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子どもの笑顔がキラキラ輝く-第52回日本救急医学会総会・学術集会 WINK企画-取材レポート(前編)
子どもの笑顔がキラキラ輝く-第52回日本救急医学会総会・学術集会 WINK企画-取材レポート(前編)
掲載日:2024年11月7日 はじめに  2024年10月13日(日)~15日(火)に開催された、第52回日本救急医学会総会・学術集会(於:仙台国際センター)にて、注目の学会企画が実施されました。その名も「WINK」。一体、どんな企画になるのか、現地取材を敢行しました。  参加している子どもたちと熱い想いをカタチにした先生方の、燦然と輝く笑顔がたくさん目に飛び込んでくる、こんなに温かな空気に包まれた学会は前代未聞!  これから学会運営を控える先生方は必見のレポートです。    Together With Your Darling Kids!  現地取材に先立ち、大会長の久志本 成樹 先生(東北大学病院 救急科・高度救命救急センター)、企画担当の谷河 篤 先生(同所属)にお話をお伺いしました。  この企画を実施しようと考えたきっかけについて、久志本 先生は「ご両親の留学などで海外生活をしたことのある先生たちから、子どもの頃、親に連れられて学会に参加し、その思い出がきっかけで医師になったと聞くことがあります。多様性を尊重すべき時代においては、次世代、特に子育て世代の先生たちが気軽に学会に参加できるように、新しい風を吹かせたいんです」と力強く、お話をしてくださいました。  また、谷河 先生も「自分や妻(小児科医)も、専攻医時代から育児と医師業務の狭間で大変な思いをしてきました。今回、大会長から『学会に子どもたちを連れてこられるようにする』と言われたとき、自分が抱えていたジレンマを少しでも解消できる企画に挑戦できる機会をいただけたと、大変光栄に思いました。絶対に成功させます!」と笑顔でお話されていたのが、非常に印象的でした。 WINK企画スケジュール表(下記、大会ホームページより)https://site.convention.co.jp/jaam52/wink/ この「WINK」企画は“Together With Your Darling Kids!”という、本企画のスローガンをもじり、名づけられた企画で、その言葉の通り、「学術集会に、あなたの愛する子どもたちと一緒に参加してね!」、“親子でウィンク”という想いが込められています。 企画は、 ① Kids ERさまざまなER関連医療機器に触れることが出来る体験コーナー ② イベント親子一緒に体験参加できるイベント企画 ③ WINKセッション子どもも一緒に聴講できる口演セッション と、大きく3つのコーナーに分かれており、2日間(集会自体は3日間)に渡り、それぞれの企画が実施されました。 また、企画参加のお子さんには、子ども用医療スクラブのプレゼントも用意されるという力の入れ様で、後日談によると、谷河 先生が、キッザニア東京で施設見学をした際「スクラブを着ることで、子どもたちが真剣に医療を体験すると思います。Kids用のスクラブを作らせてください!」とすぐに久志本 先生に直談判をし、了承をいただいた、という想いの詰まったプレゼント企画だったようです。 このように、準備段階から先生方の熱い想いが非常に強く反映されたWINK企画、なんと開幕前には、すでに、お子さんの事前参加登録が250名を超えるという大注目の企画になっていました。 流石は救急医のお子さん -Kids ER-  企画への注目度が高まる中、第52回日本救急医学会総会・学術集会が開幕し、それと同時に、待望のWINK企画も幕を開けました。  初日の朝から、多くのお子さんが来場し、振り返れば、事前に用意された200枚のKids用スクラブが午前中で配り終わるほどの大盛況。「まさか、こんなに早くスクラブがなくなるとは・・・」と、谷河 先生の嬉しい悲鳴とともに、各コーナーがスタートしていきました。  “Kids ER”と銘打たれた体験コーナーには、VR機器を使ったハンズオン、聴診器体験、心電図の伝送体験、エコーで身体を見る体験、心肺蘇生(AEDを用いた)体験、救急車両体験、災害時のアウトドア実践などが用意され、年齢学年問わず多くお子さんが参加されていました。  各ブースにはスタンプラリーも併設しており、各所を回ると、救急車両のトミカや開催地(仙台)のご当地グッズ、絆創膏などがもらえるようになっていました。景品の一番人気はまさかの、“キャラクターの付いていない、機能性のある絆創膏”だったとのことで、「流石、救急医さんのお子さまです」と運営の方がつぶやいていました。  体験コーナーは、お子さまが実践するとあって、「お医者さんごっこ」の様になるのかな、と予想していましたが、その予想は良い方向に裏切られました。どのコーナーを見回しても、体験参加しているお子さんの表情は真剣そのもの。出展されている医療機器メーカーの方にお話をお伺いしても「普段、このような雰囲気の中で出展をすることがないので、楽しかったです。その反面、お子さんたちがとても真剣だったので、メーカーとして身が引き締まりました」と、直に接していた方々も同様に感じていらっしゃったようです。  日頃、親御さんが「お医者さん」として、患者さんに真摯に向き合っている、そんな姿をお子さんたちが、きっと理解をしているからこそ「これは遊びではない」という、空気が流れていたように感じました。  体験後に、子どもから色々と質問を受けている、救急医お父さんの真剣な表情も、非常に印象的なKids ERでした。 子どもも、大人も、同じ時を -イベント企画-  イベント企画は「ドクターヘリを知ろう!」「銀次さん(元プロ野球選手)と医療体験!」「RISAさん(仙台のヨガインストラクター)の『めぐるヨガ』!」の3企画が行われました。  「ドクターヘリを知ろう!」では、現役で活躍されているフライトドクターとフライトナースさんが登場し、トークショーを実施。スーツの試着体験なども用意され、普段は聞くことのできない、ドクターヘリのお仕事について、学びを深める企画でした。  「RISAさんの『めぐるヨガ』!」では、小さなお子さんを連れた救急医の方々をはじめ、未就学児から小学生くらいのお子さまが、一緒に出来るヨガ体験を実施。  「身も心もほっこり整いました。家でも実践します」と参加者の方から一言。また、出展企業の皆さんも、ニコニコ笑顔でヨガに参加されていたのも、非常に印象的な企画でした。  「銀次さんと医療体験!」では、元プロ野球選手の銀次さんが急に倒れてしまった!というシチュエーションの下、AEDを用いた心肺蘇生法の実践が行われました。  お子さんたちはどのように実践するのだろうかと、見ていましたが、流石はみなさん、救急医のご子息たち。司会者のお話を細かく聞かずとも、AEDを開き、指示に従って胸骨圧迫を開始していました。また、胸骨圧迫する姿勢も、しっかり膝立ち。機材をご提供されていたメーカー担当者さんも「これじゃ、大人が教えることは何もないですね。流石は救急医のお子さまたちです」と、ここでも、流石は救急医の子どもたち、と大人を唸らせていました。  イベント企画はどれを取っても、お子さんも親御さんも、さらにはメーカーさんも運営スタッフさんも、みんなが心の底から笑顔で参加されている様子が印象的でした。筆者の私も、学術集会の会場にいるということを忘れてしまうくらい、参加者の笑顔がキラキラ光る、そんな素敵な時を過ごすことができた、イベント企画でした。 配布されたスクラブを着て参加する子どもたち  さて、ここまでWINK企画の様子をレポートいたしましたが、これはまだまだ、ほんの一部。伝えきれていないことがたくさんございますので、本取材記事は前編・後編と分けてお伝えしたいと思います。 後編は、WINKセッション(子ども聴講可の口演セッション)と参加者へのインタビューを中心に、大会長の久志本 先生、企画担当の谷河 先生からの企画後の感想などをお伝えいたします。 ぜひ、後編もお読みください。 文責:ヒポクラ事務局 カワウソくん 子どもの笑顔がキラキラ輝く-第52回日本救急医学会総会・学術集会 WINK企画-取材レポート(後編)はこちら 医師・医学生専用SNS ヒポクラ  無料会員登録はこちら▼     日本救急医学会HP▼ https://www.jaam.jp/ 第52回日本救急医学会総会・学術集会HP▼ https://site.convention.co.jp/jaam52/
子どもの笑顔がキラキラ輝く-第52回日本救急医学会総会・学術集会 WINK企画-取材レポート(後編)
子どもの笑顔がキラキラ輝く-第52回日本救急医学会総会・学術集会 WINK企画-取材レポート(後編)
掲載日:2024年11月7日 前編に続き  2024年10月13日(日)~15日(火)に開催された、第52回日本救急医学会総会・学術集会(於:仙台国際センター)にて、実施されたお子さま参加型企画“WINK”の現地レポート後編です。  前編をまだお読みでない方は、ぜひ 前編から、お読みください。  後編は、WINKセッション(子ども聴講可の口演セッション)と参加者へのインタビューを中心に、大会長の久志本 先生、企画担当の谷河 先生から、企画開催後にいただいた感想などをお伝えいたします。    子どもたちへ -WINKセッション-  このWINK企画、なんといっても最大の魅力は、子どもも聴講可能な口演セッション“WINKセッション”が行われたことです。「演題発表の場に子どもを入れるなんて」と思った先生方にこそ、ぜひ触れていただきたい、大変すばらしい企画でした。  まず、驚いたのが会場前方に子ども用の椅子(乳児用含む)が用意されていたことです。これは、この企画が単に「子どもを連れて入れるセッションですよ」ということではなく、「子どもたちにも口演を聞いてほしい」「演題発表するお母さん、お父さんの姿を目に焼き付けて欲しい」という、大会校の先生方の強い想いが、この可愛らしい椅子に表れているのだと感じました。  WINKセッションの各テーマはセッション1から順番に「かがやき(輝き)」「がんばり(頑張り)」「やさしさ(優しさ)」「くつろぎ(寛ぎ)」「こころ(心)」「どりょく(努力)」「もえ(萌え)」「たのしみ(楽しみ)」「ちから(力)」となっており、各テーマの頭文字を並べると、WINKセッションのテーマ「か・が・や・く・こ・ど・も・た・ち」となります。 これは、学術集会のメインテーマ「君は輝く」にも通じるもので、「ひとりひとりの考え方、価値観、背景と現在、すべての多様性を尊重する大会にしたい」という大会長の想いが込められています。  お子さんと一緒に発表をする先生に、お子さんを抱っこしたまま質問をする先生の姿など、普通の学会発表では見られない、この企画ならではの光景が広がっていたことに加え、このWINKセッションでは各発表スライドの最後に「子どもたちへ(家族へ)」というメッセージスライドが添えられており、発表者の口から直接、会場内で聴講している家族の方々へ、休みの日に一緒に居られないことへの謝罪が伝えられたり、胸を張って「ママはこういう仕事をしているんだよ!」と伝えている姿を見ることが出来ました。最後のスライドでの子どもたちへのメッセージ、すべての発表には必ず大きな拍手をーこれらは大会長からお願いをして、みなさんに実践していただいたようで、すべての演題が温かい雰囲気の中、発表を終えられていました。 各家庭ご状況は様々とお見受けしましたが、“医師であり、親でもある”という点において、WINKセッション登壇者の誰しもが同じ課題を抱えて暮らしている、ということを強く感じ、筆者の胸にも、迫るものがありました。  また、このWINKセッションへの演題応募、発表演題数が60演題を超えたことも注目すべき点であると考えます。演題数や学会参加者が減少傾向にあると耳にする、昨今の学術集会運営の課題を鑑みると、そういった課題を打開するための手段としても、効果的な企画になり得るのではないか、と感じました。 全く新しい学会のカタチ -参加者の声-  ここで、いくつか、参加者の声をお伝えしたいと思います。 参加者の女の子 小学三年生(9歳) の声 「お父さんがお医者さんなので、来ました。聴診器の体験では、心臓の音がすごい聞こえました。VRの手術体験もできてよかったです。お父さんのお仕事はすごいんだなと思いました」 女の子(上記)のお母様の声「少しずつ職業体験をし始める学年ではあったので、こういった形で職業体験ができ、娘も、とても身近に感じている様子だったので、参加してよかったと感じています。学会参加となると、これまでは“家族が一緒に居られない時間”としか考えられませんでしたが、”WINK”は、発表にも立ち会うことが出来るなど、家族みんなで同じ時間を過ごすことが出来た、それが一番ありがたいと思える企画でした。