「骨髄線維症(MF)」の記事一覧

新たに承認された骨髄線維症治療薬モメロチニブの日本人サブ解析結果
新たに承認された骨髄線維症治療薬モメロチニブの日本人サブ解析結果
公開日:2024年8月8日 Shimoda K, et al. Int J Hematol. 2024 Aug 7. [Epub ahead of print]  モメロチニブは、ヤヌスキナーゼ(JAK)1、JAK2の阻害に加え、アクチビンA受容体1型(ACVR1)を阻害する1日1回経口投与の骨髄線維症(MF)治療薬として、2024年6月に本邦でも承認された。主要な第III相臨床試験であるMOMENTUM試験およびSIMPLIFY-1試験において、MF患者の症状、脾臓、貧血に対する改善効果が報告されている。宮崎大学の下田 和哉氏らは、JAK阻害薬未治療の日本人MF患者におけるモメロチニブとルキソリチニブの有効性および安全性を評価するため、SIMPLIFY-1試験のサブ解析を行った。International Journal of Hematology誌オンライン版2024年8月7日号の報告。  対象は、国際共同第III相ランダム化二重盲検比較試験SIMPLIFY-1試験に参加したJAK阻害薬未治療の日本人MF患者。対象患者は、モメロチニブ群(200mg 1日1回)またはルキソリチニブ群(20mg 1日2回)に1:1でランダムに割り付けられ、24週間治療を行った。その後、非盲検でモメロチニブの投与を行った。主要エンドポイントは、24週時点での脾臓縮小率(SRR、脾臓容積35%以上減少)とし、副次的エンドポイントは、総合症状スコア(TSS)反応率(50%以上減少)、輸血非依存率とした。 主な結果は以下のとおり。 ・日本人MF患者15例(モメロチニブ群:6例、ルキソリチニブ群:9例)が登録され、全例が治療を完了した。 ・24週時点でのSRRは、モメロチニブ群50.0%、ルキソリチニブ群44.4%であった。 ・TSS反応率は、モメロチニブ群33.3%、ルキソリチニブ群0%であった。 ・輸血非依存率は、モメロチニブ群83.3%、ルキソリチニブ群44.4%であった。 ・すべてのグレードにおける治療関連有害事象(TRAE)の発生率は、モメロチニブ群83.3%、ルキソリチニブ群88.9%であった。 ・グレード3〜4のTRAE発生率は、モメロチニブ群0%、ルキソリチニブ群55.6%(貧血[55.6%]、めまい[11.1%])であった。  著者らは「JAK阻害薬未治療の日本人MF患者に対しモメロチニブは、忍容性が良好であり、脾臓や症状の改善および輸血の必要性を減少させることが明らかとなった」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Shimoda K, et al. Int J Hematol. 2024 Aug 7. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39110143 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
骨髄増殖性腫瘍~知っておきたい希少疾患
骨髄増殖性腫瘍~知っておきたい希少疾患
 骨髄増殖性腫瘍とは、造血幹細胞において後天的遺伝子変異が生じることで、血液細胞が過剰に造られてしまう疾患の総称である。遺伝子変異の種類により、白血球、赤血球、血小板の増殖がみられ、この増殖タイプの違いにより、いくつかの疾患に分類される。今回は、骨髄増殖性腫瘍のうち、真性多血症、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症について簡単に紹介する。 赤血球の増加がみられる「真性多血症」血栓症リスクに要注意  真性多血症は、とくに赤血球の増加を呈する疾患であり、90%以上の患者においてJAK2遺伝子変異が認められる。赤血球の増加により、赤ら顔、眼の結膜充血、入浴時の皮膚掻痒感、頭痛、めまい、疲労、倦怠感などの症状がみられる。真性多血症では、血栓症リスク(心筋梗塞、脳梗塞、下肢静脈血栓症、肺塞栓など)が上昇するため、血栓症予防が治療の目標となる。真性多血症は血栓症リスクに応じて、低リスク群と高リスク群に分類される。低リスク群では、高血圧や脂質異常症などの血栓症リスク因子の治療を行った上で、瀉血療法+低用量アスピリン療法を実施し、高リスク群では、これらに加え、細胞減少療法やインターフェロンアルファなどによる治療が行われる。 血小板が増加する「本態性血小板血症」出血傾向にも注意が必要  血小板の増加を主体とする本態性血小板血症は、疾患進行に伴い、血栓傾向や出血傾向がみられる。脳梗塞などの血栓症発症後に診断されるケースだけでなく、無症状の場合が多いため、健康診断などで指摘されて診断に至るケースも少なくない。本態性血小板血症は、直ちに生命予後に影響を及ぼす疾患ではないが、血栓症や出血症状の合併率が高いために、適切な予防を行うことが治療の目的となる。低リスク群では、経過観察が原則となるが、必要に応じて抗血小板薬の使用を検討し、高リスク群では、細胞減少療法が用いられる。 リスクに応じて造血幹細胞移植も検討される「原発性骨髄線維症」  骨髄線維症は、骨髄中の線維(細網線維またはコラーゲン線維)が増加した状態であり、骨髄増殖性腫瘍以外にも悪性リンパ腫などの血液疾患、自己免疫疾患、感染症などと合併することが少なくない。原発性骨髄線維症は、前述のような合併症が否定され、骨髄増殖性腫瘍であると判断された場合に診断される。また、真性多血症や本態性血小板血症患者で、骨髄中の線維増加が認められた場合には、二次性骨髄線維症と診断される。原発性骨髄線維症と二次性骨髄線維症は、骨髄での線維化に加えて、骨髄以外の臓器(脾臓、肝臓など)で造血が起こることもある。主な症状は、倦怠感、掻痒感、寝汗、体重減少などであり、高頻度で貧血を合併する。原発性骨髄線維症は、真性多血症や本態性血小板血症よりも生命予後リスクが不良であるため、疾患のリスク分類を行い、適切な治療を選択する必要がある。現時点で、骨髄線維症に対する根治療法は、造血幹細胞移植が唯一の治療法であり、予後リスクに応じて検討される。 血液検査結果について専門医へ相談できるオンラインサービス「血ミル」開始  毎年9月の第2木曜日は、日本骨髄増殖性腫瘍の日(Japan MPN Day)です。日本では、骨髄増殖性腫瘍患者・家族会(MPN-JAPAN)により2016年に制定された。これに合わせて、2024年9月12日(木)、エクスメディオでは、骨髄増殖性腫瘍の早期発見を目指し、血液検査値の異常や検査結果について経験豊富な専門医へ相談できるオンラインコンサルトサービス「血ミル」を開始した。検査画像や主要な検査結果、相談内容を入力いただくと、血液内科専門医より回答が届くサービスである。専門医への紹介や患者さんへの説明などに迷った際に、ぜひご利用いただきたい。 血液検査値コンサルト 「血ミル」はこちらから ▶ https://hpcr.jp/v/consult/form/chimiru (エクスメディオ 鷹野 敦夫) ヒポクラ × マイナビ無料会員登録はこちら▶https://www.marketing.hpcr.jp/hpcr