ライブラリー 2型糖尿病患者の腎機能に対するビタミンDおよびオメガ3脂肪酸の補給の効果。無作為化臨床試験。
Effect of Vitamin D and Omega-3 Fatty Acid Supplementation on Kidney Function in Patients With Type 2 Diabetes: A Randomized Clinical Trial
JAMA 2019 Nov 19;322(19):1899-1909.
上記論文のアブストラクト日本語訳
※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。
【重要】慢性腎臓病は2型糖尿病の一般的な合併症であり、末期腎不全に至る可能性があり、高い心血管リスクと関連している。
【目的】ビタミンD3またはオメガ3脂肪酸の補給が2型糖尿病のCKDの発症または進行を予防するかどうかを検証する。
【デザイン・設定・参加者】マサチューセッツ州の単一施設がコーディネートしたVitamin D and Omega-3 Trial (VITAL)の補助研究として、2011年11月から2014年3月に米国全50州から募集した2型糖尿病の成人1312名を対象に、2×2階調デザインの無作為化臨床試験を実施した。フォローアップは2017年12月に終了した。
【介入】参加者は、ビタミンD3(2000 IU/d)とオメガ3脂肪酸(エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸;1 g/d)(n = 370)、ビタミンD3とプラセボ(n = 333)、プラセボとオメガ3脂肪酸(n = 289)、またはプラセボ2種(n = 320)を5年間投与する群に無作為に割り付けられた。
【結果】無作為化された1312名(平均年齢67.6歳、女性46%、人種的または民族的少数派31%)のうち、934名(71%)が試験を完了した。ベースラインの平均eGFRは85.8(SD、22.1)mL/min/1.73 m2だった。ベースラインから5年目までのeGFRの平均変化量は、ビタミンD3投与群で-12.3(95%CI、-13.4~-11.2)mL/min/1.73m2、プラセボ投与群で-13.1(95%CI、-14.2~-11.9)mL/min/1.73m2(差、0.9[95%CI、-0.7~2.5]mL/min/1.73m2)であった。eGFRの平均変化量は、オメガ3脂肪酸群で-12.2(95%CI,-13.3~-11.1)mL/min/1.73m2、プラセボ群で-13.1(95%CI,-14.2~-12.0)mL/min/1.73m2(差,0.9[95%CI,-0.7~2.6]mL/min/1.73m2)。2つの治療法の間に有意な相互作用はなかった。腎結石は58名(ビタミンD3投与群32名,プラセボ投与群26名),消化管出血は45名(オメガ3脂肪酸投与群28名,プラセボ投与群17名)に発生した。
【結論と関連性】成人の2型糖尿病患者において,ビタミンD3またはオメガ3脂肪酸を補給しても,プラセボと比較して,5年後のeGFRの変化に有意な差はなかった。今回の結果は、2型糖尿病患者の腎機能維持のためのビタミンDまたはオメガ3脂肪酸の補給の使用を支持するものではない。
【臨床試験登録】ClinicalTrials. gov Identifier:NCT01684722。
第一人者の医師による解説
ビタミン D、オメガ -3脂肪酸補充は2型糖尿病患者の腎機能改善効果なし
寺内 康夫 横浜市立大学医学群長(大学院医学研究科分子内分泌・糖尿病内科学教授)
MMJ.June 2020;16(3)
日本では糖尿病の発症予防、合併症の発症・進展・重症化予防のためにさまざまな対策が講じられており、中でも糖尿病腎症による透析導入を減らす対策は国家的プロジェクトとして位置づけられている。糖尿病腎症に対する基本方針としては、生活 習慣改善、血糖・血圧・脂質・貧血の管理などとともに、腎不全を悪化させる脱水、薬剤、感染症を避けることが重要である。
腎機能が低下すると、血中のCa濃度およびP濃度が変化する。腎臓は徐々に血中のPを除去する能力を失い、Ca濃度を正常に保つのに十分な量のビタミン Dを活性化できなくなる。副甲状腺はこれらの変化を感知して副甲状腺ホルモン(PTH)の産生・放出を増大させ、Ca濃度を上昇させる。これらの代謝変化は骨代謝を変化させ、骨形成異常などが 認められる。こうした骨ミネラル代謝異常は血管 合併症を含む生命予後に影響する。
Kidney Disease /Impr o ving Global Outcomes(KDIGO)ガイド 2009(1)では、慢性腎臓病(CKD)G3~5期では、ビタミンD欠乏の有無チェックのため血中25(OH)D測定が望ましいとされ、25(OH)Dが20 ng/mL以下ではビタミンD欠乏症と判定し、天然型ビタミン D製剤や活性型ビタミン D製剤の投与が推奨された。しかし、「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」(2) では、保存期 CKD患者において、活性型ビタミン D製剤はPTH値を低下させ、尿蛋白を抑える効果が期待されるため、投与を考慮してもよいが、腎機能予後、骨折、心血管イベント、生命予後への効果は明らかでなく、高 Ca血症の原因となることから、 適応は患者ごとに検討し、少量から慎重に開始することが望ましいと基本姿勢が変わってきた。
このように、糖尿病患者における2次性副甲状腺機能 亢進症に対し、活性型ビタミンD製剤の使用は生命予後を改善する可能性があるが、エビデンスは 十分とは言えない。
また、オメガ -3脂肪酸は心血管イベントのリスク軽減には重要かもしれないが、アルブミン尿増加、 糸球体濾過量(GFR)低下のリスクが報告されている。
こうした状況を踏まえ、本論文の著者らは、ビタミン D製剤かつまたはオメガ -3脂肪酸を2型糖尿病患者1,312人に5年間投与した際の腎機能への影響を検討するVITAL試験を実施した。結論としては、ビタミン D製剤、オメガ -3脂肪酸のいずれも腎機能を改善しなかった。ビタミンD欠乏状態にある患者は15%程度と少数であったことが本研究の結論に影響している可能性があり、骨折、心血管イベント、生命予後を検証するランダム化対照試験も待たれる。
1. KDIGO CKD-MBD Work Group. Kidney Int Suppl. 2009 Aug;(113):S1-130.
2. 「エビデンスに基づく CKD 診療ガイドライン 2018」(日本腎臓学会)