「腎障害」の記事一覧

新世代ガドリニウム造影剤による腎性全身性線維症リスク 系統的レビュー
新世代ガドリニウム造影剤による腎性全身性線維症リスク 系統的レビュー
Risk for Nephrogenic Systemic Fibrosis After Exposure to Newer Gadolinium Agents: A Systematic Review Ann Intern Med. 2020 Jul 21;173(2):110-119. doi: 10.7326/M20-0299. Epub 2020 Jun 23. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】従来のガドリニウム造影剤(GBCA)と比較した新世代GBCA投与後の腎性全身性線維症(NSF)リスクは明らかになっていない。 【目的】腎機能の観点から見て従来GBCAと比べた新世代GBCAのNSFリスクについての科学的根拠を統合すること。 【データ入手元】MEDLINE、EMBASE、Cochrane Central Register of Controlled TrialsおよびWeb of Scienceで、開始から2020年5月5日までの英語の文献を検索した。 【試験の選択】GBCA曝露後に発生したNSFを評価した無作為化試験、コホート試験および症例対照試験 【データ抽出】1名がデータを要約し、もう1名が検証した。検証ツールを用いて、2人1組でバイアスリスクを評価した。 【データ統合】対象とした試験32件のうち、20件が新世代GBCA曝露後のNSFリスクを評価し、12件(コホート試験11件および症例対照試験1件)が新旧GBCAのNSFリスクを比較していた。新世代GBCAに曝露した8万3291例でNSFを発症した症例はなかった(正確95%CI 0.0001-0.0258)。新旧GBCAのリスクを比較した12件(対象11万8844例)で、従来GBCA投与後に37例(正確95%CI 0.0001-0.0523)、新世代GBCA投与後に4例(3例confounded)がNSFを発症した。急性腎障害患者および慢性腎不全のリスクがある患者のデータは不十分であった。 【欠点】試験に異質性があり、メタ解析ができなかった点。曝露および転帰の把握が不十分であったため、ほとんどの試験でバイアスリスクが高かった点。 【結論】新世代GBCA暴露後のNSF発症が非常にまれであったが、急性腎障害患者や慢性腎不全の危険因子がある患者のデータが乏しかったため、この集団での安全性に関する結論を示すことができない。 第一人者の医師による解説 腎障害患者へのガドリニウム造影剤使用 これまで同様に慎重な判断が必要 渡谷 岳行 東京大学大学院医学系研究科 生体物理医学専攻放射線診断学准教授 MMJ. February 2021;17(1):26 2007年、米国食品医薬品局(FDA)は腎性全身性線維症(nephrogenic systemic fibrosis;NSF)の発症に、ガドリニウム含有 MRI造影剤の関連が疑われるという警告を行った。現在ではNSFの発症には、造影剤のキレートから遊離したガドリニウム原子の組織沈着が関与していると言われており、NSFの発症には①造影剤分子におけるガドリニウム原子の安定性②腎機能の2つの因子が強く関与していると考えられている。 米国放射線学会(ACR)はガドリニウム造影剤をNSFの報告数が多いGroup I、報告数の少ないGroup II、報告数は少ないがデータの少ないGroup IIIに分類している。本研究ではGroup IIとIIIを新世代の造影剤と位置づけて、文献報告をレビューしている。20の文献が新世代造影剤によるNSF発症率のアセスメントに採用され、95%信頼区間(CI)の上限は0.0258であった。12の文献が新世代と旧世代造影剤のNSF発症率の比較に採用され、旧世代の95% CI上限は0.0523、新世代では0.0204であった。旧世代(Group I)の造影剤に比べ、新世代造影剤の発症リスクが低いことが示されたが、本研究で採用された文献のほとんどは、メーカー主導の市販後臨床試験を除き、被験者が少数の研究に基づくものである。また、それらの中でも腎障害を有する被験者の割合は低く、高リスク群に対する評価が十分なされているとは言えない。この点は本論文内でも言及されている。 NSFは稀な合併症とはいえ一度発症すると有効な治療法が確立されておらず、致死率も低くないため十分なデータを集めること自体が難しい領域である。現在の日本では新世代造影剤が十分に普及している状況ではあるが、腎障害患者へのガドリニウム造影剤使用の適応については、これまで同様に慎重な判断を行っていく必要があると考えられる。
全年齢層に適用可能な血清クレアチニン値に基づく新たな糸球体濾過量推定式の開発および検証 統合データの横断解析
