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中等症ないし重症の尋常性乾癬に用いるbimekizumabとウステキヌマブの比較(BE VIVID) 52週間の多施設共同二重盲検実薬対照プラセボ対照第3相試験
中等症ないし重症の尋常性乾癬に用いるbimekizumabとウステキヌマブの比較(BE VIVID) 52週間の多施設共同二重盲検実薬対照プラセボ対照第3相試験
Bimekizumab versus ustekinumab for the treatment of moderate to severe plaque psoriasis (BE VIVID): efficacy and safety from a 52-week, multicentre, double-blind, active comparator and placebo controlled phase 3 trial Lancet. 2021 Feb 6;397(10273):487-498. doi: 10.1016/S0140-6736(21)00125-2. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】乾癬の治療に、確実な即効性があり皮膚病変が完全に消失する結果をもたらすというアンメットニーズがある。bimekizumabは、IL-17Aに加えてIL-17Fを選択的に阻害するモノクローナルIgG1抗体である。中等症ないし重症の尋常性乾癬を対象に、bimekizumabの有効性および安全性を52週間にわたってプラセボおよびウステキヌマブと比較することを目的とした。 【方法】BE VIVIDは、アジア、オーストラリア、欧州および北米の11カ国で実施した多施設共同二重盲検実薬対照プラセボ対照第3相試験であった。18歳以上の中等症ないし重症の尋常性乾癬患者(乾癬の面積・重症度指数[PASI]スコア12点以下、体表面積に占める病変部位の割合10%以上および5点尺度の医師による全般的評価[IGA]スコア3点以上)を組み入れた。無作為化は、地理的地域、生物学的製剤投与歴で層別化し、患者、治験担当医師および資金提供者に治療の割り付けを伏せた。自動応答技術を用いて、患者をbimekizumab 320mgを4週に1回投与するグループ、ustekinumab 45mgまたは90mg(試験開始時の体重により決定)を0週時と4週時、その後12週に1回投与するグループ、プラセボを投与するグループに(4対2対1の割合で)割り付けた。16週時、プラセボを投与していた患者をbimekizumab 320mg 4週に1回投与に切り替えた。全試験薬を2回の皮下注射で投与した。主要評価項目は、16週時のPASIの90%改善(PASI 90)率およびIGAスコアで消失またはほぼ消失(スコア0または1点)が示されたIGA奏効率とした(データに欠損がある患者は非奏効例とした[non-responder imputation])。intention-to-treat集団を有効性解析の対象とし、試験薬を1回以上投与した患者を安全性解析の対象とした。この試験は、ClinicalTrials.govにNCT03370133で登録されている(終了)。 【結果】2017年12月6日から2019年12月13日の間に735例をふるいにかけ、567例を組み入れ、無作為に割り付けた(bimekizumab 320mg 4週に1回群321例、ustekinumab 45mgまたは90mg 12週に1回群163例、プラセボ群83例)。16週時、bimekizumab群321例中273例(85%)がPASI 90を達成したのに対して、ウステキヌマブ群は163例中81例(50%、リスク差35[95%CI 27~43]、P<0.0001)、プラセボ群は83例中4例(5%、同80[74~86]、P<0.0001)であった。16週時、bimekizumab群の270例(84%)がIGA奏効を達成したのに対して、ウステキヌマブ群は87例(53%、リスク差30[95%CI 22~39]、P<0.0001)、プラセボ群は4例(5%、同79[73~85]、P<0.0001)であった。52週間でbimekizumab群395例中24例(6%、16週時にプラセボから切り替えた患者を含む)、ウステキヌマブ群163例中13例(8%)から、治療下で発現した重篤な有害事象が報告された。 【解釈】中等症ないし重症の尋常性乾癬に用いるbimekizumabは、ウステキヌマブやプラセボより有効性が高い。