「喫煙」の記事一覧

電子たばこ+カウンセリングとカウンセリング単独の禁煙効果を比較 無作為化比較試験
電子たばこ+カウンセリングとカウンセリング単独の禁煙効果を比較 無作為化比較試験
Effect of e-Cigarettes Plus Counseling vs Counseling Alone on Smoking Cessation: A Randomized Clinical Trial JAMA. 2020 Nov 10;324(18):1844-1854. doi: 10.1001/jama.2020.18889. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【重要性】禁煙に電子たばこを用いることはいまだに議論の余地がある。 【目的】禁煙対策として個別カウンセリングと併用する電子たばこを評価すること。 【デザイン、設定および参加者】カナダの17施設で、2016年11月から2019年9月の間に禁煙の意欲がある成人を組み入れた無作為化比較試験(801例をスクリーニング、274例が適格、151例が辞退)。製造の遅延によって早期中止となった(486例中376例、目標の77%)。24週間の結果(2020年3月)を報告する。 【介入】12週間のニコチン含有電子たばこ使用(128例)、ニコチン非含有電子たばこ使用(127例)、電子たばこ不使用(121例)に無作為に割り付けた。全群に個別カウンセリングを実施した。 【主要転帰および評価項目】主要評価項目は、12週時の禁煙点有病率(7日間想起、呼気一酸化炭素を用いて生化学的に検証)とした。参加者の欠損データを喫煙とみなした。何回かの経過観察で調べた副次評価項目7項目は、他の経過観察時の禁煙点有病率、禁煙の継続、1日の禁煙本数の変化、重度有害事象、有害事象、有害事象による脱落および治療のアドヒアランスだった。 【結果】無作為化した参加者376例[平均年齢52歳、女性178例(47%)]の自己報告の喫煙率は12週時で299例(80%)、24週時で278例(74%)だった。禁煙点有病率は、12週時はニコチン含有電子たばこ+カウンセリング群の方がカウンセリング単独群よりも有意に高かった[21.9% vs. 9.1%、リスク差(RD)12.8、95%CI 4.0-21.6]が、24週時は有意差がなかった(17.2%vs. 9.9%、RD 7.3、95%CI -1.2-15.7)。ニコチン非含有電子たばこ+カウンセリングの禁煙点有病率は、12週時はカウンセリング単独と有意差がなかった(17.3%vs. 9.1%、RD 8.2、95%CI -0.1-16.6)が、24週時はカウンセリング単独より有意に高かった(20.5%vs. 9.9%、RD 10.6、95%CI 1.8-19.4)。有害事象がよく見られ[ニコチン含有電子たばこ+カウンセリング120例(94%)、ニコチン非含有電子たばこ+カウンセリング118例(93%)、カウンセリング単独88例(73%)]、多かったのが咳嗽(64%)と口腔内乾燥(53%)だった。 【結論および意義】禁煙意欲がある成人を対象にしたニコチン含有電子たばこ+カウンセリングで、カウンセリング単独よりも12週時の禁煙点有病率が高かった。しかし、この差は24週時に有意性が消失し、早期中止とニコチン含有および非含有電子たばこの結果の矛盾があったため、試験の解釈が限定されることから、詳細な研究が必要である。 第一人者の医師による解説 個別集中的なカウンセリングは禁煙成功に寄与 さらなる禁煙支援の検討が必要 小川 史洋 横浜市立大学医学部救急医学教室助教 MMJ. April 2021;17(2):39 紙巻きたばこを吸うことによる長期的な健康への悪影響は十分に証明されており、紙巻きたばこ使用者の多くが禁煙を試みている。2010~2011年に実施された米国の調査研究では、少なくとも5週間の禁煙補助薬および/または行動療法を行ったにもかかわらず、過去1年間に禁煙を試みたと報告した8,263人の70%以上が再喫煙していた(1)。 現在、電子たばこ(e-cigarette)を多くの喫煙者が禁煙補助具として使用しているが、禁煙における電子たばこの有効性はいまだに物議を醸している。禁煙に関する電子たばこの効果臨床試験が報告されており、電子たばこを使用することでさまざまな喫煙アウトカムがわずかに改善することを示唆する報告もあるが、その効果は十分に証明されておらず、さらなる検討が必要である。 本論文は、電子たばこの禁煙に関する効果について、電子たばことカウンセリングの併用をカウンセリング単独と比較・検討したランダム化比較試験(E3 Trial)の報告である。