DLBCL CAR-T細胞療法関連毒性の予防にトシリズマブは推奨されるか
公開日:2024年8月28日
Locke FL, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Aug 24. [Epub ahead of print]
再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)に対する抗CD19CAR-T細胞療法薬であるアキシカブタゲン シロルユーセル(axi-cel)で治療を行った患者の多くは、サイトカイン放出症候群(CRS)や有害な神経学的イベントを経験する。axi-celによるCAR-T細胞関連毒性を軽減するための潜在的なアプローチを調査するため、ZUMA-1試験に追加し、安全性拡張コホートが実施された。米国・Moffitt Cancer CenterのFrederick L. Locke氏らは、その結果を報告した。Transplantation and Cellular Therapy誌オンライン版2024年8月24日号の報告。
探索的安全性コホートであるZUMA-1コホート3試験では、axi-cel治療患者におけるCRSおよび神経学的イベントの予防としてのIL-6受容体抗体トシリズマブおよび抗てんかん薬レベチラセタムの使用に関して、調査を行った。再発・難治性LBCL患者を対象に、Day−5~−3に前処置化学療法を実施し、Day0にaxi-cel(2×106cells/kg)を注入した。Axi-cel注入48時間後に、トシリズマブ(8mg/kg)を予防的に投与した。主要エンドポイントは、CRSおよび神経学的イベントの発生率と重症度とした。主な副次的エンドポイントには、有害事象の発生率、客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、バイオマーカー分析(循環CAR-T細胞、サイトカイン、ケモカイン)が含まれた。
主な結果は以下のとおり。
・本コホート3には42例が登録され、そのうち38例にaxi-celが投与された。
・24ヵ月の解析では、すべてのグレードのCRS発生率は92%、神経学的イベント発生率は87%であった。グレード3以上のCRSは3%、神経学的イベントは42%で認められた。
・グレード5の神経学的イベント(脳浮腫)が1件認められた。
・24ヵ月以上のフォローアップ調査では、ORRは63%、継続的な奏効は39.5%でみられた。
・48ヵ月のフォローアップ調査では、OS中央値は34.8ヵ月(95%CI:5.4~判定不能)であった。
・ZUMA-1コホート3試験におけるCAR-T細胞の増殖は、コホート1および2と同等であった。
・コホート1、2と比較し、トシリズマブによるIL-6受容体阻害にマッチし、血清IL-6レベルの増加が認められた。
・グレード3以上の神経学的イベントは、脳脊髄液中のIL-6レベル、炎症誘発性サイトカイン、骨髄細胞上昇との関連が認められた。
著者らは「再発・難治性LBCLに対するCAR-T細胞療法関連有害事象の予防において、トシリズマブの使用は推奨されなかった。また、レベチラセタム予防投与の有用性も、依然として不明なままであった」としている。
(エクスメディオ 鷹野 敦夫)
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Locke FL, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Aug 24. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39187161
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