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【皮膚がん専門医が解説】メラノーマ(悪性黒色腫)の診断ポイント①~ダーモスコピーでも見逃しやすいホクロ、メラノーマと診断できる?~
【皮膚がん専門医が解説】メラノーマ(悪性黒色腫)の診断ポイント①~ダーモスコピーでも見逃しやすいホクロ、メラノーマと診断できる?~
悪性黒色腫とも呼ばれるメラノーマは、悪性度が高く転移しやすいがんとして知られており、早期発見・治療が重要です。近年ではダーモスコープを用いたダーモスコピー検査の普及により、メラノーマの診断精度は肉眼所見のみと比較して格段に向上していますが、なかには鑑別が難しく見逃しやすいホクロもあります。そこで今回の記事では、皮膚科専門医の先生方が知っておきたいメラノーマ診断のポイントについて、国立がん研究センター東病院 皮膚悪性腫瘍指導専門医 陣内駿一先生に解説いただきました! ■監修:陣内駿一 医師 国立がん研究センター東病院 皮膚腫瘍科 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医 日本皮膚科学会認定皮膚悪性腫瘍指導専門医 ■あわせて読みたい メラノーマ(悪性黒色腫)の診断ポイントを皮膚がんの専門医が解説②~ダーモスコピーでも鑑別が難しい良性腫瘍、メラノーマと診断できる?~ ― 陣内先生のメラノーマ診断に関するご経歴を教えてください。陣内先生:国立がん研究センター中央病院にて、5年間で800~900名のメラノーマ症例をカンファレンスで共有し、さらに担当レジデントとしても診療を行っていました。一般の皮膚科クリニックだと1年に2~3名来院される程度であるため、多くの症例を経験してきたと自負しています。また、AI(人工知能)に1,600枚のメラノーマ画像を含む5,800枚の皮膚腫瘍画像を学習させ、皮膚腫瘍判定システムの開発を行った実績もあります。メラノーマの診断精度を上げるためにはやはり症例の数をこなすことが大切だと考えています。 メラノーマ診断のポイントとは~実際の症例で解説~ ― 先生が今まで診断された症例をもとに、メラノーマ診断のポイントついて教えてください。陣内先生:まずは典型的な症例を頭に入れておくことで、メラノーマの見逃しを防ぐことができます。 ホクロ(良性) メラノーマ(悪性) 肉眼所見 特徴高齢女性、右頬11mm常色で弾性軟の皮膚結節 高齢女性、右頬30mm以上白色~茶褐色色素斑、色むらあり ダーモスコピー画像 特徴ベースは常色のドーム状結節で、中央にpseudonetwork(※1)を認める。 Regression(※2)を思わせる脱色素斑、pseudonetworkを認める。また周辺の境界がやや不明瞭である。 ※1pseudonetwork:偽ネットワークともいい、褐色の線で構成される網目構造のこと。※2Regression:白色消退のこと。 陣内先生:メラノーマと診断した理由としては、大型の病変であるほかに、白色~茶褐色の色むらがあったことです。基本的な診断ポイントさえ押さえておけば難しくはありません。 メラノーマの基本的な診断ポイント~ABCDE基準~ A:Asymmetry(非対称性の病変):形が左右非対称である。 B:Border irregularity(不規則な形):輪郭がギザギザしている。 C:Color variegation(多彩な色調):色むらがある。 D: Diameter enlargement(大型の病変):直径が6㎜以上である。 E:Evolution(経過の変化):大きさや形、色、症状に変化がある。 Abbasi NR, et al. JAMA 2004; 292(22): 2771-2776. 陣内先生:次の症例は、一見ホクロかメラノーマか臨床診断が付けきれなかった症例です。2か所に見られる色素斑にはどちらともPFPパターン(※3)を認めます。しかし一方にはPRPも認めました。臨床診断はホクロだと9割方思いましたが、診断的治療のため全切除生検を行いました。結果としては幸い、ホクロ(色素性母斑)でした。 肉眼所見 ダーモスコピー画像 特徴 中年女性、右足小指内側に2か所色素斑あり。両方にPEPパターンを認め、左側の色素斑にはPRP(※4)も認められる。 ※3PFP:皮溝平行パターンのこと。※4PRP:皮丘平行パターンのこと。※3・4:一般にPFPはホクロ、PRPはメラノーマに多い特徴とされるが、診断特異度は100%ではないことに注意する。 メラノーマの診断には対象の皮疹だけでなく周辺もよく視診することがポイント ― その他に陣内先生が重要視されている診断のポイントはありますか?陣内先生:対象の皮疹(色素斑)を視診した際に、良性腫瘍と言える根拠しか出てこなければ、恐らくそれは良性腫瘍だと思います。しかしながら少しでも疑問に思う所見を認めた時には、正直に患者さんに「自分は●●と思う」と説明するといいと思います。また対象の皮疹だけを見るのではなく周辺も視診してください。周囲に色素性母斑や脂漏性角化症などの良性腫瘍があり、大きさや濃さを比較して異質ではないかを確認することが重要です。つまり、対象となる皮疹に異質な印象を受けるどうかが大事なポイントだと思います。隆起や出血、痂皮等認めた場合には診断の閾値を下げる必要があります。 ― メラノーマと判断がつきにくく生検も困難な場合はどう対応されますか?陣内先生:臨床診断で判断に迷った場合、病理診断に頼ることになりますが、患者さん全員にできるわけではないので、その場合は経過を追うことで皮疹の経時的な変化で診断を付けていきます。また色素性母斑と診断していても、定期的な診察を希望される方もいらっしゃいます。私は患者さんと相談し3~6か月ごとに定期的に通院してもらっています。その際には、過去のデータと比較できるように、必ず写真を撮るようにしています。症例の中には1年以上観察をして、明確な悪性所見が出てきて分かったケースもあります。カルテに所見の記述のみを残して経過を追っていくのでは、診療としては不十分です。記述の内容だけでは比較できません。また患者さんが気にしてご自身のスマートフォン等で写真を撮っている場合もあり、それも手助けになります。他に臨床診断でメラノーマと想定し生検をしても、確定診断ができない場合もあります。その場合は臨床診断と天秤にかけながら最終的な診断を行っていきます。患者さんを家族と思い、メラノーマと疑わしい症例は生検や他の医師への相談が大切 ― メラノーマと疑われる症例を見るときに先生が意識されていることはありますか?陣内先生:メラノーマではないかと常に考えて診察を行うようにしています。患者さんの希望があれば、医師が不要と感じた場合でも生検・切除を行うべきだと個人的には考えています。理由は、まれにその中に皮膚がんが隠れていることがあるからです。トレーニングを積んだ我々でも見分けがつきにくい症例が必ず存在します。患者さんが不安を感じていて、切除希望があるのに安易に「大丈夫ですよ」と言って返しては、いつか痛い目に合います。医師は自身の限られた診断精度から、無意識的に陽性的中率を上げようと診察していると思っています。しかしながら偽陽性でも(メラノーマでないものをメラノーマと思っても)いいんです。偽陽性が増えたとしても見逃されるメラノーマの数は減りません。偽陽性を恐れないことでメラノーマの見逃しを防ぐことができます。もちろん結果として、偽陽性と判明するまで、一時的に患者さんにストレスを与えてしまうかもしれませんが、見逃されるよりはまだマシです。患者さんを家族だと思って、疑わしき症例は他の医師に相談する、または(積極的に)生検を行うことが大切です。 ■あわせて読みたい メラノーマ(悪性黒色腫)の診断ポイントを皮膚がんの専門医が解説②~ダーモスコピーでも鑑別が難しい良性腫瘍、メラノーマと診断できる?~ ― ありがとうございました。皮膚悪性腫瘍指導専門医が、豊富な診療経験と高度な技術に基づき、メラノーマを診断されていることがよくわかりました。約7万人の医師が登録するオンライン医局®「ヒポクラ」では、クリニック勤務などで周りに相談できる環境が無い先生方向けに、メラノーマ診断・治療のコンサルトサービスを行っています。皮膚悪性腫瘍専門医の先生にオンラインでご相談されたい方はご利用ください。 メラノーマかどうか診断の難しいホクロ。紹介して生検すべきかどうか悩んだことはありませんか? 医師が、患者さんに自信を持って向き合えるように、皮膚悪性腫瘍指導専門医に、オンラインで気軽にアドバイスをもらってみませんか?(完全無料) 今すぐ会員登録して相談 会員登録しないで初回相談 会員登録するとオンライン相談は無制限で無料。会員登録すると「たくさんの先生の症例が見れる知見共有」「時短日本語論文検索」「皮膚悪性腫瘍以外も質問できるコンサルト」等のサービスを全て無料で利用できるようになります。 ※2回目からのご利用には会員登録が必要になります --> ※本サービスは予告なく変更または終了する場合がございますので、あらかじめご了承ください。
コーヒーの飲用が若さの鍵!? 他4本≫ Journal Check Vol.81(2024年1月11日号)
コーヒーの飲用が若さの鍵!? 他4本≫ Journal Check Vol.81(2024年1月11日号)
コーヒーの飲用が若さの鍵!? 観察研究により、コーヒー、アルコール、紅茶、砂糖入り飲料の摂取と顔の肌老化との関係が明らかになったが、交絡因子が影響している可能性がある。著者らは、2サンプルのメンデルランダム化解析を行い、飲料摂取と顔の肌老化との間の潜在的な因果関係を調査した。Journal of Cosmetic Dermatology誌オンライン版2024年1月4日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む AGAに有用な補完代替医療(CAM)は? 男性型脱毛症(AGA)は、ミノキシジルなどの治療薬が有効だが、副作用が不快な場合がある。そのために自然療法への注目が高まっているが、有効性を示す科学的証拠は限られている。著者らは、AGA患者に対する一般的な補完代替医療(CAM)の有効性に関するレビューを実施した。Baylor University Medical Center Proceedings誌オンライン版2024年1月号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 運動で砂糖の悪影響を打ち消せるか? 身体活動が心血管疾患(CVD)発症に対する砂糖入り飲料 (SSB)または人工甘味料入り飲料(ASB)の悪影響を軽減できるかどうかは不明である。著者らは、2件の前向きコホート研究から、成人におけるSSBまたはASBの摂取と身体活動、CVDとの関連を調査した。The American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2024年1月5日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む GLP-1受容体作動薬のセマグルチドは、自殺念慮を惹起するか? 2型糖尿病および肥満症治療薬であるGLP-1受容体(GLP1R)作動薬セマグルチドに関連した自殺念慮の報告があり、欧州規制当局が調査に乗り出した。著者らは、セマグルチドと自殺念慮の関連性について、非GLP1R作動薬の抗肥満薬または抗糖尿病薬と比較した、後ろ向きコホート研究を行った。Nature Medicine誌オンライン版2024年1月5日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む スポーツ実施時におけるビタミンDの効果とは? ビタミンDの欠乏は怪我のリスクを高めることが示されている。著者らは、エリートアスリートにおけるビタミンD補給が、次の4つに及ぼす影響について系統的レビューを実施した。①有酸素運動能力、②筋力、スピード、無酸素パワーなどの無酸素運動指標、③炎症の血清バイオマーカー、④骨の健康 Orthopaedic Journal of Sports Medicine誌オンライン版2024年1月3日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら ヒポクラ Journal Check Vol.80(2023年12月21日号) サイアザイド系利尿薬 vs ACE阻害薬 vs Ca拮抗薬 高血圧治療のベストチョイスは? ~23年の追跡調査~ ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.79(2023年12月14日号) あなたの平均余命はどれくらい? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.78(2023年12月7日号) 肥満に最も効く運動は? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.77(2023年11月30日号) 週末〇時間の寝だめで、CVリスクが低下する!? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.76(2023年11月23日号) ブドウ、ブルーベリーが認知症を改善!? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.75(2023年11月16日号) 座りっぱなしは、寝っぱなしよりもタチが悪い!? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.74(2023年11月09日号) 多様な睡眠トラッカー、精度が高かったのはどれ? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.73(2023年11月02日号) 勃起不全に影響のある脂質とは? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.72(2023年10月26日号) 腸内細菌を介して、アルツハイマー病が伝染る!? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.71(2023年10月19日号) ガイドラインでβ遮断薬が高血圧症の第一選択薬になったのは、是か非か? ≫他4本
12月までの合計寄付金額を発表!【ヒポクラ 寄付プロジェクト】
12月までの合計寄付金額を発表!【ヒポクラ 寄付プロジェクト】
いつも『ヒポクラ 寄付プロジェクト』を支えてくださってありがとうございます。 臨床力とモチベーションを向上させるオンライン医局®︎『ヒポクラ』のご利用状況と当プロジェクト公式twitterなどの応援数に応じて日本骨髄バンクへ寄付させていただく当プロジェクトですが、12月31日までに133,087円が集まったことをご報告いたします。 2023年12月までの寄付総額 133,087円 (12月中の寄付総額5,531円) 毎月の継続的な応援が大きな支えになります。 2024年3月末以降に公益財団法人日本骨髄バンクへ寄付させていただきます。 https://www.jmdp.or.jp/ ※本プロジェクトの寄付金は、株式会社エクスメディオの企業活動収益の一部を寄付させていただくものであり、ヒポクラ 利用者の先生方や一般の方々から寄付金を募る取り組みではございません。 寄付プロジェクトの概要、寄付の対象アクションは特設ページをご覧ください。 https://hpcr.jp/topic/plus/hpcr_h_donation ヒポクラ 寄付プロジェクトをtwitterで応援する ヒポクラ の会員になる(医師専用) 担当者からのお礼 当プロジェクトは、医療の発展に寄与し、血液内科の疾患を治療されている患者さんやそのご家族を微力ながら支援させていただくことを目的に始まりました。 12月も『ヒポクラ 血液内科 Pro』は多くの先生にご登録・ご利用頂き誠にありがとうございます。 血液内科 Pro では、過去の投稿を検索できるようにする機能を11月末にリリース。12月には多くの先生のご利用頂きました。 またプロジェクトオレンジ #オレンジ10000チャレンジ へのご協力で、微力ながら血液内科 Pro にもバナーを掲載させて頂きました。その後、骨髄バンク様のフォロワーも10,000人を突破したことを大変嬉しく思っております。 今後も血液内科の先生方の活動とその発展に寄与すると同時に、血液内科の疾患を治療されている患者さんやそのご家族を微力ながらご支援できれば幸いです。 引き続き応援のほどよろしくお願い申し上げます。 『ヒポクラ 』寄付プロジェクトとは 株式会社エクスメディオは「テクノロジーの力で、 世界の健康寿命を5年延ばす」というミッションのもと、 全ての企業活動が、 患者さんの重症化防止の一助となり、 健康寿命の延伸を実現していくことを目指しています。 ミッションを実現する一つのアプローチとして、『ヒポクラ』という場を、 全国の医師の先生方と共につくり、 育てています。 このたび、その活動を一層強化するために、『ヒポクラ』の利用や応援等に応じて、日本骨髄バンクへ寄付させていただくプロジェクトを開始いたします。 本プロジェクトを通して医療の発展に寄与し、血液内科の疾患を治療されている患者さんやそのご家族を微力ながらご支援できれば幸いです。 ※なお、 本プロジェクトの寄付金は、 エクスメディオの企業活動収益の一部を寄付させていただくものであり、 ヒポクラ 利用者の先生方や一般の方々から寄付金を募る取り組みではございません。 『ヒポクラ』とは? 6万6000人の会員医師が交流し、臨床力とモチベーションを向上させるオンライン医局®︎です。 ガイドラインや教科書では解決できない患者さんの背景に沿った診療の相談や、キャリアの相談などを全国の医師に匿名で相談できるサービスとしてご利用いただいております。
サイアザイド系利尿薬 vs ACE阻害薬 vs Ca拮抗薬 高血圧治療のベストチョイスは? ~23年の追跡調査~ 他4本≫ Journal Check Vol.80(2023年12月21日号)
サイアザイド系利尿薬 vs ACE阻害薬 vs Ca拮抗薬 高血圧治療のベストチョイスは? ~23年の追跡調査~ 他4本≫ Journal Check Vol.80(2023年12月21日号)
サイアザイド系利尿薬 vs ACE阻害薬 vs Ca拮抗薬 高血圧治療のベストチョイスは? ~23年の追跡調査~ 死亡率と罹患率に関する降圧治療の長期相対リスクは十分に理解されていない。著者らは、高血圧と診断され、他に少なくとも1つの冠動脈性心疾患危険因子を有する55歳以上の参加者を、サイアザイド系利尿薬、ACE阻害薬、Ca拮抗薬に割付、死亡率と罹患率を比較するための、多施設共同無作為化二重盲検実薬対照臨床試験を行った。JAMA Network Open誌2023年12月1日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 重金属曝露を加味しても、魚の摂取は健康に良いか? 長鎖オメガ-3多価不飽和脂肪酸(ω-3 PUFA)は認知機能に有益であると報告されているが、高濃度の重金属と残留性有機物のため、一部の魚の摂取制限が推奨されている。著者らは、魚摂取によるω-3 PUFAと鉛、カドミウム、セレン、メチル水銀の血中濃度と認知能力との関連を調査した。The American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2023年12月16日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む チルゼパチドの投与終了後も体重減少は維持されるか? チルゼパチドによる治療を継続した場合、初期の体重減少を維持できるかは不明である。著者らは、食事療法と身体活動療法を併用したチルパセチドの体重減少維持効果を評価するために、無作為化治療中止試験を行った。JAMA誌オンライン版2023年12月11日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 認知機能障害を引き起こしやすい睡眠パターンは? 睡眠障害は、認知症や神経変性疾患と関連しているが、睡眠の経時的変化が認知機能障害の発生率に及ぼす影響は不明である。著者らは、健康な高齢者における、加齢に伴う認知機能の変化と縦断的睡眠パターンとの関連を評価するために、Seattle Longitudinal Studyの後ろ向き縦断的解析を行った。JAMA Network Open誌2023年12月1日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 日本人におけるSGLT2阻害薬 vs DPP-4阻害薬の肝保護効果は? 日本の2型糖尿病患者における肝機能に対するSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の効果を比較するために、RWDデータベースを使用した後ろ向きコホート研究を行った。Diabetes, Obesity & Metabolism誌オンライン版2023年12月12日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら ヒポクラ Journal Check Vol.79(2023年12月14日号) あなたの平均余命はどれくらい? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.78(2023年12月7日号) 肥満に最も効く運動は? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.77(2023年11月30日号) 週末〇時間の寝だめで、CVリスクが低下する!? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.76(2023年11月23日号) ブドウ、ブルーベリーが認知症を改善!? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.75(2023年11月16日号) 座りっぱなしは、寝っぱなしよりもタチが悪い!? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.74(2023年11月09日号) 多様な睡眠トラッカー、精度が高かったのはどれ? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.73(2023年11月02日号) 勃起不全に影響のある脂質とは? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.72(2023年10月26日号) 腸内細菌を介して、アルツハイマー病が伝染る!? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.71(2023年10月19日号) ガイドラインでβ遮断薬が高血圧症の第一選択薬になったのは、是か非か? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.70(2023年10月12日号) 超低カロリーのケトジェニック食 vs. 低カロリーのバランス食 片頭痛予防に有効なのはどっち? ≫その他4本
あなたの平均余命はどれくらい? 他4本≫ Journal Check Vol.79(2023年12月14日号)
あなたの平均余命はどれくらい? 他4本≫ Journal Check Vol.79(2023年12月14日号)
あなたの平均余命はどれくらい? 著者らは、①非喫煙、②身体活動、③過度のアルコール摂取なし、④回復的な睡眠、⑤栄養、⑥ストレス管理、⑦社会的つながり、⑧オピオイド使用障害なし、の8つのライフスタイル要因をいくつ持つかで、死亡リスクと平均余命にどのように影響するかを検討した。The American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2023年12月7日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 結局、スタチンは心不全患者に是か非か? 心不全治療は、急性および慢性心不全の診断と治療に関する最近のガイドラインに基づいている。著者らは、心不全における脂質低下療法のエビデンスについてレビューを行った。Current Atherosclerosis Reports誌オンライン版2023年12月4日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む DOAC服用後の脳卒中、ワルファリン vs 他DOAC どちちへ切り替えるべきか? 直接経口抗凝固薬(DOAC)の使用にもかかわらず、心房細動患者では脳卒中再発リスクの増加が指摘されている。著者らは、DOACによる抗凝固療法失敗後の4つの異なるDOACまたはワルファリンによる治療の有効性と安全性を調査した。Journal of the American Heart Association誌2023年12月5日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む コーヒー摂取と因果関係のある"がん"は? コーヒー摂取とアポリポタンパク質Bレベルは、胃がん、大腸がん、および食道がんと関連していることが、最近の多くの研究で明らかにされているが、因果関係があるかどうかはまだ確立されていない。著者らは、これらの因果関係を評価するために、メンデルランダム化解析を行った。European Journal of Nutrition誌オンライン版2023年12月1日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 子どもに見せるとしたら、どんなコンテンツが望ましいか? 過度のスクリーンタイムはメンタルヘルス問題のリスク増加と関連しているが、その関連性がスクリーンコンテンツの種類によって異なるかどうかは不明である。著者らは、3~6歳の小児を対象に、さまざまなコンテンツタイプにおけるスクリーン露出の配分と縦断的変化を検討し、メンタルヘルスとの関連を探った。JAMA Pediatrics誌オンライン版2023年12月4日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら ヒポクラ Journal Check Vol.78(2023年12月7日号) 肥満に最も効く運動は? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.77(2023年11月30日号) 週末〇時間の寝だめで、CVリスクが低下する!? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.76(2023年11月23日号) ブドウ、ブルーベリーが認知症を改善!? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.75(2023年11月16日号) 座りっぱなしは、寝っぱなしよりもタチが悪い!? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.74(2023年11月09日号) 多様な睡眠トラッカー、精度が高かったのはどれ? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.73(2023年11月02日号) 勃起不全に影響のある脂質とは? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.72(2023年10月26日号) 腸内細菌を介して、アルツハイマー病が伝染る!? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.71(2023年10月19日号) ガイドラインでβ遮断薬が高血圧症の第一選択薬になったのは、是か非か? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.70(2023年10月12日号) 超低カロリーのケトジェニック食 vs. 低カロリーのバランス食 片頭痛予防に有効なのはどっち? ≫その他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.69(2023年10月5日号) 摂取すべき炭水化物、摂取すべきでない炭水化物とは? ≫その他4本
先天性胆汁酸代謝異常症~知っておきたい希少疾患
先天性胆汁酸代謝異常症~知っておきたい希少疾患
 先天性胆汁酸代謝異常症は、肝臓において胆汁酸の生合成を担う酵素群のいずれかの遺伝子が欠損している先天性疾患である。毒性のある中間代謝物(異常胆汁酸または胆汁アルコール)が肝細胞内に蓄積する進行性の疾患であり、適切な治療を行わなければ重度の肝疾患により生命を脅かす可能性がある。今回は、先天性胆汁酸代謝異常症およびその治療薬であるオファコル Ⓡ[一般名:コール酸]についての取材内容を紹介する。 肝障害を呈する「先天性胆汁酸代謝異常症」  先天性胆汁酸代謝異常症は、胆汁酸生合成の過程に関与するいずれかの酵素が遺伝的に欠損することにより、毒性のある中間代謝物(異常胆汁酸または胆汁アルコール)が肝細胞内に蓄積し、肝機能障害を生じる進行性の疾患であること、また生命活動において必要不可欠な胆汁酸を自ら生合成することができないことから、適切な治療を行わなければ死亡に至るケースも少なくない。先天性胆汁酸代謝異常症は12種類の疾患に分類されるが、本邦で報告されている症例は、HSD3B欠損症、AKR1D1欠損症、CYP7B1欠損症、脳腱黄色腫症(CTX)の4種類である1~5) 。早期に治療されれば予後は比較的良好であるが、発見が遅れれば肝移植の適応となり予後が悪いと言われている。 非常に稀な疾患も新生児~成人にかけて診断される可能性あり  先天性胆汁酸代謝異常症は、非常に稀な疾患であり、本邦における先天性胆汁酸代謝異常症患者数は、HSD3B欠損症、AKR1D1欠損症、CYP7B1欠損症の3疾患合わせて10人未満、CTXで60人程度の報告にとどまっており、欧米と比較し本邦では報告症例が少なく、これまで発見されていない症例もあると考えられる。拡大新生児スクリーニングの普及や今回の治療薬の承認を機に、今後の診断率の向上による早期発見が期待される。 原因不明の肝障害や黄疸、尿検体から異常胆汁酸を測定  以下のような所見がみられる場合には先天性胆汁酸代謝異常症を疑う。  ・原因不明の肝障害、肝疾患  ・家族性の肝疾患(特に兄弟例など)  ・新生児肝炎と診断された後、症状の改善が見られない  ・胆汁うっ滞があるにもかかわらず‘かゆみ’ がない  ・慢性下痢を伴う発育不全のある乳児(軟便のこともあり)  ・脂溶性ビタミン欠乏症状(頭蓋内出血、原因不明のくる病など)  ・若年性白内障、黄色腫  注目すべきは閉塞性黄疸が存在するにかかわらず血清総胆汁酸とγ-GTP が正常か低値という特徴がみられる点である。異常胆汁酸の測定には、液体クロマトグラフ質量分析法による胆汁酸分析が有用である。検体には、血清、尿、便、胆汁などが用いられるが、採取の容易さと排出量からも尿検体が最も適切であると考えられる。また、異常胆汁酸が検出された場合には、遺伝子解析を実施し、確定診断を行う。 先天性胆汁酸代謝異常症の標準治療薬「コール酸」、承認までの道のり  海外では、コール酸は先天性胆汁酸代謝異常症の治療薬としての使用実績があり、古くから臨床研究報告が発表され経験的に有効性及び安全性が確認されてきた歴史がある。このことから欧米では、コール酸が先天性胆汁酸代謝異常症の適応で承認されており、標準的治療法とされている6~9)。 一方、日本ではコール酸製剤は無く、ケノデオキシコール酸は胆石溶解薬としてのみ承認されていた。そのため、日本小児栄養消化器肝臓学会および日本先天代謝異常学会からの要望を受け、厚生労働省の「未承認薬・適応外薬検討会議」より開発企業の募集が行われ、株式会社レクメドは仏CTRS社(現:THERAVIA社)と共同で本剤の国内開発に着手し、2020年8月に先天性胆汁酸代謝異常症に対し希少疾患用医薬品指定を受け、2023年3月に本邦で初めて「先天性胆汁酸代謝異常症」を効能効果とするオファコル Ⓡカプセル50mg(製造販売元:株式会社レクメド)が承認された。 日本初の先天性胆汁酸代謝異常症治療薬オファコルⓇカプセルが登場  オファコル Ⓡは、コレステロールから胆汁酸への生合成ステップを促進する最初の酵素(Cholesterol-7 α-hydroxylase)に対して負のフィードバックをかけて毒性のある中間代謝物の生成を抑制する。また、欠乏するコール酸を補充することで、胆汁流量を増加させ、肝臓内に蓄積した毒性物質の排出を促進し、胆汁うっ滞を改善する。さらに、脂溶性ビタミンと脂肪の吸収を促進し、成長障害等を改善する。  承認にあたり、4名の日本人患者を対象にオファコル Ⓡを5~15mg/kg/日、74週間経口投与を行う国内第III相臨床試験を実施した。4名とも既にケノデオキシコール酸による治療を受けており、治験開始時にコール酸への切換えを行った。4名中1名でコール酸投与開始後に尿中および血清中の異常胆汁酸濃度の低下、肝機能検査値の改善、血清中ビタミンD濃度の上昇が認められた。他の3名では、ケノデオキシコール酸の治療により治験開始時に既に症状が安定しており、コール酸への切換え後も尿中および血清中の異常胆汁酸濃度は概ね安定して推移し、AST、ALTおよび血清中ビタミンD濃度も概ね基準値範囲で維持した。臨床試験における副作用は、一過性の低カルシウム血症が1名で認められた10) 。オファコルの安全性および有効性については、使用成績調査(全例調査)により引き続き情報収集が行われている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 参考資料 1) Ueki I, et al. J Gastroenterol Hepatol. 2009; 24: 776-85.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/19175828/ 2) Mizuochi T, et al. Pediatr Res. 2010; 68: 258-63.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/20531254/ 3) Nittono H, et al. Pediatr Int. 2010; 52: e192-5.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/20958862/ 4) Seki Y, et al. J Inherit Metab Dis. 2013; 36: 565-73. ▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/23160874/ 5) Mizuochi T, et al. Liver Transpl. 2011; 17: 1059-65.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/21567895/ 6) Setchell K, et al. Cambridge University Press. 2007; 736-66. 7) Gonzales E, et al. Gastroenterology. 2009; 137: 1310-1320.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/19622360/ 8) Sundaram SS, et al. Nat Clin Pract Gastroenterol Hepatol. 2008; 5: 456-68. ▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/18577977/ 9) Gonzales E, et al. Orphanet J Rare Dis. 2018; 13: 190.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/30373615/ 10) オファコルⓇカプセル50mg添付文書 ▶https://www.reqmed.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2023/06/オファコルカプセル50mg-添付文書_v2.pdf ヒポクラ × マイナビ無料会員登録はこちら▶https://www.marketing.hpcr.jp/hpcr
日本救急医学会 第9回全国医学生BLS選手権大会~決勝大会~ 現地レポート
日本救急医学会 第9回全国医学生BLS選手権大会~決勝大会~ 現地レポート
掲載日:2023年12月11日 はじめに  さる2023年11月26日(於:国立国際医療研究センター病院)、第9回全国医学生BLS選手権大会 決勝大会が開催されました。 この大会は全国医学生の心肺蘇生法(CPR:cardiopulmonary resuscitation)を含めた一次救命処置(BLS:basic life support)の知識・技術の向上を目的として、2015年から開催されていました。コロナ禍による影響もあり、4年ぶりの開催ということで参加する医学生の方はもちろんのこと、ご準備をされている先生方や運営事務局の方からも緊張感が伝わってくる独特な雰囲気の中、今年は、地方大会に出場した35大学(41チーム)のうち、上位18大学が決勝の舞台に集まり、大会が始まりました。  冒頭、開会挨拶で笠岡俊志先生(熊本大学病院)から語られたのは「みなさんの“目標”は優勝だと思いますが、“目的”はCPR・BLSの知識・技術を高め、その重要性を一般の方や後輩に伝えることです。“目的”と“目標”を混同することなく、大会に臨んでください」というお言葉でした。 この大会を通じて、語られた“目的”と“目標”。これこそが、この大会の意義を示すキーワードであり、日本救急医学会から医学生たちへの熱い想いの核となる言葉でした。 「実際の患者さんだと思ってください」  開会式では、もうひとつ、参加医学生の熱気を感じる場面がありました。 本大会ご担当の澤田悠輔先生(群馬大学医学部附属病院)がルール説明を終え、質疑応答の時間に移るや否や、医学生たちが一斉に手を上げ、質問をしていきました。質問の内容としてはルールの疑問・不明点や当日使用する機器の具合など様々。その一つ一つに丁寧に答えていく澤田先生の返答には一貫したものがあり、「実際の患者さんだと思ってください。そうすれば自ずと答えは出るはずです」「実際の患者さんにそんなことはしないですよね?」と、目の前のレサシアンを実際の患者さんとして扱っているかを審判員はみていることを、何度も何度もお伝えしていました。 もちろん、競技である以上は採点ルールが存在しますが、あくまでも賞を取ることは“目標”であり、大会の“目的”はBLSの知識・技術の向上で、参加学生同士、切磋琢磨することが大事なことである、という徹底した認識共有が行われたのも印象的でした。  後々、澤田先生が「毎回この時間はものすごく緊迫感に包まれるんですよ」と笑顔で誇らしげにお話されていたのも、この大会の醍醐味を象徴する素敵な場面だったと思います。 競技概要  競技概要(ルール)についてお伝えしたいと思います。 ・大学単位での参加で1大学から参加できるチームは1チーム(地方大会あり) ・1チーム5名編成の団体戦(うち医学科学生は3名以上) ・競技種目は下記の3つ(競技者は3名ずつ・成人は10分・乳児は8分) ① 2人法による成人BLS(胸骨圧迫+人工呼吸(BVM使用)+AED使用)(硬さ:スタンダード) ② 2人法による成人BLS(胸骨圧迫+人工呼吸(BVM使用)+AED使用)(硬さ:ハード) ③ 2人法による乳児BLS(胸骨圧迫+人工呼吸(BVM使用)+AED使用) ・当日受付時に抽選が行われ、各種目にどのメンバーが参加するかが決定 ・BLSは評価シートを使用し、学会所管の審査委員(先生方)にて採点。 ・CPRはレサシアン with QCPRマネキン(レールダルメディカル社)、レサシベビー QCPRマネキン(レールダルメディカル社)を使用して、評価。 ・使用するガイドラインは、日本蘇生協議会(JRC)蘇生ガイドライン2020。また、医療者用BLSアルゴリズムを採用。 ※その他詳細は割愛いたします この内容で2時間半にわたり、熱戦が繰り広げられました。 競技開始  いざ、競技がスタートすると会場は救急現場さながらに緊迫感の漂う空間となりました。 競技者の一挙手一投足、どれにおいても真剣さが籠っており、質の高いBLSを行おうという想いが全チームから感じられる雰囲気でした。胸骨圧迫のテンポを保つために一定のリズムで手拍子を入れながら応援をする医学生たちの手のひらが真っ赤になっていたり、優勝を“目標”に一緒に練習をしてきた仲間を鼓舞する姿は、いかにも青春という様子で、心揺さぶられる場面でした。 その一方で、競技が終わったあとすぐに集まって反省点を話し込む姿や、各大学の引率の先生にアドバイスを求める姿は、医学生であっても一人の医療従事者なんだという高い志を感じる素晴らしい時間であったと思います。この競技会場の雰囲気が文章で伝えきれないかも、という歯がゆさも残りますが、ぜひ、この記事を読んだ医学生には来年以降、実際に参加して、肌で感じていただきたいなと思いました。 競技と実際の間で  2時間半にわたる競技時間を終え、医学生たちの表情は達成感と開放感に溢れたものとなっていました。表彰式のために参加者全員が再度会場に集い、隣に並ぶ他大の参加者と会話を交わす様子を見ていると、こうして現地に集まり、お互いの顔が見える中で知識・技術を高めあうということの重要性を改めて感じた、大変貴重な場となりました。 表彰は4部門(成人スタンダード・成人ハード・乳児・総合)にわたり、発表されました。 表彰式後、総合優勝を果たした琉球大学の方に“大会に臨むうえで一番大切にしていたこと”を聞いてみると「とにかくメンバーみんなでやる。マネキンではなく、実際の人だと思って。競技ルールはあるものの、とにかく目の前にいるのは人なんだと思ってやることを徹底して臨みました」と素敵な笑顔で答えてくれました。また、練習の一環として、実際に活躍している救急隊の方を訪ね、リアルな現場の状況などに即したBLSの方法や実技を学んだというお話もしてくださいました。 もう一つ、この琉球大学チームから非常に興味深いお話がありました。普段所属する《Off The Clock》というサークルは救急医療と総合診療の2本柱で活動しているというのです。「自分たちでも珍しいサークルだと思います。昨日もみんなで総合診療の講演を受けて、朝8時の飛行機で東京にきました!」と仰っていたところに学生らしい勢いを感じた一方、日頃から人を助けるんだ、という想いを持って、コツコツと練習や実習、サークル活動に励んでいるというところに、このチームが総合優勝できた理由を垣間見た気がしました。  閉会式、笠岡先生は全体総評で「“目標”としていた優勝はできなかったかもしれない、でも“目的”としていたことは全員が達成できたと思います」「今日、何人の人を救うことが出来たか、何人の人が救われたか。私はその目線で競技を見ていました。救急を専門にしているからではなく、医師にとって大事な蘇生法を学べたことが重要です」と医学生たちに激励のお言葉をかけていました。  改めて振り返ると、大会を通して語られた“目的”を日頃から念頭に置き、実践できているかどうか、この点が、賞を取れるかどうか、つまり“目標”達成をなし得るかの微妙な差を生んだのではないかと思います。もちろん、医療は競い合うものではありません。しかしながら知識・技術を高め合うことは、間違いなく、これからの医療を明るくしてくれる要素であると考えます。 こんなに志の高い医学生たちが、それぞれの地域で生活している。それが感じられただけでも、数多くの人命が救われる希望がある、と認識させていただける素晴らしい機会となりました。 今後もこの大会が続いていくことを心より願うとともに、来年は地方大会から見てみたいと思える、とても熱気溢れる大会でございました。  最後に、本取材をご快諾いただきました、日本救急医学会理事の先生方、学生・研修医部会運用委員会委員長の笠岡俊志先生、国立国際医療研究センター病院の木村昭夫先生・船登有未先生、大会担当の澤田悠輔先生に改めて感謝申し上げます。誠にありがとうございました。 文責:ヒポクラ学会担当 カワウソくん ▶医師・医学生専用SNS ヒポクラ  無料会員登録はこちら     ▶第9回全国医学生BLS選手権大会 https://www.jaam.jp/info/2023/info-20230421.html ▶日本救急医学会HP https://www.jaam.jp/index.html ▶救急医を目指す君へ https://qqka-senmoni.com/
11月までの合計寄付金額を発表!【ヒポクラ 寄付プロジェクト】
11月までの合計寄付金額を発表!【ヒポクラ 寄付プロジェクト】
いつも『ヒポクラ 寄付プロジェクト』を支えてくださってありがとうございます。 臨床力とモチベーションを向上させるオンライン医局®︎『ヒポクラ』のご利用状況と当プロジェクト公式twitterなどの応援数に応じて日本骨髄バンクへ寄付させていただく当プロジェクトですが、11月30日までに127,556円が集まったことをご報告いたします。 2023年11月までの寄付総額 127,556円 (11月中の寄付総額7,179円) 毎月の継続的な応援が大きな支えになります。 2024年3月末以降に公益財団法人日本骨髄バンクへ寄付させていただきます。 https://www.jmdp.or.jp/ ※本プロジェクトの寄付金は、株式会社エクスメディオの企業活動収益の一部を寄付させていただくものであり、ヒポクラ 利用者の先生方や一般の方々から寄付金を募る取り組みではございません。 寄付プロジェクトの概要、寄付の対象アクションは特設ページをご覧ください。 https://hpcr.jp/topic/plus/hpcr_h_donation ヒポクラ 寄付プロジェクトをtwitterで応援する ヒポクラ の会員になる(医師専用) 担当者からのお礼 当プロジェクトは、医療の発展に寄与し、血液内科の疾患を治療されている患者さんやそのご家族を微力ながら支援させていただくことを目的に始まりました。 11月も『ヒポクラ 血液内科 Pro』は多くの先生にご登録・ご利用頂き誠にありがとうございます。 特に 血液内科 Pro に集まったマニアックで貴重な症例を集めた『血液内科 Proマニアック図鑑』の企画は多くの先生にご好評を頂きました。今後も更新していきますので是非、日々の診断・治療の参考にして頂けますと幸いです。https://hpcr.jp/topic/plus/ad73b418a63ced0e7 今後も血液内科の先生方の活動とその発展に寄与すると同時に、血液内科の疾患を治療されている患者さんやそのご家族を微力ながらご支援できれば幸いです。 引き続き応援のほどよろしくお願い申し上げます。 『ヒポクラ 』寄付プロジェクトとは 株式会社エクスメディオは「テクノロジーの力で、 世界の健康寿命を5年延ばす」というミッションのもと、 全ての企業活動が、 患者さんの重症化防止の一助となり、 健康寿命の延伸を実現していくことを目指しています。 ミッションを実現する一つのアプローチとして、『ヒポクラ』という場を、 全国の医師の先生方と共につくり、 育てています。 このたび、その活動を一層強化するために、『ヒポクラ』の利用や応援等に応じて、日本骨髄バンクへ寄付させていただくプロジェクトを開始いたします。 本プロジェクトを通して医療の発展に寄与し、血液内科の疾患を治療されている患者さんやそのご家族を微力ながらご支援できれば幸いです。 ※なお、 本プロジェクトの寄付金は、 エクスメディオの企業活動収益の一部を寄付させていただくものであり、 ヒポクラ 利用者の先生方や一般の方々から寄付金を募る取り組みではございません。 『ヒポクラ』とは? 6万6000人の会員医師が交流し、臨床力とモチベーションを向上させるオンライン医局®︎です。 ガイドラインや教科書では解決できない患者さんの背景に沿った診療の相談や、キャリアの相談などを全国の医師に匿名で相談できるサービスとしてご利用いただいております。
悪性リンパ腫 ~初発・再発・高齢者・移植・管理の治療戦略~
悪性リンパ腫 ~初発・再発・高齢者・移植・管理の治療戦略~
血液内科 Proの悪性リンパ腫に関する投稿の一覧です。(2022年5月〜2023年11月中旬まで)ぜひ、ブックマークをよろしくお願いいたします。 ▼初発の治療戦略▼再発の治療戦略▼高齢者の治療戦略▼移植の治療戦略▼その他の治療戦略▼治療管理 初発の治療戦略 ・ENKTL/CAEBVの治療方針 ・新規発症NK/T細胞リンパ腫の治療方針 ・中枢神経と体幹部同時発症のCD5+DLBCL ・両側精巣病変を伴うDLBCL ・50代男性、初発時からCNS病変を有するB細胞性リンパ腫・併存症多数 ・限局FLの治療方針 ・ステロイドパルス後悪性リンパ腫疑い ・H.pylori陰性MALTリンパ腫照射後の下咽頭限局再発に対する治療相談 ・HIV関連PCNSLの治療方針について ・扁桃で初発→胃とリンパ節で再発した有症状?MALTリンパ腫の治療方針 再発の治療戦略 ・脳・脊髄・副腎・腎病変を有するCD5陽性DLBCLの治療方針相談(先月の続編) ・DLBCL 再燃の 治療方針 ・再発ALK陽性CD30陽性ALCL ・再発NLPHL ・FL→DLBCL transformの治療についてご相談です。 ・再発・形質転換DLBCL早期再発の症例 ・難キャラクターのTransformed FLに対する治療方針 ・難治性進行期MALTリンパ腫の治療相談 ・60代男性SMZL再々発(疑い) ・CD20陰性再発難治性Double hit lymphoma ・DA-EPOCH-R+RT後の難治性PMBL ・BV+CHP療法後、早期再発のALK+ALCLの治療方針 ・ホジキンリンパ腫の再発に対する治療方針 ・難治性DLBCLの治療選択について ・再発難治性PTCLに対する治療方針 ・形質転換 濾胞性リンパ腫 (FL)症例のFLとして早期再発時の方針について 高齢者の治療戦略 ・90歳前後のCNS再発に関して ・意識障害あり全身状態不良のCD5陽性DLBCL症例のレジメン相談 ・高齢者限局期ホジキンリンパ腫のレジメンについての相談・疑問 ・80歳代中盤のPCNSLに対する化学療法レジメン・用量の御相談 ・超高齢者の濾胞性リンパ腫 ・高齢者巨脾 ・高齢者DLBCLの初回治療 ・先生のご施設ではR-CHOP療法の投与量どうしてますか? 76歳女性DLBCL 移植の治療戦略 ・DLBCLとCHLの中間的特徴を伴うB細胞性リンパ腫の治療方針について ・自家移植 腎機能低下 ・T-LBL治療について ・古典的ホジキンリンパ腫の自家移植前の抗PD-1抗体 ・皮膚原発大細胞型B細胞リンパ腫 第3再発期 CAR-Tの適応について その他の治療戦略 ・ガザイバ維持治療の適応について ・乳腺原発悪性リンパ腫の中枢予防 ・診断が曖昧なまま治療が進んでいる悪性リンパ腫?中枢神経浸潤? ・DLBCL自家移植後の再発またはIgG4関連疾患の70歳代前半男性の方針相談 ・濾胞性リンパ腫に対するCAR-T適応 ・Hyper IgE症候群のダブルヒットリンパ腫 ・FL形質転換を疑いつつもDouble hit lymphomaが否定できない時の治療選択 ・Bulky DLBCの放射線適応 治療管理 ・明らかに過剰なPET-CT検査 を要求された。 ・TTBU自家移植後の難治性下腿浮腫 ・自家移植後、IgM高値の遷延 ・肝硬変合併のDLBCL ・十二指腸多発潰瘍を持つ濾胞性リンパ腫の絶食について ・濾胞性リンパ腫治療後に強い免疫不全症を発症しています。 ・ロイナーゼの膵炎について(5/17投稿続き) ・ATLLの皮疹について ・限局期CD30陽性AITLに対する後半の治療方針 ・エバシェルド投与後のCOVID19感染 ・DLBCL患者における繰り返すCDIに対するベズロトクスマブ ・若年女性cHL患者のCMR確認直後の妊娠について ・T-PLL難治 ・AITL再発治療前のコロナ感染について ・菌状息肉症・セザリー症候群の治療方針について ・COVID-19が再び、まん延していますが皆様のご施設ではどのようにしてらっしゃいますか? ・COVID-19を罹患した再発悪性リンパ腫 ▼初発の治療戦略▼再発の治療戦略▼高齢者の治療戦略▼移植の治療戦略▼その他の治療戦略▼治療管理 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※各リンク先の「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
肥満に最も効く運動は? 他4本≫ Journal Check Vol.78(2023年12月7日号)
肥満に最も効く運動は? 他4本≫ Journal Check Vol.78(2023年12月7日号)
肥満に最も効く運動は? 過体重および肥満の患者における、内臓脂肪組織(VAT)および他の身体測定変数に対する様々な運動の効果を調査することを目的に、84件のランダム化比較試験のシステマティックレビューとネットワークメタ解析を行った。Obesity Reviews誌オンライン版2023年11月30日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む お肉は健康を害するか? 赤身肉の総摂取量、加工および未加工赤身肉の摂取量と2型糖尿病(T2D)リスクとの関係を評価し、赤身肉を異なるタンパク源に置き換えた場合のT2Dリスク低減効果を推定することを目的に、前向きコホート研究を行った。The American Journal of Clinical Nutrition誌2023年12月号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 【欧州 不眠症ガイドライン2023】推奨されない治療薬は? 2017年以降の不眠症分野の進歩により、欧州不眠症ガイドラインの更新が必要となった。不眠症とその合併症の診断手順、治療に関する推奨についてまとめた。Journal of Sleep Research誌2023年12月号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 筋トレに最適なタンパク質の種類と、摂取タイミングは? 筋力向上のための正確なタンパク質摂取に関する知見は未だ十分ではない。著者らは、筋肉量、筋力、身体能力に対する、最適なタンパク質の種類や、摂取タイミングを調査するため、ランダム化比較試験のネットワークメタ解析を実施した。International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism誌オンライン版2023年12月1日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 認知機能に有効なのは、ビタミンB〇? ビタミン摂取と認知機能の関係を精査するために、米国国民健康栄養調査(NHANES)の高齢者データベースを用いた横断研究を実施した。性別、人種、体格指数(BMI)に基づく層別化分析も行った。Journal of Translational Medicine誌2023年11月30日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら ヒポクラ Journal Check Vol.77(2023年11月30日号) 週末〇時間の寝だめで、CVリスクが低下する!? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.76(2023年11月23日号) ブドウ、ブルーベリーが認知症を改善!? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.75(2023年11月16日号) 座りっぱなしは、寝っぱなしよりもタチが悪い!? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.74(2023年11月09日号) 多様な睡眠トラッカー、精度が高かったのはどれ? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.73(2023年11月02日号) 勃起不全に影響のある脂質とは? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.72(2023年10月26日号) 腸内細菌を介して、アルツハイマー病が伝染る!? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.71(2023年10月19日号) ガイドラインでβ遮断薬が高血圧症の第一選択薬になったのは、是か非か? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.70(2023年10月12日号) 超低カロリーのケトジェニック食 vs. 低カロリーのバランス食 片頭痛予防に有効なのはどっち? ≫その他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.69(2023年10月5日号) 摂取すべき炭水化物、摂取すべきでない炭水化物とは? ≫その他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.68(2023年9月28日号) Gスポットは神話?現実? ≫その他4本
週末〇時間の寝だめで、CVリスクが低下する!? 他4本≫ Journal Check Vol.77(2023年11月30日号)
週末〇時間の寝だめで、CVリスクが低下する!? 他4本≫ Journal Check Vol.77(2023年11月30日号)
週末〇時間の寝だめで、CVリスクが低下する!? 著者らは、2017〜2018 年の米国国民健康栄養調査(NHANES)における20歳以上の参加者3,400人を対象に、週末の寝だめと心血管疾患有病率との関係を調査した。Sleep Health誌オンライン版2023年11月23日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 高血圧リスクが低下するのは、トマト1日〇g? 臨床研究では、トマト摂取が血圧に及ぼす影響について矛盾する証拠が示されており、疫学研究のデータも限られている。著者らは、心血管リスクの高い高齢者を対象とした3年間の前向き縦断研究において、トマト摂取が収縮期血圧・拡張期血圧・高血圧リスクと関連するかどうかを評価した。European Journal of Preventive Cardiology誌オンライン版2023年11月24日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 理想的なタンパク質摂取は、体重当たり1日〇g? 2005年に医学研究所は、タンパク質必要量の算出に窒素出納(NB)法以外を推奨した。それ以来、指標アミノ酸酸化(IAAO)法によるタンパク質必要量が発表されているが、NB法の値よりも高くなっている。著者らは、タンパク質の適切性の指標となるグルタチオンの赤血球中動態を測定し、健康な成人におけるタンパク質必要量を決定した。The American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2023年11月20日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 満遍なく食べる事は重要なのか? 著者らは、食物繊維と死亡リスクとの関連性を包括的に調査することを目的に、食物繊維の総量およびサブタイプと、全死因死亡率、心血管疾患およびがんによる死亡率との関係に関する前向きコホート研究の用量反応メタ分析を行った。Food & Function誌オンライン版2023年11月24日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 1日〇mgのアントシアニジン摂取で、COPDリスク低下!? 環境金属への曝露と慢性閉塞性肺疾患(COPD)との関連性は明らかだが、COPDと重金属・フラボノイドの相互作用については、よくわかっていない。著者らは、米国国民健康栄養調査(NHANES)データベースを用いて、血中重金属濃度およびさまざまなフラボノイド化合物の摂取量とCOPD発生率との関係を評価した。BMC Public Health誌2023年11月24日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら ヒポクラ Journal Check Vol.76(2023年11月23日号) ブドウ、ブルーベリーが認知症を改善!? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.75(2023年11月16日号) 座りっぱなしは、寝っぱなしよりもタチが悪い!? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.74(2023年11月09日号) 多様な睡眠トラッカー、精度が高かったのはどれ? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.73(2023年11月02日号) 勃起不全に影響のある脂質とは? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.72(2023年10月26日号) 腸内細菌を介して、アルツハイマー病が伝染る!? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.71(2023年10月19日号) ガイドラインでβ遮断薬が高血圧症の第一選択薬になったのは、是か非か? ≫他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.70(2023年10月12日号) 超低カロリーのケトジェニック食 vs. 低カロリーのバランス食 片頭痛予防に有効なのはどっち? ≫その他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.69(2023年10月5日号) 摂取すべき炭水化物、摂取すべきでない炭水化物とは? ≫その他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.68(2023年9月28日号) Gスポットは神話?現実? ≫その他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.67(2023年9月21日号) 陰茎のサイズ異常と醜形恐怖症の管理に関するガイドライン ≫その他4本
ムコ多糖症II型~知っておきたい希少疾患
ムコ多糖症II型~知っておきたい希少疾患
 ムコ多糖症は、細胞内でのムコ多糖の分解に必要なライソゾーム酵素の先天的な欠損により、全身の細胞にムコ多糖が蓄積する先天代謝異常症である。ムコ多糖症は症状の異なる7つの型に分類され、現在、本邦ではI型、II型、IV型、VI型に対する酵素製剤が使用可能となっている。今回は、ムコ多糖症II型およびその治療薬であるヒュンタラーゼ Ⓡ [一般名:イデュルスルファーゼ ベータ(遺伝子組換え)]についての取材内容を紹介する。 男児の約5万人に1人が発症するムコ多糖症II型  ムコ多糖症II型(ハンター症候群)はライソゾーム病の1つであり、日本においてはムコ多糖症の中で最も頻度の高い疾患である。ムコ多糖症の中でもII型は、X染色体連鎖潜性遺伝であり(その他の病型は常染色体)、ほとんどは男児のみに発症する。本邦では、男児53,000人に1人発症すると推測されている。岐阜大学の調査では国内症例数は255例と報告されているものの、診断に至っていない症例や定期受診をしていない症例もある 1)。そのため、ムコ多糖症II型の正確な患者数を把握することが困難とされている。 “言葉の遅れ”などの中枢神経症状が重症型のサイン  ムコ多糖症II型は、ライソゾーム酵素の1つであるイズロン酸-2-スルファターゼの先天的な欠損により、細胞内に未分化のデルマタン硫酸やヘパラン硫酸といったムコ多糖が過剰に蓄積した結果、多臓器が同時に障害される進行性の疾患である。知的障害の有無によって重症型と軽症型に大別され、患者の約70%は中枢神経症状を伴うと言われている。乳児期によくみられる症状として、広範な蒙古斑・異所性蒙古斑、反復性の中耳炎、臍ヘルニア・鼠径ヘルニアが挙げられる。また、腰椎部の突背も重症型では早期からよくみられる所見である。重症型の場合、言葉の遅れなどの中枢神経症状に気づき来院されることが多く、6~7歳をピークに発達退行がみられ、徐々に進行する。幼児期には、過成長傾向を示す(3歳児Hunter病24例の平均身長98.0 cm、体重20.1 kg)ため、注意が必要である。  ムコ多糖症II型の主な臨床症状 2) 【皮膚症状】特徴的顔貌(ムクムクした顔貌、巨舌など) 【耳鼻科領域の症状】反復性中耳炎、難聴 【骨・関節症状】椎骨の変形、関節拘縮 【腹部の症状】ヘルニア(鼠径・臍)、肝腫大 【循環器症状】心雑音(心臓弁膜症) 【中枢神経症状】精神発達遅延(言葉の遅れなど) 小児神経科、耳鼻科、整形外科、外科の先生も遭遇する可能性があるムコ多糖症II型  ムコ多糖症II型の診療は、小児科の中でも、遺伝や代謝、施設によっては内分泌を専門とされる先生方が中心となっている。しかし、重症型では神経症状を呈することから、小児神経の専門医が診療に携わる場合や、蒙古斑、繰り返す中耳炎、臍ヘルニア・鼠径ヘルニア、骨・関節の異常などを機に、かかりつけ医の先生や耳鼻科、整形外科、外科などのさまざまな科の先生からの紹介で診断にいたるケースもある。診断は、欠損酵素の測定と蓄積物の有無によりなされる。 これまでは中枢神経症状に対する治療効果に課題も  ムコ多糖症II型のこれまでの治療は、個々の症状に対応した対症療法と侵襲臓器にイズロン酸-2-スルファターゼを供給することを目的とした原因療法がおこなわれてきた。原因療法として本邦で保険収載されていた治療法は、静脈内投与の酵素補充療法と造血幹細胞移植であった。静脈内投与の酵素補充療法は、酵素製剤を週に1回点滴静注し、不足している酵素を補う治療であり、肝脾腫、呼吸機能、歩行障害、皮膚所見、関節拘縮などの症状改善が確認されている。一方、従来の静脈内投与の酵素補充療法は、血液脳関門(BBB)を通過しないため、約70%の患者さんに認められる精神発達遅滞や神経退行症状に対して、基本的に治療効果が期待できないことが課題であった。また、造血幹細胞移植に関しては、中枢神経症状の改善の報告はあるものの、その効果は明確になっておらず、ドナーの確保やGVHDの予防も課題となっていた。 中枢神経症状をターゲットとした 世界初のムコ多糖症II型に対する脳室内投与製剤ヒュンタラーゼ Ⓡ  2021年、ムコ多糖症II型に対する酵素補充療法に使用される世界で初めての脳室内投与製剤としてヒュンタラーゼ Ⓡ脳室内注射液15mg(製造販売元:クリニジェン株式会社)が承認された。ヒュンタラーゼは、頭にリザーバを留置し、そこから4週に1回、脳室に直接薬剤を送達させる新しい治療法を有する薬剤である。脳室内に直接投与することで、従来治療では効果不十分であった中枢神経症状に対する治療が可能となった 3)。 2021年4月の上市以来、重症型の患者さんに処方が開始され、2023年11月現在、国内35例の患者さんがヒュンタラーゼによる治療を行っている。 新生児スクリーニングの普及と専門医への早期紹介が望まれる  ムコ多糖症は進行性の疾患であるため、早期診断・早期治療を開始した症例では、薬剤のより高い有効性が期待できると言われている。近年、本邦においても、ムコ多糖症II型を含む拡大新生児スクリーニングが普及しつつあるが、都道府県・自治体・医療機関によって実施の有無に差があり、出生児にスクリーニングを受ける機会がなかった患者さんでは、診断が遅れてしまう可能性がある。このような患者さんにおいては、受診時に診療にあたった先生が典型的な症状に気付き、できるだけ早期に専門医への紹介となることが望まれる。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 参考資料 1) Khan SA, et al. Mol Genet Metab. 2017; 121: 227-240.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/28595941 2) ムコ多糖症サーチ▶https://muco-tatosho.com/ 3) ヒュンタラーゼ Ⓡ脳室内注射液15mg添付文書▶http://www.clinigen.co.jp/medical/pdf/hunterase_pi_20210426.pdf 4) 用語解説(教えて!ムコタ先生)▶https://mukota-sensei.com/term ヒポクラ × マイナビ無料会員登録はこちら▶https://www.marketing.hpcr.jp/hpcr
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