全年齢層に適用可能な血清クレアチニン値に基づく新たな糸球体濾過量推定式の開発および検証 統合データの横断解析
Development and Validation of a Modified Full Age Spectrum Creatinine-Based Equation to Estimate Glomerular Filtration Rate : A Cross-sectional Analysis of Pooled Data Ann Intern Med. 2021 Feb;174(2):183-191. doi: 10.7326/M20-4366. Epub 2020 Nov 10. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】小児用Chronic Kidney Disease in Children Study(CKiD)推定式および成人用Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration(CKD-EPI)推定式は、糸球体濾過量(GFR)推定に推奨される血清クレアチニン(SCr)を基にした計算式である。しかし、いずれの式も、両者を組み合わせたとしても、欠点があり、特に思春期から成人期への移行中にGFRが大幅に変動し、若年成人のGFRが過剰に推定される問題がある。全年齢層対象(FAS)式はこの問題を解決するものであるが、SCr値が低いとGFRを過剰に推定する。 【目的】FASとCKD-EPI式の特徴を組み合わせたSCrに基づく改定FAS式を開発し、検証すること。 【デザイン】開発および検証に別々の統合データを用いた横断解析。 【設定】GFRを測定した研究および臨床試験(13件)。 【参加者】7試験の参加者計1万1251例(開発および内部検証データ)および6試験の参加者計8378例(外部検証データ)。 【評価項目】新たなGFR推定式の開発に、外因性マーカー(参照方式)、SCr値、年齢、性別および身長を用いた。 【結果】新たな推定式、European Kidney Function Consortium(EKFC)式は、全年齢(2~90歳、小児で-1.2 mL/min/1.73m^2[95%CI -2.7~0.0 mL/min/1.73m^2]、成人で-0.9 mL/min/1.73m^2[CI, -1.2~-0.5mL/min/1.73m^2])およびSCr全範囲(40~490µmol/L[0.45~5.54 mg/dL])でバイアスが小さく、CKiD式、CKD-EPI式と比べて30%を超える推定誤差もほとんどなかった(小児で6.5%[CI 3.8~9.1%]、成人で3.1%[CI 2.5~3.6%]。 【欠点】黒人が対象に含まれていない点。 【結論】新たなEKFC式は、広く用いられているSCR値からGFRを推定する式と比べて、正確性および精度が改善した。 第一人者の医師による解説 全年齢層に適用できる推算式 長期にわたる腎機能の経過観察を可能に 後藤 淳郎 医療法人社団永康会 中目黒クリニック院長 MMJ. August 2021;17(4):120 腎機能障害は将来の末期腎不全だけでなく心血管イベントさらには死亡とも関連することから、腎機能は臨床における重要な指標である。主要な腎機能を代表する糸球体濾過量(GFR)の正確な測定は、手技やコストの面から容易ではなく、濾過の指標となるイヌリンなどの外因性物質を体内に投与し複数回採血・採尿を行う必要がある。クレアチニン(Cr)やシスタチン Cなど内因性物質のクリアランスを利用すればGFRを算出できるが、やはり採血・採尿は必要である。そこで、血清クレアチニン値と年齢、性、人種などを組み合わせたGFR推算式が各種考案されて日常臨床で使用されている。わが国では日本人でのイヌリン・クリアランスを基準に作成された式が広く普及し、慢性腎臓病(CKD)の病期分類に利用されている。 一方、世界的には1〜16歳のCKDを有する小児で作成されたChronic disease in Children Study(CKiD)式と健常人なら びにCKDを有する成人で作成されたChronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration(CKD-EPI)式がKidney Disease Improving Global Outcome(KDIGO)のガイドラインで推奨されて広く用いられている。両式ともGFRが過剰に評価される年齢層や対象があり、小児から成人に移行する年齢ではCrはほぼ不変なのにGFRが大きく変動するなどの限界が指摘され、この点を解決すべくfull age spectrum (FAS)式が提案されたが、解決には至っていなかった。 今回 FAS式とCKD-EPI式を組み合わせて、血清Cr値に基づく推算GFR式として発表されたEuropean Kidney Function Consortium(EKFC)式は、CKiD式、CKD-EPI式に比べて、より正確にGFRを推算できることが本論文で示されている。EKFC式は、まず7研究11,251人の個々の成績から導かれ、その妥当性が内部検証された。次に異なる6研究8,378人での成績を用いてさらに検証が加えられた。EKFC式では2〜90歳の年齢を通じて、また0.45〜5.54mg/dLの広範な血清Cr値を通じ標準法による基準値とのバイアスが小さく、30%超の推算誤差がCKiD式、CKD-EPI式に比べて少なく正確度が高まること、さらにEKFC式では小児と成人の境界年齢でもGFR値がスムーズに変化することが確認された。ただし、白人のみの成績であり、黒人など他人種へ適用できるかは問題点として残る。 1つの推算式で小児から青年期さらに壮年期への移行に伴ってeGFR推算がスムーズにできれば確かに長期にわたる腎機能の経過観察が可能となり、全年齢層での疫学調査や腎疾患の長期追跡研究などに役立つことが期待される。
重症急性腎障害に用いる2通りの腎代替療法開始遅延戦略の比較(AKIKI 2試験):多施設共同非盲検無作為化対照試験
重症急性腎障害に用いる2通りの腎代替療法開始遅延戦略の比較(AKIKI 2試験):多施設共同非盲検無作為化対照試験
Comparison of two delayed strategies for renal replacement therapy initiation for severe acute kidney injury (AKIKI 2): a multicentre, open-label, randomised, controlled trial Lancet. 2021 Apr 3;397(10281):1293-1300. doi: 10.1016/S0140-6736(21)00350-0. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】重度の合併症がない重症急性腎障害で腎代替療法(RRT)開始をある程度遅らせることは安全であり、医療機器の使用が最適化できる。リスクがなくRRTを延期できる期間についてはいまだに明らかになっていない。本試験の目的は、開始をさらに遅らせることでRRTを受けない日数が長くなるという仮説を検証することであった。 【方法】本試験は、フランスの39の集中治療室で実施された多施設共同非遮蔽前向き非盲検無作為化対照試験であった。重症急性腎障害(Kidney Disease: Improving Global Outcomesステージ3と定義)の重篤患者を乏尿が72時間を超えるまで、または血中尿素窒素濃度が112mg/dLを超えるまでモニタリングした。その後、患者を直後にRRTを開始する戦略(遅延戦略)と長期遅延戦略に(1対1の割合で)割り付けた。長期遅延戦略では、必須の適応症(顕著な高カリウム血症、代謝性アシドーシスまたは肺水腫)が生じるか血中尿素窒素濃度が140mg/dLに達するまでRRTの開始を延期した。主要評価項目は、無作為化から第28日まで生存しRRTを受けなかった日数とし、intention-to-treat集団で評価した。本試験はClinicalTrial.govに登録され(NCT03396757)、終了している。 【結果】2018年5月7日から2019年10月11日までの間に、評価した5,336例のうち278例を無作為化し、137例を遅延群、141例を長期遅延群に割り付けれた。急性腎障害またはRRT関連の可能性がある合併症数は、両群同等であった。RRTを受けなかった日数中央値は、遅延群では12日(IQR 0~25)、長期遅延群では10日(IQR 0~24)であった(P=0.93)。多変量解析で、遅延群に対する長期遅延群の60日時の死亡のハザード比は1.65(95% CI 1.09~2.50、P=0.018)であった。急性腎障害またはRRTに関連する可能性のある合併症の数には両群間で差がなかった。 【解釈】乏尿が72時間を超えるか血中尿素窒素濃度が112mg/dLを超える重症急性腎障害患者で、即時RRTを要する重度合併症がない場合、RRT開始を長く延期しても便益は得られず、有害となる可能性がある。 第一人者の医師による解説 エビデンスの蓄積で透析開始基準のより明確化を期待 根本佳和(助教)/寺脇博之(教授) 帝京大学ちば総合医療センター第三内科(腎臓内科) MMJ. October 2021;17(5):147 急性腎障害(AKI)における緊急透析の適応基準は存在するものの、それに該当しない重症患者に対する腎代替療法(RRT)開始タイミングについては議論が分かれる。「透析はまだ待てる」、逆に「もう少し早くに連絡して欲しかった」とコンサルテーションを依頼した専門医に言われ、一体どのタイミングが正解だったのかと思い悩んだ医師も多いのではないだろうか。本論文はこの、「透析はどこまで待つか」というシンプルだがいまだ答えが曖昧な疑問に対する重要なエビデンスである。 著者らはフランスの39施設の集中治療室(ICU)において多施設共同ランダム化対照試験を実施した。重症 AKI(Kidney Disease: Improving Global Outcomes[KDIGO]分類のstage3)患者を、72時間以上の乏尿または尿素窒素(BUN)112 mg/dL超になるまでモニターした後、遅延群(delayed strategy:ランダム化直後にRRTを開始)と長期遅延群(more-delayed strategy:いわゆる緊急導入徴候[高カリウム血症・代謝性アシドーシス・肺水腫]の出現、またはBUN140mg/dL超でRRTを開始)の2群にランダムに割り付けた。評価対象となった患者は5,336人であり、そのうち278人がランダム化を受け、137人が遅延群、141人が長期遅延群に割り付けられた。主要評価項目のRRT-free daysは生存とRRTの期間の複合アウトカムであり、ランダム化から28日目までの期間において生存患者でRRTを実施しなかった日数がカウントされた。結果、RRT-free days中央値に関して遅延群と長期遅延群で有意差はなかった(12日対10日;P=0.93)。また、副次評価項目の1つである60日後の死亡率は、遅延群44%、長期遅延群55%と有意差はなかったが(P=0.071)、長期遅延群は60日後の死亡に関する有意な危険因子であることが多変量解析で示された(ハザード比,1.65;95%信頼区間,1.09〜2.50;P=0.018)。すなわち、透析開始を必要以上に遅延させることの有益性はなく、むしろ有害性と関連している、と著者らは結論づけている。 日本の臨床では、本試験の長期遅延群に該当するまでRRT開始を延期することは少ないと思われる。遅延群もしくはそれ以前の段階において緊急導入徴候が出現した際にRRTを開始することが多いのではないだろうか。著者のGaudryらは、AKIにおけるRRTの早期導入と晩期導入に関するメタ解析で、28日全死亡率に有意差がなかったとも報告している(1)。RRT開始は『早すぎず遅すぎず』のスタンスで良いことはわかってきたが、本論文のようなエビデンスがさらに蓄積されることで開始基準がより明確化されることに期待したい。 1. Gaudry S, et al. Lancet. 2020;395(10235):1506-1515. (MMJ 2020年12月号で紹介)
免疫チェックポイント阻害薬~BIBGRAPH SEARCH(2022年10月12日号)
免疫チェックポイント阻害薬~BIBGRAPH SEARCH(2022年10月12日号)
がんの治療にパラダイムシフトを起こした免疫チェックポイント阻害薬(Immune Checkpoint Inhibitor:ICI)。今回は、ICIに関する最新論文をご紹介します。ICIに関連する腎障害、血栓塞栓イベント、膵臓への影響や「抗生物質使用の影響」「悪性黒色腫の生存率は改善したのか」などの情報が盛りだくさん。ぜひご覧ください。(エクスメディオ 鷹野 敦夫) 『BIBGRAPH SEARCH』では、エクスメディオが提供する文献検索サービス「Bibgraph」より、注目キーワードで検索された最新論文をまとめてご紹介しています。 ICIに関連する急性腎障害の診断と管理 Sprangers B, et al. Nat Rev Nephrol. 2022 Sep 27.[Online ahead of print] ≫Bibgraphを読む 抗生物質使用は非小細胞肺癌に対するICIの効果に影響するか Martinez-Mugica Barbosa C, et al. Rev Esp Quimioter. 2022 Sep 23. [Online ahead of print] ≫Bibgraphを読む ICIの血栓塞栓イベントリスク~WHOグローバルデータ分析 Alghamdi EA, et al. Saudi Pharm J. 2022; 30: 1193-1199. ≫Bibgraphを読む 転移性黒色腫の生存率はICI承認により改善したのか Adhikari A, et al. Cancer Epidemiol. 2022 Sep 26. [Online ahead of print] ≫Bibgraphを読む ICIの膵臓への影響 Ashkar M, et al. Cancer Immunol Immunother. 2022 Sep 26. [Online ahead of print] ≫Bibgraphを読む 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら