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ブドウ球菌菌血症患者に対するアルゴリズムに基づく治療と通常治療の臨床的成功および 重篤な有害事象に与える影響の比較:無作為化臨床試験
ブドウ球菌菌血症患者に対するアルゴリズムに基づく治療と通常治療の臨床的成功および 重篤な有害事象に与える影響の比較:無作為化臨床試験
Effect of Algorithm-Based Therapy vs Usual Care on Clinical Success and Serious Adverse Events in Patients with Staphylococcal Bacteremia: A Randomized Clinical Trial JAMA 2018 Sep 25;320(12):1249-1258. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】ブドウ球菌性菌血症に対する適切な抗生物質の投与期間は不明である。 【目的】ブドウ球菌性菌血症の治療期間を定めたアルゴリズムと標準治療の比較により、重篤な有害事象を増加させずに非劣性の有効性が得られるかを検証する。 デザイン・設定・参加者】米国(n=15)とスペイン(n=1)の学術医療センター16施設で2011年4月から2017年3月までブドウ球菌性菌血症の成人に関わる無作為抽出試験を実施した。患者は、黄色ブドウ球菌の場合は治療終了後42日間、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌菌血症の場合は28日間フォローアップされた。対象は18歳以上で、1回以上の血液培養で黄色ブドウ球菌またはコアグラーゼ陰性ブドウ球菌が陽性となった患者である。無作為化時点で既知または疑いのある複雑な感染症を有する患者は除外した。 【介入】患者はアルゴリズムに基づく治療(n = 255)または通常の診療(n = 254)に無作為に割り付けられた。アルゴリズム群では、診断評価、抗生物質の選択、治療期間が事前に設定されたのに対し、通常診療群では、抗生物質、治療期間、その他の臨床的ケアの側面について、臨床医が自由に選択できた。 【主要評および測定法】主要アウトカムは、(1)盲検判定委員会が決定し15%以内のマージンで非劣性を検証した臨床成功、(2)意図的治療集団の重篤有害事象率、優位性を検証したもの。 【結果】無作為化された509例(平均年齢56.6歳[SD、16.8]、女性226例[44.4%])中、480例(94.3%)が試験を完了した。臨床的成功は、アルゴリズムに基づく治療に割り付けられた255人中209人と、通常の診療に割り付けられた254人中207人で記録された(82.0% vs 81.5%、差、0.5%[1サイド 97.5% CI, -6.2% ~ ∞]])。重篤な有害事象は、アルゴリズムに基づく治療では32.5%、通常の診療では28.3%で報告された(差、4.2%[95%CI、-3.8%~12.2%])。単純または合併症のない菌血症のプロトコールごとの患者において、平均治療期間はアルゴリズムベースの治療で4.4日、通常の診療で6.2日(差、-1.8日[95%CI、-3.1~-0.6])。 結論および関連性]ブドウ球菌菌血症患者では、検査および治療のガイドとしてアルゴリズムを使用すると通常のケアと比べて非劣性の臨床成功率となることが示された。重篤な有害事象の発生率に有意な差はなかったが、信頼区間が広いため解釈は限定的である。アルゴリズムの有用性を評価するために、さらなる研究が必要である。 【臨床試験登録】ClinicalTrials. gov Identifier:NCT01191840。 第一人者の医師による解説 臨床医の経験、勘、努力を補助する AI どのように応用していくか 舘田 一博 東邦大学医学部微生物・感染症学講座教授 MMJ.February 2019;15(1):7 近年、人工知能(artificial intelligence:AI)の応用 がさまざまな分野で検討されている。医療において も例外ではなく、特に画像診断スクリーニング、鑑 別診断の列挙、パニック状態の早期発見などへの応用が検討されている。本論文では、500例を超える実症例を対象にブドウ球菌菌血症患者へのアルゴリズム治療の有効性に関して検討している。黄色ブド ウ球菌による菌血症症例では、uncomplicatedと complicatedに分類し、それぞれ14(±2)日、28~ 42(±2)日での治療を実施し、通常治療群(主治医 の判断による症例ごとの対応)における治療成績と比較している。