本試験では、登録した801人のうち最終的に376人(平均年齢52歳;女性47%)を個別カウンセリングに加えて、ニコチンを含有する電子たばこ、もしくはニコチンを含有しない電子たばこを使用する群、または電子たばこを使用しない群(計3群)にランダムに割り付け、12週間の介入を行い、12、24週目の喫煙状況を比較した。その結果、禁煙を試みている喫煙者に対して、電子たばことカウンセリングを組み合わせることにより、短期間での禁煙効果は期待できるが、長期間での効果は期待できず、さらに、非ニコチン電子たばことニコチン電子たばこ間の差も明らかでないため、さらなる検討が必要である、と著者らは結論づけている。 過去の報告からも、電子たばこ単独では禁煙の成功に大きく貢献する可能性は低く、禁煙の手段として推奨または促進すべきではないと考えられている。多くの電子たばこが、「たばこをやめたい人のための電子たばこ」「電子たばこで禁煙」などと宣伝されているが、製品説明の中に禁煙成功の効果的な用法・用量が示されていないものも多く、電子たばこを医学的な禁煙支援ツールとして支持する科学的証拠はなく、薬物療法など禁煙効果が科学的に証明された禁煙方法と横並びに電子たばこを扱うことはできない。一方、禁煙支援に関する個別集中的なカウンセリングは禁煙成功に寄与するとされており(2)、今後さらなる禁煙支援についての検討が待たれるところである。 1. Siahpush M, et al. BMJ Open 2015;5(1):e006229. 2. Lancaster T, et al. Cochrane Database Syst Rev 2017;3:CD001292.
肺がん検診CTを要する高リスク喫煙者を特定するための胸部X線画像を用いた深層学習 予測モデルの開発と検証
肺がん検診CTを要する高リスク喫煙者を特定するための胸部X線画像を用いた深層学習 予測モデルの開発と検証
Deep Learning Using Chest Radiographs to Identify High-Risk Smokers for Lung Cancer Screening Computed Tomography: Development and Validation of a Prediction Model Ann Intern Med. 2020 Nov 3;173(9):704-713. doi: 10.7326/M20-1868. Epub 2020 Sep 1. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【背景】胸部断層撮影(CT)検査を用いた肺がん検診で肺がんによる死亡を減らすことができる。メディケア・メディケイドサービスセンター(CMS)が定めるCTを用いた肺がん検診の適応基準では、詳細な喫煙状況が必要であり、肺がんの見逃しが多い。胸部X線画像を基に自動化した深層学習によって、CT検査の便益がある肺がん高リスクの喫煙者を多く特定できると考えられる。 【目的】電子医療記録(EMR)で入手できることの多いデータ(胸部X線画像、年齢、性別および現在の喫煙状況)を用いて長期的な肺がん発症を予測する畳み込みニューラルネットワーク(CXR-LC)を開発し、検証すること。 【デザイン】リスク予測研究。 【設定】米国肺がん検診試験。 【参加者】CXR-LCモデルはPLCO(前立腺、肺、大腸および卵巣)がん検診試験(4万1856例)で開発した。最終CXR-LCモデルは、新たなPLCOの喫煙者(5615例、追跡期間12年間)およびNLST(National Lung Screening Trial)の大量喫煙者(5493例、追跡期間6年間)で検証した。検証データでのみ結果を報告する。 【評価項目】CXR-LCで予測した最長12年間の肺がん発症率。 【結果】CXR-LCモデルは、肺がん予測の識別能(ROC曲線下面積[AUC])がCMSの適応基準よりも良好だった(PLCO AUC 0.755 vs. 0.634、P<0.001)。CXR-LCモデルの性能は、PLCOデータ(AUC:CXR-LC 0.755 vs. PLCOM2012 0.751)およびNLSTデータ(同0.659 vs. 0.650)いずれでも、11項目のデータを用いた最新のリスクスコアPLCOM2012と同等だった。ほぼ同じ規模の試験集団と比べると、CXR-LCはPLCOデータではCMSより感度が良好で(74.9% vs. 63.8%、P=0.012)、肺がんの見逃しが30.7%少なかった。決断曲線解析で、CXR-LCの純便益はCMS適応基準より大きく、PLCOM2012とほぼ同等の便益であった。 【欠点】肺がん試験の検証であり、臨床現場で検証したものではないこと。 【結論】CXR-LCモデルは、CMS適応基準やEMRから一般的に入手できる情報を用いたものよりも肺がん発症のリスクが高い喫煙者を特定できた。 第一人者の医師による解説 健診・検診とも日本での応用を検討する価値がある成果 髙井 大哉 虎の門病院呼吸器センター内科部長 MMJ. April 2021;17(2):38 米国の公的医療保険システムのメディケアは65歳以上の高齢者、身体障害、透析などが必要な腎機能障害を持つ人を対象とした連邦政府が運営する制度、メディケイドは低所得者層を対象に州政府と連邦政府が運営する制度である。検査、治療薬の適応についてはコスト的な制約が多く、その中で肺がん検診を目的とした胸部CT検査の適応は、30pack-years以上の喫煙歴があり、禁煙後15年以下の55~77歳以上であるとされている。さらに、この基準を満たす米国民のうち、実際に肺がんCT検診を受けている割合は5%未満で、およそ60%の乳がんや大腸がん検診の受診率に比べ、あまりにも少ないことが問題となっている。 本研究では、胸部X線写真上のパターンと電子カルテで得られる情報(年齢、性別、現在の喫煙状況)から、人工知能の一種で、深層学習(deep learning)を用いた畳み込みニューラルネットワーク(CNN)により長期的な肺がん発症の予測を試みている。学習データセットとして、前立腺がん、肺がん、大腸がん、卵巣がんに対する検診の有用性を検証した無作為化試験(PLCO試験)で集められた胸部X線写真 の80%(41,856人分)を用いた。この集団の背景は平均年齢は62.4歳、男性51.7%、白人86.7%、現喫煙者10.5%、既喫煙者44.9%、非喫煙者45.7%、12年追跡期間の胸部X線写真異常所見あり9.0%、肺がん2.3%、死亡1.5%であった。 PLCO試験の学習セットと独立した喫煙者のみの検証セット5,615人(全体の残り20%)において、今回開発されたCXR-LCモデルによる肺がん発症予測に関するROC曲線下面積(AUC)は0.755で、これはメディケア・メディケイド推奨条件に基づく0.634に比べ有意に大きく、PLCO試験で考案されたリスクスコア(PLCOM2012)の0.761と同程度であった。PLCOM2012は詳細な喫煙歴と必ずしも入手できない危険因子情報が必要であるのに対し、人工知能を導入したことにより、CXR-LCモデルは胸部X線写真と容易に入手できる臨床情報のみで、メディケア・メディケイド推奨条件よりも高い精度で胸部CT検査の適応症例を抽出できることが示された。 本研究の対象の大多数は白人で、また医療アクセスの容易さの異なる日本でその価値を推し量るのは難しいが、胸部X線写真に最低限の臨床情報と人工知能を用いることでCT撮影を推奨するモデルは、健診・検診ともに応用が検討される価値があると考えられる。
禁煙とその後の心血管疾患リスクの関連
禁煙とその後の心血管疾患リスクの関連
Association of Smoking Cessation With Subsequent Risk of Cardiovascular Disease JAMA. 2019 Aug 20;322(7):642-650. doi: 10.1001/jama.2019.10298. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【重要性】禁煙後の心血管疾患(CVD)の経時変化は明らかになっていない。リスク算出に喫煙経験者がわずか5年のみリスクがあることを考慮している。 【目的】禁煙後の年数とCVD発症の関連を明らかにすること。 【デザイン、設定および参加者】調査開始時にCVDがなく2015年12月まで追跡したフラミンガム心臓研究参加者から前向きに収集したデータの後ろ向き解析(第1世代コホート:1954~1958年の4回目の調査の参加者、第2世代コホート:1971~1975年の初回調査の参加者)。 【曝露】更新した自己申告の喫煙状況、禁煙後の年数、累積pack-years。 【主要評価項目】CVD(心筋梗塞、脳卒中、心不全、心血管死)の発症。両コホート(統合)を主要解析の対象とし、大量喫煙経験者(20pack-years以上)に限定した。 【結果】試験集団には8770例(第1世代コホート3805例、第2世代コホート4965例)を対象とし、平均年齢42.2歳、45%が男性だった。5308例が調査開始時に17.2pack-years(中央値)の喫煙経験者で、そのうち2371例が大量喫煙経験者[406例(17%)が元喫煙者、1965例が現喫煙者(83%)]であった。