bimekizumabの安全性に関するデータは、前回の試験で見られたものと同じであった。 第一人者の医師による解説 新たな作用機序を持つビメキズマブ 関節症状にも高い治療効果を期待 神谷 浩二(准教授)/大槻 マミ太郎(教授〈副学長〉) 自治医科大学医学部皮膚科学講座 MMJ. August 2021;17(4):126 日本での乾癬に対する生物学的製剤は、2010年に腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬のインフリキシマブ、アダリムマブが承認され、11年にインターロイキン(IL)-12/23阻害薬のウステキヌマブが承認された。その後、IL-23阻害薬、IL-17阻害薬が開発、承認され、21年4月時点で10種類の治療選択肢がある。 ビメキズマブは、IL-17AとIL-17Fを選択的に阻害するヒト化モノクローナル IgG1抗体で、2021年2月26日に既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の効能または効果に係る製造販売承認申請が行われた。 本論文は、中等症~重症の18歳以上の乾癬患者におけるビメキズマブの有効性および安全性の評価を目的とし、ウステキヌマブ、プラセボを対照とした52週間の無作為化二重盲検試験(BEVIVID試験)の結果に関する報告である。主要評価項目は、16週時点での乾癬の皮疹面積・重症度指標(PASI)の90%以上の改善(PASI 90)の割合、医師による全般的評価(Investigators’ Global Assessment;IGA)で皮膚病変消失またはほぼ消失(IGA 0/1)の割合で、ビメキズマブはウステキヌマブよりも有意に優れた結果であった。また、臨床効果は52週時点まで維持され、安全性も確認された。速効性に関しては、4週時点でのPASI 75で評価され、ビメキズマブはウステキヌマブよりも有意に優れていた。乾癬に対するビメキズマブの有効性と安全性は、その他の第3相試験でも確認されている(1)。 乾癬に対するIL-17阻害薬では、IL-17Aを阻害するセクキヌマブ、イキセキズマブ、IL-17受容体Aを阻害するブロダルマブがすでに承認されているが、ビメキズマブはこれまでの薬剤とは異なった作用機序を有する薬剤であり、新たなIL-17阻害薬の治療選択肢として期待される。また、IL-17阻害薬は乾癬の皮膚症状だけでなく、関節症状に対しても高い治療効果が期待できる。今後は乾癬の関節症状に対するビメキズマブの有効性と安全性に関する試験結果が待たれる。 1. Gordon KB, et al. Lancet. 2021; 397(10273):475-486.
尋常性乾癬でのbimekizumabとアダリムマブの比較
尋常性乾癬でのbimekizumabとアダリムマブの比較
Bimekizumab versus Adalimumab in Plaque Psoriasis N Engl J Med. 2021 Jul 8;385(2):130-141. doi: 10.1056/NEJMoa2102388. Epub 2021 Apr 23. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】bimekizumabは、インターロイキン-17Aおよびインターロイキン-17Fを選択的に阻害するIgG1モノクローナル抗体である。中等度ないし重度の尋常性乾癬で腫瘍壊死因子阻害薬アダリムマブと比較したbimekizumabの有効性と安全性は、大規模に検討されてこなかった。 【方法】中等度ないし重度の尋常性乾癬の患者を無作為化により、bimekizumab 320 mgを4週ごと56週間皮下投与するグループ、bimekizumabを320 mgの4週ごと16週間投与したのち第16~56週に8週ごとに投与するグループ、アダリムマブ40 mgを2週ごとに24週間皮下投与したのちbimekizumab 320 mgを4週ごとに第56週まで投与するグループに1対1対1の割合で割り付けた。主要評価項目は、16週時点のPsoriasis Area and Severity Index(PASI)スコアの治療前から90%以上の低下(PASI 90の改善;PASIスコアは0~72でスコアが高いほど重症であることを示す)およびInvestigator’s Global Assessment(IGA)スコア0または1(病変が消失またはほぼ消失)とした。主要評価項目の解析では、-10ポイントのマージンで非劣性を検定し、その後優越性を検定した。 【結果】614例をスクリーニングし、478例を登録した。158例がbimekizumab を4週に1回投与するグループ、161例がbimekizumabを4週に1回投与したのち8週に1回投与するグループ、159例がアダリムマブを投与するグループに割り付けられた。患者の平均年齢は44.9歳、治療前のPASIスコアは平均で19.8であった。16週時、bimekizumabを投与した患者(両用量群の統合)319例中275例(86.2%)およびアダリムマブを投与した患者159例中75例(47.2%)がPASI 90を達成した(調整後リスク差、39.3ポイント;95%CI、30.9~47.7;非劣性および優越性のP<0.001)。bimekizumabを投与した患者319例中272例(85.3%)およびアダリムマブを投与した患者159例中91例(57.2%)のIGAスコアが0または1であった(調整後リスク差、28.2ポイント;95%CI、19.7~36.7;非劣性および優越性のP<0.001)。bimekizumabで頻度が高かった有害事象は、上気道感染症、口腔カンジダ症(試験担当者により主に軽度ないし中等度と記録)、高血圧および下痢であった。 【結論】56週間にわたる試験で、bimekizumabは、尋常性乾癬の症状および徴候の軽減に関して16週間を通じてアダリムマブにする非劣性および優越性を示したが、口腔カンジダ症および下痢の頻度が高かった。尋常性乾癬の治療で、bimekizumabの有効性と安全性を他の薬剤と比較し判断するには、さらに長期間にわたる大規模な試験が必要である。 第一人者の医師による解説 ビメキズマブはIL-17AとIL-17Fの両方を阻害 即効性とともに持続性も期待 多田 弥生 帝京大学医学部皮膚科学講座主任教授 MMJ. February 2022;18(1):19 尋常性乾癬は難治な慢性炎症性皮膚疾患であり、外観による患者 QOL(quality of life)の障害度が高く、有病率は世界全体ではおよそ3%、国内有病率は約0.3%とされる。治療選択肢の1つに生物学的製剤があり、日本では現在10種類が使用可能である。その標的サイトカインは大きく腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン(IL)-23、IL-17の3つである。IL-17にはIL-17A~Fの6種類が存在する。このうちIL-17AとIL-17Fは作用や構造が似ており、同じIL-17受容体 Aに結合することもわかっている。IL-17AとIL-17Fはホモおよびヘテロ結合体を形成でき、生理活性はIL-17A/A、A/F、F/Fの順番に高い。そのため乾癬においては、IL17Aの阻害が最も効果的であると考えられてきたが、IL-17F阻害の意義も注目されていた。 本論文の内容は、IL-17AとIL-17Fを両方阻害するビメキズマブの投与開始後16週時点での有効性と安全性を、TNF阻害薬のアダリムマブと直接比較した海外第3相無作為化二重盲検試験(BE SURE)の結果報告である。対象は中等度~重度の成人尋常性乾癬患者478人で、以下の3群に1:1:1で割り付けられた;(1)56週までビメキズマブ 320mgを4週ごとに投与(2)16週までビメキズマブ320mgを4週ごとに投与した後、56週まで同用量で8週ごとに投与(3)24週までアダリムマブ40mgを2週ごとに投与し、その後56週までビメキズマブ 320mgを4週ごとに投与。16週時点での乾癬の皮疹面積、重症度指標(PASI)で90%以上の改善(PASI 90)を達成した割合、および医師による全般的評価(IGA)スコアの消失またはほぼ消失(IGA 0/1)を達成した割合において、ビメキズマブはアダリムマブと比較し有意に高い効果を示した(P<0.001)。これらの効果はいずれの投与量の群においても、56週まで維持された。ビメキズマブは4週時点でのPASI 75達成患者割合でもアダリムマブより高いことから、即効性も示した。安全性については、口腔内カンジダ症と下痢がビメキズマブ群でアダリムマブ群よりも多く認められたが、口腔内カンジダ症の97%は軽症から中等症であり、これまでの報告と大きく変わらなかった。これまでIL-17阻害薬は維持期の投与間隔が長くても4週であったが、今回、16週以降8週間隔としても治療効果が低下しないことも示されており、ビメキズマブは即効性とともに持続性も有する薬剤である可能性が示されている。