「チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)」の記事一覧

初発Ph陽性ALLの第1選択治療、ポナチニブ vs. イマチニブ/JAMA
初発Ph陽性ALLの第1選択治療、ポナチニブ vs. イマチニブ/JAMA
公開日:2024年9月12日 Jabbour E, et al. JAMA. 2024;331:1814-1823.  初発フィラデルフィア染色体(Ph)陽性の急性リンパ性白血病(ALL)では、第1世代または第2世代のBCR-ABL1チロシンキナーゼ阻害薬に対する耐性獲得による病勢進行が一般的であるが、ポナチニブはBCR-ABL1およびT315Iを含むすべての単一変異体を阻害する第3世代のチロシンキナーゼ阻害薬である。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのElias Jabbour氏らは、初発Ph陽性ALL成人患者にに対する第1選択薬であるポナチニブとイマチニブとの比較を行った。JAMA誌2024年6月4日号の報告。  本試験は、18歳以上のPh陽性ALL成人患者を対象に実施した第III相国際共同ランダム化非盲検比較試験「PhALLCON試験」である。2019年1月〜2022年5月に77施設で登録されたPh陽性ALL患者は、ポナチニブ群(1日1回30mg)またはイマチニブ群(1日1回600mg)に2:1でランダムに割り付けられた。両群ともに、強度減弱化学療法と併用投与を行い、20サイクル終了後、それぞれ単剤投与を継続した。有効性の減弱、許容不能な毒性発現、造血幹細胞移植(HSCT)の開始まで継続投与を行った。ポナチニブ群では、導入療法終了後、微小残存病変(MRD)陰性完全寛解(CR)が得られた時点で15mgに減量し、MRD陰性が消失した場合は30mgに漸増した。なお、3サイクル終了時にMRD陰性CRが得られなかった患者は、試験治療を中止した。主要エンドポイントは、寛解導入(3サイクル)終了時のMRD陰性CR(BCR-ABL1≦0.01%[MR4])かつCRが4週以上維持とした。主な副次的エンドポイントは、無イベント生存期間(EFS)とした。2022年8月12日までのフォローアップ調査のデータに基づき、分析を行なった。 主な結果は以下のとおり。 ・ランダム化された245例(年齢中央値:54歳、女性:133例[54.3%])のうち、中央検査にてp190/p210が確認された232例(ポナチニブ群154例、イマチニブ群78例)を主要エンドポイントの解析対象に含めた。 ・フォローアップ期間中央値20.1ヵ月において、主要エンドポイントであるMRD陰性CR率は、ポナチニブ群34.4%(53/154例)、イマチニブ群16.7%(13/78例)であり、ポナチニブ群が有意に高かった(リスク差:0.18、95%CI:0.06~0.29、p=0.002)。 ・EFSは、事前に規定されたイベント数に達しておらず、EFS中央値はポナチニブ群未達、イマチニブ群29.0ヵ月であった。 ・有害事象の発現率は、同程度であった。グレード3〜4の治療下における有害事象(TEAE)は、ポナチニブ群85.3%、イマチニブ群87.7%であり、治療関連有害事象(TRAE)はポナチニブ群65.6%、イマチニブ群59.3%であった。閉塞性動脈イベントの発現は稀であり、ポナチニブ群2.5%、イマチニブ群1.2%であった。  著者らは「初発Ph陽性ALL成人患者において、ポナチニブは、イマチニブと比較し、導入療法終了時のMRD陰性CR率が有意に高いことが示唆された。安全性プロファイルについては、両群間で同等であった」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Jabbour E, et al. JAMA. 2024;331:1814-1823.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38722621 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
第一寛解期Ph-like ALLに対する同種造血幹細胞移植の治療成績〜多施設共同研究
第一寛解期Ph-like ALLに対する同種造血幹細胞移植の治療成績〜多施設共同研究
公開日:2024年10月3日 Rahman ZA, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Sep 25. [Epub ahead of print]  フィラデルフィア染色体様急性リンパ性白血病(Ph-like ALL)は,B細胞性ALLの高リスク群であり、従来の治療では予後不良である。最適な治療結果につながらない要因として、診断の難しさや標準化された治療プロトコルの欠如が挙げられる。さらに、成人Ph-like ALL患者には、同種造血幹細胞移植(HSCT)が推奨されるが、これを裏付けるデータも限られている。ヨルダン・King Hussein Cancer CenterのZaid Abdel Rahman氏らは、HSCTを行った第一寛解期Ph-like ALL成人患者の治療アウトカムを、Ph陽性ALLおよびPh陰性ALLと比較するため、多施設共同レトロスペクティブ研究を実施した。Transplantation and Cellular Therapy誌オンライン版2024年9月25日号の報告。  全米の5つの学術センターよりALL患者のHSCTの焦点を当てたデータを収集した。対象は、2006〜21年に第一寛解期でHSCTを行った患者673例とした。