追跡期間中央値26.4年間で、初回CVDイベントが2435件発生した[第1世代コホート1612例(大量喫煙者665例)、第2世代コホート823例(同430例)]。統合コホートでは、現喫煙と比べると、5年以内に禁煙するとCVD発症率(1000人年当たりの発症率:現喫煙11.56(95%CI 10.30~12.98)、5年以内の禁煙6.94(5.61~8.59)、差-4.51(-5.90--2.77)およびCVD発症リスク(HR 0.61、95%CI 0.49~0.76)が有意に低下した。喫煙未経験者と比べると、統合コホートでは、禁煙10~15年後にCVDリスクの有意な上昇が止まった[1000人年当たりの発症率:喫煙未経験5.09(95%CI 4.52~5.74)、10~15年以内の禁煙6.31(4.93~8.09)、差1.27(-0.10-3.05)、HR 1.25(95%CI 0.98~1.60)]。 【結論および意義】大量喫煙者が禁煙すると、現喫煙者より5年以内のCVDリスクが有意に低下した。しかし、喫煙未経験者と比べた元喫煙者のCVDリスクは、禁煙後5年を超えると有意に高くなった。 第一人者の医師による解説 禁煙はすべての人に健康改善をもたらす 日常診療で禁煙を勧め希望者への禁煙治療提供が重要 中村 正和 地域医療振興協会 ヘルスプロモーション研究センター センター長 MMJ. October 2020; 16 (5):135 喫煙の健康影響は、循環器疾患にとどまらず、がん、呼吸器疾患、糖尿病など多岐にわたる。禁煙はこれらのリスクを改善するが、禁煙後の経時的なリスク低下については研究間で結果が異なる。例えば虚血性心疾患のリスクは禁煙10~15年で非喫煙者と同じレベルまで低下するという報告と、禁煙10~20年経過しても非喫煙者より10~20%高いという報告がある(1)。結果が異なる理由として、ベースライン喫煙量の把握が不十分、追跡後の喫煙状況の変化を把握せずにベースライン情報だけで解析しているなど、方法論上の問題が指摘されている。喫煙以外の危険因子の変化についても同様の問題がある場合、交絡要因の調整が不十分となり、結果に影響を与える可能性がある。  本研究では、フラミンガム心臓研究(FHS)の第1世代(original)、第2世代(offspring)コホートの2015年までの追跡データを後ろ向きに解析し、禁煙による循環器疾患リスクの低下を厳密に評価している。FHSは、上述した問題をクリアする質の高い追跡研究であり、循環器疾患発症の把握についても精度が高い。対象者は8,770人、追跡期間の中央値は26.4年に及ぶ。アウトカムの循環器疾患(心筋梗塞、脳卒中、心不全、心血管死)のリスクは、禁煙すると、喫煙を続けた場合に比べ5年以内に約40%低下し、禁煙による顕著なリスク改善がみられた。しかし、非喫煙者に比べ、禁煙後少なくとも10年以内はリスクが40%ほど高い状態が続くことが明らかになった。  本研究により、禁煙しても非喫煙者と同程度のリスクとなるには時間がかかることが確認された。リスク改善のスピードは喫煙本数や年数、禁煙の時期によって異なる。本研究の解析はヘビースモーカー(20パック年以上)に限定しており、その影響も考えられる。  しかし、本研究結果の中で一番重要な点は、喫煙を継続した場合に比べ、禁煙によってリスクが大きく低下することである。循環器疾患を有する場合でも同様の効果が確認されている(1)。糖尿病患者では禁煙によってHbA1cが一時的に上昇するものの、全死亡や循環器疾患のリスクは禁煙とともに確実に低下することが89のコホート研究のメタ解析で明らかになっている(2)。禁煙は性、年齢、疾患の有無を問わず、すべての人に健康改善をもたらす(3)。日常診療の場ですべての喫煙者に禁煙を勧め、禁煙希望者に禁煙治療を提供することが重要である。 1. IARC (2007). IARC Handbooks of Cancer Prevention, Tobacco Control. Volume 11: Reversal of Risk aer Quitting Smoking (p227-268). 2. Pan A, et al. Circulation. 2015;132(19):1795-1804. 3. U.S. Department of Health and Human Services. The Health Benefits of Smoking Cessation: A Report of the Surgeon General. 1990.
高齢者のdysanapsisと慢性閉塞性呼吸器疾患の関連
高齢者のdysanapsisと慢性閉塞性呼吸器疾患の関連
Association of Dysanapsis With Chronic Obstructive Pulmonary Disease Among Older Adults JAMA . 2020 Jun 9;323(22):2268-2280. doi: 10.1001/jama.2020.6918. 原文をBibgraph(ビブグラフ)で読む 上記論文の日本語要約 【重要性】喫煙が慢性閉塞性呼吸器疾患(COPD)の大きな危険因子であるが、COPDのリスクの多くはいまだに説明できていない。 【目的】CT画像で評価したdysanapsis(気道内径と肺の大きさが不釣り合いな状態)が、高齢者のCOPD発症およびCOPDの肺機能低下と関連があるかを明らかにすること。 【デザイン、設定および参加者】2531例を検討したMulti-Ethnic Study of Atherosclerosis(MESA)Lung Study(米6都市、2010-2018年)と1272例を検討したCanadian Cohort of Obstructive Lung Disease(CanCOLD、カナダ9都市、2010-2018年)の地域住民標本2件の後向きコホート研究およびCOPDの症例対照研究Subpopulations and Intermediate Outcome Measures in COPD研究(SPIROMICS、米12都市、2011-2016年)。 【曝露】肺気量の立方根で分割した標準的な解剖学的部位19箇所で測定した気道内径の幾何平均として、CT画像上でdysanapsisを定量化した(気道の肺に対する比率)。 【主要評価項目】主要評価項目は、気管支拡張薬吸入後の1秒率(FEV1:FVC)0.70未満と定義したCOPDとした。長期肺機能を副次評価項目とした。全解析を患者背景とCOPD危険因子(喫煙および受動喫煙、職業的および環境的汚染、喘息)。 【結果】MESA Lung標本(平均[SD]年齢69[9]歳、1334例[52.7%]が女性)では、参加者2531例中237例(9.4%)にCOPDがあり、気道の肺に対する比率の平均(SD)は0.033(0.004)、平均(SD)FEV1低下量は-33mL/y(31 mL/y)であった。COPDがないMESA Lungの参加者2294例のうち、98例(4.3%)が中央値6.2年時にCOPDを発症した。気道の肺に対する比率の最高四分位範囲の参加者と比べると、最低四分位範囲の参加者はCOPD発症率が有意に高かった(1000人年当たり9.8 vs 1.2例、率比[RR]8.121、95%CI 3.81-17.27、1000人年当たりの率差8.6例、95%CI 7.1-9.2、P<0.001)が、FEV1低下量に有意差はなかった(-31 vs. -33mL/y、差2mL/y、95%CI -2-5、P=0.30)。CanCOLD参加者(平均[SD]年齢67[10]歳、564例[44.3%]が女性)、752例中113例(15.0%)が中央値3.1年時にCOPDを発症し、平均(SD)FEV1低下量は-36mL/y(75 mL/y)であった。気道の肺に対する比率最低四分位範囲の参加者のCOPD発症率は、最低四分位範囲の参加者よりも有意に高かった(1000人年当たり80.6 vs. 24.2例、RR 3.33、95%CI 1.89-5.85、1000人年当たりの率差 56.4例、95%CI 38.0-66.8、P<0.001)が、FEV1低下量に有意差はなかった(-34 vs. -36mL/y、差 1 mL/y、95%CI -15-16、P=0.97)。COPDがあり、中央値2.1年追跡したSPIROMICS参加者1206例(平均[SD]年齢65[8]歳、542例[44.9%]が女性)のうち気道の肺に対する比率が最低四分位範囲の参加者は平均FEV1低下量が-37 mL/y(15mL/y)で、MESA Lung参加者の低下量を有意差がなかった(P=0.98)が、最高四分位範囲の参加者ではMESA Lung参加者よりも有意に速く低下した(-55mL/y[16 mL/y]、差-17mL/y、95%CI -32--3、P=0.004)。 【結論および意義】高齢者で、dysanapsisにCOPDと有意な関連があり、気道内径が肺の大きさよりも狭いとCOPDリスクが高くなった。DysanapsisはCOPDの危険因子であると思われる。 第一人者の医師による解説 気道の発育障害は 喫煙とは独立したCOPD発症要因 永井 厚志 新百合ヶ丘総合病院呼吸器疾患研究所所長 MMJ. December 2020;16(6):162 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の発症要因としては喫煙が主因とみなされているが、非喫煙者でもCOPDの病態となる高齢者が少なくなく、今日なおCOPD発症リスクの多くは未解決である。本研究では、2つの前向きコホート研究(MESA、CanCOPD)および症例対照研究(SPIROMICS)の参加者を対象に、CT画像(19画像/肺)により計測された気道径と肺胞容積の比率を算出することにより、肺胞に対する気道発育の不均衡(dysanapsis)を評価し、COPD病態の発症との関連性について後ろ向きの検討が行われた。なお、これらの検討では喫煙や環境汚染への曝露、喘息など既知のCOPD発症要因について補正がなされた。結果は、肺胞に比べ気道径の発育が低値を示す群では、COPD(気管支拡張薬吸入後の1秒率70%未満と定義)の発症頻度がいずれのコホート研究でも高値を示した。呼吸機能(FEV1)の経年的低下に関して、それぞれの研究観察期間内では気道肺胞容積の不均衡とは関連性がみられなかった。以上の結果から、高齢者においては、肺胞に比べ気道の発育が低下を示すdysanapsisはCOPDの重要な危険因子であることが示唆される、と結論づけられている。また、重喫煙者でありながらCOPDとしての気流閉塞がみられない一因として、気道の発育がより高度である可能性にも触れている。  従来から、成人期の気流閉塞には幼小児期における肺の発育過程で生じた気道と肺の発達の不均衡が関与しており、20~30歳代に成熟する呼気流量が健常者に比べ低値にとどまることで、その後、加齢とともに低下する高齢者においてCOPD病態に至る可能性が指摘されていた(1),(2)。事実、これまでの研究では、中等度以上の気流閉塞を示すCOPD患者の約半数に肺の発育障害がみられると報告されている(3)。本研究では、COPD患者の30%近くが非喫煙者であることへの疑問に対して肺の発育障害が関与している可能性を示している。しかしながら、対象者は肺の発育期ではない成人であり、CTでの気道計測がCOPD病態の主病変である末梢気道ではなく比較的中枢気道であること、COPDは多因子により形成されるが本研究では質の異なった3研究が統合解析されていることなど、多くの指摘されるべき点がみられる。本研究に限界はあるにせよ、肺の発育と高齢に至り発症するCOPDに密接な関連があるという指摘は注目すべきであり、今後の課題として気道と肺の不均衡な発育(dysanaptic lung growth)の詳細な原因を解明することが求められる。 1. Stern DA, et al. Lancet. 2007;370(9589):758-764. 2. Svanes C, et al. Thorax. 2010;65(1):14-20. 3. Lange P, et al. N Engl J Med. 2015;373(2):111-122.
