「変形性膝関節症」の記事一覧

変形性膝関節症患者の疼痛に生体力学を応用した靴がもたらす効果 BIOTOK無作為化臨床試験
変形性膝関節症患者の疼痛に生体力学を応用した靴がもたらす効果 BIOTOK無作為化臨床試験
Effect of Biomechanical Footwear on Knee Pain in People With Knee Osteoarthritis: The BIOTOK Randomized Clinical Trial JAMA. 2020 May 12;323(18):1802-1812. doi: 10.1001/jama.2020.3565. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【重要性】症候性変形性膝関節症患者の疼痛や身体機能が、生体力学を用いて個別に調整した靴で改善すると思われるが、この治療の便益が明らかになっていない。 【目的】生体力学を応用した靴の効果を追跡期間24週間にわたって対照の靴と比較すること。 【デザイン、設定および参加者】スイスの大学病院で実施した無作為化臨床試験。2015年4月20日から2017年1月10日の間に症状があり、レントゲンで確認された変形性膝関節症患者220例を組み入れた。最後の被験者の受診は2017年8月15日であった。 【介入】被験者を、靴底に個別調整が可能な凸面ポッドを付けた生体力学を応用した靴を履くグループ(111例)と、靴底にポッドは付いているが、調整不可能で靴裏の表面が凸面にならない対照の靴(109例)を履くグループに無作為に割り付けた。 【評価項目】主要評価項目は、WOMAC標準化疼痛スコア(0点[症状なし]から10点[きわめて重い症状]の範囲)で判定した24週時の膝痛とした。副次評価項目は、24週時のWOMAC身体機能とこわばりのスコアおよびWOMAC全般スコア(いずれも0点[症状なし]から10点[きわめて症状が重い]の範囲)および重度有害事象とした。 【結果】無作為化した参加者220例(平均年齢65.2歳[SD 9.3歳]、104例[47.3%]が女性)のうち、219例が割り付けた治療を受け、213例(96.8%)が追跡を完了した。24週時、平均標準化WOMAC疼痛スコアは生体力学応用靴群で4.3点から1.3点、対照靴群で4.0点から2.6点に改善した(24週時のスコア群間差-1.3、95%CI -1.8--0.9、P<0.001)。この結果は、24週時のWOMAC身体機能スコア(群間差-1.1、95%CI -1.5--0.7)、WOMACこわばりスコア(同-1.4、95%CI -1.9--0.9)およびWOMAC全般スコア(同-1.2、95%CI -1.6--0.8)でも一致していた。有害事象が、生体力学応用靴群で3件、対照靴群で9件発生した(2.7% vs. 8.3%)が、いずれも治療によるものではなかった。 【結論および意義】変形性関節症の膝痛がある患者で、生体力学を応用した靴を使用すると、対照の靴を比較して24週時の疼痛が統計的有意差をもって改善したが、その臨床的意義は明らかになっていない。この機器の臨床的価値について結論に達する前に、長期的な有効性と安全性に加えて、複製についても、詳細な研究で評価する必要がある。 第一人者の医師による解説 不安定な靴底で神経筋コントロール改善 長期的な有効性、安全性の検証が必要 武冨 修治 東京大学大学院医学系研究科整形外科学講師 MMJ. December 2020;16(6):173 膝が痛い高齢者は非常に多く、その原因の大部分は変形性膝関節症(膝OA)である。日本における画像的な膝OA患者は約2590万人、有症状者に限っても約800万人と推計されている(1)。膝OAの治療は体重減量、運動療法、生活様式の変更などの非薬物療法、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の内服・外用やヒアルロン酸製剤の関節内注射などの薬物療法、これらの治療に抵抗性の場合は膝関節周囲骨切り術や人工膝関節置換術などの外科的治療が行われる。靴に関しては靴の中敷きである足底板の使用によって疼痛の緩和、歩行能力の改善が得られることが知られ、非薬物療法の1つとして広く行われている。  本論文で取り上げられている生体力学を応用した靴によるAPOS療法はイスラエルで開発され、膝痛、股関節痛や腰痛に対し、靴底に2つの凸型ポッドのついた不安定な靴で歩行することにより神経筋コントロールを回復させることで、症状を改善させる治療法である(https://www.apostherapy.co.uk)。  本研究では平均65.2歳の有症状の膝OA患者220人を対象に、生体力学を応用した靴を用いたAPOS療法による膝痛軽減効果をランダム化(BIOTOK)試験で検討した。靴底に個別調整可能な凸型ポッドのついた靴を使用した患者群を、凸型の底面を持たない靴を使用した対照群と比較した。主要アウトカムはOAの評価指標Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)の標準化疼痛スコアで評価した24週時の膝痛とした。その結果、疼痛スコア平均値は生体力学応用靴(介入)群で4.3から1.3へ(改善度3.0)、対照群で4.0から2.6へ(改善度1.4)改善し、改善度は介入群で有意に大きかった。身体機能、こわばりに関しても介入群で対照群に比べ有意に大きい改善が得られた。介入群の2.7%と対照群の8.3%に重篤な有害事象がみられたが、治療関連のものはなかった。著者らは生体力学応用靴の使用は統計学的に有意な膝痛の改善をもたらしたが、この差に臨床的重要性があるかは不明であり、長期的な有効性と安全性を評価するためにはさらなる研究が必要であると結論づけている。  近年では、靴底を不安定な形状にすることで筋力強化効果や運動効果を期待したダイエットシューズやフィットネスシューズが市販され、注目されている。膝 OAにおいても、生体力学を応用した靴の使用によって神経筋コントロールが回復し、膝痛や歩行能力が改善する効果が得られることで薬物療法や外科的治療を要する患者が減少すれば、医療経済的にも大きな効果が期待できる。ただし、より高齢の患者に安全に使用できるかなどの疑問もあり、長期的な有効性、安全性の検証結果が待たれる。 1. Yoshimura N, et al. J Bone Miner Metab. 2009;27(5):620-628.
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.13(2022年8月18日号)
ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.13(2022年8月18日号)
運動後の摂取はゆで卵、生卵どちらの摂取が有用か? 卵タンパク質は、運動後の筋タンパク質合成率の上昇を促進するため、運動からの回復期に摂取することにより、運動トレーニングに対する骨格筋の適応反応をサポートする。これまで、運動後の筋タンパク質合成に対する卵タンパク質の調理の影響は不明であった。本研究では、運動後の回復期にゆで卵または生卵を摂取した場合の食後の筋原線維タンパク質合成率への影響を比較した。The Journal of Nutrition誌オンライン版2022年8月9日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む COVID-19疾患感受性遺伝子DOCK2の重症化機序とは~日本人集団大規模ゲノム分析 COVID-19の重症化の要因を宿主遺伝学的に明らかにすることは、新たな課題の1つである。「コロナ制圧タスクフォース」は、日本全国100以上の医療機関が参加し、2022年7月末時点で6,000人以上のCOVID-19患者の協力を得て、日本人集団大規模ゲノム分析を実施した。Nature誌オンライン版2022年8月8日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む なぜ、若年層での脳卒中発症率が上昇しているのか いくつかの研究では,若年層(55歳未満)での脳卒中発症率の増加が報告されているが、多くの場合、行政データにのみ依存しており、詳細な検討が不十分であった。2002年4月~2018年3月に英国オックスフォードシャー(平均人口:9万4,567人)を対象に、前向き人口ベースの発症率調査が実施された。JAMA誌2022年8月9日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 身体活動が変形性膝関節症に及ぼす影響 2005年~20年に英語で発表された原著論文(レビュー論文)に限定し、身体活動が変形性膝関節症の構造的進行にどのように関連するかについての一次エビデンスをまとめたナラティブレビュー、システマティックレビューおよびメタ解析が行われ、その概要が報告された。European Journal of Rheumatology誌オンライン版2022年8月9日号の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 抗血栓療法の周術期管理~米国胸部疾患学会臨床実践ガイドライン 抗血栓療法の周術期管理に関する米国胸部疾患学会の臨床実践ガイドラインは、長期経口抗凝固療法または抗血小板療法を受けている患者で、選択的手術/処置を必要とする患者の周術期管理に関する43項目の患者・介入・比較対象・結果(PICO)の質問に対処するために作成されている。本ガイドラインの概要が紹介された。Chest誌オンライン版2022年8月10日の報告。 ≫Bibgraphで続きを読む 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.12(2022年8月11日号) 慢性腰痛を軽減する最良の運動オプションとは~RCTのネットワークメタ解析 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.11(2022年8月4日号) サル痘の臨床的特徴~最新症例報告 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.10(2022年7月28日号) 小児におけるオミクロンに対するファイザー社製COVID-19ワクチンの有効性 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.9(2022年7月21日号) 慢性便秘症に効果的な食物繊維摂取量は?:RCTの系統的レビュー&メタ解析 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.8(2022年7月14日号) COVID-19後遺症の有病率、その危険因子とは ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.7(2022年7月7日号) 糖尿病の有無が影響するか、心不全に対するエンパグリフロジンの臨床転帰 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.6(2022年6月30日号) 老化をあざむく方法は? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.5(2022年6月23日号) 座位時間と死亡率および心血管イベントとの関連性:低~高所得国での違いはあるか? ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.4(2022年6月16日号) 乳製品やカルシウム摂取量と前立腺がんの発症リスクの関連性:前向きコホート研究 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.3(2022年6月9日号) 運動は脳内RNAメチル化を改善し、ストレス誘発性不安を予防する ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.2(2022年6月2日号) 6〜11歳の子供におけるmRNA-1273Covid-19ワクチンの評価 ≫その他4本 ヒポクラ × マイナビ Journal Check Vol.1(2022年5月26日号) SARS-CoV-2オミクロンBA.2株の特性評価と抗ウイルス感受性 ≫その他4本