ライブラリー 急性疾患で入院した患者の血栓症予防 中用量低分子ヘパリンは有益性と有害性のバランスが最も優れる
Anticoagulants for thrombosis prophylaxis in acutely ill patients admitted to hospital: systematic review and network meta-analysis
BMJ. 2022 Jul 4;378:e070022. doi: 10.1136/bmj-2022-070022.
上記論文のアブストラクト日本語訳
※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。
[目的] 急性疾患で入院している患者の静脈血栓塞栓症を予防するための、さまざまな種類と用量の抗凝固薬の利益と害を評価すること。
[設計] システマティック レビューとネットワーク メタ分析。
[データ ソース] コクランCENTRAL、PubMed/Medline、Embase、Web of Science、臨床試験登録、および国家保健機関データベース。検索の最終更新日は 2021 年 11 月 16 日です。
[研究を選択するための適格基準] 低用量または中用量の低分子量ヘパリン、低用量または中用量の非分画ヘパリン、直接経口抗凝固薬、五糖類、プラセボを評価した、発表済みおよび未発表のランダム化比較試験。 、または入院中の急性期成人患者における静脈血栓塞栓症の予防のための介入なし。 90日またはそれに最も近いタイミングでの重大な有害事象。バイアスのリスクも、Cochrane risk-of-bias 2.0 ツールを使用して評価されました。エビデンスの質は、Confidence in Network Meta-Analysis フレームワークを使用して等級付けされました。低から中程度の質のエビデンスは、どの介入もプラセボと比較して全死因死亡率を低下させなかったことを示唆しています。五糖類(オッズ比 0.32、95% 信頼区間 0.08 ~ 1.07)、中用量の低分子量ヘパリン(0.66、0.46 ~ 0.93)、直接経口抗凝固薬(0.68、0.33 ~ 1.34)、中用量の未分画ヘパリン(0.71、 0.43 から 1.19) は、症候性静脈血栓塞栓症を軽減する可能性が最も高かった (非常に低いエビデンスから低いエビデンス)。中用量の未分画ヘパリン (2.63、1.00 ~ 6.21) および直接経口抗凝固薬 (2.31、0.82 ~ 6.47) は、大出血を増加させる可能性が最も高かった (低から中程度の質のエビデンス)。重大な有害事象に関する介入間に決定的な違いは認められませんでした(非常に低いエビデンスから低いエビデンス)。プラセボの代わりに介入を行わなかった場合と比較すると、静脈血栓塞栓症と死亡のリスクに関してはすべての積極的な介入が有利であり、大出血のリスクに関しては不利でした。結果は、事前に指定された感度およびサブグループ分析で確固たるものでした。
[結論]中用量の低分子量ヘパリンは、静脈血栓塞栓症の予防に対する利益と害の最良のバランスを与えるようです。未分画ヘパリン、特に中間用量、および直接経口抗凝固薬は、最も好ましくないプロファイルを示しました。基準治療がプラセボか介入なしかによって、介入効果に系統的な不一致が見られました。この研究の主な制限には、不正確さと研究内バイアスのために一般的に低から中程度であった証拠の質、および事後的に対処された統計的不一致が含まれます.[SYSTEMATIC REVIEW REGISTRATION] PROSPERO CRD42020173088.
第一人者の医師による解説
参考になるが現時点では最新ガイドラインに従うべき 最善の方法にはさらなる知見の蓄積が必要
児玉 隆秀 虎の門病院循環器センター内科部長
MMJ.February 2023;19(1):13
血栓症イベントの半分が現在または最近の入院に起因すると推定されており、日本における肺血栓塞栓症が発症した場合の院内死亡率は14%と報告されている(1)。死亡例の40%以上が発症から(1)時間以内とされていることから1、入院中の静脈血栓塞栓症(VTE)の予防および早期発見が予後改善には非常に重要である。欧米では抗凝固療法による介入無作為化対照試験(RCT)が多数実施されているが、入院中の急性期成人患者におけるVTE予防のための最適な抗凝固薬の種類と用量は不明であり、これまでのペアワイズメタ解析では、数種類の異なる抗凝固薬と用量の直接比較は限定的であった。
本論文は、急性疾患で入院した患者におけるVTE予防のための異なる種類と用量による抗凝固薬の有用性と有害性を評価するために行われたネットワークメタ解析の報告である。参加者90,095人を無作為に割り付けた44件のRCTを主解析の対象とし、低・中用量の未分画ヘパリン、低・中用量の低分子ヘパリン、直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)、ペンタサッカライド(フォンダパリヌクス)、プラセボおよび介入なしの各群における全死亡、症候性 VTE、大出血、90日後または90日に直近の重篤な有害事象を評価した。いずれの介入もプラセボと比較して全死亡を減少させなかったが、ペンタサッカライド(オッズ比[OR], 0.32;95%CI, 0.08 ~ 1.07)、中用量低分子ヘパリン(0.66;0.46 ~ 0.93)、DOAC(0.68;0.33 ~ 1.34)および中用量未分画ヘパリン(0.71;0.43~1.19)は症候性 VTEを減少させる可能性が最も高かった。中用量未分画ヘパリン(OR, 2.63;95% CI, 1.00~ 6.21)およびDOAC(2.31;0.82 ~ 6.47)は、大出血を増加させる可能性が最も高く、重篤な有害事象に関してはそれぞれの介入間で明確な差は認められなかった。以上の結果から中用量低分子ヘパリンは、VTE予防において、有益性と有害性のバランスが最も優れており、中用量未分画ヘパリンおよびDOACは最も好ましくないプロファイルであったと報告している。
ネットワークメタ解析は薬剤同士の直接比較試験が行われる可能性の低い状況では、治療選択上の参考になるデータを提供してくれるものではあるが、前提条件についての入念な確認が必要である。本研究に採用された44試験のうち3分の1以上の試験が大出血イベントに関する情報を提供しておらず、関連する抗凝固薬の安全性において正確性に限界がある。参考になるデータではあるが、現時点では最新のガイドラインに従うしかなく、ベストプラクティスにはさらなる知見の蓄積が必要と思われる。