仮想現実~BIBGRAPH SEARCH(2022年10月19日号)
仮想現実~BIBGRAPH SEARCH(2022年10月19日号)
近年、さまざまな医療分野においても仮想現実(virtual reality:VR)を用いた介入が注目されており、エビデンスも増加している。そのような中、2022年10月10日には大塚製薬が統合失調症向けVR支援プログラムを提供することを発表した。今回紹介する論文では、統合失調症、緩和ケア、慢性腰痛、妊婦のストレスに対するVR介入効果や肥満や喫煙、アルコールなどに対するVRのシステマティックレビューの結果をご紹介します。(エクスメディオ 鷹野 敦夫) 『BIBGRAPH SEARCH』では、エクスメディオが提供する文献検索サービス「Bibgraph」より、注目キーワードで検索された最新論文をまとめてご紹介しています。 統合失調症患者にVRを用いたリハビリテーション介入は受け入れられるのか Manghisi VM, et al. Games Health J. 2022 Sep 8.[Online ahead of print] ≫Bibgraphを読む 終末期の緩和ケアに対するVRの可能性 Guenther M, et al. BMC Palliat Care. 2022; 21: 169. ≫Bibgraphを読む VRによるスーパーヒーローの具現化で慢性腰痛患者のボディイメージが改善? Harvie DS, et al. Disabil Rehabil Assist Technol. 2022 Oct 18. [Online ahead of print] ≫Bibgraphを読む ストレス軽減にVRでの緑地環境露出が有効~妊婦を対象とした研究 Sun Y, et al. Environ Res. 2022 Oct 5. [Online ahead of print] ≫Bibgraphを読む 喫煙、栄養、アルコール、身体活動、肥満に対するVR介入の有効性~システマティックレビュー Tatnell P, et al. Int J Environ Res Public Health. 2022; 19: 10821. ≫Bibgraphを読む 参考:大塚製薬とジョリーグッド、統合失調症向けVR支援プログラム「FACEDUO(フェイスデュオ)」を提供開始 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら
気流閉塞のない喫煙曝露者のうち 長期経過でCOPDに進展は約3割
気流閉塞のない喫煙曝露者のうち 長期経過でCOPDに進展は約3割
Longitudinal Follow-Up of Participants With Tobacco Exposure and Preserved Spirometry JAMA. 2023 Aug 1;330(5):442-453. doi: 10.1001/jama.2023.11676. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】タバコを吸った人は、蒸発気流閉塞なしに呼吸症状を経験する可能性があります。これらの個人は通常、慢性閉塞性肺疾患(COPD)試験から除外されており、証拠に基づいた治療法を欠いています。 【目的】タバコ曝露と保存された肺活量測定(TEPS)と症状(症状TEPS)のある人の自然史を定義する。 【デザイン、設定、および参加者】Spiromics IIは、Spiromics Iの延長であり、40〜80歳の人の多施設研究であり、COPDの有無にかかわらずタバコ曝露や空気流閉塞なしのコントロールを除いてタバコ(20パック年以上)を吸っています。参加者は、2010年11月10日から2015年7月31日までSpiRomics IおよびIIに登録され、2021年7月31日までフォローアップされました。 【曝露】スピロミクスIの参加者は、スピロメトリ、6分間の歩行距離テスト、呼吸器症状の評価、および年間3〜4年間の訪問時に胸部のコンピューター断層撮影を受けました。Spiromics IIの参加者は、Spiromics Iに登録してから5〜7年後に1人の追加対面訪問を受けました。呼吸器症状はCOPD評価テストで評価されました(範囲、0〜40;スコアが高いほど、より重度の症状を示します)。症候性TEPSの参加者は、最初の2秒[FEV1]に対する強制呼気量の強制呼気量のブレンチラチレーター比> 0.70> 0.70)および10以上のCOPD評価テストスコアを有していました。無症候性TEPを有する参加者は、10未満の正常なスピロメトリとCOPD評価テストスコアを有していました。 【主な結果と尺度】主な結果は、症候性TEPと無症候性TEPの参加者における肺機能の減少(FEV1)の加速の評価でした。