「PCI」の記事一覧

急性冠症候群に用いるチカグレロル単剤療法とチカグレロル+アスピリン併用療法が大出血および心血管イベントにもたらす効果 TICO無作為化臨床試験
急性冠症候群に用いるチカグレロル単剤療法とチカグレロル+アスピリン併用療法が大出血および心血管イベントにもたらす効果 TICO無作為化臨床試験
Effect of Ticagrelor Monotherapy vs Ticagrelor With Aspirin on Major Bleeding and Cardiovascular Events in Patients With Acute Coronary Syndrome: The TICO Randomized Clinical Trial JAMA. 2020 Jun 16;323(23):2407-2416. doi: 10.1001/jama.2020.7580. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【重要性】短期間の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)後のアスピリン投与中止が、出血抑制戦略として評価されている。しかし、チカグレロル単剤療法の戦略は、急性冠症候群(ACS)患者に対象を限定して評価されていない。 【目的】薬剤溶出性ステントで治療したACS患者で、3カ月間のDAPT後にチカグレロル単剤療法に切り替えることによってチカグレロル主体の12カ月間のDAPTより純有害臨床事象が減少するかと明らかにすること。 【デザイン、設定および参加者】韓国の38施設で、2015年8月から2018年10月にかけて、薬剤溶出性ステントで治療したACS患者3056例を対象に、多施設共同無作為化試験を実施した。2019年10月に追跡が終了した。 【介入】患者を3カ月間のチカグレロルとアスピリンを用いたDAPT後にチカグレロル単剤療法(1日2回90mg)へ切り替えるグループ(1527例)とチカグレロル主体の12カ月間のDAPTを実施するグループ(1529例)に割り付けた。 【主要評価項目】主要評価項目は、1年後の純臨床有害事象とし、大出血および有害心脳血管イベントの複合(死亡、心筋梗塞、ステント血栓症、脳卒中、標的病変の血行再建術のいずれか)と定義した。重大な有害心脳血管イベントを事前に副次評価項目に規定した。 【結果】無作為化した3056例[平均年齢61歳、女性628例(20%)、ST上昇型心筋梗塞36%]のうち2978例(97.4%)が試験を完遂した。主要評価項目は、3カ月間のDAPT後チカグレロル単剤療法への切り替え群の59例(3.9%)、チカグレロル主体の12カ月間のDAPT群の89例(5.9%)に発生した(絶対差-1.98%[95%CI 3.50~-0.45%]、ハザード比[HR]0.66[95%CI 0.48~0.92]、P=0.01)。事前に副次評価項目に規定した10項目中8項目に有意差が見られなかった。3カ月間のDAPT後チカグレロル単剤療法への切り替え群の1.7%、チカグレロル主体の12カ月間のDAPT群の3.0%に大出血が発生した(HR 0.56[0.34~0.91]、P=0.02)。重大な有害心脳血管イベントの発生率には、3カ月間のDAPT後チカグレロル単剤療法への切り替え群(2.3%)とチカグレロル主体の12カ月間のDAPT群(3.4%)に有意な差が見られなかった(HR 0.69[95%CI 0.45~1.06]、P=0.09)。 【結論および意義】薬剤溶出性ステントで治療した急性冠症候群で、3カ月間のDAPT後のチカグレロル単剤療法への切り替えによって、チカグレロル主体の12カ月間のDAPTよりも、1年時の大出血および有害心脳血管イベントの複合転帰が控えめだが統計的に有意に減少した。この試験で検討した患者集団および予想されるイベント発生率がこれより低い患者には、この試験で検討した治療を検討すべきである。 第一人者の医師による解説 ACS患者に新世代 DESを留置した後のDAPT期間は3カ月で良い 前村 浩二 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科循環器内科学教授 MMJ. February 2021;17(1):20 冠動脈にステントを留置した後には、ステント内血栓症を防ぐために一定期間、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を行う必要があり、通常アスピリンとP2Y12受容体拮抗薬を使用する。第1世代の薬剤溶出性ステント(DES)では留置後長期間経ってもステントが内膜に覆われず血栓を形成することがあったため、DES留置後は1年間、可能ならさらに長期間DAPTを継続することが推奨された。その後DESは改良され、第2、3世代のDESではステント血栓症は少なくなったため、DAPT期間を短縮できるとする報告が相次いでいる。 本研究は、DES留置を受けた急性冠症候群(ACS)患者に、チカグレロルとアスピリンによるDAPTを3カ月行った後に、チカグレロル単剤群とDAPT12カ月群で全臨床的有害事象を比較した試験である。その結果、1年以内の大出血と心血管イベントの複合ではチカグレロル単剤群が3.9%、12カ月DAPT群が5.9%であり単剤群の方が優れていた。この試験では新世代の極薄型ストラット生体吸収性ポリマーDESを用いたことがDAPT期間の短縮に寄与したと考えられる。また、DAPT後にアスピリン単剤でなくチカグレロル単剤にしたことも、DAPT期間短縮に寄与した可能性が高い。チカグレロルはP2Y12受容体を直接阻害するため、効果発現までの時間が短く、欧米ではACS患者に多く使用されている。しかし日本人を多く含む研究であるPHILO試験において、チカグレロルはクロピドグレルに比べ、統計学的有意差はないものの、大出血や心血管イベントが多い傾向にあった(1)。そのため日本ではクロピドグレルまたはプラスグレルが多く使用され、チカグレロルはこれらが使用できない場合のみ適応とされている。クロピドグレルを用いた試験としては、日本でDAPT1カ月+クロピドグレル単剤投与とDAPT12カ月を比較したSTOPDAPT-2試験が行われ、DAPT1カ月群の優越性が示された(2)。現在ACS患者を対象としたSTOPDAPT-2ACS試験が進行中である。 このようにDAPT期間を短縮できるという報告が相次いでいるため、日本のガイドラインが最近更新された。2020年の日本循環器学会「冠動脈疾患患者における抗血栓療法ガイドライン」フォーカスアップデート版では、ACS患者は血栓リスクが高いと考えられるため、出血リスクが低い場合のDAPT期間は3~12カ月を推奨しているが、高出血リスク患者では1~3カ月を推奨している。このようにDESの改良によりDAPT期間は以前より短くなり、個々の患者の出血リスクと血栓リスクを勘案して決定することになる。 1. Goto S, et al. Circ J. 2015;79(11):2452-2460. 2. Watanabe H, et al. JAMA. 2019;321(24):2414-2427.
冠動脈血行再建術後に用いるP2Y12阻害薬単剤療法または2剤併用抗血小板薬療法:無作為化対照試験の個別患者データのメタ解析
冠動脈血行再建術後に用いるP2Y12阻害薬単剤療法または2剤併用抗血小板薬療法:無作為化対照試験の個別患者データのメタ解析
P2Y12 inhibitor monotherapy or dual antiplatelet therapy after coronary revascularisation: individual patient level meta-analysis of randomised controlled trials BMJ. 2021 Jun 16;373:n1332. doi: 10.1136/bmj.n1332. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約【目的】P2Y12阻害薬単剤療法のリスクと便益を抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)と比較し、この関連性が患者の特徴によって変化するかを評価すること。【デザイン】無作為化対照試験の個別患者データのメタ解析。【データ入手元】Ovid Medline、Embaseおよびウェブサイト(www.tctmd.com、www.escardio.org、www.acc.org/cardiosourceplus)で、開始時から2020年7月16日までを検索した。筆頭著者から個別参加者データの提供を受けた。【主要評価項目】主要評価項目は、全死因死亡、心筋梗塞および脳卒中の複合とし、ハザード比1.15のマージンで非劣性を検証した。重要な安全性評価項目は、Bleeding Academic Research Consortium (BARC)出血基準3または5の出血とした。【結果】2万4,096例を対象とした試験6件のデータをメタ解析の対象とした。主要評価項目は、P2Y12阻害薬単剤療法実施患者283例(2.95%)、DAPT実施患者315例(3.27%)でみられ(ハザード比0.93、95%CI 0.79~1.09;非劣性のP=0.005;優越性のP=0.38;τ2=0.00)、intention to treat集団ではP2Y12阻害薬単剤療法実施患者303例(2.94%)、DAPT実施患者338例(3.36%)でみられた(同0.90、0.77~1.05;優越性のP=0.18;τ2=0.00)。治療効果は性別(交互作用のP=0.02)を除いた全部分集団で一定であり、P2Y12阻害薬単剤療法により、女性の主要評価項目の虚血リスクが低下するが(同0.64、0.46~0.89)、男性では低下がみられないことが示唆された(ハザード比1.00、0.83~1.19)。出血のリスクは、P2Y12阻害薬単剤療法の方がDAPTよりも低かった(97(0.89%)v 197(1.83%);ハザード比0.49、0.39~0.63;P<0.001、τ2=0.03)。この結果は、P2Y12阻害薬の種類(交互作用のP=0.02)を除いた全部分集団で一定であり、DAPTにクロピドグレルではなく新たなP2Y12阻害薬を用いると便益が大きくなることが示唆された。【結論】P2Y12阻害薬単剤療法の死亡、心筋梗塞および脳卒中のリスクはDAPTと同程度である。この関連性は性別により差があり、DAPTよりも出血リスクが低いという科学的根拠が得られた。 第一人者の医師による解説 至適な単剤抗血小板薬を規定するために 国内ではさらなる研究必要 木村 剛 京都大学大学院医学研究科・医学部循環器内科学教授 MMJ. December 2021;17(6):172 薬剤溶出性ステントを用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後には少なくとも1年間のアスピリンとP2Y12阻害薬の2剤抗血小板療法(DAPT)継続が必須とされてきた。しかしながら近年、DAPT継続に伴う大出血の増加への懸念が高まりDAPT期間短縮が模索されてきた。本研究は冠動脈血行再建後1~3カ月間のDAPT後のP2Y12阻害薬単剤とDAPTを比較した臨床試験6件の患者レベルのメタ解析である。筆者らが実施したSTOPDAPT-2試験(1)のデータも含まれている。PCI後のDAPT期間を比較した臨床試験のメタ解析はほかにも報告されているが、今回の患者レベルデータを用いたメタ解析の強みはPCI後1~3カ月以降の実際の割り付け治療実施期間中のアウトカム比較を行っている点と臨床的に重要な因子についてのサブグループ解析が可能となっている点である。結果は、P2Y12阻害薬単剤治療はDAPT継続に比べ心血管イベント(死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイント)を増加させることなく(2.95%対3.27%)、大出血を有意に減少させた(0.89%対1.83%)。サブグループ解析においては急性冠症候群と慢性冠症候群で結果は一貫していた。一方、性別に関しては女性においてP2Y12阻害薬単剤治療により心血管イベントは有意に抑制され(HR,0.64)、性別とP2Y12阻害薬単剤治療の心血管イベント抑制効果の間に有意の交互作用を認めた。しかしながらこの交互作用を説明する理論的根拠が不足しており、これは仮説形成の認識にとどめるべき所見であろうと思われる。結論として著者らは「現在得られるエビデンスをトータルにみて、本研究の結果は冠動脈血行再建後の抗血栓療法におけるパラダイムシフトを支持し、PCI後1~3カ月以降のDAPTの中心的役割に疑問を呈するものである」と結んでいる。本研究において重要なことは、単剤のP2Y12阻害薬として用いられた薬剤の大部分は新規でより強力な抗血小板作用を有するチカグレロルであるが本剤は日本の実地臨床ではほとんど使用されておらず、また日本で広く使用されているクロピドグレルの単剤治療を受けた患者は比較的少数であった点である。実際に本研究で対照薬としてクロピドグレルを用いたDAPTを受けた患者では新規P2Y12阻害薬単剤治療による大出血減少効果はみられなかった。クロピドグレルを用いたDAPTが一般的となっている日本において、心血管イベントを増やすことなく大出血を減少させる至適な単剤抗血小板薬を規定するためにはさらなる研究が必要であると思われる。 1. Watanabe H, et al. JAMA. 2019;321(24):2414-2427.
PCI後1年でルーチンに負荷検査を実施しても 2年間での転帰改善なし
PCI後1年でルーチンに負荷検査を実施しても 2年間での転帰改善なし
Routine Functional Testing or Standard Care in High-Risk Patients after PCI N Engl J Med. 2022 Sep 8;387(10):905-915. doi: 10.1056/NEJMoa2208335. Epub 2022 Aug 28. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [背景] 心筋血行再建術後の特定の追跡調査アプローチを導く無作為化試験から得られたデータは限られています。定期的な機能検査を含むフォローアップ戦略が、経皮的冠動脈インターベンション (PCI) を受けたハイリスク患者の臨床転帰を改善するかどうかは不明です。 PCI から 1 年後の定期的な機能検査 (核負荷試験、運動心電図検査、負荷心エコー検査) のフォローアップ戦略、または標準治療単独への PCI。主要転帰は、あらゆる原因による死亡、心筋梗塞、または不安定狭心症による 2 年間の入院の複合でした。重要な副次的アウトカムには、侵襲的冠動脈造影と繰り返しの血行再建術が含まれていました。 38.7% が糖尿病で、96.4% が薬剤溶出性ステントで治療されていました。 2 年後、機能検査群では 849 人中 46 人 (Kaplan-Meier 推定、5.5%)、標準治療群では 857 人中 51 人 (Kaplan-Meier 推定、6.0%) で、主要転帰事象が発生した。グループ (ハザード比、0.90; 95% 信頼区間 [CI]、0.61 から 1.35; P = 0.62)。主要アウトカムの構成要素に関して、グループ間で違いはありませんでした。 2 年後、機能検査群の患者の 12.3%、標準治療群の 9.3% の患者が侵襲的冠動脈造影を受けており (差、2.99 パーセント ポイント、95% CI、-0.01 ~ 5.99)、8.1% およびそれぞれ 5.8% の患者が繰り返し血行再建術を受けていた (差、2.23 パーセンテージ ポイント; 95% CI、-0.22 ~ 4.68)。 [結論] PCI を受けた高リスク患者では、定期的な機能検査の追跡戦略は、標準治療単独と比較して、2 年で臨床転帰を改善しませんでした。 (CardioVascular Research Foundation および Daewoong Pharmaceutical から研究助成を受けた。POST-PCI ClinicalTrials.gov 番号、NCT03217877)。 第一人者の医師による解説 高リスク患者でもルーチン負荷検査実施に臨床的意義なし 背景に冠動脈ステント性能の向上 清末 有宏 森山記念病院循環器センター長 MMJ.February 2023;19(1):11 金属ステントを冠動脈に留置していた時代にはステント内再狭窄が20~30%に見られたため、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)実施後6カ月前後で再入院のうえ経皮的冠動脈造影(CAG)を必ず実施していたし、実際に20~30%の患者は再 PCIとなった。しかし2004年以降薬剤溶出性ステントの時代に突入し、免疫抑制薬の新生内膜増殖抑制作用により、ステント内再狭窄率は5~10%に低下した。第1世代薬剤溶出性ステントではポリマーによる血管炎症が問題となったが、その後第2世代、第3世代と日進月歩の勢いで進化を遂げ、近年ではどのステントを用いてもステント内再狭窄率は高リスクな背景を有する患者でなければ1~2%と驚異的な数字となっている。また同時に画像診断技術も大きく進歩し、心電図同期造影 CTによる冠動脈の描出はCAGに引けを取らないレベルまで質が高まりつつあり、各種の非侵襲的な機能的負荷試験も心筋虚血の検出において感度・特異度を上げてきている。 上記状況を踏まえPCI実施後の患者の臨床的経過観察をどのようにすべきか、ということに関しては各国の医療環境を考慮に入れながら長期にわたって世界的に議論が続いており、またその議論は常に最新のエビデンスとともにアップデートされることを余儀なくされている。日本では欧米諸国に比べ再CAGの敷居が低い時代が長く続いたが、近年は再 CAGをルーチンで実施することは推奨されていない。ガイドラインには本件に関する記載はないものの、日本のReACT試験では再 CAG実施群において非実施群に比べ冠疾患関連複合エンドポイントの改善は認められなかった(ハザード比 , 0.94;95%信頼区間[CI], 0.67~1.31)(1)。本論文のPOST-PCI試験ではさらに一歩進んで、PCI後の解剖学的または臨床的な高リスク患者に対して1年後にルーチンの機能的負荷試験(負荷心筋シンチ、運動負荷心電図、負荷心エコーのいずれか)を実施しても、2年間の冠疾患関連複合エンドポイントは非実施群と比較し改善しなかった(HR,0.90;95% CI, 0.61~1.35)。いろいろな方向性での解釈が可能な試験結果かとは思うが、一つ確実に言えることは冠動脈ステントの性能がいわば“Fire-and-forget”に耐えられるほどに向上したということであろうか。 1. Shiomi H, et al. JACC Cardiovasc Interv. 2017;10(2):109-117.
FFRガイドのPCIはIVUSガイドのPCIと比較して 心血管イベント発生は非劣性
FFRガイドのPCIはIVUSガイドのPCIと比較して 心血管イベント発生は非劣性
Fractional Flow Reserve or Intravascular Ultrasonography to Guide PCI N Engl J Med. 2022 Sep 1;387(9):779-789. doi: 10.1056/NEJMoa2201546. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [背景] 経皮的冠動脈インターベンション (PCI) の評価を受けている冠動脈疾患患者では、血行再建術とステント留置に関する意思決定のために、フラクショナル フロー リザーブ (FFR) または血管内超音波検査 (IVUS) によって手技をガイドできます。しかし、両方の目的に 1 つの方法のみを使用した場合の臨床転帰の違いは明らかではありません。血管造影) を 1:1 の比率で行い、FFR ガイドまたは IVUS ガイドのいずれかの手順を実行します。 FFR または IVUS を使用して、PCI を実行するかどうかを決定し、PCI の成功を評価する必要がありました。 FFR 群では、FFR が 0.80 以下の場合に PCI を実施することとした。 IVUS群では、PCIの基準は、70%を超えるプラーク負荷を伴う3mm 2以下または3~4mm 2の最小管腔面積であった。主要転帰は、無作為化から 24 か月後の死亡、心筋梗塞、または血行再建術の複合でした。 IVUS 群と比較した FFR 群の非劣性をテストしました (非劣性マージン、2.5 パーセント ポイント)。 [結果] PCI の頻度は、FFR 群の患者で 44.4%、IVUS 群の患者で 65.3% でした。 24 か月の時点で、FFR 群の患者の 8.1% と IVUS 群の患者の 8.5% で主要転帰イベントが発生しました (絶対差、-0.4 パーセント ポイント; 片側 97.5% 信頼度の上限間隔、2.2 パーセント ポイント; 非劣性の P = 0.01)。シアトル狭心症アンケートで報告された患者報告のアウトカムは、2 つのグループで類似していた。心筋梗塞、または 24 か月での血行再建術。 (Boston Scientific から研究助成を受けた。FLAVOR ClinicalTrials.gov 番号 NCT02673424)。 第一人者の医師による解説 FFR 対 IVUS 我が国のプラクティスに与える影響は少ない 阿古 潤哉 北里大学医学部循環器内科学教授 MMJ.February 2023;19(1):10 冠動脈の内圧を測定し冠動脈の狭窄が生理学的に有意かどうかを判断する方法がfractional flow reserve(FFR)である。また、冠動脈の解剖学的狭窄を正確に評価する方法がintravascular ultrasonography(IVUS)である。両者は基本的には全く異なるものを評価しているが、いずれの検査法も経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受ける患者の評価において、冠動脈造影を補完する診断法であるという点では共通項があると言える。 今回報告されたFLAVOUR試験は、PCIガイド用の検査法としてFFRはIVUSに勝るかという臨床的疑問を解くべく計画された。FFRガイド PCIは冠動脈造影ガイドのPCIに比べ心血管イベントが少なくなるというデータがすでにある(1)。対するIVUSガイド PCIにはそのようなデータがないため、FFRガイドの優越性を検証する試験デザインが組まれた。しかし試験開始後に、IVUSガイド PCIは冠動脈造影ガイド PCIに比べ予後の改善がみられるというデータが複数報告されたため、FFRガイド PCIのIVUSガイド PCIに対する非劣性を検討するデザインに変更された。韓国と中国の18施設で中等度狭窄のある患者1,682人を組み入れ、FFRあるいはIVUSでPCI適応の有無を判断した。結果、FFR群では44.4%、IVUS群では65.3%の患者にPCIが実施された。24カ月時点の心血管イベント(死亡、心筋梗塞、再血行再建)発生率はFFRガイド群で8.1%、IVUSガイド群で8.5%であり、非劣性が示された。 生理的虚血の評価法であるFFRと、解剖学的形態の評価法であるIVUSを比較するというのは、ともすると非常にわかりにくい試験デザインである。そもそも、安定冠動脈疾患に対する治療法の選択において、PCIか内科的治療先行かという比較試験がいくつか行われたが、死亡、心筋梗塞などのいわゆるハードエンドポイントにおいて有意差をつけた臨床試験はない。その意味では、PCIのガイド方法の変化程度ではイベントに有意差が出ないであろうというのは十分に予想される結果である。非劣性を検証するデザインに変更されたために本試験の意味合いが少し不明確になったと言える。この結果をもって、冠動脈造影ガイド PCIが標準となっている多くの国の医療環境下では、FFRガイドでad-hoc PCI(診断目的の冠動脈造影に続いて実施するPCI)を行うことにお墨付きを与える形になるかもしれない。しかし、従来から基本的にPCIをIVUSなどの冠動脈イメージングガイド下で行っている我が国では、今回の試験結果が与えるインパクトはほとんどなさそうである。 1. Xaplanteris P, et al. N Engl J Med. 2018;379(3):250-259.