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者673例のうち、Ph-like ALLが83例(12.3%)、Ph陽性ALLが271例(40.3%)、Ph陰性ALLが319例(47.4%)。 ・第一寛解期Ph-like ALL患者に対するHSCT後の治療アウトカムは、Ph陰性ALL患者と同等であり、3年全生存率(OS:66% vs. 59%、p=0.1)、無増悪生存期間(PFS:59% vs. 54%、p=0.1)、再発率(22% vs. 20%、p=0.7)に有意な差は認められなかった。 ・対照的に、Ph陽性ALLの治療アウトカムは、3年OS(75%、p<0.001)、PFS(70%、p=0.001)、再発率(12%、p=0.003)ともに良好であり、これはチロシンキナーゼ阻害薬治療によるものであると考えられる。  著者らは「HSCTと効果的な第2選択治療を組み合わせることで、Ph-like ALLの予後不良を軽減し、有用な治療アウトカムをもたらす可能性が示唆された」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Rahman ZA, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Sep 25. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39332807 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
移植前MRD陽性のPh陽性ALL、HSCT後の予防的TKI投与が有望
移植前MRD陽性のPh陽性ALL、HSCT後の予防的TKI投与が有望
公開日:2024年12月10日 Liu H, et al. Am J Hematol. 2024 Nov 16. [Epub ahead of print]  同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)を行ったフィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ性白血病(ALL)における治療失敗の主な原因は、再発である。中国・南方医科大学のHui Liu氏らは、Ph陽性ALL患者におけるallo-HSCT後の予防的チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による再発予防効果を評価するため、プロスペクティブ研究を実施した。American Journal of Hematology誌オンライン版2024年11月16日号の報告。  対象は、allo-HSCTを行うPh陽性ALL患者110例。対象患者は、移植前の微小残存病変(MRD)に基づき予防群または対照群に割り付けられた。主要エンドポイントは、再発累積発生率とした。 主な結果は以下のとおり。 ・予防群には、移植前MRD陽性であった患者38例、対照群にはMRD陰性であった患者72例を含めた。 ・4年間の再発累積発生率は、予防群で25.3%(95%CI:12.1〜41.0)、対照群で20.3%(95%CI:11.6〜30.7)であった(HR:1.272、95%CI:0.551〜2.940、p=0.549)。 ・再発以外の死亡率は、予防群で10.5%(95%CI:3.3〜22.7)、対照群で9.7%(95%CI:4.2〜17.9)であった(HR:1.094、95%CI:0.320〜3.738、p=0.928)。 ・4年間の全生存率は、予防群で71.8%(95%CI:53.2〜84.1)、対照群で84.1%(95%CI:72.9〜90.9)であった(HR:1.746、95%CI:0.741〜4.112、p=0.196)。 ・白血病フリーの無病生存率は、予防群で64.1%(95%CI:45.8〜77.7)、対照群で70.0%(95%CI:57.6〜79.4)であった(HR:1.212、95%CI:0.607〜2.421、p=0.585)。  著者らは「移植前にMRD陽性であったPh陽性ALL患者に対するHSCT後の予防的TKI投与による治療アウトカムは、移植前にMRD陰性であった患者と同レベルまで引き上げられる可能性が示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Liu H, et al. Am J Hematol. 2024 Nov 16. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39548804 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
TKI抵抗性・不耐容のCMLに対するポナチニブ vs.アシミニブ
TKI抵抗性・不耐容のCMLに対するポナチニブ vs.アシミニブ
公開日:2024年12月13日 Garcia-Gutierrez V, et al. Front Oncol. 2024:14:1455378.  ガイドラインでは、2剤抵抗性または不耐容の慢性期慢性骨髄性白血病(CML)に対しポナチニブおよびアシミニブが推奨されており、米国においてT315I変異を有するCMLに唯一承認されている薬剤である。また、欧州では、T315I変異を有するCMLには、ポナチニブのみが承認されている。スペイン・アルカラ大学のValentin Garcia-Gutierrez氏らは、第2世代TKI治療抵抗性またはT315I変異を有する慢性期CML患者に対するポナチニブまたはアシミニブによる治療効果を評価するため、マッチング調整間接比較による検討を行った。Frontiers in Oncology誌2024年11月20日号の報告。  1つ以上の第2世代TKI治療抵抗性またはT315I変異を有する慢性期CML患者を対象にポナチニブまたはアシミニブを評価した臨床試験を、医学文献データベースのシステマテックレビューにより特定した。ポナチニブの患者レベルでのデータを使用したマッチング調整間接比較(MAIC)分析を用いて、ポナチニブとアシミニブのベースライン特定のバランスを調整した。マッチング後、各患者のMAIC重み付けを用いて奏効率を算出し、その差を2つの独立した比率の差z検定を用いて評価した。ベースライン時に奏効していない患者におけるBCR::ABL1IS≦1%および分子遺伝学的大奏効(MMR)の累積率を比較した。対象患者は、T315I変異の有無によりさらに分類した。 主な結果は以下のとおり。 ・4試験をMAIC分析に含めた。 ・ベースライン時、BCR::ABL1IS≦1%でない患者では、12ヵ月時点での調整済みBCR::ABL1IS≦1%率の差は9.33%であり、ポナチニブの方が良好であった。 【ポナチニブ vs.アシミニブの調整済みBCR::ABL1IS≦1%率の差】9.33%(95%CI:0.79〜17.86) 【ポナチニブ vs.アシミニブの調整済みMMR率の差】6.84%(95%CI:−0.95〜14.62) ・T315I変異を有する患者では、12ヵ月時点での調整済みBCR::ABL1IS≦1%率の差は43.54%であった。 【ポナチニブ vs.アシミニブの調整済みBCR::ABL1IS≦1%率の差】43.54%(95%CI:22.20〜64.87) 【ポナチニブ vs.アシミニブの調整済みMMR率の差】47.37%(95%CI: 28.72〜66.02)  著者らは「ベースライン時に奏効していない慢性期CML患者では、主なベースライン特性を調整後の12ヵ月までのほとんどの比較において、ポナチニブは、アシミニブよりもアウトカムが良好であった。さらに、T315I変異を有する患者においては、ポナチニブの有効性アウトカムは、より強化された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Garcia-Gutierrez V, et al. Front Oncol. 2024:14:1455378.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39634261 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
日本人Ph陽性ALL患者の移植後再発予防に有効なテーラーメイドTKI戦略
日本人Ph陽性ALL患者の移植後再発予防に有効なテーラーメイドTKI戦略
公開日:2025年1月27日 Nishiwaki S, et al. Int J Hematol. 2025 Jan 17. [Epub ahead of print]  フィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ性白血病(ALL)に対する同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)後の再発予防に、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の移植後投与は有望である。しかし、実臨床における使用やその有効性は、十分に明らかとなっていない。名古屋大学の西脇 聡史氏らは、日本においてallo-HSCTを実施したPh陽性ALL患者に対するTKIの使用状況および有用性を評価した。International Journal of Hematology誌オンライン版2025年1月17日号の報告。  2002〜22年にallo-HSCTを実施したPh陽性ALL患者を対象に、7施設による包括的な研究を行なった。 主な結果は以下のとおり。 ・完全寛解で移植を行った173例中49例(28%)で移植後にTKIが投与されていた。 ・内訳は、分子遺伝学的完全奏効(CMR)における予防的投与は7%、微小残存病変(MRD)陽性への対処として21%であった。 ・移植後、最初のTKI投与期間中央値は、予防的投与で13.7ヵ月、MRD陽性で4.0ヵ月。 ・予防的TKI投与は、allo-HSCTでCMRを達成していない患者に、とくに有用であると考えられ、予防的TKI投与を行わなかった患者と比較し、5年無再発生存期間(RFS)が向上する傾向が示唆された(100% vs.73%、p=0.11)。 ・予防的、非TKI投与、MRD陽性との間では、RFSの有意な差が認められた。 ・診断時に白血球数が1万5,000/μl未満およびその他の染色体異常のない患者では、TKI戦略とは無関係に、同等の5年RFSを示した(100% vs.85% vs.80%、p=0.87)。  著者らは「特定の低リスク患者におけるMRD陽性に対するTKI投与の潜在的な有効性が示唆され、リスク因子に基づくテーラーメイドTKI戦略の重要性が確認された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Nishiwaki S, et al. Int J Hematol. 2025 Jan 17. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39821010 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
Ph陽性ALLにおける同種HSCT後のTKI維持療法、p190とp210の予後の違いは?
Ph陽性ALLにおける同種HSCT後のTKI維持療法、p190とp210の予後の違いは?
公開日:2025年2月7日 Zhen J, et al. Clin Lymphoma Myeloma Leuk. 2025 Jan 7. [Epub ahead of print]  中国・中山大学附属第一医院のJiayi Zhen氏らは、フィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ性白血病(ALL)における同種造血幹細胞移植(HSCT)後のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)維持療法が、BCR::ABL融合遺伝子のタイプであるp190とp210患者の再発率および予後に及ぼす影響を分析するため、多施設共同研究を実施した。Clinical Lymphoma, Myeloma & Leukemia誌オンライン版2025年1月7日号の報告。  HSCTを行ったPh陽性ALL患者58例を対象に、臨床データをレトロスペクティブに分析した。すべての対象患者に対し、移植後TKI維持療法を行った。p190群(43例)およびp210群(15例)の臨床的特徴および予後を比較した。 主な結果は以下のとおり。 ・臨床的特徴は、両群間で有意な差が認められなかった。 ・多変量解析により、T315I変異が移植後の無再発生存期間(RFS)の独立したリスク因子であることが明らかとなった(HR:5.021、95%CI:1.129〜22.300、p=0.034)。 ・さらに、1年超のTKI維持療法は、RFSの保護因子であることが確認された(HR:0.315、95%CI:0.115〜0.860、p=0.025)。 ・RFS中央値は、p190群で89.4ヵ月、p210群で59.1ヵ月であり、有意な差が認められた(p=0.031)。 ・1年超のTKI維持療法を行った患者におけるサブグループ解析では、RFS中央値は、p190群で95.3ヵ月、p210群で90.5ヵ月であり、有意な差は認められなかった(p=0.080)。  著者らは「Ph陽性ALL患者に対するHSCT後のTKI維持療法における予後は、p190群と比較し、p210群で不良であった。しかし、寛解導入療法後の早期HSCTおよび移植後の長期TKI維持療法により、p210群の予後が改善され、p190群と同程度になる傾向が示された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Zhen J, et al. Clin Lymphoma Myeloma Leuk. 2025 Jan 7. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39875277 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
TKI治療抵抗性CMLに対して新規TKIであるvodobatinibの有用性は示されるか
TKI治療抵抗性CMLに対して新規TKIであるvodobatinibの有用性は示されるか
公開日:2025年2月19日 Cortes JE, et al. Lancet Haematol. 2025 Feb 7. [Epub ahead of print]  慢性骨髄性白血病(CML)において、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)に対する抵抗性または不耐性は、依然として治療上の大きな課題である。米国・オーガスタ大学のJorge E. Cortes氏らは、ポナチニブおよびアシミニブを含む3つ以上のTKIにより治療を行ったフィラデルフィア染色体(Ph)陽性CML患者に対する、新しい選択的BCR-ABL1 TKIであるvodobatinibの安全性、抗白血病作用、薬物動態を明らかにするため、非盲検多施設共同国際第I/II相試験を実施した。The Lancet. Haematology誌オンライン版2025年2月7日号の報告。  本非盲検多施設共同国際第I/II相試験は、10ヵ国(ベルギー、フランス、ハンガリー、インド、イタリア、ルーマニア、韓国、スペイン、英国、米国)、28施設で実施された。対象は、ECOG PSが2以下の18歳以上のPh陽性CMLおよびALL患者(ALLは第I相試験のみ)。第I相試験では、3つ以上のTKIによる治療歴があり、他に利用可能な治療オプションがなかった患者を含めた。第II相試験では、3つ以上のTKIで奏効が消失およびポナチニブ治療歴を有する治療抵抗性およびまたは不耐性の患者を対象とした。Thr315Ile変異を有する患者は、第Iおよび第II相試験より除外した。対象患者には、有害事象、病勢進行、フォローアップ調査の失敗、死亡により治療を中止しない限り、1コース28日間で1日1回経口vodobatinib(12〜240mg)の自己投与を最大60ヵ月(65コース)実施した。主要エンドポイントは、vodobatinibの第I相試験の用量制限毒性に基づく最大耐用量、抗白血病作用(第II相試験における慢性期の細胞遺伝学的大奏効[CCyR+PCyR]、移行期または急性転化期の血液学的大奏効)の評価とした。Vodobatinibの安全性、抗白血病作用、薬物動態の評価は、第Iおよび第II相試験のデータを統合分析することにより決定した。なお、データカットオフ時点(2023年7月15日)で、対象患者募集の課題により、第II相試験は早期終了した。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者数は78例。すべての患者で1回以上vodobatinibが投与され、安全性および有効性の分析対象に含めた。 ・第I相試験登録患者数は58例(2017年4月6日〜2023年6月20日)、第II相試験登録患者数は20例(2023年3月3日〜2023年3月29日)。 ・病期分類では、慢性期66例(85%)、移行期8例(10%)、急性転化期4例(5%)。 ・男性が43例(55%)、女性が35例(45%)。 ・年齢中央値は、59.0歳(IQR:47.0〜66.0)。 ・フォローアップ期間中央値は、22.3ヵ月(IQR:11.1〜43.9)。 ・vodobatinibを240mg投与した患者2例で用量制限毒性が認められたため(グレードIIIの呼吸困難:1例、グレードIIの体液過剰)、最大耐用量は204mgとみなした。 ・治療関連有害事象が認められた患者は73例(94%)、多くはグレードII以下の血液学的または消化器系の有害事象であった。 ・グレードIII以上の治療関連有害事象は47例(60%)でみられ、主な有害事象は、血小板減少(14例、18%)、好中球減少(10例、13%)、貧血(9例、12%)、リパーゼ増加(8例、10%)などであった。 ・試験中に死亡した患者は7例(9%)、そのうち1例は、治験責任医師の判断により治療に関連する死亡とされた。 ・慢性期のCML患者におけるCCyR+PCyRは、データカットオフ時点で63例中44例(70%)、そのうち第II相試験で16例中12例(75%)に認められた。 ・移行期のCML患者における血液学的大奏効は、データカットオフ時点で7例中6例(86%、期間中央値:17.8ヵ月[IQR:10.2〜24.3])、そのうち第II相試験で評価可能であった3例(100%)すべてに認められた。 ・急性転化期のCML患者における血液学的大奏効は、データカットオフ時点で4例中2例(50%)、奏効期間中央値は6.2ヵ月(IQR:3.2〜9.3)であった。なお、第II相試験での患者登録はなかった。  著者らは「第I/II相試験の統合解析により、ポナチニブやアシミニブを含む複数のTKI治療歴を有する進行期CML患者に対し、vodobatinibは臨床的に意味のある抗白血病作用および許容可能な安全性プロファイルを有する薬剤であり、いまだ満たされていない臨床ニーズを改善する可能性が示唆された。第II相試験は、統計学的に検出力が不十分なため、第III相ランダム化試験およびより早期の治療ラインでのさらなる調査が必要とされる」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Cortes JE, et al. Lancet Haematol. 2025 Feb 7. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39929221 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ アンケート:ご意見箱 ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら