ライブラリー 大量補液血液濾過透析は ハイフラックス血液透析より全死亡リスクを低下
Effect of Hemodiafiltration or Hemodialysis on Mortality in Kidney Failure
N Engl J Med. 2023 Aug 24;389(8):700-709. doi: 10.1056/NEJMoa2304820. Epub 2023 Jun 16.
上記論文のアブストラクト日本語訳
※ヒポクラ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。
【背景】いくつかの研究では、腎不全の患者が標準的な血液透析と比較して高用量の血液ろ過の恩恵を受ける可能性があることを示唆しています。ただし、さまざまな公開された研究の制限を考えると、追加データが必要です。
【方法】少なくとも3か月間高フラックス血液透析を受けていた腎不全患者を含む、実用的な多国籍の無作為化対照試験を実施しました。すべての患者は、セッションあたり少なくとも23リットルの対流量の候補者であるとみなされ(高用量血液ろ過に必要な場合)、患者報告の結果評価を完了することができました。患者は、高用量の血液ろ過または従来の高フラックス血液透析の継続を受けるように割り当てられました。主な結果は、あらゆる理由からの死でした。主要な二次的な結果は、原因固有の死亡、致命的または脂肪性のない心血管イベントの複合、腎臓移植、および再発性の全原因または感染関連の入院でした。
【結果】合計1360人の患者が無作為化を受けました。683人が高用量の血液ろ過を受け、677人が高フラックス血液透析を受けます。フォローアップの中央値は30か月でした(四分位範囲、27〜38)。ヘモディアフィルトレーショングループでの試験中の平均対流量は、セッションあたり25.3リットルでした。あらゆる原因による死亡は、血液硬化群で118人の患者(17.3%)と血液透析群の148人の患者(21.9%)で発生しました(ハザード比、0.77; 95%信頼区間、0.65〜0.93)。
【結論】腎不全療法を引き起こす腎不全の患者では、高用量の血液濾過を使用すると、従来の高フラックス血液透析よりも原因による死亡のリスクが低くなりました。(欧州委員会の研究とイノベーションによって資金提供されています。オランダの裁判登録番号、NTR7138を説得します。)。
第一人者の医師による解説
今後のOnline-HDFの積極的な適用を再考するための貴重な研究
長田 太助 自治医科大学内科学講座腎臓内科学部門教授
MMJ.April 2024;20(1):19
透析患者の心血管(CV)合併症の頻度は高い。血液透析(HD)における中分子量以上の大きさの溶質の除去効率の低さが理由の1つと考えられている。ポアサイズが従来型のローフラックス(LF)膜より大きく、透水性の大きなハイフラックス(HF)膜が登場し、そのCVイベント予防効果に期待が集まったが、臨床研究では芳しい結果は得られていない(1)。拡散に頼ったHDでは、HF膜を用いても中分子量物質の濾過による除去効率の改善は難しい。そこで中分子量以上の大きさの溶質を濾過により積極的に除去する方法として血液濾過透析(HDF)が注目されている。その中でも高度に清浄化された透析液を使い、低コストで大量補液が調達可能なOnline(OL)-HDFが主流になってきた。2012年にGrootemanら(2)は、後希釈 OL-HDFとLF膜使用 HDの間で、全死亡・CVイベントについて検討し、有意差はなかったものの、大量補液 HDFで抑制される可能性を示した。その翌年、Maduellら(3)は、後希釈法としては大量の20L以上の補液を用いたOL-HDFとHF膜を用いたHDを比較する無作為化対照試験を実施し、OL-HDFで全死亡は30%、CV死は33%のリスク低下が得られることを示した。
本論文で紹介されているCONVINCE試験は、3カ月以上 HF-HDを継続していた患者1,360人を、23L以上の大量補液を用いた後希釈 HDF群(683人)とHF膜を用いたHD群(677人)に無作為化し中央値30カ月間観察した国際共同臨床試験である。全死亡率 はHDF群17.3 %、HD群21.9 % とHDF群で有意に抑制されていた(ハザード比[HR],0.77;P=0.005)。ただしCV疾患の 既往や糖尿病合併が背景にあるとこの差がみられなかった。CV死、致死的 /非致死的 CVイベントのHRはそれぞれ0.81、1.07で両群間に有意差を認めず、また入院のイベントに関しても両群間で差を認めなかった。
この結果をそのままわが国の医療現場に持ち込むには注意が必要である。日本のOL-HDFは圧倒的に前希釈法が多いからである。前希釈法では、拡散による小分子量物質や濾過による小~大分子量蛋白の除去効率が後希釈法に劣ることが知られている。また本試験において、高リスク透析患者ではOL-HDFの効果を認めず、本来 OL-HDFの効果を期待したい対象に効いていない。さらにOL-HDFはCV死の抑制傾向を示すが有意ではなく、低リスク透析患者の生命予後改善効果だけということになれば、それなりの医療資源の投入が必要であることを踏まえるとすべてOL-HDFに置き換えてしまえば良いというわけではない。OL-HDFの臨床現場での適用についても、一度立ち止まって考えてみる必要があるだろう。
1. Locatelli F, et al. J Am Soc Nephrol. 2009;20(3):645-654.
2. Grooteman Mp, et al. J Am Soc Nephrol. 2012;23(6):1087-1096.
3. Maduell F, et al. J Am Soc Nephrol. 2013;24(3):487-497.