血清中ビタミンD濃度も概ね基準値範囲で維持した。臨床試験における副作用は、一過性の低カルシウム血症が1名で認められた10) 。オファコルの安全性および有効性については、使用成績調査(全例調査)により引き続き情報収集が行われている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 参考資料 1) Ueki I, et al. J Gastroenterol Hepatol. 2009; 24: 776-85.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/19175828/ 2) Mizuochi T, et al. Pediatr Res. 2010; 68: 258-63.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/20531254/ 3) Nittono H, et al. Pediatr Int. 2010; 52: e192-5.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/20958862/ 4) Seki Y, et al. J Inherit Metab Dis. 2013; 36: 565-73. ▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/23160874/ 5) Mizuochi T, et al. Liver Transpl. 2011; 17: 1059-65.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/21567895/ 6) Setchell K, et al. Cambridge University Press. 2007; 736-66. 7) Gonzales E, et al. Gastroenterology. 2009; 137: 1310-1320.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/19622360/ 8) Sundaram SS, et al. Nat Clin Pract Gastroenterol Hepatol. 2008; 5: 456-68. ▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/18577977/ 9) Gonzales E, et al. Orphanet J Rare Dis. 2018; 13: 190.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/30373615/ 10) オファコルⓇカプセル50mg添付文書 ▶https://www.reqmed.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2023/06/オファコルカプセル50mg-添付文書_v2.pdf ヒポクラ × マイナビ無料会員登録はこちら▶https://www.marketing.hpcr.jp/hpcr