この企画に感謝しています」 お孫さんとご一緒に参加された おじい様の声「今日は孫と一緒に来ました。息子が救急医なので参加したのですが、私は医者ではないので、学会というものがどういうものなのかすら、わかりませんでした。実際に参加してみると、先生方は大変ご苦労されているんだなと、いち“市民”として、非常に勉強になりました。また、たくさんの子どもたちが笑顔で体験参加している姿を見て、こちらも笑顔になりました。」 同上 おばあ様の声「息子が救急医であることは、夫からお伝えしましたが、実は、娘も医師で、内科医をしています。娘から、学会参加で子どもの面倒が見れないから手伝いに来てくれと言われ、一緒に学会会場に行ったこともありますが、あまり子どもの参加は歓迎されていないように感じました。そういった経験もあるので、この企画はとてもいい企画だと感じましたし、ぜひ、こういう企画が広まってほしいなと感じています。」 インタビューにお応えいただいたみなさま、誠にありがとうございました。 みなさま、笑顔でお応えいただき、インタビューしているこちらも楽しくなる、素敵な雰囲気でした。 インタビューを通して感じたことは、単に、子どもが楽しいと感じればいい、ということではなく、まさに「Together With Your Darling Kids!」、家族が一緒に参加して、みんなが楽しく過ごせるカタチこそが、この全く新しい、”WINK”という企画の神髄なのだろうと、感じました。 言葉では伝えきれない -取材写真ギャラリー-  このWINK企画では、キラキラ輝く子どもたちの姿が会場の随所で見ることができました。この“キラキラ感”は言葉では伝えきれないので、筆者が撮影した写真を何点か掲載します。 “WINK”という新しい風が吹いた  第52回日本救急医学会総会・学術集会の閉会式、大会長 久志本 先生からのご挨拶の中で「今大会の参加者は約4,500名、そのうちお子さんの参加が300名を超えています」と発表があり、会場がどよめきました。事前登録よりも、さらに多い、300名のお子さまたちが学術集会という場に参加した、という事実に学会参加者が感嘆の声を上げ、賛辞の拍手を送っていました。  その万雷の拍手こそ、前人未到の学会企画“WINK”が大成功したことを証明していたのだと感じます。    大会後、久志本 先生は「どこの学会もやったことのない規模で、お子さん参加型企画を実施できたこと、これは素晴らしい仲間がいなければ成し得なかったことです。すべての仲間に感謝し、誇りに思います。また、今回の企画が、これからの学会運営において一つのモデルとなることを期待しています。ぜひ、多くの人に知っていただきたいと思います。」と仰っていました。  また、企画担当の谷河 先生は「皆さんが楽しんでいる姿は一生忘れません。とても大変な企画でしたが、大会長をはじめ、いつも大変な症例に対して、力を合わせて診療にあたっている東北大学病院 救急科・高度救命救急センターの仲間だから実現できたんだと思います。とはいえ、この企画の成功はスタートラインに立ったというだけ。僕たち若い世代がリードして、医療界を変えていかないといけないんです。次世代を担う子どもたちが安心して暮らせる社会を医療から作るために、それが僕たちの世代の役割なんです。」と、熱く、お話いただく姿に、WINK企画の先にある、今よりもっと、キラキラ輝く、明るい未来の日本医療界を垣間見た気がしました。 会期中の久志本 先生(左)と谷河 先生(右)   筆者はこの企画を現地取材し、率直に「日本の医学会史に“事件”が起きた」と感じました。 医師の働き方改革、医師不足の問題、地域医療格差など、さまざまな問題のある、現代日本の医療界において、学術集会という貴重な機会に、この先進的な企画が実施されたことは、伝統を重んじる日本の医学会において、大きな風穴を開ける出来事であった、まさに、久志本 先生が大会前に示唆された“新しい風”が吹いた瞬間であったと感じています。  今後、この企画モデルがあらゆる学会で採用され、子どもたちも、先生たちも笑顔溢れる学術集会が、各地で開催されることを期待いたします。 最後に  本取材企画を快くご承諾いただきました、久志本 成樹 先生、谷河 篤 先生に厚く、御礼を申し上げますとともに、取材実施に際し、お力添えいただきました、東北大学病院 救急科・高度救命救急センターの先生方やスタッフの皆さま、WINK企画ご参加の先生方とご家族の皆さま、協賛企業の皆さま、学会運営の日本コンベンションサービスの皆さまにも改めて、御礼申し上げます。  誠にありがとうございました。 文責:ヒポクラ事務局 カワウソくん ※本レポート記事は前編・後編の二本立てです。ぜひ、前編と併せてお読みください。 子どもの笑顔がキラキラ輝く-第52回日本救急医学会総会・学術集会 WINK企画-取材レポート(前編)はこちら 医師・医学生専用SNS ヒポクラ  無料会員登録はこちら▼     日本救急医学会HP▼ https://www.jaam.jp/ 第52回日本救急医学会総会・学術集会HP▼ https://site.convention.co.jp/jaam52/
U45がん治療研究者が集結、がん関連三学会Rising Starネットワーキング開催~メッセージ編~
U45がん治療研究者が集結、がん関連三学会Rising Starネットワーキング開催~メッセージ編~
掲載日:2024年3月13日 はじめに  2024年1月27-28日、日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会の三学会主催による初めてのネットワーキングイベント「2024年がん関連三学会Rising Starネットワーキング」(於:Shimadzu Tokyo Innovation Plaza)が開催されました。  近年、がん治療の開発は急速に進み、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害剤、抗体医薬、ゲノム医療など、さまざまな治療法が広がりを見せ、飛躍的に進歩しています。臨床現場での早期普及のためにも、基礎研究、トランスレーショナル研究、臨床研究のスムーズな橋渡しが求められており、今後のがん治療の発展において最も重要な課題の1つであると考えられています。そのため、臨床チームと研究チームが連携して、よりスムーズな双方向性を実現するためには、基礎と臨床の垣根を超えた若手研究者同士の交流が求められていました。その垣根を超えるための第一歩となるイベントこそ、この「2024年がん関連三学会Rising Starネットワーキング」です。 今回は本イベント運営担当の先生方ならびにオブザーバーとしてご参加された先生方から、これからの「がん治療」を担うNext Rising Star(特に研修医・医学生)に向けてメッセージをお預かりしております。基礎研究・臨床問わず、少しでも「がん治療」の道に興味がある方にはお読みいただきたいレポートとなっております。ぜひ、ご一読くださいませ。 がん治療・研究に携わることになったきっかけ 大槻 雄士 先生(藤田医科大学/日本癌学会)  外科医として臨床に従事する中で、「がんが治らない」ということに大きな衝撃を受けたのがきっかけでした。そこから、がん治療の発展に貢献したい、がん治療の開発に本当の基礎から関わっていきたい、という想いを強く持つようになり、がんの基礎研究の道に進んでいきました。 加藤 大悟 先生(大阪大学/日本癌治療学会)  泌尿器科は癌診療と移植医療を同時に行う数少ない診療科であり、興味を惹かれ入局しました。大学院では移植免疫研究を行っていましたが、表裏一体の関係にある腫瘍免疫へ興味の対象が広がり、留学先を選択しました。腫瘍免疫はさらに癌ゲノム情報と密接に関係するなど、研究を開始するとさらに他の分野も知りたくなるのが研究の魅力だと考えています。 後藤 悌 先生(国立がん研究センター中央病院/日本臨床腫瘍学会)  私ががん治療と研究に携わるようになったのは、祖母ががんを患っていた経験がきっかけです。その苦悩を通して、生と死に深く関わりたいという強い願いを持ちました。この経験が、がんという病気に立ち向かい、病と闘う人々のそばで支え続けることへの決意を固めさせました。 左:後藤先生 中央:大槻先生 右:加藤先生 ネットワーキングを通して感じたこと 大槻 雄士 先生(藤田医科大学/日本癌学会)  日本癌学会には、メディカルドクターでない研究者が沢山入会しています。そのような研究者の方々が、臨床腫瘍学会や癌治療学会の先生方とディスカッションをすることで新たなコラボレーションが生まれる現場を見ることができたのは大きなメリットであり、ここから新たながん治療の種が生まれる予感を感じることができました。 加藤 大悟 先生(大阪大学/日本癌治療学会)  臨床医と基礎研究者がお互いの長所を知る良い機会になったと思います。同様の交流が一つの学会レベルではこれまでにもありましたが、癌関連3学会として行ったことは意義深いものでした。このネットワーキングイベントから何かGroundbreakingな研究が生まれることを願っています。 後藤 悌 先生(国立がん研究センター中央病院/日本臨床腫瘍学会)  ネットワーキングイベントはがん研究の多様性を知る貴重な機会となりました。自らの研究を客観的に評価するきっかけを提供し、他の参加者の研究とのつながりから新たなステップへ進む動機付けにもなりました。今後の課題としては、このような交流をさらに深め、具体的な共同研究へと発展させる方法を模索することが挙げられます。 ご口演中の1コマ。女性研究者の方も多くご参加。 Next Rising Star(医学生・研修医)へ 大槻 雄士 先生(藤田医科大学/日本癌学会)  医学部を卒業してからの道は、以前と比べ、かなり多岐にわたります。自身が望む在り方で、日々の診療、医療への関わり方が選べます。その中に、基礎・臨床問わず、がん研究が入ってくると嬉しく思います。 加藤 大悟 先生(大阪大学/日本癌治療学会)  研究をしてみるか敬遠するか迷われている先生方に対しては、まずは少しでも始めてみることをお勧めします。何もiPS細胞を発見する様な研究だけが研究ではありません。ものの考え方が変わると思います。 後藤 悌 先生(国立がん研究センター中央病院/日本臨床腫瘍学会)  日本の医療は変革の時を迎えています。がん研究の根本は変わりませんが、日本が世界のがん治療をリードするためには、私たちが支え合い、活躍できる環境を築くことが重要です。共に前進しましょう。 外国籍の先生も多く、国際色も豊か。   オブザーバーの先生方からメッセージ~ネットワーキングをみて感じたこと~ 間野 博行 先生(国立がん研究センター研究所/日本癌学会理事長) ~Rising Starへ~  誰のまねでもない、自分だけのアプローチで、がん研究・がん医療を前に進めてください。基礎研究と応用研究は医学を進める車の両輪です。基礎研究ではThink ORIGINAL!応用研究ではThink BIG!を合い言葉に、明日のがん医療を創っていってください。 ~Next Rising Starへ~  たった一人の医学研究者の発見が、時には世界中の何万人、何十万人の命を救うこともあります。医師だからこそ臨床に即した着眼点も持てますし、患者を治したいという強い希望が、自分の研究者人生を支えてくれます。是非、一度はがん研究を覗いてみてください。またデータサイエンスはどの分野に進んでも大切です。バイオインフォマティクスは思ったより簡単ですから、基礎的なものは自分でできるようにしてくださいね。 吉野 孝之 先生(国立がん研究センター東病院/日本癌治療学会理事長) ~Rising Starへ~  全国にこんなに優秀・有望で熱意にある若手研究者が多数いるなんて夢にも思いませんでした。間違いなく、本がん関連三学会Rising Starネットワーキングは盛況でした。日本癌治療学会を代表し理事長として、本会の継続実現のために全力を尽くす所存であります。 ~Next Rising Starへ~  Rising Star、つまり先輩の若手研究者はとても優秀・有望で熱意があります。日本癌治療学会は未来のGlobal Top Leaderを育成する活動を全力で支援します。目標はRising StarからGlobal Top Leaderに、皆様におかれましてNext Rising StarからRising Starに、本ネットワーキングのステージに上がってきてください。待っています。 石岡 千加史 先生(東北大学病院/日本臨床腫瘍学会前理事長) ~Rising Starへ~  若いうちは、研究に集中する時期が必ず必要ですが、研究は日進月歩で時に基礎研究に集中し、将来のがん治療の基盤となる知識や技術を養う時期が必要です。大きく成長が期待できる時期は40歳代まで。 年を重ねると共に様々な管理業務が増えてきますので、リーダーを目指す人、大きな研究プロジェクトを進めたい人は徐々に自分と一緒に研究できるチームを組織するように意識する必要があると思います。しかし、様々な役職に就くことを拒まず、自分が経験した事がないことを恐れずチャレンジして下さい。 幅広く経験することがより視野の広い研究分野の開拓につながると思います。また、プロセスを、即ち人生を大いに楽しんでください。研究は非常に面白いし、必ず自分の人生の糧になります。頑張ってください。 ~Next Rising Starへ~  がん研究は歴史が長く基礎研究の成果が実用化されるまでには何十年もかかることもあります。先人の弛まぬ努力により今のがん医療が出来上がっています。歴史を振り返ると大きな成果を収めた研究となかなか目が出ない研究とは混在しています。大部分の研究は応用研究や日常診療に繋がりませんが、様々な研究の土台の上に今日のがん医療が成り立っていると言うことを勉強してほしいと思います。 医学生や研修医の皆さんは医療の現場の事だけが頭にあると思いますが、研究は必ず必要です。研究がなければ、医療の進歩はありません。また研究心がなければ良い医者にはなれません。皆さんは将来がん研究を通じて医療の分野をより良いものにする医師を目指しませんか。 ぜひ専門を癌の領域を選んでください。充実した人生が待っています。 佐谷 秀行 先生(藤田医科大学がん医療研究センター/日本癌学会前理事長) ~Rising Starへ~  1990年代、がん研究の価値は新しい発見にありました。それが2000年に入り、発明に重点が置かれるようになり、この10年は社会を変えるようなイノベーションへと価値観が動いています。基礎的な研究を実装化して社会を革新するためには皆さんが互いの仕事を理解して有機的に連携することが何よりも重要であり、今回のイベントでの出会いをどうか大切にしてください。 ~Next Rising Starへ~  医学を志す者は、持てる知識と技術を総動員して今目の前にいる患者を救うことと同時に、現在は治療が困難な疾患を未来に治療ができるように努力する必要があります。がんに罹患した患者の約半分はこの疾患で命を失います。このような難治がんを克服するためには基礎研究とそれを実用化するための臨床研究が必要であり、10年後は皆さんこそがその主役となることを忘れないでください。 野田 哲生 先生(公益財団法人がん研究会がん研究所所長) ~Rising Starへ~  今後、がん医療への成果創出を強く求められる研究推進には、基礎から臨床までの若手研究者間の緊密な連携こそが鍵となると考え、理事長の方々に三学会合同での活動の立ち上げを提案しました。今回、それが「ネットワーキング」として実現し、優れた若手がん研究者の熱意あふれるディスカッションを聞くことができました。今後のがん医療開発を、世界レベルで牽引することが出来るRising Starの出現を期待しています。 ~Next Rising Starへ~  「がん」は、毎年、多くの方が命を落としている疾患です。研究の進展により、その原因となる遺伝子が同定され、有効な治療薬が開発されてきましたが、未だその恩恵を受けることができない患者さんが数多くおられます。その方々に対しての有効な治療法の開発は、今後、がん研究・がん医療を引っ張る皆様のエネルギーに掛かっています。期待しています。 最後に  最後に、本取材企画を快くご承諾いただきました、野田哲生先生、間野博行先生、吉野孝之先生、石岡千加史先生、佐谷秀行先生に御礼を申し上げますとともに、取材実施に関し、お力添えいただきました、がん関連3学会若手協議会の大槻雄士先生、加藤大悟先生、後藤悌先生に改めて感謝申し上げます。  誠にありがとうございました。 文責:ヒポクラ事務局 カワウソくん 企画協力:(株)コンベンションリンケージ様 カワウソくんのヒポクラリアルタイム投稿の様子もチェック! ◆1日目 ◆2日目 ※閲覧にはヒポクラ会員登録が必要です ▶医師・医学生専用SNS ヒポクラ  無料会員登録はこちら     ▶日本癌学会HP https://www.cancer.or.jp/ ▶日本癌治療学会HP https://www.jsco.or.jp/ ▶日本臨床腫瘍学会HP https://www.jsmo.or.jp/
U45がん治療研究者が集結、がん関連三学会Rising Starネットワーキング開催~現地レポート編~
U45がん治療研究者が集結、がん関連三学会Rising Starネットワーキング開催~現地レポート編~
掲載日:2024年2月16日 はじめに  2024年1月27-28日、日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会の三学会主催による初めてのネットワーキングイベント「2024年がん関連三学会Rising Starネットワーキング」(於:Shimadzu Tokyo Innovation Plaza)が開催されました。     近年、がん治療の開発は急速に進み、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害剤、抗体医薬、ゲノム医療など、さまざまな治療法が広がりを見せ、飛躍的に進歩しています。臨床現場での早期普及のためにも、基礎研究、トランスレーショナル研究、臨床研究のスムーズな橋渡しが求められており、今後のがん治療の発展において最も重要な課題の1つであると考えられています。そのため、臨床チームと研究チームが連携して、よりスムーズな双方向性を実現するためには、基礎と臨床の垣根を超えた若手研究者同士の交流が求められていました。その垣根を超えるための第一歩となるイベントこそ、この「2024年がん関連三学会Rising Starネットワーキング」です。 初のがん関連三学会主催イベント  この度実施された「2024年がん関連三学会Rising Starネットワーキング」は、日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会の協力により実現されました。元々、がんゲノム医療や免疫療法などの新しいがん治療を臨床現場に普及させるには、基礎医学・研究を中心とした日本癌学会、がん治療に関わる横断的な役割を担う日本癌治療学会、薬物療法を中心とした日本臨床腫瘍学会が連携強化を図ることがますます重要になるとされていました。 その機運が高まった2022年の日本癌治療学会学術集会にて3学会合同特別企画として「理事長に聞く:がん関連3学会の今とこれから」が行われ、本演題のパネルディスカッションにて3学会共同で実現できる企画の必要性が示唆されたことから「がん関連三学会Rising Starネットワーキング」が実施される運びとなりました。 新進気鋭・多種多様な参加者で実施  「がん関連三学会Rising Starネットワーキング」では、それぞれの専門分野に関する発表を通じて、新たな知見の共有のみならず、研究者同士のつながりを強化・促進することで、研究と臨床とのスムーズな橋渡しを目指すべく、各学会から募集された45歳以下の若手研究者約60名が参加しました。 プログラムは二日間にわたり、口演とポスターセッションのそれぞれ30演題の発表が行われ、さまざまな研究テーマ、国籍、立場や勤務施設背景の異なる先生方による、大変に濃密で、熱く議論できる場となりました。各分野における最先端の発表が行われ、別分野の専門家から質疑が行われることで、新たな発見や、つながりが得られる貴重な時間になっていたと同時に、各分野のコラボレーションにより、研究の促進や臨床現場での応用において、追い風となることも期待されるプログラムとなっていました。  研究分野ごとにセッションが組まれることの多い学術集会では得られないメリットが見えたことも、本会の魅力であり、また、若手研究者の多くが研究と臨床とのバランスをとることに苦慮していることも感じられる内容が語られたことも注目すべきだった点と思います。勤務施設の背景により研究に対する比重は異なり、時間やコストの面での制約があることも大きな課題であると感じました。  本会に参加された先生の多くは、海外留学経験を有していることもあり、日本における医師の研究環境とのギャップに悩むことも少なくないと推察され、日本から世界に発信していく医学研究を今後ますます促進していくためには、さまざまな課題をクリアしていく必要があるものの、限られた時間の中でより効率的に研究を進めていくことが求められる現環境下においては、研究者同士の「ネットワーキング」強化が1つの答えとなるかもしれないと、強く感じました。 ネットワーキングの先に  2日間にわたるプログラムの終わりに、参加者投票によって、口演およびポスターそれぞれ3演題ずつ優秀賞が選出されました。いずれの発表も素晴らしいものであったため、投票された先生方も選出には苦慮されたことであろうと思います。  今後、弊社も研究促進の一助になれるよう、さらに多くの先生方からのアドバイスやご質問をいただける企画展開も含め、今回参加された先生方のお気持ちや研究状況を追って取材できればと考えています。    本イベントの開催を提言された野田哲生先生(公益財団法人がん研究会がん研究所所長)は閉会のご挨拶で「このイベントが開催されたのは非常に素晴らしいこと、ただ、もっと重要な事は、このネットワーキングの先に何をするかです。ぜひこの課題を持って帰ってください」、「若手といえども、非常に時間は限られています、この機会を最大限に活かすのはみなさんです」と参加者に語りかけていました。    今回、初めて実施された「がん関連三学会Rising Starネットワーキング」が今後も継続的に実施されていくことにより、若手研究者同士の交流が活発となり、研究の促進や早期臨床応用がさらに加速し、日本から世界へ新たながん治療が発信されていくことが望まれます。このような、がん関連三学会の取り組みが他領域にも波及することへの期待も非常に大きいと筆者は感じています。さまざまな研究や臨床に携わる先生方のコラボレーションが促進されることで、明日の医療の景色が明るく照らされていくことを願わずにはいられません。  最後に、本取材企画を快くご承諾いただきました、野田哲生先生、間野博行先生(日本癌学会理事長)、吉野孝之先生(日本癌治療学会理事長)、石岡千加史先生(日本臨床腫瘍学会理事長)、佐谷秀行先生(藤田医科大学がん医療研究センター)に御礼を申し上げますとともに、取材実施に関し、お力添えいただきました、がん関連3学会若手協議会の大槻雄士先生(藤田医科大学)、加藤大悟先生(大阪大学)、後藤悌先生(国立がん研究センター中央病院)に改めて感謝申し上げます。誠にありがとうございました。 左:後藤先生 中央:大槻先生 右:加藤先生 なお、本イベント所管の先生方のご感想や未来のがん研究者へのメッセージをお聞きした、「U45がん治療研究者が集結、がん関連三学会Rising Starネットワーキング開催~メッセージ編~」も現在作成中ですので、ぜひ公開をお楽しみにしていただけますと幸いです。 文責:ヒポクラ学会担当 カワウソくん カワウソくんのヒポクラリアルタイム投稿の様子もチェック! ◆1日目 ◆2日目 ※閲覧にはヒポクラ会員登録が必要です ▶医師・医学生専用SNS ヒポクラ  無料会員登録はこちら     ▶日本癌学会HP https://www.cancer.or.jp/ ▶日本癌治療学会HP https://www.jsco.or.jp/ ▶日本臨床腫瘍学会HP https://www.jsmo.or.jp/
日本救急医学会 第9回全国医学生BLS選手権大会~決勝大会~ 現地レポート
日本救急医学会 第9回全国医学生BLS選手権大会~決勝大会~ 現地レポート
