「エクリズマブ(ソリリス)」の記事一覧

PNH患者を対象としたペグセタコプランの第III相PEGASUS試験における溶血性有害事象
PNH患者を対象としたペグセタコプランの第III相PEGASUS試験における溶血性有害事象
公開日:2024年5月10日 Peffault de Latour R, et al. Blood Adv. 2024 Apr 9. [Epub ahead of print]  発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は、補体介在性の血管内溶血とそれに伴う貧血、疲労、場合によっては生命を脅かす欠陥性合併症を引き起こす疾患である。補体C3阻害薬であるペグセタコプランは、C5阻害薬による治療にもかかわらず貧血が継続していたPNH患者を対象とした第III相PEGASUS試験において、血液学的および臨床パラメータの持続的な改善が確認されている。フランス・French Reference Center for Aplastic Anemia and Paroxysmal Nocturnal HemoglobinuriaのRegis Peffault de Latour氏らは、PEGASUS試験で溶血性有害事象が確認された患者のベースライン時の特徴について、報告した。Blood Advances誌オンライン版2024年4月9日号の報告。  PEGASUS試験においてペグセタコプラン治療中に溶血性有害事象が認められた患者は、19例(26件)であり、これらの患者における溶血リスク増加と関連する可能性のあるベースライン時の患者の特徴を調査した。 主な結果は以下のとおり。 ・乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)が正常値の上限より2倍以上のあった患者が19例、そのうち2件はLDHが正常値の10倍以上であった。 ・すべての患者において、溶血中にヘモグロビンの減少が認められた(平均減少:3.0g/dL)。 ・16件(62%)のイベントにおいて、イベントの根底にある潜在的な補体増幅状態が特定された。 ・溶血性有害事象により、研究を中止した患者は5例であった。 ・溶血性有害事象26件中17件(65%)は、ペグセタコプランを継続しても管理可能であった。 ・溶血性有害事象が認められた患者(19例)の多くは、認められない患者(61例)と比較し、ベースライン時に疾患活動性(エクリズマブが適応用量より高い:53% vs. 23%、検出可能なCH50:74% vs. 54%、過去12ヵ月間で4回以上の輸血:68% vs. 51%)がより高かった。  著者らは「これらの特徴は、PNH患者のペグセタコプラン使用により将来発現する可能性のある溶血性有害事象を予測する上で、重要な因子であると考えられる」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Peffault de Latour R, et al. Blood Adv. 2024 Apr 9. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38593241 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
既存治療で効果不十分なPNH患者に対するペグセタコプランの有用性
既存治療で効果不十分なPNH患者に対するペグセタコプランの有用性
公開日:2024年5月27日 Mulherin BP, et al. Drugs R D. 2024 May 10. [Epub ahead of print]  米国・Hematology Oncology of IndianaのBrian P. Mulherin氏らは、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)に対するペグセタコプランの有効性および安全性を評価した2つの第III相臨床試験(PEGASUS試験、PRINCE試験)におけるヘモグロビン値、乳酸脱水素酵素(LDH)、疲労の正常化の測定を行った。Drugs in R&D誌オンライン版2024年5月10日号の報告。  対象は、PEGASUS試験よりエクリズマブ治療を3ヵ月以上実施したにもかかわらずPNHおよびヘモグロビン値が10.5g/dL未満の患者、PRINCE試験より補体(C5)阻害薬未使用で支持療法のみを行っているがヘモグロビン値が正常下限未満であった患者。血液学的および疲労正常化に関するエンドポイントは、輸血なしのヘモグロビン値の正常下限値(女性:12g/dL、男性:13.6g/dL)以上、LDH226U/L以下、慢性疾患患者の疲労評価(FACIT-Fatigue)スコア43.6以上(一般集団基準)とした。安全性は、重篤度および重症度の標準化された用語、定義を用いて、研究者により評価した。 主な結果は以下のとおり。 ・ペグセタコプラン治療によりヘモグロビン値が正常化した患者の割合は、PEGASUS試験の16週目(ランダム化コントロール期間)で34.1%(41例中14例)であり(エクリズマブ治療患者:0%[39例中0例])、PRINCE試験の26週目で45.7%(35例中16例)であった(支持療法患者:0%[18例中0例])。 ・PEGASUS試験の48週目(非盲検期間)にヘモグロビン値が正常化した患者の割合は、ペグセタコプラン治療患者で24.4%、16週目以降にエクリズマブからペグセタコプランへ切り替えた患者で30.8%であった。 ・PEGASUS試験におけるLDH正常化率は、16週目でペグセタコプラン治療患者70.7%、エクリズマブ治療患者15.4%、48週目でペグセタコプラン治療患者56.1%、エクリズマブからペグセタコプラン切り替え患者51.3%であった。 ・PRINCE試験におけるLDH正常化率は、26週目でペグセタコプラン治療患者67.5%であった。 ・PEGASUS試験におけるFACIT-Fatigueスコア正常化率は、16週目でペグセタコプラン治療患者48.8%、エクリズマブ治療患者10.3%、48週目でペグセタコプラン治療患者34.1%、エクリズマブからペグセタコプラン切り替え患者51.3%であった。 ・PRINCE試験におけるFACIT-Fatigueスコア正常化率は、26週目でペグセタコプラン治療患者68.6%、支持療法患者11.1%であった。 ・ペグセタコプランは、安全性・忍容性が良好であった。 ・ペグセタコプランの最も一般的な有害事象である注射部位反応は、ほとんどが軽度であり、発生率はPEGASUS試験(ランダム化コントロール期間)で36.6%、PRINCE試験で30.4%であった。  著者らは「エクリズマブ治療を3ヵ月以上行っているにもかかわらずPNHおよび貧血が持続する患者やC5阻害薬未使用で支持療法のみを行っている患者では、ペグセタコプラン治療によりヘモグロビン、LDH、疲労スコアの正常化が期待できるであろう」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Mulherin BP, et al. Drugs R D. 2024 May 10. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38727860 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
超高額なPNH治療、イプタコパンは医療費削減に寄与するか/Blood
超高額なPNH治療、イプタコパンは医療費削減に寄与するか/Blood
公開日:2024年10月11日 Ito S, et al. Blood. 2024 Oct 7. [Epub ahead of print]  補体B因子阻害薬イプタコパンは、持続性補体介在性溶血性貧血を特徴とするまれな血液疾患である発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療薬として承認された薬剤である。従来の標準療法では、補体C5阻害薬エクリズマブやラブリズマブが用いられてきたが、血管外溶血による持続性貧血や静脈内投与などの課題もあった。イプタコパンの第III相試験では、標準療法と比較し、イプタコパン単独療法の有用性が示されている。米国・イェール大学の伊藤 怜子氏らは、補体C5阻害薬による標準治療とイプタコパン単独療法における費用対効果分析を実施した。Blood誌オンライン版2024年10月7日号の報告。  主要アウトカムは、生涯にわたる増分純金銭便益(IMMB)および標準療法と比較したイプタコパン単独療法の費用対効果最大月額閾値とした。副次的アウトカムは、経口イプタコパン療法による患者および看護師の節約時間とした。 主な結果は以下のとおり。 ・費用は、イプタコパン単独療法で952万ドル、標準療法で1,350万ドル。 ・質調整生存年(QALY)は、イプタコパン単独療法で12.6QALY、標準療法で10.8QALY。 ・広範な感度分析およびシナリオ分析(貧血改善のための代替パラメータ、集計された個人レベルでの効果、遷移確率を含む)では、イプタコパンのコスト削減効果が認められた。 ・すべての確率的感度分析では、1万回のモンテカルロ法において100%の確率で、イプタコパン療法は、標準療法よりも優れていた。 ・標準療法に対するイプタコパンのコスト削減閾値は、ブラジルで1.1以下、日本で1.4、米国で1.4であった。  著者らは「イプタコパン単独療法は、いずれの国においてもPHNの医療費削減に貢献し、患者のQALYの延長に寄与することが示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Ito S, et al. Blood. 2024 Oct 7. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39374533 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら