ライブラリー Resmetirom(MGL-3196)の非アルコール性脂肪肝炎の治療:多施設、無作為、二重盲検、プラセボ対照、第2相試験。
Resmetirom (MGL-3196) for the treatment of non-alcoholic steatohepatitis: a multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 2 trial
Lancet 2019 Nov 30;394(10213):2012-2024.
上記論文のアブストラクト日本語訳
※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。
【背景】 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、肝脂肪沈着、炎症、肝細胞障害、進行性肝線維化を特徴とする。Resmetirom(MGL-3196)は、肝臓指向性、経口活性、選択的甲状腺ホルモン受容体βアゴニストで、肝脂肪代謝を増加させ、脂肪毒性を低下させることによりNASHを改善するよう設計されています。
【方法】MGL-3196-05は、米国内の25施設で36週間の無作為化二重盲検プラセボ対照試験が実施されました。生検でNASH(線維化ステージ1~3)が確認され、MRI-proton density fat fraction(MRI-PDFF)により評価したベースライン時の肝脂肪率が10%以上の成人が適格とされました。患者は、コンピュータベースのシステムにより、resmetirom 80 mgまたはマッチングプラセボを1日1回経口投与するよう2対1に無作為に割り付けられた。12週目と36週目に肝脂肪を連続測定し、36週目に2回目の肝生検を行った。主要評価項目は、ベースラインと12週目のMRI-PDFFを測定した患者において、12週目にプラセボと比較してMRI-PDFFで評価した肝脂肪の相対変化としました。本試験は ClinicalTrials. gov(NCT02912260) に登録されている。
【所見】米国内の18施設で348名の患者がスクリーニングされ、84名がレスメチロムに、41名がプラセボにランダムに割り付 けられた。12週目(レスメチロム:-32-9%、プラセボ:-10-4%、最小二乗平均差:-22-5%、95%CI:-32-9~-12-2、p<0-0001)および36週目(レスメチロム:-37-3%、プラセボ:-8-5、34:-8%、42-0~-15-7、p<0-0001)においてプラセボ:78名と比較して肝臓脂肪の相対低下が認められ、レスメトロム:74名およびプラセボ:38名では肝臓脂肪が低下していました。有害事象は、ほとんどが軽度または中等度であり、レスメチロムで一過性の軽い下痢と吐き気の発生率が高かったことを除いて、群間でバランスがとれていた。
【解釈】レスメチロム投与により、NASH患者において12週間および36週間の投与後に肝脂肪の有意な減少が認められた。レスメチロムのさらなる研究により、組織学的効果と非侵襲的マーカーや画像診断の変化との関連を記録する可能性があり、より多くのNASH患者におけるレスメチロムの安全性と有効性を評価することができます。
【資金提供】マドリガル・ファーマスーティカルズ
第一人者の医師による解説
開発進むNASH治療薬 線維化改善作用に関しては進行中の第3相試験で検証
中原 隆志(診療准教授)/茶山 一彰(教授) 広島大学大学院医系科学研究科消化器・代謝内科学
MMJ.August 2020;16(4)
現在、世界的に非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholicsteatohepatitis;NASH)が急増し、社会問題化している。NASHの多くはメタボリック症候群を背景に発症するが、さまざまなホルモン分泌異常も病態に関与する(1) 。健常人と比較し、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)では甲状腺機能低下症が有意に多く(21% 対 10%)(2) 、さらにNASHではNAFLDよりも甲状腺機能低下症が高頻度にみられる(3)。
本論文は、肝細胞に高発現する甲状腺ホルモン受容体β(THR-β)に対する特異的アゴニストであるレスメチロム(resmetirom)の有効性と安全性の評価を目的に、米国25施設で実施された無作為化プラセボ対照第2 相試験の報告である。対象はベースライン時の肝脂肪率が10%以上のNASH患者125 人で、生検でNASH( 線維化:stage 1~ 3)が確認され、MRIプロトン密度脂肪画分測定法(MRI-PDFF)により肝臓に10%以上の脂肪化が認められた患者であった。患者はレスメチロム(80mg)もしくはプラセボを1日1回経口投与する群に2対1の比で無作為に割り付けられた。12週時と36週時に肝臓の脂肪が測定され、36週時には2回目の肝生検が実施された。
その結果、12、36週時の肝脂肪率のベースラインからの低下度はレスメチロム群の方がプラセボ群よりも大きく、両群間の最小二乗平均差は12週時で- 25 .5 %(P< 0 .0001)、36 週時で-28 .8%(P<0 .0001)であった。また、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の低下、低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール、中性脂肪(TG)、リポ蛋白の低下や線維化マーカーや肝細胞の風船化(ballooning)と相関するサイトケラチン(CK)-18の低下を認め、36週時のNAFLD活動性スコアの改善を認めた。忍容性も良好であった。有害事象の多くは軽度~中等度で、一過性の軽度下痢および悪心の発現率がレスメチロム群で高かった以外は2群間にほとんど差はなかった。
一方、NASHの予後は、肝脂肪化ではなく、肝線維化によって規定されることが明らかとなっている。本研究では直接的な線維化の評価がされておらず、また肝細胞におけるTHR-βの発現量も評価されていない。線維化改善作用に関しては現在進行中のstage F2 ~ F3の線維症を有するNASH患者を対象とした第3相試験(MAESTRO-NASH試験)で検証されることとなる。
1. Takahashi H. Nihon Rinsho. 2019;77: 884-888.
2. Pagadala MR et al. Dig Dis Sci. 2012;57(2):528-534.
3. Carulli L et al. Intern Emerg Med. 2013;8(4):297-305.