「膵がん」の記事一覧

膵臓癌のスクリーニング。US Preventive Services Task Force Reaffirmation Recommendation Statement(米国予防医療専門委員会の再確認勧告)。
膵臓癌のスクリーニング。US Preventive Services Task Force Reaffirmation Recommendation Statement(米国予防医療専門委員会の再確認勧告)。
Screening for Pancreatic Cancer: US Preventive Services Task Force Reaffirmation Recommendation Statement JAMA 2019 Aug 6 ;322 (5):438 -444. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】膵臓がんは、年齢調整した年間発症率が10万人年あたり12.9人という珍しいがんである。しかし、膵臓癌の予後は不良であるため、死亡率は10万人年当たり11.0人である。発症率は低いものの、膵臓がんは米国で3番目に多いがん死亡原因となっています。膵臓癌の発生率は増加しており、他の種類の癌の早期発見と治療の改善とともに、膵臓癌はまもなく米国における癌死亡原因の第2位になると推定される。 【目的】膵臓癌のスクリーニングに関する2004年の米国予防医療作業部会(USPSTF)の勧告を更新することである。 【エビデンスレビュー】USPSTFは、膵癌スクリーニングの有益性と有害性、膵癌スクリーニング検査の診断精度、スクリーニングで発見された膵癌または無症状の膵癌の治療の有益性と有害性に関するエビデンスをレビューした。 【調査結果】USPSTFは、膵癌スクリーニングまたはスクリーニングで発見された膵癌の治療により、疾患特異的な罹病率と死亡率、全死因死亡率が改善するというエビデンスを見いだせなかった。USPSTFは、無症状の成人における膵がんスクリーニングの有益性の大きさは、小さいより大きくないという境界線が引けるという十分な証拠を見いだした。USPSTFは、膵がんスクリーニングおよびスクリーニングで検出された膵がんの治療の有害性の大きさは、少なくとも中程度に抑えることができるという十分な証拠を見いだした。USPSTFは、無症候性成人における膵癌スクリーニングの潜在的利益は潜在的有害性を上回らないという前回の結論を再確認する。 【結論と勧告】USPSTFは、無症候性成人における膵癌のスクリーニングを行わないよう勧告する。(D勧告)。 第一人者の医師による解説 早期膵がん患者の同定へ 新たな検診手段の開発が重要 岡崎 和一 関西医科大学内科学第三講座(消化器肝臓内科)主任教授 MMJ.February 2020;16(1) 米国における膵がんの罹患率は人口10万人あたり年間12.9人で比較的低いものの、年間死亡率 は11.0人、その部位別順位は3位と予後不良である(1)。5年生存率は膵がん全体で9.3%であるが、 局所進行膵がん37.4%、周辺臓器浸潤例12.4%、 遠隔転移例2.9%と診断時の病期に依存し、病初期での手術のみが生存率改善を期待できるため、早期診断が重要である。膵がん患者の85~90%は 遺伝的背景がなく、5~10%が家族性危険因子を有 し、3~5%がPeutz-Jeghers症候群などの遺伝的がん症候群とされている。 今回、米国予防医学特別作業部会(USPSTF)は 2004年の勧告と同じく、検診による不利益(harm)が利益(benefit)を上回るとの理由から、「無症状の一般成人を対象とする膵がん検診は推奨しない」 と結論した。しかしながら、家族性膵がん(第1度 近親者に2人以上の膵がん患者がいる場合)を含み、膵がんの家族性危険因子を考慮することが重要であり、本論文でも、今回の推奨はこれらの高リスク者には適用されないとしている。 実際、CAPS Consortiumは、膵がん患者の第1度近親者、第1 度近親者に罹患者を有するp16 /BRCA2 変異保 有者、Peutz-Jeghers症候群の患者、第1度近親者に膵がん患者を有するリンチ症候群患者を高リスク者と定義し、高リスク者に対して超音波内視鏡検査(EUS)またはMRI/MRCP によるスクリー ニングを推奨している(2)。系統的レビューでは、膵がん家族歴を有する無症状者を対象とした検診のみ、根治的切除および生存期間中央値の延長との 関連が示されている(2)。 Cancer of the Pancreas Screening 2(CAPS2)プロジェクトでは、無症状の膵がん患者の第1度近親者に対するEUSで 10%に浸潤前膵がんが発見され、高リスク者の検 診手段として有望である可能性が示唆されている(2)。 CAPS3 では膵がんリスクの高い無症状者に対して二重盲検下のCT、MRI およびEUS によるスクリーニングにより42%で異常がみられ、その検出率はEUS 42%、MRI 33%、CT 11%であった。さ らに高リスク者を平均4.2 年間追跡した前向きコ ホート研究では、32%の患者で膵臓に異常が認められ、MRI/磁気共鳴膵胆管造影(MRCP)もEUS の 補助的検査法または代替検査法になりうることが 示唆された。 将来的には、早期膵がん患者を同定できる新たな検診手段の開発が重要であると考えられる。現状では、全血中のマイクロ RNA、cell-free DNA、 血清代謝プロファイリングなどが新規バイオマー カー候補とされている。 1.National Cancer Institute (NCI). Cancer Stat Facts: pancreatic cancer. URL:https://bit.ly/2ZNfv2I 2.NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology:Pancreatic Adenocarcinoma(Version 3.2019).