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TKI治療抵抗性CMLに対して新規TKIであるvodobatinibの有用性は示されるか
公開日:2025年2月19日
Cortes JE, et al. Lancet Haematol. 2025 Feb 7. [Epub ahead of print]
慢性骨髄性白血病(CML)において、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)に対する抵抗性または不耐性は、依然として治療上の大きな課題である。米国・オーガスタ大学のJorge E. Cortes氏らは、ポナチニブおよびアシミニブを含む3つ以上のTKIにより治療を行ったフィラデルフィア染色体(Ph)陽性CML患者に対する、新しい選択的BCR-ABL1 TKIであるvodobatinibの安全性、抗白血病作用、薬物動態を明らかにするため、非盲検多施設共同国際第I/II相試験を実施した。The Lancet. Haematology誌オンライン版2025年2月7日号の報告。
本非盲検多施設共同国際第I/II相試験は、10ヵ国(ベルギー、フランス、ハンガリー、インド、イタリア、ルーマニア、韓国、スペイン、英国、米国)、28施設で実施された。対象は、ECOG PSが2以下の18歳以上のPh陽性CMLおよびALL患者(ALLは第I相試験のみ)。第I相試験では、3つ以上のTKIによる治療歴があり、他に利用可能な治療オプションがなかった患者を含めた。第II相試験では、3つ以上のTKIで奏効が消失およびポナチニブ治療歴を有する治療抵抗性およびまたは不耐性の患者を対象とした。Thr315Ile変異を有する患者は、第Iおよび第II相試験より除外した。対象患者には、有害事象、病勢進行、フォローアップ調査の失敗、死亡により治療を中止しない限り、1コース28日間で1日1回経口vodobatinib(12〜240mg)の自己投与を最大60ヵ月(65コース)実施した。主要エンドポイントは、vodobatinibの第I相試験の用量制限毒性に基づく最大耐用量、抗白血病作用(第II相試験における慢性期の細胞遺伝学的大奏効[CCyR+PCyR]、移行期または急性転化期の血液学的大奏効)の評価とした。Vodobatinibの安全性、抗白血病作用、薬物動態の評価は、第Iおよび第II相試験のデータを統合分析することにより決定した。なお、データカットオフ時点(2023年7月15日)で、対象患者募集の課題により、第II相試験は早期終了した。
主な結果は以下のとおり。
・対象患者数は78例。すべての患者で1回以上vodobatinibが投与され、安全性および有効性の分析対象に含めた。
・第I相試験登録患者数は58例(2017年4月6日〜2023年6月20日)、第II相試験登録患者数は20例(2023年3月3日〜2023年3月29日)。
・病期分類では、慢性期66例(85%)、移行期8例(10%)、急性転化期4例(5%)。
・男性が43例(55%)、女性が35例(45%)。
・年齢中央値は、59.0歳(IQR:47.0〜66.0)。
・フォローアップ期間中央値は、22.3ヵ月(IQR:11.1〜43.9)。
・vodobatinibを240mg投与した患者2例で用量制限毒性が認められたため(グレードIIIの呼吸困難:1例、グレードIIの体液過剰)、最大耐用量は204mgとみなした。
・治療関連有害事象が認められた患者は73例(94%)、多くはグレードII以下の血液学的または消化器系の有害事象であった。
・グレードIII以上の治療関連有害事象は47例(60%)でみられ、主な有害事象は、血小板減少(14例、18%)、好中球減少(10例、13%)、貧血(9例、12%)、リパーゼ増加(8例、10%)などであった。
・試験中に死亡した患者は7例(9%)、そのうち1例は、治験責任医師の判断により治療に関連する死亡とされた。
・慢性期のCML患者におけるCCyR+PCyRは、データカットオフ時点で63例中44例(70%)、そのうち第II相試験で16例中12例(75%)に認められた。
・移行期のCML患者における血液学的大奏効は、データカットオフ時点で7例中6例(86%、期間中央値:17.8ヵ月[IQR:10.2〜24.3])、そのうち第II相試験で評価可能であった3例(100%)すべてに認められた。
・急性転化期のCML患者における血液学的大奏効は、データカットオフ時点で4例中2例(50%)、奏効期間中央値は6.2ヵ月(IQR:3.2〜9.3)であった。なお、第II相試験での患者登録はなかった。
著者らは「第I/II相試験の統合解析により、ポナチニブやアシミニブを含む複数のTKI治療歴を有する進行期CML患者に対し、vodobatinibは臨床的に意味のある抗白血病作用および許容可能な安全性プロファイルを有する薬剤であり、いまだ満たされていない臨床ニーズを改善する可能性が示唆された。第II相試験は、統計学的に検出力が不十分なため、第III相ランダム化試験およびより早期の治療ラインでのさらなる調査が必要とされる」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)
原著論文はこちら
Cortes JE, et al. Lancet Haematol. 2025 Feb 7. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39929221
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