「抗体薬物複合体(ADC)」の記事一覧

抗体薬物複合体に関連する眼の有害事象〜FDA有害事象報告システム分析
抗体薬物複合体に関連する眼の有害事象〜FDA有害事象報告システム分析
公開日:2024年9月6日 Mao K, et al. Front Pharmacol. 2024: 15: 1425617.  抗体薬物複合体(ADC)は、がん医療で注目され、ホットスポットとなっているが、ADCに伴う眼毒性は、過小評価されている。中国・温州医科大学のKaiLi Mao氏らは、さまざまなADCに関連する眼毒性リスクを包括的に評価するため、FDA有害事象報告システム(FAERS)データベースを用いて、分析を行った。Frontiers in Pharmacology誌2024年8月20日号の報告。  2011年第3四半期〜2023年第3四半期のデータをFAERSデータベースより抽出した。ADC関連の眼の有害事象の臨床的特徴を分析した。ADC誘発性の眼の有害事象のシグナルを検出するため、比例分析およびベイズアプローチによりデータマイニングを行なった。眼の毒性の発現までの期間についても評価した。 主な結果は以下のとおり。 ・ADCに関連すると判断された眼の有害事象は、1,246件抽出された。 ・眼毒性の兆候が報告された薬剤は、belantamab mafodotin、ブレンツキシマブ ベドチン、エンホルツマブ ベドチン、mirvetuximab soravtansine、sacituzumab govitecan、トラスツズマブ デルクステカン、トラスツズマブ エムタンシンであった。 ・微小管重合阻害剤を結合させたADC(belantamab mafodotin、トラスツズマブ エムタンシン、mirvetuximab soravtansine)は、眼毒性の影響を受けやすかった。 ・ADCに関連する主な眼の有害事象シグナルは、以下のとおりであった。 【角膜症】ROR=1,273.52(95%CI:1,129.26〜1,436.21) 【視力低下】ROR=22.83(95%CI:21.2〜24.58) 【ドライアイ】ROR=9.69(95%CI:8.81〜10.66) 【夜盲症】ROR=259.87(95%CI:228.23〜295.89) 【霧視】ROR=1.78(95%CI:1.57〜2.02) 【羞明】ROR=10.45(95%CI:9.07〜12.05) 【眼の異物感】ROR=23.35(95%CI:19.88〜27.42) 【眼毒性】ROR=144.62(95%CI:117.3〜178.32) 【点状角膜炎】ROR=126.21(95%CI:101.66〜156.69) 【眼障害】ROR=2.71(95%CI:2.21〜3.32) ・発現時期に関しては、最も早かったのはsacituzumab govitecanで21日目、最も遅かったのはトラスツズマブ デルクステカンで223日目であった。  著者らは「ADCは、がん患者の眼毒性リスクを高め、重篤な死亡リスクにもつながる可能性がある。また、添付文書に記載されていない新たな眼毒性シグナルも検出されている」とし「新規ADCが世界各国で汎用されているため、FAERSデータと他のデータを連携し、ADCの眼毒性をモニタリングする必要がある」とまとめている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Mao K, et al. Front Pharmacol. 2024: 15: 1425617.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39228525 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
CAR-T細胞療法抵抗性DLBCL治療に期待される抗体薬物複合体loncastuximab tesirine
CAR-T細胞療法抵抗性DLBCL治療に期待される抗体薬物複合体loncastuximab tesirine
公開日:2024年12月16日 Epperla N, et al. Blood Cancer J. 2024; 14: 210.  CAR-T細胞療法後に治療抵抗性を示すまたは病勢進行が認められた患者に対する抗体薬物複合体loncastuximab tesirineの有効性は明らかになっていない。米国・ユタ大学のNarendranath Epperla氏らは、米国における再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者に対するCAR-T細胞療法後のloncastuximab tesirineの使用実態およびアウトカムを評価するため、レトロスペクティブ研究を実施した。Blood Cancer Journal誌2024年11月28日号の報告。  対象は、2ndラインまたは3rdラインでCAR-T細胞療法を行い病勢進行が認められ、3rdラインまたは4thラインでloncastuximab tesirine単剤療法を行った18歳以上の再発・難治性DLBCL患者。CAR-T細胞療法後のloncastuximab tesirineのアウトカムには、奏効率(全奏効率[ORR]、完全奏効 [CR] 率)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を含めた。 主な結果は以下のとおり。 ・解析対象患者は118例。2ndラインCAR-T細胞療法後にloncastuximab tesirine単剤療法を行った患者は95例(年齢中央値:66歳、男性の割合:61%)、3rdラインCAR-T細胞療法後にloncastuximab tesirine単剤療法を行った患者は23例(年齢中央値:57歳、男性の割合:43%)。 【2ndラインCAR-T細胞療法後にloncastuximab tesirine単剤療法を行った患者】 ・ORRは73%、CR率は34%。 ・loncastuximab tesirine単剤療法後のフォローアップ期間中央値8.5ヵ月、DOR、PFS、OSの中央値は未達であった。 ・12ヵ月時点でのDORは68%、PFSは77%、OSは84%。 【3rdラインCAR-T細胞療法後にloncastuximab tesirine単剤療法を行った患者】 ・ORRは78%、CR率は17%。 ・loncastuximab tesirine単剤療法後のフォローアップ期間中央値は13ヵ月、DOR中央値は7.6ヵ月、PFS中央値は12.0ヵ月、OS中央値は未達であった。 ・12ヵ月時点でのOSは95%。  著者らは「CAR-T細胞療法後に治療抵抗性を示すまたは病勢進行が認められたDLBCL患者に対する3rdラインまたは4thラインでのloncastuximab tesirine単剤療法は、効果的であり、治療選択肢の1つとなりうる可能性が示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Epperla N, et al. Blood Cancer J. 2024; 14: 210.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39609431 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら