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重症インフルエンザの治療 抗ウイルス薬間で有意差を認めず
重症インフルエンザの治療 抗ウイルス薬間で有意差を認めず
Antivirals for treatment of severe influenza: a systematic review and network meta-analysis of randomised controlled trials Lancet. 2024 Aug 24;404(10454):753-763. doi: 10.1016/S0140-6736(24)01307-2. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索による機械翻訳です。 背景:重症インフルエンザの治療に最適な抗ウイルス薬は未だ不明である。WHOインフルエンザ診療ガイドラインの更新を支援するため、この系統的レビューとネットワークメタ解析では、重症インフルエンザ患者の治療に対する抗ウイルス薬を評価した。 方法:MEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature、Global Health、Epistemonikos、ClinicalTrials.govを系統的に検索し、2023年9月20日までに発表された、インフルエンザが疑われるか検査で確認された入院患者を登録し、直接作用型インフルエンザ抗ウイルス薬をプラセボ、標準治療、または別の抗ウイルス薬と比較した無作為化対照試験を検索した。二人一組の共著者が独立して、試験の特徴、患者の特徴、抗ウイルス薬の特徴、転帰に関するデータを抽出し、相違点は話し合いまたは三人目の共著者が解決した。主なアウトカムは、症状緩和までの期間、入院期間、集中治療室への入室、侵襲的機械的人工呼吸への移行、機械的人工呼吸の期間、死亡率、退院先、抗ウイルス剤耐性の出現、有害事象、治療に関連した有害事象、重篤な有害事象であった。エビデンスを要約するためにフリークエンティストネットワークメタ解析を実施し、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)アプローチを用いてエビデンスの確実性を評価した。本研究はPROSPERO、CRD42023456650に登録されている。 発見:検索により特定された11 878件の記録のうち、1424人が参加した8件の試験(平均年齢または中央値を報告した試験では平均年齢36~60歳;男性患者43~78%)がこの系統的レビューに含まれ、そのうち6件がネットワークメタ解析に含まれた。季節性インフルエンザおよび人獣共通感染症に対するオセルタミビル、ペラミビル、またはザナミビルの死亡率に対する効果は、プラセボまたはプラセボなしの標準治療と比較して、非常に低い確実性であった。プラセボまたは標準治療と比較して、オセルタミビル(平均差 -1~63日、95% CI -2~81~-0~45)およびペラミビル(-1~73日、-3~33~-0~13)により季節性インフルエンザの入院期間が短縮されたという確信度の低いエビデンスが認められた。標準治療と比較して、オセルタミビル(0~34日、-0~86~1~54;確実性の低いエビデンス)またはペラミビル(-0~05日、-0~69~0~59;確実性の低いエビデンス)では、症状緩和までの期間にほとんど差がなかった。有害事象または重篤な有害事象については、オセルタミビル、ペラミビル、ザナミビルで差はなかった(確信度の非常に低い証拠)。重症インフルエンザ患者のその他の転帰に対する抗ウイルス薬の効果については、不確実性が残っている。適格試験の数が少ないため、出版バイアスの検定はできなかった。 結論:重症インフルエンザの入院患者において、オセルタミビルおよびペラミビルは、標準治療またはプラセボと比較して入院期間を短縮する可能性があるが、エビデンスの確実性は低い。死亡率やその他の重要な患者の転帰に対するすべての抗ウイルス薬の効果は、ランダム化比較試験のデータが乏しいため、非常に不確実である。 資金提供世界保健機関(WHO)。 第一人者の医師による解説 治療薬のエビデンスは不足 抗ウイルス薬の有効性を把握する臨床試験が待たれる 高山 陽子 北里大学医学部附属新世紀医療開発センター横断的医療領域開発部門感染制御学教授・北里大学病院感染管理室室長 MMJ.April 2025;21(1):24 インフルエンザの報告数は、COVID-19の流行以降、世界的に激減していたが、2021年後半から多くの国で小~中規模の流行が確認されている。発症から48時間以内の抗インフルエンザ薬投与が重要であり、特に高齢者や免疫不全者などの高リスク者は抗インフルエンザ薬投与のメリットが大きいため、積極的な使用が推奨される。 重症インフルエンザとは、主に集中治療室(ICU)利用または人工呼吸器装着を伴う場合を指すが、最良の抗ウイルス薬は定まっていない。本論文は、無作為化対照試験(RCT)8 件( 参加者1 ,424 人)の系統的レビュー、うち6試験のネットワークメタ解析により、入院を要する重症インフルエンザにおける抗ウイルス薬の有効性を評価した。その結果、オセルタミビルとペラミビルは、標準治療またはプラセボと比較して入院期間を短縮する可能性が示されたが、エビデンスレベルは「low」と判断された。 本研究の限界点として、有害事象のデータが得られたのは、オセルタミビルとザナミビルを比較した1件の試験のみであるなど季節性・人獣共通インフルエンザともにRCTのデータが少なくエビデンスレベルが低いこと、続発する細菌感染症やウイルスの型(A型、B型)が結果に与える影響を評価できなかったこと、そして小児と高齢者(60歳以上)のデータが含まれておらず有効性を検討できなかったこと、などが挙げられる。 重症インフルエンザに関して、本論文を根拠として世界保健機関(WHO)は2024 年9 月にインフルエンザ診療ガイドラインを更新した(1)。季節性インフルエンザ、パンデミックの可能性があるインフルエンザ、新型インフルエンザの感染者を対象に、オセルタミビル投与を条件付きで推奨するとの内容であるが、エビデンスレベルは「very low」で類似の結果であった。 インフルエンザは高リスク者で重症化しやすく、続発する肺炎から死亡につながるリスクも上昇しやすい。毎年流行を繰り返すウイルスとは表面の抗原性が全く異なる新型のウイルスが出現することにより、約10〜40年の周期で新型インフルエンザが発生するが、新型インフルエンザによるパンデミックでは、致死率が高くなる場合がある。重症インフルエンザに対する効果的な治療法の確立は、感染対策や公衆衛生の観点から重要であり、抗ウイルス薬の有効性を詳細に把握するための臨床試験が待たれる。 1. Clinical practice guidelines for influenza. Geneva: World Health Organization; 2024.
再発・難治性多発性骨髄腫で ベランタマブ マホドチンを含むBVd療法は有用
再発・難治性多発性骨髄腫で ベランタマブ マホドチンを含むBVd療法は有用
Belantamab Mafodotin, Bortezomib, and Dexamethasone for Multiple Myeloma N Engl J Med. 2024 Aug 1;391(5):393-407. doi: 10.1056/NEJMoa2405090. Epub 2024 Jun 1. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索による機械翻訳です。 背景:ベランタマブ・マフォドチンは再発または難治性の多発性骨髄腫患者において単剤で有効であり、この知見は標準治療と併用した場合の本薬のさらなる評価を支持するものである。 方法:この第 3 相非盲検無作為化試験では、少なくとも 1 ラインの治療後に多発性骨髄腫の増悪を認めた患 者において、ダラツムマブ、ボルテゾミブ、デキサメタゾン(DVd)と比較し、ベランタマブ・マフォドチ ン、ボルテゾミブ、デキサメタゾン(BVd)を評価した。主要評価項目は無増悪生存期間であった。主要な副次的エンドポイントは、全生存期間、奏効期間、および最小残存病変(MRD) 陰性状態であった。 結果:合計494人の患者がBVd療法を受ける群(243人)とDVd療法を受ける群(251人)に無作為に割り付けられた。追跡期間中央値28.2ヵ月(範囲、0.1~40.0)において、無増悪生存期間中央値はBVd群で36.6ヵ月(95%信頼区間[CI]、28.4~未到達)、DVd群で13.4ヵ月(95%CI、11.1~17.5)であった(病勢進行または死亡のハザード比、0.41;95%CI、0.31~0.53;P<0.001)。18ヵ月時点の全生存率はBVd群で84%、DVd群で73%であった。制限平均奏効期間の解析では、BVd群がDVd群より有利であった(P<0.001)。完全奏効以上かつMRD陰性は、BVd群では25%、DVd群では10%であった。グレード3以上の有害事象は、BVd群では95%、DVd群では78%に発現した。眼イベントはDVd群よりもBVd群で多くみられた(79%対29%)。このようなイベントは用量の変更で管理され、視力悪化のイベントはほとんど消失した。 結論:BVd 療法は DVd 療法と比較して、少なくとも 1 ラインの治療後に再発または難治性の多発性骨髄腫を発 症した患者において、無増悪生存期間に関して有意な有益性をもたらした。ほとんどの患者にグレード 3 以上の有害事象が認められた。(GSK社より資金提供;DREAMM-7 ClinicalTrials.gov番号、NCT04246047;EudraCT番号、2018-003993-29)。 第一人者の医師による解説 BCMAを標的とした抗体薬物複合体を含む併用療法は 新たな治療選択肢に 山本 豪 虎の門病院血液内科部長 MMJ.April 2025;21(1):23 多発性骨髄腫の初回治療では、ボルテゾミブやレナリドミドを含む3剤または4剤併用化学療法が標準とされ、移植適応がある場合は自家末梢血幹細胞移植が行われる。しかし、ほとんどの患者で再発が避けられず、有効な2次治療の開発が求められている。B-cell mature antigen(BCMA)は骨髄腫細胞の生存や増殖に関与する抗原であり、BCMAを標的とした治療が注目されている。ベランタマブ マホドチン(belantamab mafodotin)はBCMAを標的とする抗体薬物複合体であり、先行する第2相試験(DREAMM-2試験)(1)では、3ライン以上の治療歴を有する患者に単剤投与され、主 要評価項目の客観的奏効率(ORR)は31 ~ 34 %と良好な抗腫瘍効果を示し、グレード3 ~ 4の有害事象として角膜症(21 ~ 27%)、血小板減少症(20 ~ 33 %)、貧血(20 ~ 25 %)が報告されたものの、忍容可能な安全性であった。 本論文は、ベランタマブ マホドチン、ボルテゾミブ、デキサメタゾンの3剤併用療法(BVd)の有用性をダラツムマブ、ボルテゾミブ、デキサメタゾンの3剤併用療法(DVd)と比較した第3相無作為化非盲検試験(DREAMM-7試験)の結果を報告している。結果として、主要評価項目の無増悪生存期間において、BVd群が有意に良好であり、全生存率も良い傾向を示した。しかし、BVd群では眼関連毒性を含むグレード3以上の有害事象の発生率が高く、注意が必要である。 BCMA標的療法には、抗体薬物複合体のほか、二重特異性抗体やCAR-T療法が含まれる。本稿執筆時点で、日本国内でエルラナタマブ(2)(二重特異性抗体)やイデカブタゲン ビクルユーセル(3)(CAR-T療法)が利用可能であり、さらなる治療選択肢の導入が期待されている。これらの治療法間の比較は難しいものの、本論文の著者らはほぼ同等の効果を示しつつ、有害事象が少ないと主張している。ただし、本試験の対象患者の約半数は治療歴が1ラインのみと治療歴が浅い患者が多く、また長期的な効果・副作用については今後の検討が必要である。また、本試験でベランタマブ マホドチンに治療抵抗性を示した患者においてもBCMAの発現が確認され、著者らは他のBCMA標的療法の効果が期待できるとしている。この点についても、さらなる研究結果が待たれる。 以上の結果から、再発・難治性多発性骨髄腫に対するBCMAを標的とした抗体薬物複合体を含む併用療法が新たな治療選択肢として有用であることが示された。 1. Lonial S, et al. Lancet Oncol. 2020;21(2):207-221. 2. Lesokhin AM, et al. Nat Med. 2023;29(9):2259-2267. 3. Munshi NC, et al. N Engl J Med. 2021;384(8):705-716.
新生血管型加齢黄斑変性に対する定位放射線治療 抗VEGF治療回数を低減
新生血管型加齢黄斑変性に対する定位放射線治療 抗VEGF治療回数を低減
Stereotactic radiotherapy for neovascular age-related macular degeneration (STAR): a pivotal, randomised, double-masked, sham-controlled device trial Lancet. 2024 Jul 6;404(10447):44-54. doi: 10.1016/S0140-6736(24)00687-1. Epub 2024 Jun 11. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索による機械翻訳です。 背景:血管新生加齢黄斑変性(nAMD)は失明の主要な原因である。第一選択治療は抗血管内皮増殖因子薬(抗VEGF薬)の硝子体内注射である。電離放射線は、nAMDの基礎となる主要な発症過程を緩和するため、治療の可能性がある。STARの目的は、定位放射線治療(SRT)が視力を犠牲にすることなく、抗VEGF注射の必要回数を減らすかどうかを評価することであった。 方法:この重要な無作為化二重マスク偽薬対照試験には、英国の30の病院から前治療歴のある慢性活動性nAMD患者が登録された。参加者は、ロボット制御装置による16グレイ(Gy)のSRTと偽SRTに2:1の割合で無作為に割り付けられ、治療センターごとに層別化された。参加資格は、年齢50歳以上で、慢性活動性nAMDを有し、少なくとも3回の抗VEGF注射歴(少なくとも過去4ヵ月間に1回を含む)がある者であった。参加者、すべての試験および画像読影センタースタッフは、マスクされていない統計担当者1名を除き、治療割り付けについてマスクされた。主要アウトカムは2年間に必要なラニビズマブ硝子体内注射の回数で、優越性(注射回数が少ない)を検証した。主要副次アウトカムは2年後の早期治療糖尿病網膜症研究の視力で、非劣性(5文字のマージン)を検証した。主要解析ではintention-to-treatの原則が用いられ、安全性はデータが入手可能な参加者を対象にper-protocolで解析された。本試験はClinicalTrials.gov(NCT02243878)に登録され、募集は終了している。 結果:2015年1月1日から2019年12月27日までに411人が登録し、274人が16Gy SRT群に、137人が偽SRT群に無作為に割り付けられた。全参加者のうち240人(58%)が女性、171人(42%)が男性であった。16GyのSRT群241人、偽薬群118人が最終解析に組み入れられ、409人の患者が治療を受け安全集団となったが、このうち偽薬に割り付けられた2人の患者が誤って16GyのSRTを受けた。SRT群では2年間で平均10-7回(SD 6-3)の注射を受けたのに対し、偽薬群では13-3回(同 5-8回)であり、治療センターを調整した後では2-9回の減少であった(95%信頼区間-4-2~-1-6、p<0-0001)。SRT群の最良矯正視力変化は偽薬に対して非劣性であった(調整後の群間平均視力差は-1-7レター[95%CI -4-2~0-8])。有害事象発生率は各群で同程度であったが、読影センターで検出された微小血管異常はSRT群77眼(35%)、偽薬群13眼(12%)で発生した。全体として、微小血管異常のある眼はない眼よりも最高矯正視力が良好である傾向がみられた。ラニビズマブの注射回数が少なかったため、SRTの費用が相殺され、参加者1人あたり平均565ポンド(95%信頼区間-332~1483ポンド)の節約となった。 解釈:SRTは視力を損なうことなくラニビズマブ治療の負担を軽減できる。 資金提供Medical Research CouncilおよびNational Institute for Health and Care Research Efficacy and Mechanism Evaluation Programme。 第一人者の医師による解説 有用性は示されたが ラニビズマブ以外の抗VEGF薬との比較検証が望まれる 五味 文 兵庫医科大学眼科学主任教授 MMJ.April 2025;21(1):22 新生血管型加齢黄斑変性(nAMD)は、中途失明を引き起こす眼疾患の1つであり、今後も患者数の増加が見込まれる。nAMDに対する第1選択治療は抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬の硝子体内注射であるが、長期にわたる通院管理が必要なため医師・患者にかかる負担は大きく、特に高額の薬剤費が患者の重荷となっている。放射線照射はnAMDの病的プロセスである細胞増殖や炎症・線維化を抑制し、新生血管の安定化を促進できる可能性があることから、以前からnAMD治療の1つとなる可能性が示唆されてきた。nAMDに対する放射線治療の有用性を評価した先行のINTEREPID試験では、16グレイ(Gy)または24 Gyの放射線照射により1年間に必要とされる抗VEGF薬ラニビズマブの注射回数が有意に減少した(1)。 本論文は、nAMDに対する放射線治療の有用性を、より多くの患者でより長期に評価することを目的として医師主導で実施されたSTAR試験の報告である。本試験では、抗VEGF薬治療歴があり、依然活動性を有する慢性期nAMD患者を16Gyの定位放射線治療(SRT)もしくはシャム治療に割り付け、二重盲検下で2 年間にわたり治療を行った。解析に必要とされたサンプルサイズは411人(SRT群274 人、シャム群137人)で、実際にこの患者数で試験が開始された。初回治療として、ロボット制御下でSRT群では16Gy、シャム群では0GyのX線が黄斑に照射され、照射後ただちにラニビズマブの硝子体内注射が行われた。患者は4週ごとに来院し、ラニビズマブ追加基準を満たす変化がみられた際には、注射治療を受けた。その結果、主要評価項目である2年間のラニビズマブ注射回数の平均は、SRT群10.7回、シャム群13.3回と、SRT群で有意に少なく、2群間の差は1年目より2年目において大きかった。副次評価項目の視力変化量は、SRT群で3文字、シャム群で0 .6文字の低下がみられ、調整後も有意な視力悪化がSRT群でみられたがその差は1.7文字で、非劣性基準の5文字以内であった。安全性に関して、全身性の有害事象は両群間に大差はなく、被検眼の有害事象として、網膜細小血管異常がSRT群の35%、シャム群の12%でみられたが、視力に与える影響はわずかであった。費用解析の結果では、SRT群では少ないラニビズマブ総注射回数により、患者1人あたり2年間で565ポンド(日本円約11万円)の治療コストを低減できたとのことである。 考察では、ラニビズマブ以外の抗VEGF薬、特により効果持続性のある薬剤では、SRTの効果を払拭してしまう可能性がある一方、両者の相乗効果でより大きな恩恵をもたらす可能性もある、と述べられていた。 1. Jackson TL, et al. Ophthalmology. 2013;120(9):1893-900.
絶対的な子宮不妊に対する子宮移植 良好な成績で有効性と安全性を確認
絶対的な子宮不妊に対する子宮移植 良好な成績で有効性と安全性を確認
Uterus Transplant in Women With Absolute Uterine-Factor Infertility JAMA. 2024 Sep 10;332(10):817-824. doi: 10.1001/jama.2024.11679. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索による機械翻訳です。 重要性:絶対子宮因子不妊症の女性に対する子宮移植は、自らの妊娠の可能性を提供する。 目的:子宮移植が実行可能で安全であり、その結果、健康な乳児が誕生するかどうかを明らかにすること。 デザイン、設定、参加者2016年9月14日から2019年8月23日の間に米国の大規模3次医療施設で子宮移植を受けた、子宮因子性不妊で少なくとも1個の卵巣が機能している20人の参加者を含むケースシリーズ。 介入:子宮移植(生体ドナー18例、死亡ドナー2例から)は、外腸骨血管に血管吻合を行い、同所的に手術で設置された。参加者は、1~2回の生児出産後または移植失敗後に移植子宮が摘出されるまで免疫抑制を受けた。 主な転帰と評価基準子宮移植片の生存率およびその後の出生数。 結果:20人の参加者(年齢中央値、30歳[範囲、20~36歳];アジア系2人、黒人1人、白人16人)のうち、14人(70%)が子宮移植に成功した;14人のレシピエント全員が少なくとも1人の生児を出産した。レシピエント20人中11人に少なくとも1件の合併症がみられた。母体および/または産科合併症は、成功した妊娠の50%に発生し、最も多かったのは妊娠高血圧症候群(2例[14%])、子宮頸管機能不全(2例[14%])、早産(2例[14%])であった。16人の出生児に先天奇形はみられなかった。18人の生体ドナーのうち4人にグレード3の合併症がみられた。 結論と意義:子宮移植は技術的に可能であり、移植片の生存に成功した後の高い生児出生率と関連していた。有害事象は一般的であり、医学的および外科的リスクはレシピエントだけでなくドナーにも影響した。先天異常や発達の遅れは、現在までのところ出生児には生じていない。 臨床試験登録:ClinicalTrials.gov ID:NCT02656550。 第一人者の医師による解説 症例数は少なく単一施設事例 データ集積が今後の課題 末岡 浩 静岡社会健康医学大学院大学教授 MMJ.April 2025;21(1):21 不妊治療に対する技術革新とその普及は急速で、あらゆる不妊原因に対して、日夜対応が検討されてきた。体外受精に代表される生殖補助技術がその代表的なものである。その中で妊娠出産をするための最後の臓器が子宮であり、子宮が機能しない、または先天的にない女性に対しての医療対応が残されてきた。それに対して、他の臓器移植と同様に提供者からの子宮を移植して妊孕性を創造しようとする技術が子宮移植である。 この課題に対して、これまでにスウェーデンなどで子宮移植による治療が開始され、その成績も報告されてきた。また死亡者からの提供子宮に関する報告もなされてきた。中には公的医療補助のもとに行われてきた国もあるが、なお実施例も少なく、そのエビデンスについては不明な点が少なくない。他の臓器移植と異なる課題は、移植の生着率、ドナーおよびレシピエントの安全性に加え、この治療の目的が妊娠出産に至るエビデンスが求められることにある。免疫抑制剤の使用法や安全性、妊娠成績、妊娠経過中および出産における安全性、出生児の予後などについて多様な検討が必要である。 本論文はダラス子宮移植研究(DUETS)のデザインに基づき、20症例の移植事例を対象とした症例累積研究の報告である。子宮提供者の9割は生存者、1割が死亡者からの子宮を移植し、70%に移植子宮が生着し、全症例で出産までの妊娠が成功した。母体の妊娠合併症として妊娠高血圧症や頸管無力症などの通常妊娠でも生じる病態の発生が確認されたが、生児に関して合併症などの異常は何ら認められなかった。なお、症例数は少なく、しかも単一施設事例であることなど、データ集積が必要であることは今後の課題として残るが、良好な成績から、有効性と安全性が確認できていることが報告された。 この実施プロトコールでは、妊娠は体外受精によるものであり、その治療時期に関しても移植後、比較的短期に胚移植を実施している。その理由は免疫抑制剤の使用への配慮である。妊娠を終了した後には帝王切開時に摘出する症例を含め、速やかに子宮摘出を行っている。分娩方式についても、9割の対象者がMayer-Rokitansky- Küster-Hauser症候群であり、先天的に腟形成不全により経腟分娩ができないため、帝王切開分娩が行われている。子宮移植の適応は限定される可能性が高いが、これまで残されてきた子宮の不妊因子に対する新たな治療法として脚光と期待を浴びている。
HPV遺伝子型起因の子宮頸部浸潤がんの割合 グローバルな全体像が初めて示される
HPV遺伝子型起因の子宮頸部浸潤がんの割合 グローバルな全体像が初めて示される
Causal attribution of human papillomavirus genotypes to invasive cervical cancer worldwide: a systematic analysis of the global literature Lancet. 2024 Aug 3;404(10451):435-444. doi: 10.1016/S0140-6736(24)01097-3. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索による機械翻訳です。 背景:異なるヒトパピローマウイルス(HPV)遺伝子型による浸潤性子宮頸がん(ICC)の割合を理解することは、特定のHPV遺伝子型を標的とした一次予防(ワクチン接種など)および二次予防(スクリーニングなど)の取り組みに役立つ。しかし、世界的な文献を使用して集団帰属率(AF)を推定するには、集約されたデータからHPV遺伝子型固有の因果関係を扱うための方法論的枠組みが必要である。われわれは、異なるHPV遺伝子型に起因するICCの割合を、世界レベル、地域レベル、国レベルで推定することを目的とした。 方法:この系統的レビューでは、ICCまたは子宮頸部細胞診正常者におけるHPV遺伝子型特異的有病率を報告した研究を同定した。2024年2月29日までのPubMed、Embase、Scopus、およびWeb of Scienceを、検索語「子宮頸部」および「HPV」を用いて言語制限なしで検索した。オッズ比(OR)は、地域、論文発表年、HPVプライマーまたは検査で調整したロジスティック回帰モデルを用いて、HPV陽性ICCと正常子宮頸部細胞診のHPV遺伝子型特異的有病率を比較することにより推定した。ORの95%CIの下限が1-0より大きいHPV遺伝子型をICCと因果関係があると判定した。対応する地域遺伝子型特異的AFは、ICCにおける地域HPV有病率に(1-[1/OR])を乗じて算出し、合計100%に比例調整した。グローバルAFは、地域AFを2022年の地域ICC症例数で加重平均して算出した(GLOBOCAN)。 結果:システマティックレビューでは、HPV陽性ICC症例111 902例と正常子宮頸部細胞診症例2755 734例を含む1174件の研究が同定された。17のHPV遺伝子型がICCと因果関係があると考えられ、ORはHPV16の48-3(95%CI 45-7-50-9)からHPV51の1-4(1-2-1-7)までと幅が広かった。HPV16のグローバルAFが最も高く(61-7%)、次いでHPV18(15-3%)、HPV45(4-8%)、HPV33(3-8%)、HPV58(3-5%)、HPV31(2-8%)、HPV52(2-8%)であった。残りの原因遺伝子型(HPV35、59、39、56、51、68、73、26、69、82)のAFは、合計で5-3%であった。HPV16と18、HPV16、18、31、33、45、52、58を合わせたAFは、アフリカで最も低く(それぞれ71-9%、92-1%)、中央アジア、西アジア、南アジアで最も高かった(それぞれ83-2%、95-9%)。HPV35のAFはアフリカで3-6%と他の地域(0-6-1-6%)より高かった。 解釈:本研究は、HPVワクチン接種の影響を受ける前のICCにおけるHPV遺伝子型特異的AFの包括的な世界像を提供する。これらのデータは、ICCの負担を軽減するためのHPV遺伝子型特異的ワクチン接種およびスクリーニング戦略に役立つ。 資金提供:EU Horizon 2020 研究革新プログラム。 第一人者の医師による解説 HPV遺伝子型の人口寄与割合のデータは ワクチンとスクリーニングの戦略に有用 森定 徹 杏林大学医学部産科婦人科学教室准教授 MMJ.April 2025;21(1):20 子宮頸がんをはじめ、肛門がん、腟がんなどの多くのがんの発生に関わっているヒトパピローマウイルス(HPV)には、200種類以上の遺伝子型があることが知られている。HPVの各遺伝子型はその発がん性と有病率について多様性がある。遺伝子型の違いによる子宮頸部浸潤がんの割合を把握することはHPV遺伝子型を標的としたがん対策としての1次予防(ワクチン接種など)、2次予防(がん検診など)に有用である。 この論文では、広範囲な文献検索により、異なるHPV遺伝子型に起因する子宮頸部浸潤がんの人口寄与割合(population attributable fraction) を推定している。系統的文献レビューでは、HPV陽性の子宮頸部浸潤がん罹患者または子宮頸部細胞診の正常例における遺伝子型別のHPV保有率を報告した研究をPubMed、Embase、Scopus、Web of Scienceから“cervix”および“HPV”の検索語で検索している。オッズ比はロジスティック回帰モデルを用いて子宮頸部浸潤がんと細胞診正常例の間で遺伝子型別のHPV保有率を比較することで推定した。 その結果、121カ国の子宮頸部浸潤がん罹患者111,902 人と細胞診正常例2 ,755 ,734 人を含めた1,174件の研究を対象に解析が行われ、オッズ比の95% CI下限値が1.0を超えた17のHPV遺伝子型が子宮頸部浸潤がんと因果関係があると考えられた。HPV16型のグローバル寄与割合が最も高く(61.7%)、次いでHPV18型(15.3%)、HPV45型(4 .8%)、HPV33型(3.8%)、HPV58型(3.5%)、HPV31型(2.8%)、HPV52型(2.8%)であった。残りの10種類の原因遺伝子型(HPV35、59、39、56、51、68、73、26、69、82型)によるグローバル寄与割合は合計で5 .3%であった。HPV16 型と18 型の合計、およびHPV16、18、31、33、45、52、58型の合計による寄与割合は、アフリカで最も低く(それぞれ71.9%、92.1%)、アジアで高い傾向であった(それぞれ83 .2%、95 .9%)。地域差としてHPV35 型の寄与割合はアフリカで3.6%と他の地域(0.6〜1.6%)より高かった。 本研究では、原因となるHPV遺伝子型に起因する子宮頸部浸潤がんの割合について、世界全体および地域における包括的なデータが得られ、グローバルな全体像が初めて示された。このデータはHPV遺伝子型に特異的なワクチンの接種およびスクリーニングの戦略に役立つと考えられる。
前立腺生検はMRI標的生検のみで必要十分 「臨床的に意義のないがん」の診断を半数以上排除
前立腺生検はMRI標的生検のみで必要十分 「臨床的に意義のないがん」の診断を半数以上排除
Results after Four Years of Screening for Prostate Cancer with PSA and MRI N Engl J Med. 2024 Sep 26;391(12):1083-1095. doi: 10.1056/NEJMoa2406050. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索による機械翻訳です。 背景:磁気共鳴画像法(MRI)による前立腺がんスクリーニングの有効性と安全性に関するデータは、追跡スクリーニングの研究から必要とされている。 方法:2015年に開始した集団ベースの試験において、50~60歳の男性に前立腺特異抗原(PSA)スクリーニングを受けるよう呼びかけた。PSA値が3ng/ml以上の男性は前立腺のMRIを受けた。男性は、系統的生検を受け、MRIで疑わしい病変が見つかった場合は標的生検を受ける系統的生検群と、MRI標的生検のみを受けるMRI標的生検群にランダムに割り付けられた。各診察時に、PSA値に応じて2年後、4年後、8年後の再検査を受けた。主要転帰は臨床的に重要でない(国際泌尿器科病理学会[ISUP]悪性度1)前立腺がんの発見であった;臨床的に重要な(ISUP悪性度2以上)がんの発見は副次的転帰であり、臨床的に進行または高リスク(転移性またはISUP悪性度4または5)がんの発見も評価された。 結果:追跡期間中央値3.9年(各群で約26,000人年)後、MRI標的生検群では6575人中185人(2.8%)に、系統的生検群では6578人中298人(4.5%)に前立腺がんが検出された。系統的生検群と比較してMRI標的生検群で臨床的に重要でないがんが検出される相対リスクは0.43(95%信頼区間[CI]、0.32~0.57;P<0.001)であり、スクリーニングの反復実施時には初回実施時よりも低かった(相対リスク、0.25 vs 0.49);臨床的に重要な前立腺がんの診断の相対リスクは0.84(95%CI、0.66~1.07)であった。発見された進行がんまたは高リスクがん(スクリーニングまたは間隔がんとして)の数は、MRI標的生検群で15例、系統的生検群で23例であった(相対リスク、0.65;95%CI、0.34~1.24)。重篤な有害事象は5件発生した(系統的生検群3件、MRI標的生検群2件)。 結論:この試験では、MRIの結果が陰性であった患者において生検を省略することにより、臨床的に重要でない前立腺がんの診断の半数以上が排除され、スクリーニング時またはインターバルがんとして診断された治癒不能がんの関連リスクは非常に低かった。(Karin and Christer Johansson財団およびその他の資金提供;GÖTEBORG-2 ISRCTN登録番号、ISRCTN94604465)。 第一人者の医師による解説 MRI標的生検は日本では先進的だが 欧米のガイドライン記載の注視が必要 山本 新吾 兵庫医科大学泌尿器科学教室主任教授 MMJ.April 2025;21(1):19 一般に健診で行われている前立腺がんの前立腺特異抗原(PSA)検査では、4 ng/mL以上で泌尿器科専門医に紹介されることが多い。しかし、PSA10 ng/mL未満(グレイゾーン)では「臨床的に意義のない(治療の必要のない)がん(insignificant cancer)」を検出しているとの指摘もある。日本の前立腺がん検診ガイドラインでも、超音波ガイド下系統的生検(通常は12箇所生検)に比較し、MRIで異常が検出されている部位を正確に狙って組織を採取できるMRI標的生検のほうが「臨床的に意義のあるがん」の検出率は高く、「臨床的に意義のないがん」の検出率は低いことから、特に初回生検が陰性であった場合に行われる再生検では、MRI標的生検の施行が推奨されている(1) 。ただし、診断コスト、過剰治療の削減効果を包括した費用効率についてはさらなる検証が必要である、ともされている(1)。 本論文は前立腺がん検診アルゴリズムの有用性を検討することを目的としたGÖTEBORG-2試験からの報告であり、本試験ではスウェーデンの50〜60歳の男性13,153人がPSAスクリーニングを受け、PSA 3 ng/mL以上で前立腺MRIが施行され、系統的生検群(PSA 3 ng/mL以上の男性はすべて系統的生検を受け、さらにMRIで異常がある場合は同時にMRI標的生検も受ける)とMRI標的生検群(MRI標的生検のみ)に無作為に割り付けられた。本試験の参加者はPSA値に応じて2、4、または8年後に再スクリーニングを受けた。中央値3 .9年の追跡調査の後、系統的生検群では6 ,578人中298人(4.5%)に、MRI標的生検群では6,575人中185人(2.8%)に前立腺がんが検出された。「臨床的に意義のないがん(ISUP grades 1:グリソンスコア3+3)」の検出率については、系統的生検群と比較したMRI標的生検群の相対リスク(RR)は0.43(95%信頼区間[CI], 0.32 ~ 0.57;P<0.001)であり、再スクリーニングではさらに相対リスクは低くなり、MRIで異常が指摘された患者のみに対して生検を行うことで、「臨床的に意義のないがん」の診断が半数以上排除された。一方、「臨床的に意義のあるがん(ISUP grades 2 〜 5)」の診断の相対リスクは0.84(95% CI, 0.66 ~ 1.07)と実質的に差がなく、進行がんまたは高リスクがんの検出件数は、系統的生検群で23件、MRI標的生検群で15件(RR, 0.65;95% CI, 0.34 ~ 1.24)で、進行がんまたは高リスクがんが見逃されるリスクも高くならなかった、と結論づけられた。 日本では、「MRIで異常が指摘された患者のみに対してMRI標的生検を行う」ことはまだ先進的であると捉えられているが、欧米のガイドラインが今後どのような記載に変わっていくかも注意深く見守っていく必要がある。 1. 日本泌尿器科学会(編). 前立腺がん検診ガイドライン2018 年版
人工心肺使用心臓手術患者へのアミノ酸製剤静注で 急性腎障害リスクを低減
人工心肺使用心臓手術患者へのアミノ酸製剤静注で 急性腎障害リスクを低減
A Randomized Trial of Intravenous Amino Acids for Kidney Protection N Engl J Med. 2024 Aug 22;391(8):687-698. doi: 10.1056/NEJMoa2403769. Epub 2024 Jun 12. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索による機械翻訳です。 背景:急性腎障害(AKI)は心臓手術に伴う重篤かつ一般的な合併症であり、腎灌流の低下はその重要な一因である。アミノ酸の静脈内投与は腎灌流を増加させ、腎機能予備能を回復させる。しかし、心臓手術後のAKIの発生を抑制するアミノ酸の有効性は不明である。 方法:多国籍二重盲検試験において、心肺バイパスを用いた心臓手術を受ける予定の成人患者を無作為に割り付け、1日あたり理想体重1kgあたり2gのアミノ酸をバランスよく混合したものを静脈内投与する群と、プラセボ(リンゲル液)を最大3日間投与する群のいずれかに割り付けた。 主要アウトカムはAKIの発生であった:Improving Global Outcomesのクレアチニン基準に従って定義された。副次的アウトカムは、AKIの重症度、腎代替療法の使用と期間、全死因による30日死亡率などであった。 結果:3ヵ国22施設で3511例の患者をリクルートし、1759例をアミノ酸群に、1752例をプラセボ群に割り付けた。AKIはアミノ酸群で474例(26.9%)、プラセボ群で555例(31.7%)に発生した(相対リスク、0.85;95%信頼区間[CI]、0.77~0.94;P = 0.002)。ステージ3のAKIはそれぞれ29例(1.6%)と52例(3.0%)に発生した(相対リスク、0.56;95%CI、0.35~0.87)。腎代替療法はアミノ酸群で24例(1.4%)、プラセボ群で33例(1.9%)に行われた。その他の副次的転帰や有害事象については、両群間に実質的な差はみられなかった。 結論心臓手術を受けた成人患者において、アミノ酸の注入はAKIの発生を減少させた。(イタリア保健省の助成による。PROTECTION ClinicalTrials.gov番号、NCT03709264)。 第一人者の医師による解説 実臨床でのアミノ酸製剤の腎保護効果 アミノ酸による腎血流増加療法の可能性 岡田 啓 東京大学大学院医学系研究科糖尿病・生活習慣病予防講座特任講師 MMJ.April 2025;21(1):18 急性腎障害(AKI)は、約20年前からその重要性が認識され始めた病態であり、依然として高い死亡率を伴う(1)。AKIは腎代替療法の必要性を増すだけでなく、慢性腎臓病(CKD)への進行や死亡リスクの上昇にも寄与する。心臓手術の周術期ではAKI発症リスクが高く、特に人工心肺を用いた心臓手術で約4割が発症するという報告がある。腎へのアミノ酸負荷が腎臓の機能的予備能を引き出し、AKIを減少させる可能性は示唆されていたが、無作為化対照試験(RCT)の主要アウトカムとしてAKI発症リスクを抑制させることを示したエビデンスは存在しなかった(2)。 本研究(PROTECTION試験)は、人工心肺を用いた心臓手術患者を対象とした多施設前向き二重盲検RCTである。推定糸球体濾過量(eGFR)が30mL/分/1.73 m2 未満の患者や腎代替療法を受けているCKD患者は除外された。介入群には手術室入室時から理想体重1 kg当たり1日2 g(最大100 g/日)のアミノ酸製剤を投与し、対照群には同速度でリンゲル液を投与した。投与は開始後72時間経過、集中治療室退室、腎代替療法開始、または死亡のいずれか早い時点で終了した。使用されたアミノ酸輸液は、日本の製剤と配合比率は類似しており、腎不全用製剤ほど分枝鎖アミノ酸の比率は高くないものであった。主要アウトカムは術後1週間以内のKDIGO基準に基づく(クレアチニン値による)ステージ1以上のAKI発症、副次アウトカムはAKIの重症度、入院中の腎代替療法や機械的換気の日数、入院中または割り付け後30、90、180日までの全死亡率と有害事象であった。 最終的に3,511人(対照群1,752人、アミノ酸群1,759 人)が試験に含まれた。全体のAKI発症率は約3割で、対照群31.7%に対し、アミノ酸群26.9%であり、相対リスクは0 .85(95%信頼区間[CI], 0.77〜0.94)と有意に低かった。特にステージ3のAKIに限定すると、相対リスクは0.56(95% CI, 0.35〜0.87)と、重症AKI発症も抑制された。一方、その他の副次アウトカムや有害事象には有意な差は認められなかった。 本研究の結論は、人工心肺を使用する心臓手術患者において、周術期の十分なアミノ酸製剤投与がAKI予防に寄与する可能性を示すものである。死亡率低減の効果や最適な投与量は今後の研究課題であるものの、本研究は腎保護におけるアミノ酸の可能性を示す重要な一歩といえる。なお、進行したCKDの有無にかかわらず効果が認められたこともサブ解析で報告されている(3)。 1. 土井研人. 日内会誌. 2021; 110(5):905-911. 2. Ronco C, et al. Intensive Care Med. 2017;43(6):917-920. 3. Baiardo Redaelli M, et al. Anesthesiology. 2024 Dec 19. doi: 10.1097/ ALN.0000000000005336.
慢性投与中のRAS抑制薬を非心臓系周術期に中止する短期的なメリットは見られない
慢性投与中のRAS抑制薬を非心臓系周術期に中止する短期的なメリットは見られない
Continuation vs Discontinuation of Renin-Angiotensin System Inhibitors Before Major Noncardiac Surgery: The Stop-or-Not Randomized Clinical Trial JAMA. 2024 Sep 24;332(12):970-978. doi: 10.1001/jama.2024.17123. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索による機械翻訳です。 重要:手術前に、レニン・アンジオテンシン系阻害薬(RASI)(アンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬)を服用している患者を管理する最良の戦略は不明である。エビデンスの欠如が相反するガイドラインの原因となっている。 目的:非心臓大手術前のRASIの継続戦略と中止戦略のどちらが術後28日目の合併症を減少させるかを評価する。 デザイン、設定、参加者フランスの40病院で2018年1月~2023年4月の間に主要非心臓手術を受ける予定の、少なくとも3ヵ月間RASIによる治療を受けていた患者を対象とした無作為化臨床試験。 介入:患者を、手術当日までRASIの使用を継続する群(n=1107)と、手術48時間前にRASIの使用を中止する群(すなわち、手術3日前に最終投与を行う群)(n=1115)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムと評価基準主要転帰は全死亡と術後28日以内の主要術後合併症の複合であった。主な副次的転帰は、手術中の低血圧、急性腎障害、術後臓器不全、術後28日間の入院期間と集中治療室滞在期間であった。 結果:2222例の患者(平均年齢67歳[SD、10歳]、65%が男性)のうち、ベースライン時に46%がアンジオテンシン変換酵素阻害薬による治療を受けており、54%がアンジオテンシン受容体拮抗薬による治療を受けていた。全死亡および術後主要合併症の発生率は、RASI中止群で22%(1115例中245例)、RASI継続群で22%(1107例中247例)であった(リスク比、1.02[95%CI、0.87-1.19];P = 0.85)。手術中の低血圧のエピソードは、RASI中止群では41%、RASI継続群では54%にみられた(リスク比、1.31[95%CI、1.19-1.44])。その他の試験成績に差はみられなかった。 結論と意義:心臓以外の大手術を受けた患者において、手術前のRASIの継続戦略は中止戦略よりも術後合併症の発生率が高いこととは関連していなかった。 臨床試験登録:ClinicalTrials.gov ID:NCT03374449。 第一人者の医師による解説 非安定期におけるRAS抑制の判断 問題は腎機能だが身体全体や生活環境の把握も必要 菅野 義彦 東京医科大学腎臓内科学分野主任教授 MMJ.April 2025;21(1):17 レニン-アンジオテンシン系(RAS)抑制薬の慢性投与は多くのエビデンスによってその有用性が確立しているといってよいが、高齢化に伴い発生するイベントの際に現場ではその副作用発生の回避が問題になる。術前に手術中の低血圧やそれに伴う合併症を避けるために長期内服していたRAS抑制薬を中止するという考え方を評価するエビデンスは少なかった。本論文は、非心臓系の手術3日前にRAS抑制薬を中止するか継続するかで各群1,000人程度に割り付け、術後28日以内の全死亡・主要術後合併症を主要評価項目として比較したフランスの無作為化対照試験(Stop-or-Not試験)の報告である。術後28日以内の予後調査ではほとんどのアウトカムに有意差を認めなかった。個々の臨床医がRAS抑制薬の中止または継続を判断する際にこの試験結果は大きな影響を与えないという解釈もできるが、英国で行われた同様の試験では中止群で48 時間以内の高血圧性合併症が増加していた(1)。いずれにせよあくまで周術期の合併症やトラブル発生が大きく変わらなかったということである。しかしRAS抑制薬を慢性投与する目的は多くの場合、長期予後に対する期待である。ならば再開すればよいではないか、といかない場合があるのがRAS抑制薬である。問題になるのは腎機能で、高齢者では加齢や高血圧、糖尿病の影響などで潜在的に(本人や医療者も気づかないうちに)腎機能が低下していることが多い。ガイドラインの提唱するRAS抑制薬の慎重投与はわが国では慢性腎臓病(CKD)ステージG4(GFR 30未満)であり、これは25万人程度と見込まれているが、実際に注意が必要なステージG3b(GFR 30〜44)は150万人程度となり、RAS抑制薬の再開には勇気と慎重さが必要になる。Stop-or-Not試験の対象は年齢中央値68歳、血清クレアチニン中央値が0.9mg/dL、糖尿病、CKDの既往はいずれも10%程度であるため再開をためらうことはないと思うが、われわれが自分の患者の決断材料とする際には、中止して失われるRAS抑制薬の長期的な効果についても考慮が必要といえる。腎不全が進行した際に問題になる高カリウム血症などを回避するためにRAS抑制薬を中止するか否かのメタアナリシスでは中止による死亡リスクの上昇が示されている(2)。短期のリスクと長期のベネフィットを選択するのは困難かもしれないが、個々の患者の状態を判断するには一つの臓器を考えるのではなく、身体全体、場合によっては生活環境なども総合して把握する必要があることをこれらの研究から学びたい。 1. Ackland GL, et al. Eur Heart J. 2024;45(13):1146-1155. 2. Nakayama T, et al. Hypertens Res. 2023;46(6):1525-1535.
セマグルチド注に2型糖尿病合併CKDの進行抑制効果
セマグルチド注に2型糖尿病合併CKDの進行抑制効果
Effects of Semaglutide on Chronic Kidney Disease in Patients with Type 2 Diabetes N Engl J Med. 2024 Jul 11;391(2):109-121. doi: 10.1056/NEJMoa2403347. Epub 2024 May 24. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索による機械翻訳です。 背景:2型糖尿病と慢性腎臓病の患者は、腎不全、心血管イベント、死亡のリスクが高い。セマグルチドによる治療がこれらのリスクを軽減するかどうかは不明である。 方法:2型糖尿病と慢性腎臓病(推定糸球体濾過量[eGFR]が1.体表面積73m2、尿中アルブミン/クレアチニン比[アルブミンはミリグラム、クレアチニンはグラムで測定]が300以上5000未満、またはeGFRが1.73m2あたり毎分25~50ml、尿中アルブミン/クレアチニン比が100以上5000未満)患者を、セマグルチド1.0mgを週1回皮下投与する群とプラセボを週1回皮下投与する群に無作為に割り付けた。主要アウトカムは主要腎疾患イベントとし、腎不全の発症(透析、移植、またはeGFRが1.73m2あたり毎分15ml未満)、ベースラインからのeGFRの少なくとも50%低下、または腎臓関連または心血管系の原因による死亡の複合とした。事前に規定された確認のための副次的アウトカムは階層的に検証された。 結果:無作為割付けを受けた3533人の参加者(セマグルチド群1767人、プラセボ群1766人)の追跡期間中央値は3.4年で、事前に規定された中間解析で早期の試験中止が推奨された。セマグルチド群ではプラセボ群に比して一次アウトカムイベントのリスクが24%低かった(一次イベント331 vs. 410;ハザード比0.76;95%信頼区間[CI]、0.66~0.88;P = 0.0003)。主要転帰の腎臓に特異的な構成要素の複合(ハザード比、0.79;95%CI、0.66~0.94)および心血管系の原因による死亡(ハザード比、0.71;95%CI、0.56~0.89)についても結果は同様であった。すべての確認副次的アウトカムの結果はセマグルチドに有利であった:平均年間eGFR勾配はセマグルチド群で1.73m2あたり1分間に1.16mlと緩やかであった(減少が緩やかであったことを示す)。001)、主要心血管系イベントのリスクは18%低く(ハザード比、0.82;95%CI、0.68〜0.98;P = 0.029)、あらゆる原因による死亡リスクは20%低かった(ハザード比、0.80;95%CI、0.67〜0.95、P = 0.01)。重篤な有害事象はセマグルチド群でプラセボ群より低い割合で報告された(49.6% vs 53.8%)。 結論セマグルチドは、2型糖尿病と慢性腎臓病を有する患者において、臨床的に重要な腎臓の転帰と心血管系の原因による死亡のリスクを減少させた。(FLOW ClinicalTrials.gov番号、NCT03819153)。 第一人者の医師による解説 FLOW試験:日本人256人が参加 リスクに応じたセマグルチド選択のエビデンスが追加 森 保道 虎の門病院内分泌代謝科部長 MMJ.April 2025;21(1):15 2 型糖尿病(DM)の長期健康障害として心血管病の罹病率上昇と慢性腎臓病(CKD)悪化による末期腎不全・透析導入は、生命予後のみならず生活の質を低下させる点からも重要な課題となっている。GLP-1受容体作動薬のセマグルチドは2型DMに対して経口剤、また2型DM・肥満症に対して注射剤が上市されている。セマグルチド注の2型DMにおける心血管リスクへの長期的影響を検討した無作為化プラセボ対照試験(RCT)のSUSTAIN6試験では、主要複合評価項目(心血管死、非致死的心筋梗塞、または非致死的脳卒中の初回発現)の解析から心血管病の発症抑制効果が確認された(1)。また副次評価項目である腎症の新規発現・悪化はセマグルチド群で有意に減少し、腎症抑制効果も期待される結果であったが、主には顕性アルブミン尿の発症が減少し、腎機能悪化は減少していなかった点から腎症抑制効果の詳細の解明が待たれていた。 今回報告されたFLOW試験は、2型DMに合併するCKDの進展予防効果等を検証することを目的に実施されたRCTである。対象患者はセマグルチド注1.0mg/週群とプラセボ群に分けられ、SGLT2阻害薬やミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は両群ともに併用可能とされた。注目すべきは、副次評価項目の1つにeGFR slope(糸球体濾過量の経年的変化)の評価が加えられた点である。主要評価項目は主要腎疾患イベント(腎不全、eGFR 50%以上の持続的な低下、腎関連死または心血管死の複合)とされ、2023年10月の初回中間解析で2群間のイベント発生率の差が明確であったため早期試験中止が勧告された。観察期間の中間値は3.4年間であり、セマグルチド群では主要な腎疾患イベントのハザード比が0 .76と有意に低かった。また副次評価項目のeGFR slope(mL/分/1.73m2 /年)の平均は、セマグルチド群 −2. 19、プラセボ群−3.36とセマグルチド群で腎機能低下が有意に緩徐であった。さらにセマグルチド群において主要心血管イベントのリスクは18%、全死亡リスクは20%低かったことから、セマグルチド注の治療は2型DMに合併するCKDの進行を抑制し、心血管・死亡リスクの低下にも有用であることが示された。 米国では本試験に基づき2025年1月にセマグルチド注を2型DM合併CKD患者における腎疾患の悪化、腎不全、そして心血管死のリスク抑制を目的とする薬剤として適応追加が承認された。日本からも本試験に256人(全体の7.2%)の患者が参加しており、アジア人種での主要評価項目のハザード比は0.86 (95%CI, 0.64〜1.14)であった。個々の患者のリスクに応じて、セマグルチドを選択するエビデンスがまた1つ加わったと考えられる。 1.Marso SP, et al. N Engl J Med. 2016;375(19):1834-1844.
対話型テキストメッセージは 青少年の電子たばこ使用中止率を向上
対話型テキストメッセージは 青少年の電子たばこ使用中止率を向上
A Vaping Cessation Text Message Program for Adolescent E-Cigarette Users: A Randomized Clinical Trial JAMA. 2024 Sep 3;332(9):713-721. doi: 10.1001/jama.2024.11057. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索による機械翻訳です。 重要性:電子タバコは青少年が最もよく使用するタバコ製品である。10代の若者の間でニコチン暴露の害が知られているにもかかわらず、経験的に検証されたベイプによる禁煙介入はない。 目的:青少年におけるニコチンベーピング中止のためのテキストメッセージプログラムの有効性を、評価のみの対照と比較すること。 デザイン、設定、参加者:2021年10月1日から2023年10月18日まで、無作為化から1ヵ月後と7ヵ月後にフォローアップを行う並行2群間二重盲検個別無作為化臨床試験を実施した。参加者はソーシャルメディア広告で募集し、介入はテキストメッセージで行い、評価はオンラインまたは電話で行った。対象となったのは、13~17歳の米国在住者で、過去30日間の電子タバコの使用を報告し、30日以内に禁煙することに関心があり、有効なテキストメッセージプランのある携帯電話を所有している者であった。研究の保持を最適化するために、すべての参加者は、電子タバコの使用に関するテキストメッセージを介して毎月評価を受けた。 介入:評価のみのコントロール(n = 744)は、研究保持のテキストメッセージのみを受信した。介入参加者(n = 759)はまた、認知的および行動的対処スキルトレーニングと社会的支援を提供する、電子タバコをやめるための自動化されたインタラクティブなテキストメッセージプログラムを受けた。 主要アウトカムと測定:主要アウトカムは、intention-to-treatとして分析された7ヵ月時点の自己報告による30日間の点有病率でのベイプ禁煙であり、欠測はベイプ禁煙としてコード化された。 結果:無作為化されたn = 1503人の青年の平均年齢は16.4歳(SD、0.8)であった。サンプルは、女性50.6%、男性42.1%、非バイナリー/その他7.4%;黒人/アフリカ系アメリカ人10.2%、白人62.6%、多民族18.5%、その他の人種8.7%;ヒスパニック16.2%;性的マイノリティ42.5%;76.2%が起床後30分以内にベイプを行っていた。7ヵ月後の追跡調査率は70.8%であった。点有病断薬率は、介入参加者で37.8%(95%CI、34.4%-41.3%)、対照参加者で28.0%(95%CI、24.9%-31.3%)であった(相対リスク、1.35[95%CI、1.17-1.57];P<0.001)。治療と結果の関係を緩和したベースライン変数はなかった。VAPEをやめた青年が可燃性タバコ製品に移行したという証拠はなかった。 結論と意義:ソーシャル・メディア・チャンネルを通じて募集した青少年において、テーラーメードの双方向テキストメッセージ介入により、自己申告によるVAPE禁煙率が上昇した。 臨床試験登録:ClinicalTrials.gov ID:NCT04919590。 第一人者の医師による解説 デジタルネイティブ世代の臨床研究 ソーシャルメディアやテキストメッセージアプリ活用の有用性を示す論文 菊地 利明 新潟大学大学院医歯学総合研究科呼吸器・感染症内科学分野教授 MMJ.April 2025;21(1):14 電子たばこの使用は米国の青少年の間で深刻な健康問題となっており、2023年の米国では高校生の10%、中学生の4.6%が電子たばこを使用している(1)。そこで、たばこ使用防止と禁煙支援を目的に設立された非営利の公衆衛生団体であるTruth Initiativeは、13〜17歳の電子たばこ使用者1,503人を対象に無作為化二重盲検比較試験を行った。対 象者はソーシャルメディアを通じて募集され、介入群には、コーピングスキル(電子たばこの使用欲求や誘惑に対処する実践的方法)のトレーニングや、認知行動療法に基づく自動化された対話型のテキストメッセージプログラムが提供された。このテキストメッセージプログラムは、“TIPS(こつ)”、“FEELS(気分)”、“STRESS(ストレス)”といったキーワードを被験者が送信すると、それに対応した支援メッセージが自動的に送られる仕組みになっていた。一方、対照群には、研究継続のためのテキストメッセージ(毎月の電子たばこ使用状況の確認)のみを送信した。 その結果、主要評価項目である7カ月後の30日間禁煙率は介入群37.8%、対照群28.0%となり、介入群で有意に高い禁煙率が示された(相対リスク,1.35;95%信頼区間, 1.17〜1.57)。なお、この結果を理解する上で重要な参加者の背景としては、平均年齢は16.4歳と若年であること、76.2%が起床後30分以内に電子たばこを使用するような依存度であること、87.3%が過去1年間に禁煙を試みるほど禁煙に前向きであること、そして性的マイノリティ(LGBQ+)の割合が42.5%と一般集団に比べ高いことなどが挙げられる。 また、本研究には以下の方法論的限界も存在する:①禁煙の評価が自己申告のみで行われ、生化学的な検証が実施されていない、②介入群ではテキストメッセージをやりとりする回数が多くなり、社会的に望ましいと考えられる方向に回答が歪められや すい(社会的望ましさバイアス)、③禁煙意思のある参加者のみを対象としている。 本研究の成果をそのまま日本の中高校生にも一般化できるのかはわからないが、少なくとも生まれた時からスマートフォンが当たり前のデジタルネイティブ世代を対象とした臨床研究では、ソーシャルメディアやテキストメッセージアプリの活用がきわめて有用であることを示す論文である。 1. Birdsey J, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2023;72(44):1173-1182.
進行肺がん患者への段階的緩和ケアは 早期緩和ケアと同等で訪問回数半減
進行肺がん患者への段階的緩和ケアは 早期緩和ケアと同等で訪問回数半減
Stepped Palliative Care for Patients With Advanced Lung Cancer: A Randomized Clinical Trial JAMA. 2024 Aug 13;332(6):471-481. doi: 10.1001/jama.2024.10398. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索による機械翻訳です。 重要性:早期の緩和ケアが転帰を改善するというエビデンスがあるにもかかわらず、緩和ケアの労働力の限界もあって広く実施されていない。 目的:進行がん患者に対して、より少ない資源で患者中心の緩和ケアを提供するための段階的ケアモデルを評価すること。 デザイン、設定、参加者:2018年2月12日~2022年12月15日に、マサチューセッツ州ボストン、ペンシルベニア州フィラデルフィア、ノースカロライナ州ダーラムの3つの学術医療センターにおいて、過去12週間以内に進行肺がんと診断された患者507例を対象に、段階的緩和ケアと早期緩和ケアの無作為化非盲検非劣性試験を実施した。 介入:介入ステップ1では、登録後4週間以内に初回緩和ケア受診を行い、その後はがん治療の変更時または入院後にのみ受診した。ステップ1では、患者は6週間ごとに生活の質(QOL;Functional Assessment of Cancer Therapy-Lung [FACT-L]、範囲:0~136、スコアが高いほどQOLが良好であることを示す)を測定し、ベースラインから10ポイント以上低下した患者は、4週間ごとに緩和ケアの臨床医と面談するようにステップアップした(介入ステップ2)。早期緩和ケアに割り付けられた患者は、登録後4週間ごとに緩和ケアを受けた。 主要アウトカムと評価基準24週目のFACT-Lにおける患者報告QOLに対する段階的緩和ケアと早期緩和ケアの効果の非劣性(マージン=-4.5)。 結果:サンプル(n = 507)には、ほとんどが進行非小細胞肺がん患者(78.3%;平均年齢66.5歳;女性51.4%;白人84.6%)が含まれていた。第24週までの緩和ケアの平均受診回数は、段階的緩和ケアでは2.4回、早期緩和ケアでは4.7回であった(調整平均差、-2.3;P < 0.001)。24週目における段階的緩和ケア群のFACT-Lスコアは、早期緩和ケアを受けた群のスコアに対して非劣性であった(調整後FACT-L平均スコア、それぞれ100.6 vs 97.8;差、2.9;1側95%信頼下限、-0.1;非劣性についてP < 0.001)。終末期ケアのコミュニケーション率も群間で非劣性であったが、ホスピス滞在日数については非劣性が示されなかった(調整平均、段階的緩和ケア群19.5 vs 早期緩和ケア群34.6;P = 0.91)。 結論と意義:患者のがん軌跡の重要な時点でのみ緩和ケアの受診を行い、QOLの低下をより集中的な緩和ケア受診のきっかけとする段階的ケアモデルは、患者のQOLに対する有益性を低下させることなく、緩和ケアの受診回数を減らす結果となった。段階的緩和ケアはホスピス滞在日数の短縮と関連していたが、患者報告アウトカムを向上させるための早期緩和ケア提供のための、よりスケーラブルな方法である。 臨床試験登録:ClinicalTrials.gov ID:NCT03337399。 第一人者の医師による解説 段階的緩和ケアは限られたリソース環境でのQOL維持に有用 運用面では課題も 副島 研造 山梨大学大学院総合研究部医学域内科学講座呼吸器内科学教室教授 MMJ.April 2025;21(1):13 早期緩和ケアが、さまざまな進行がん患者の生活の質(QOL)や終末期ケアの質を向上させ、肺がんにおいては生存まで改善することが報告されている(1)。これらの結果を受け、10年以上前から進行がん患者に対して、診断時または余命が限られると見積もられる段階で、専門訓練を受けた臨床医による緩和ケアを提供することがASCOやNCCNのガイドラインでも推奨されている(2),(3) 。しかし緩和ケアの人材不足やリソースの限界により広く普及していないのが現状である。 本論文の著者らは段階的緩和ケア介入モデルを開発し、新規進行肺がん患者を対象に、段階的緩和ケアと早期緩和ケアを比較する無作為化非盲検非劣性試験を米国の3施設で実施した。早期緩和ケア群では4 週間ごとの緩和ケア訪問を受け、入院中も緩和ケアチームによる診療を受けた。一方、段階的緩和ケア群では登録後4 週間以内に初回訪問を行い、その後は治療の変更または入院時にのみ訪問が予定され、FACT-Lスコアがベースラインから10点以上低下した場合は、4週間ごとに訪問する「第2段階」に移行した。その結果、主要評価項目である24週目のFACT-Lスコアにおいて、段階的緩和ケア群は早期緩和ケア群に対して非劣性を示した。段階的緩和ケア群のうち24 週目までに26 .4%、48週目までに36.4%が第2段階に移行した。副次評価項目の24週目までの緩和ケア訪問の平均回数は、段階的緩和ケア群が2 .4回と早期緩和ケア群の4.7回に比べ有意に少なかった。一方、終末期ケアに関する話し合いの頻度に関して段階的緩和ケア群は早期緩和ケア群に対して非劣性であったが(30.4% 対 33.0%)、ホスピス滞在日数は段階的緩和ケア群が短かった(19.5日 対 34.6日)。 がん患者の経過において重要なタイミングでのみ緩和ケア訪問を行い、QOLの低下をきっかけにより集中的な緩和ケアを提供する段階的ケアモデルは、QOLに対する利益を損なうことなく、緩和ケア訪問の回数を減らすことが可能であった。このモデルは、少ない緩和ケア資源を使用して早期緩和ケアを提供する手法として有望だが、治療の変更や入院に関する電子カルテの監視、および患者報告アウトカムの頻繁な実施が必要な点は課題で、専門の緩和ケア人材が少ない日本においては人材育成も大きな課題である。今後、分散化臨床試験(decentralized clinical trial;DCT)の普及により、電子カルテからの自動クエリの開発や、標準的な患者報告アウトカム測定のより広範な実施等が進むことに期待したい。 1. Temel JS, et al. N Engl J Med. 2010;363(8):733-742. 2. Smith TJ, et al. J Clin Oncol. 2012;30(8): 880-887. 3. Levy MH, et al. J Natl Compr Canc Netw. 2014;12(10):1379-1388.
オシメルチニブがCRT後のEGFR変異陽性NSCLCのPFSを大幅に改善
オシメルチニブがCRT後のEGFR変異陽性NSCLCのPFSを大幅に改善
Osimertinib after Chemoradiotherapy in Stage III EGFR-Mutated NSCLC N Engl J Med. 2024 Aug 15;391(7):585-597. doi: 10.1056/NEJMoa2402614. Epub 2024 Jun 2. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索による機械翻訳です。 背景:オシメルチニブは、上皮成長因子受容体(EGFR)変異を有する進行非小細胞肺癌(NSCLC)に対する推奨治療薬であり、切除されたEGFR変異NSCLCに対する術後補助療法である。EGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、切除不能なステージIIIのEGFR変異NSCLCにおいて予備的な有効性を示している。 方法:この第3相二重盲検プラセボ対照試験では、切除不能なEGFR変異III期NSCLCで、化学放射線療法中または化学放射線療法後に病勢進行のない患者を、オシメルチニブまたはプラセボ投与群に無作為に割り付け、病勢進行が起こるまで(盲検下独立中央審査による評価)、またはレジメンを中止した。主要エンドポイントは無増悪生存期間とし、盲検化された独立中央審査により評価した。 結果:化学放射線療法を受けた計216人の患者が、オシメルチニブ投与群(143人)とプラセボ投与群(73人)に無作為に割り付けられた。無増悪生存期間中央値はオシメルチニブ投与群で39.1ヵ月、プラセボ投与群で5.6ヵ月であり、病勢進行または死亡のハザード比は0.16(95%信頼区間[CI]、0.10~0.24、P<0.001)であった。12ヵ月時点で生存し無増悪であった患者の割合は、オシメルチニブで74%(95%CI、65~80)、プラセボで22%(95%CI、13~32)であった。中間全生存データ(成熟度、20%)では、36ヵ月全生存率はオシメルチニブ群84%(95% CI、75~89)、プラセボ群74%(95% CI、57~85)であり、死亡のハザード比は0.81(95% CI、0.42~1.56、P = 0.53)であった。グレード3以上の有害事象の発生率は、オシメルチニブ群で35%、プラセボ群で12%であった。放射線肺炎(グレードの大半は1~2)は、それぞれ48%と38%で報告された。安全性に関する新たな懸念は認められなかった。 結論切除不能なIII期のEGFR遺伝子変異NSCLC患者において、オシメルチニブ投与はプラセボ投与よりも無増悪生存期間を有意に延長した。(アストラゼネカの資金提供。LAURA ClinicalTrials.gov番号、NCT03521154)。 第一人者の医師による解説 脳転移も抑制 EGFR変異陽性III期NSCLCに対する新たな治療選択肢に 三ツ村 隆弘 虎の門病院呼吸器センター内科医長 MMJ.April 2025;21(1):12 PACIFIC試験の結果(1)により、切除不能III期非小細胞肺がん(NSCLC)に対する根治的化学放射線療法(CRT)後の抗PD-L1抗体であるデュルバルマブ投与が標準治療として確立された。しかし、EGFR変異陽性例には免疫チェックポイント阻害薬の効果が限定的であることが知られている。一方、チロシンキナーゼ阻害薬であるオシメルチニブは、進行EGFR変異陽性NSCLCに対してのみならず、ADAURA試験において切除後のEGFR変異陽性NSCLCに対しても有効性が示された(2)。 本論文に報告されたLAURA試験では、EGFR変異陽性III期NSCLCに対するCRT後のオシメルチニブの効果が示された。オシメルチニブ群の無増悪生存期間(PFS)中央値は39 .1カ月で、プラセボ群の5.6カ月を大きく上回り、12カ月時点の無増悪生存率はオシメルチニブ群で74%、プラセボ群で22%であった。プラセボ群の81%が病勢進行後にオシメルチニブへクロスオーバーしている中での結果であり、オシメルチニブの早期投与が治療機会の損失を防ぐ可能性が示唆された。一方、全生存期間の中間解析では有意差はみられなかったが、打ち切り例も多く今後の追跡が必要である。新規病変発生率はオシメルチニブ群22%、プラセボ群68%であり、脳転移発生率はそれぞれ8%、29%であった。これらの結果から、オシメルチニブが脳転移抑制にも有効であることが示された。 有害事象はオシメルチニブ群の98%、プラセボ群の88%に発生したが、とくに肺毒性は気になるところである。放射線肺臓炎はそれぞれ48%、38%に発生し、このうちオシメルチニブ群では87%が治療を継続または中断後に再開できた。一方、薬剤性肺障害も含まれる間質性肺障害はオシメルチニブ群8%、プラセボ群1%であったが、実臨 床において放射線肺臓炎との鑑別が難しい場合があろう。 本試験は、オシメルチニブがEGFR変異陽性III期NSCLCに対する新たな治療選択肢であることを示している。また、オシメルチニブの重要な効果として脳転移の抑制が挙げられる。一方、今回のプラセボ群のPFSをみても、CRT単独での治癒は困難と考えられ、CRTとオシメルチニブのどちらが主治療となるかの議論が起こることが予想される。さらに、副作用対策や最適な治療戦略の構築にはさらなる臨床試験や実臨床での検討が不可欠である。 1. Antonia SJ, et al. N Engl J Med. 2017 ;377(20):1919-1929. 2. Tsuboi M, et al. N Engl J Med. 2023;389(2):137-147.
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