二次的な結果には、肺活量測定、呼吸器症状、呼吸器増悪の速度、およびコンピューター断層撮影の気道壁肥厚または肺気腫の進行によって定義されたCOPDの開発が含まれていました。 【結果】1397人の研究参加者のうち、226人が症候性TEP(平均年齢、60.1 [SD、9.8]年、134人が女性[59%])、269人は無症候性TEP(平均年齢、63.1 [SD、9.1]; 134人がいた。女性[50%])。フォローアップの中央値5。76年で、FEV1の減少は、症候性TEPSの参加者で-38.8 mL/Yで、無症候性TEPSを持つ人の-38.8 mL/Yでした(グループ間差、-7.5 mL/Y [95%CI、-16.6〜1.6 mL/Y])。COPDの累積発生率は、症候性TEPSの参加者の33.0%であり、無症候性TEPSを持つ従業員の31.6%でした(ハザード比、1.05 [95%CI、0.76〜1.46])。症候性TEPSの参加者は、無症候性TEPS(それぞれ0.23対0.08の悪化を患っている人よりも有意に多くの呼吸器の悪化がありました。レート比、2.38 [95%CI、1.71〜3.31]、p <.001)。 【結論と関連性】症候性TEPを持つ参加者は、FEV1の減少率または無症候性TEPの発生率の増加率を加速していませんでしたが、症候性TEPの参加者は5。8年の中央値の追跡期間にわたって呼吸器の悪化を著しく経験しました。 第一人者の医師による解説 喫煙リスク集団中のCOPD発症 感受性関連・規定因子の探求が望まれる 中村 守男 国立病院機構神奈川病院 院長 MMJ.April 2024;20(1):13 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診断基準は、①長期喫煙などの曝露②気管支拡張薬吸入後スパイロメトリーで1秒率(1秒量[FEV1]/努力肺活量[FVC])0.70未満③気流閉塞を来す他疾患の除外、となっている(1)。この基準未満の「非 COPD例」でも呼吸器症状を有する群は存在し、COPDの臨床試験からの除外により、エビデンスに基づく治療が提示されていない。 本論文は、喫煙曝露ありも肺機能が維持されている(TEPS;tobacco exposure and preservedspirometry)人の自然経過を検討した前向きコホート研究、SPIROMICS I試験(2)の追跡期間を5~7年に延長した同 II試験の報告である。登録対象は40~80歳の20箱・年超の現・元喫煙者で、気管支拡張薬吸入後の1秒率0.70超、COPD AssessmentTestスコア 10以上を症候性 TEPS群(226人)、同スコア10未満を無症候性 TEPS群(269人 )とした。追跡期間中央値5.76年において、症候性TEPS群では無症候性 TEPS群と比較し、FEV1低下速度(-31.3 対 -38.8mL/年)やCOPD発症率(33.0 対 31.6%)に有意差なく、呼吸器症状増悪(0.23 対 0.08回 /人・年;P<0.001)は頻回であった。また登録前に症候性 TEPS群の39%に気管支拡張薬、23%に吸入ステロイド薬が処方され、「エビデンスのない」薬物治療を受けていた。実際、最近の無作為化試験において、症候性 TEPS患者の呼吸器症状は、長時間作用性吸入β2刺激薬/長時間作用型抗コリン吸入薬でも軽快せずとの報告がある(3)。 喫煙はそれ自体がCOPDリスクの最重要因子であるが、病態発症への感受性に遺伝的素因、喫煙の量・内容・期間、栄養状態、運動習慣などの個人差が影響するであろう。禁煙指導のみでなく、症候性 TEPS群の病状増悪の際はCOPD以外の病因の可能性も鑑みた診療を要する。かつてGlobal Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)Reportで提唱された“at risk for COPD(stage 0)”のカテゴリーは、すべてがCOPDに進行せず除外された。昨今“pre-disease”、すなわち疾患発症を意味せず、高リスク集団を特定して綿密な経過観察とリスク管理を行い、発症防止を目的とする概念が提唱されている。COPDではGOLD 2023 Report(4)においてPre-COPDという分類で再び提示された。喫煙というリスク集団の中でCOPD発症の感受性規定因子の探求が、発症の予防から早期診断そして迅速適切な治療介入のために望まれる。 1. 日本呼吸器学会 . COPD 診断と治療のためのガイドライン 2022[第 6 版] 2. Woodru PG, et al. N Engl J Med. 2016;374(19):1811-1821. 3. Han MK, et al. N Engl J Med. 2022;387(13):1173-1184. 4. GOLD ウエブサイト(https://goldcopd.org/2023-gold-report-2/)2024 年1 月 9 日確認