掲載日:2023年12月11日 はじめに  さる2023年11月26日(於:国立国際医療研究センター病院)、第9回全国医学生BLS選手権大会 決勝大会が開催されました。 この大会は全国医学生の心肺蘇生法(CPR:cardiopulmonary resuscitation)を含めた一次救命処置(BLS:basic life support)の知識・技術の向上を目的として、2015年から開催されていました。コロナ禍による影響もあり、4年ぶりの開催ということで参加する医学生の方はもちろんのこと、ご準備をされている先生方や運営事務局の方からも緊張感が伝わってくる独特な雰囲気の中、今年は、地方大会に出場した35大学(41チーム)のうち、上位18大学が決勝の舞台に集まり、大会が始まりました。  冒頭、開会挨拶で笠岡俊志先生(熊本大学病院)から語られたのは「みなさんの“目標”は優勝だと思いますが、“目的”はCPR・BLSの知識・技術を高め、その重要性を一般の方や後輩に伝えることです。“目的”と“目標”を混同することなく、大会に臨んでください」というお言葉でした。 この大会を通じて、語られた“目的”と“目標”。これこそが、この大会の意義を示すキーワードであり、日本救急医学会から医学生たちへの熱い想いの核となる言葉でした。 「実際の患者さんだと思ってください」  開会式では、もうひとつ、参加医学生の熱気を感じる場面がありました。 本大会ご担当の澤田悠輔先生(群馬大学医学部附属病院)がルール説明を終え、質疑応答の時間に移るや否や、医学生たちが一斉に手を上げ、質問をしていきました。質問の内容としてはルールの疑問・不明点や当日使用する機器の具合など様々。その一つ一つに丁寧に答えていく澤田先生の返答には一貫したものがあり、「実際の患者さんだと思ってください。そうすれば自ずと答えは出るはずです」「実際の患者さんにそんなことはしないですよね?」と、目の前のレサシアンを実際の患者さんとして扱っているかを審判員はみていることを、何度も何度もお伝えしていました。 もちろん、競技である以上は採点ルールが存在しますが、あくまでも賞を取ることは“目標”であり、大会の“目的”はBLSの知識・技術の向上で、参加学生同士、切磋琢磨することが大事なことである、という徹底した認識共有が行われたのも印象的でした。  後々、澤田先生が「毎回この時間はものすごく緊迫感に包まれるんですよ」と笑顔で誇らしげにお話されていたのも、この大会の醍醐味を象徴する素敵な場面だったと思います。 競技概要  競技概要(ルール)についてお伝えしたいと思います。 ・大学単位での参加で1大学から参加できるチームは1チーム(地方大会あり) ・1チーム5名編成の団体戦(うち医学科学生は3名以上) ・競技種目は下記の3つ(競技者は3名ずつ・成人は10分・乳児は8分) ① 2人法による成人BLS(胸骨圧迫+人工呼吸(BVM使用)+AED使用)(硬さ:スタンダード) ② 2人法による成人BLS(胸骨圧迫+人工呼吸(BVM使用)+AED使用)(硬さ:ハード) ③ 2人法による乳児BLS(胸骨圧迫+人工呼吸(BVM使用)+AED使用) ・当日受付時に抽選が行われ、各種目にどのメンバーが参加するかが決定 ・BLSは評価シートを使用し、学会所管の審査委員(先生方)にて採点。 ・CPRはレサシアン with QCPRマネキン(レールダルメディカル社)、レサシベビー QCPRマネキン(レールダルメディカル社)を使用して、評価。 ・使用するガイドラインは、日本蘇生協議会(JRC)蘇生ガイドライン2020。また、医療者用BLSアルゴリズムを採用。 ※その他詳細は割愛いたします この内容で2時間半にわたり、熱戦が繰り広げられました。 競技開始  いざ、競技がスタートすると会場は救急現場さながらに緊迫感の漂う空間となりました。 競技者の一挙手一投足、どれにおいても真剣さが籠っており、質の高いBLSを行おうという想いが全チームから感じられる雰囲気でした。胸骨圧迫のテンポを保つために一定のリズムで手拍子を入れながら応援をする医学生たちの手のひらが真っ赤になっていたり、優勝を“目標”に一緒に練習をしてきた仲間を鼓舞する姿は、いかにも青春という様子で、心揺さぶられる場面でした。 その一方で、競技が終わったあとすぐに集まって反省点を話し込む姿や、各大学の引率の先生にアドバイスを求める姿は、医学生であっても一人の医療従事者なんだという高い志を感じる素晴らしい時間であったと思います。この競技会場の雰囲気が文章で伝えきれないかも、という歯がゆさも残りますが、ぜひ、この記事を読んだ医学生には来年以降、実際に参加して、肌で感じていただきたいなと思いました。 競技と実際の間で  2時間半にわたる競技時間を終え、医学生たちの表情は達成感と開放感に溢れたものとなっていました。表彰式のために参加者全員が再度会場に集い、隣に並ぶ他大の参加者と会話を交わす様子を見ていると、こうして現地に集まり、お互いの顔が見える中で知識・技術を高めあうということの重要性を改めて感じた、大変貴重な場となりました。 表彰は4部門(成人スタンダード・成人ハード・乳児・総合)にわたり、発表されました。 表彰式後、総合優勝を果たした琉球大学の方に“大会に臨むうえで一番大切にしていたこと”を聞いてみると「とにかくメンバーみんなでやる。マネキンではなく、実際の人だと思って。競技ルールはあるものの、とにかく目の前にいるのは人なんだと思ってやることを徹底して臨みました」と素敵な笑顔で答えてくれました。また、練習の一環として、実際に活躍している救急隊の方を訪ね、リアルな現場の状況などに即したBLSの方法や実技を学んだというお話もしてくださいました。 もう一つ、この琉球大学チームから非常に興味深いお話がありました。普段所属する《Off The Clock》というサークルは救急医療と総合診療の2本柱で活動しているというのです。「自分たちでも珍しいサークルだと思います。昨日もみんなで総合診療の講演を受けて、朝8時の飛行機で東京にきました!」と仰っていたところに学生らしい勢いを感じた一方、日頃から人を助けるんだ、という想いを持って、コツコツと練習や実習、サークル活動に励んでいるというところに、このチームが総合優勝できた理由を垣間見た気がしました。  閉会式、笠岡先生は全体総評で「“目標”としていた優勝はできなかったかもしれない、でも“目的”としていたことは全員が達成できたと思います」「今日、何人の人を救うことが出来たか、何人の人が救われたか。私はその目線で競技を見ていました。救急を専門にしているからではなく、医師にとって大事な蘇生法を学べたことが重要です」と医学生たちに激励のお言葉をかけていました。  改めて振り返ると、大会を通して語られた“目的”を日頃から念頭に置き、実践できているかどうか、この点が、賞を取れるかどうか、つまり“目標”達成をなし得るかの微妙な差を生んだのではないかと思います。もちろん、医療は競い合うものではありません。しかしながら知識・技術を高め合うことは、間違いなく、これからの医療を明るくしてくれる要素であると考えます。 こんなに志の高い医学生たちが、それぞれの地域で生活している。それが感じられただけでも、数多くの人命が救われる希望がある、と認識させていただける素晴らしい機会となりました。 今後もこの大会が続いていくことを心より願うとともに、来年は地方大会から見てみたいと思える、とても熱気溢れる大会でございました。  最後に、本取材をご快諾いただきました、日本救急医学会理事の先生方、学生・研修医部会運用委員会委員長の笠岡俊志先生、国立国際医療研究センター病院の木村昭夫先生・船登有未先生、大会担当の澤田悠輔先生に改めて感謝申し上げます。誠にありがとうございました。 文責:ヒポクラ学会担当 カワウソくん ▶医師・医学生専用SNS ヒポクラ  無料会員登録はこちら     ▶第9回全国医学生BLS選手権大会 https://www.jaam.jp/info/2023/info-20230421.html ▶日本救急医学会HP https://www.jaam.jp/index.html ▶救急医を目指す君へ https://qqka-senmoni.com/
第88回日本泌尿器科学会東部総会 高校生参加企画密着レポート
第88回日本泌尿器科学会東部総会 高校生参加企画密着レポート
掲載日:2023年10月20日 はじめに  さる2023年10月5~7日(於:札幌)の日程で開催された第88回日本泌尿器科学会東部総会において、 これまでには出会ったことがない、先進的な企画が実施されました。 その名も「アカデミックチャレンジ」。企画内容は地元の高校生に《医師とは?》《学会とは?》そして《泌尿器科医とは?》を学会参加を通して体感してもらうというもの。 企画担当の千葉博基先生(北海道大学)は「やってみないとわからないですが、まずはやってみることが大事」とアカデミックチャレンジを未知の企画としながらも、年明けから準備を重ねていらっしゃいました。 学会に高校生を招待するという前例のない企画でしたが、密着して見えたのは、熱い想いを持った医師たちが未来の日本医療界のため、次世代に期待を寄せる姿でした。 学会とは?  朝一番、集合した高校生たちの顔は緊張でかなり強張っているように見えました。 それもそのはず。周りは医師ばかりで、これまでに体感したことがない空気に包まれていたので無理もありません。傍から見ても制服姿の高校生が受付に集まっている様子はとても珍しい光景で、参加する高校生からも「楽しみですが、それよりも緊張が・・・」という言葉が漏れていました。 最初のプログラムはオリエンテーション。千葉先生から今回の企画主旨や学術集会、泌尿器科医とは何かという視点でお話がありました。 そもそも「学会とは?」という医療関係者にとっては「そんなこと考えたことなかったなぁ」と思わず口から漏れてしまうテーマから、研究することの意義などが高校生たちに伝えられました。 「この機械はいくらしますか?」  次に一行が向かったのは企業展示スペース。数々のメーカー企業が展示している医療機器、特に内視鏡機器を中心に見学し、最新技術に触れることでメーカーの役割や「医学の進歩=技術の進歩」であるということを身に染みて感じている高校生たちの背中が印象的でした。 とあるメーカー担当者に「この機械はいくらしますか?」と聞いた高校生が答えを聞いて、目を丸くしていた姿もあった一方で、硬性鏡を手に取った高校生が「これじゃ出血しちゃいませんか?」と先生に質問。先生も「鋭い!」と驚きの表情をされていたのは、この企画ならではの場面だったと思います。 好奇心を持ち続けることの大切さ  いよいよ、メインとなる演題聴講に向かった一行。 招請講演で腎移植に関するお話を聞いたとある高校が「全然わからなかったです」と率直に感想を述べていましたが、知的好奇心がくすぐられていたのか、わからないことが悔しいと感じているようにも見え、未知のものに触れる重要性を感じた一瞬でした。 その後は一般演題を聴講、質疑応答の時間では何が起きているんだとばかりに座長席と演者席を交互に目で追う姿がとても可愛らしく、高校生らしさが溢れていました。お昼の講演では、朝触れた内視鏡を使った処置の実映像を視聴。実際に触れたものがどうやって使われているのかわかり、すごく勉強になりましたと先生に感想を伝えている様子も見られました。 この日最後の聴講は恐竜学に関するものでした。「恐竜学」という医学とは関係のないところにあるようにも見えるテーマでしたが、高校生たちと同様に聴講している医師たちが大きく頷き、感心されている姿に、好奇心を持ち続けることの大切さを垣間見たプログラムとなりました。 次世代への期待  一日の終わりに、プログラムに参加した理由を高校生に聞いてみると「学校でチラシが配られたから」「主治医の先生に誘われたから」「医師という職業に興味があったから」と答えは様々でした。それぞれの背景がありながらも、参加した高校生全員が最後に口を揃えて述べていたのは、貴重な体験が出来たことへの感謝の言葉でした。解散後、高校生たちを見送った千葉先生は「参加した理由は色々あると思うけど、医師になるきっかけは本当に人それぞれ。この企画への参加がきっかけで、一人でも医師になってくれる人がいたら、次世代のための学会企画として、非常に大きな功績になります」と仰っていました。 「やってみないとわからない」という言葉とともに始動された企画でしたが、本総会のテーマ『次世代への期待』にも表れているように「期待=望みをかけて待ち受けること」であり、すぐに目に見える成果が得られるわけではありません。そう考えると「やってみないとわからない」ことを実践することが、これからの日本医療、医学界に大きな何かをもたらすことに繋がるのかもしれません。そんな期待を抱かせていただいたアカデミックチャレンジでした。  最後に、本取材をご快諾いただきました、大会長の篠原信雄先生、企画担当の千葉博基先生に改めて感謝申し上げます。誠にありがとうございました。 文責:ヒポクラ学会担当 カワウソくん ヒポクラ × マイナビ無料会員登録はこちら ▶https://www.marketing.hpcr.jp/hpcr 第88回日本泌尿器科学会東部総会HP ▶https://site2.convention.co.jp/88ejua 日本泌尿器科学会HP ▶https://www.urol.or.jp/
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