結果は前述されているように、 intention-to-treat(ITT)群における重篤な有害事象 (副反応)がアルゴリズム群で83/255(32.5%)、通常 治療群で72/254(28.3%)と有意な差は認められていない。死亡率はどうかというと、アルゴリズム群で 16/255(6.3%)、通常治療群で14/254(5.5%)であったと報告されている。これらの結果はブドウ球菌菌 血症、少なくとも黄色ブドウ球菌菌血症患者に対する治療アルゴリズム導入の“非劣性”が示された成績となっている。 本研究ではアルゴリズム導入において注意しなければいけないポイントも示されている。治療中に認められる臓器ごとの重篤な有害事象に関して、アルゴリズム群で腎・尿路系障害が12例(4.7%)、通常治療群では4例(1.6%)となっている。黄色ブドウ球菌の中でもメチシリン耐性黄色ブドウ球菌による菌血症は依然として頻度の高い耐性菌感染症であり、本症に対してはバンコマイシンあるいはダプトマイシンの治療が選択されることになっている。バンコマイシンが選択される場合には当然のことながら本剤の血中濃度測定が原則であり、患者の全身状態や合併症(特に腎機能障害など)に応じて投与量を調整する必要がでてくる。アルゴリズム治療においても、血中濃度測定による投与量の調整が求められるわけであるが、この結果の解釈とその後の対応は治療の成否を決める極めて重要な要因であることは よく知られている。この点に関連しているのかどうかは不明であるが、治療薬による有害事象の発現のための治療中止がアルゴリズム群で 4 例(1.6%)、 通常治療群で1例(0.4%)みられたと報告されている。もちろんこの差異にも有意差は認められていな い。 医療の分野におけるAIの導入は我々が目指さなければいけない方向性である。ただしAIに完全に 置き換わりにくいのも医学であろう。優秀な臨床医の経験と勘、さらには無駄とも思えるような努力が 1人の患者を救うことがあるというのも真実である。その助けとしてどのようにAIを導入していくのか、AIの応用の仕方に関する研究がさらに活発になってくるものと思われる。
エンドトキシン値が高い敗血症性ショック患者における標的化ポリミキシンB血液潅流の 28日死亡率に与える効果:EUPHRATES無作為化臨床試験
エンドトキシン値が高い敗血症性ショック患者における標的化ポリミキシンB血液潅流の 28日死亡率に与える効果:EUPHRATES無作為化臨床試験
Effect of Targeted Polymyxin B Hemoperfusion on 28-Day Mortality in Patients With Septic Shock and Elevated Endotoxin Level: The EUPHRATES Randomized Clinical Trial JAMA 2018 Oct 9;320(14):1455-1463. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】ポリミキシンBの血液灌流は敗血症の血中エンドトキシン濃度を低下させる.エンドトキシン活性は、迅速なアッセイで血中濃度を測定できる。敗血症性ショックでエンドトキシン活性が高い患者に対して、ポリミキシンBの血液灌流を行うことで臨床転帰が改善する可能性がある。 【目的】敗血症性ショックでエンドトキシン活性が高い患者において、従来の内科治療にポリミキシンB血液灌流を追加することで従来の治療単独と比較して生存率が改善するかどうかを検証することである。 【デザイン、設定および参加者】2010年9月~2016年6月に北米の55の三次病院で登録された敗血症性ショックでエンドトキシン活性測定値が0.60以上の成人重症患者450例を対象とした多施設共同無作為化臨床試験。最終フォローアップは2017年6月。 【介入】登録後24時間以内に完了した2回のポリミキシンB血液灌流治療(90~120分)+標準療法(n=224人)、または偽血液灌流+標準療法(n=226人)。 【主要評および測定法】主要評価項目は、無作為化された患者(全参加者)および多臓器不全スコア(MODS)が9以上の患者における28日後の死亡率とした。 【結果】適格登録患者450例(平均年齢59.8歳;女性177例[39.3%];平均APACHE IIスコア29.4[範囲,0~71,スコアが高ければ重症度が高い])のうち449例(99.8%)が試験に完走した。ポリミキシンBの血液灌流は,全参加者において28日後の死亡率に有意差を認めなかった(治療群223例中84例[37.7%] vs 偽薬群226例中78例[34.5%],リスク差[RD]3.2%,95% CI,-5.7%~12.7%).0.0%;相対リスク[RR],1.09;95%CI,0.85-1.39;P = 0.49) またはMODSが9以上の集団(治療群,146例中65例[44.5%] vs 偽薬,148例中65例[43.9%]; RD,0.6%;95% CI,-10.8% ~ 11.9%; RR,1.01;95% CI,0.78-1.31;P = 0.92 )においてであった。全体で264件の重篤な有害事象が報告された(治療群65.1% vs 偽薬群57.3%)。最も頻度の高い重篤な有害事象は、敗血症の悪化(治療群10.8% vs 偽薬群9.1%)および敗血症性ショックの悪化(治療群6.6% vs 偽薬群7.7%)でした。 【結論と関連性】敗血症性ショックおよび高エンドトキシン活性の患者では、ポリミキシンB血液浄化療法+通常の内科治療と偽治療+通常の内科治療を比較しても28日目の死亡率は低下しませんでした【試験登録】 ClinicalTrials. gov Identifier:NCT01046669. 第一人者の医師による解説 エンドトキシンのみ標的の治療に限界 CARS への対策必要 織田 成人 千葉大学大学院医学研究院救急集中治療医学教授 MMJ.February 2019;15(1):9 ポリミキシンB固定化ファイバーによる直接血液 潅流法(PMX-DHP)は、日本発の治療法であり、日 本では敗血症性ショック、特に消化管穿孔による敗 血症性ショックに対して広く用いられている。しか し、PMX-DHPの有効性に関する報告の多くは日本の観察研究によるものであり、明確なエビデンスに乏しかった。最近になり主に海外で無作為化対照 試験(RCT)が行われ、その効果が検証されてきた。 本論文は3報目のRCT結果である。 最初の RCT は 2009 年に報告された EUPHAS trial(1)である。イタリアの集中治療室(ICU)10施設が参加し、腹膜炎による重症敗血症/敗血症性ショックを対象にPMX群34人、対照群30人が登録された。その結果、28日死亡率が対照群の53%に比べPMX群で32%と有意に改善したことが報告された。しかし、最終的には統計学的な有意差はないことが判明した。 2つ目の RCT は、2015 年に報告された ABDOMIX study(2)である。フランスのICU 16施設 が参加し、腹膜炎による敗血症性ショックを対象に PMX群119人、対照群113人が登録された。その 結果、28日死亡率はPMX群で27.7%、対照群で 19.5%と有意差はなく、2次評価項目である臓器障害の改善でも有意差は認められなかった。 本論文で紹介しているEUPHRATES trialでは過 去最大の450人が登録された。これまでのRCTと異なり、腹膜炎のみでなく他の原因による敗血症性 ショックも対象としており、臓器障害スコアが9以 上の重症患者を対象とし、血中エンドトキシン活性 を米食品医薬品局(FDA)が認めたEAA法で測定し、 EAAが0.6以上の高値例のみを登録した。しかし PMXによる28日死亡率の改善は認められなかった。一方、本文中には記載されていないが、電子サプリメントではPMX群で有意な血圧上昇が認められており、循環動態改善に関しては一定の効果が認められている。 2016年に敗血症の国際定義が見直され、敗血症 は「感染に対する制御不十分な生体反応に起因する 臓器障害」と定義された(Sepsis-3)(3) 。従来、グラム 陰性菌の菌体成分であるエンドトキシンは敗血症の病態で重要な役割を演じていると考えられていたが、最近の研究によりエンドトキシン以外のさまざまな病原体関連分子パターン(PAMPs)や、体内で 産生されるダメージ関連分子パターン(DAMPs)が 自然免疫を活性化し、各種サイトカインの産生を介して臓器障害を発症することが明らかにされている(4) 。 これら3つのRCTの結果は、敗血症という複雑な病態に対して、数多あるPAMPsやDAMPsの中で エンドトキシンのみを標的にした治療の限界を示すものであり、以前行われた抗エンドトキシン抗体や、 エンドトキシン受容体アンタゴニスト(エリトラン) の試験が失敗したのも同じ理由と考えられる。 敗血症という複雑な病態を制御するには、自然免疫の活性化によって生じた高サイトカイン血症の制御や、同時に発生する代償性抗炎症反応症候群 (CARS)への対策が必要であり、これらの治療に関するエビデンスの確立が望まれる。 1. Cruz DN, et al. JAMA. 2009;301(23):2445-2452. 2. Payen DM, et al. Intensive Care Med. 2015;41(6):975-984. 3. Singer M, et al. JAMA. 2016;315(8):801-810. 4. Vincent JL, et al. Lancet. 2013;381(9868):774-775.
APPAC無作為化臨床試験における単純性(合併症のない)急性虫垂炎に対する抗菌化学療 法の5年追跡調査
APPAC無作為化臨床試験における単純性(合併症のない)急性虫垂炎に対する抗菌化学療 法の5年追跡調査
Five-Year Follow-up of Antibiotic Therapy for Uncomplicated Acute Appendicitis in the APPAC Randomized Clinical Trial JAMA 2018 Sep 25;320(12):1259-1265. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】短期的な結果は、合併症のない急性虫垂炎の治療において手術の代わりに抗生物質を使用することを支持しているが、長期的な結果は知られていない。 【目的】合併症のない急性虫垂炎の治療に抗生物質を使用した後の虫垂炎の後期再発率を明らかにする。 【デザイン、設定および参加者】虫垂切除術と抗生物質療法を比較した多施設共同無作為化臨床試験(Appendicitis Acuta(APPAC))における患者の5年間の観察追跡調査。コンピュータ断層撮影で合併症のない急性虫垂炎が確認された18~60歳の患者530人を,虫垂切除術を受ける群(n=273)と抗生物質療法を受ける群(n=257)に無作為に割り付けた。最初の試験は2009年11月から2012年6月までフィンランドで実施され、最終フォローアップは2017年9月6日だった。今回の解析では、抗生物質のみで治療した患者群の5年間の転帰を評価することに焦点を当てた。 【介入】開腹盲腸手術 vs テルタペネムを3日間静注した後、レボフロキサシンとメトロニダゾールを7日間経口投与する抗生物質療法。本解析では、5年後の追跡調査において、抗生物質治療後の晩期(1年後)の虫垂炎の再発、合併症、入院期間、病欠などの副次的評価項目を事前に規定した。 【結果】本試験に登録された530名の患者(女性201名、男性329名)のうち、273名(年齢中央値、35歳[IQR、27-46])が盲腸手術を受ける群に、257名(年齢中央値、33歳[IQR、26-47])が抗生物質治療を受ける群に無作為に割り付けられた。最初に抗生物質を投与されたものの、最初の1年以内に盲腸手術を受けた70名(27.3%[95%CI、22.0%-33.2%]、70/256名)に加え、さらに30名の抗生物質治療を受けた患者(16.1%[95%CI、11.2%-22.2%]、30/186名)が1年から5年の間に盲腸手術を受けました。虫垂炎の再発の累積発生率は、2年目に34.0%(95%CI、28.2%~40.1%、87/256人)、3年目に35.2%(95%CI、29.3%~41.4%、90/256人)、4年目に37.1%(95%CI、31.2%~43.3%、95/256人)、5年目に39.1%(95%CI、33.1%~45.3%、100/256人)であった。抗生物質投与群で、その後、再発した虫垂炎のために虫垂切除術を受けた85人のうち、76人は合併症のない虫垂炎、2人は合併症のある虫垂炎、7人は虫垂炎ではなかった。5年後の全体の合併症率(手術部位感染、切開ヘルニア、腹痛、閉塞症状)は、盲腸手術群が24.4%(95%CI、19.2%~30.3%)(n=60/246)、抗生物質投与群が6.5%(95%CI、3.8%~10.4%)(n=16/246)であり(P<0.001)、術後に17.9%ポイント(95%CI、11.7~24.1)高くなる計算となった。入院期間は両群間で差がなかったが、病欠には有意な差があった(盲腸手術群が11日多い)。 【結論と関連性】合併症のない急性虫垂炎に抗生物質で初期治療を受けた患者のうち、5年以内の晩期再発の可能性は39.1%であった。この長期追跡調査は、合併症のない急性虫垂炎に対する手術の代替として、抗生物質治療のみを行う可能性を支持するものである。 【臨床試験登録】ClinicalTrials. gov Identifier:NCT01022567。 第一人者の医師による解説 虫垂切除と抗菌化学療法 患者が選択できるよう情報提供が必要 佐々木 淳一 慶應義塾大学医学部救急医学教授 MMJ.February 2019;15(1):11 急性虫垂炎の標準的治療は、過去1世紀以上にわたり、手術(虫垂切除術)であるという概念が確立されていた。抗菌薬の開発以降、急性虫垂炎に対する抗菌化学療法の有効性を示す無作為化対照試験 (RCT)やメタ解析などの結果が発表されたが、いずれも追跡が短期間であった。このため、臨床現場 では穿孔や腹腔内膿瘍形成などの合併症を避けるため、依然として虫垂切除術が標準的治療として君臨 している。ここで、合併症のない急性虫垂炎において抗菌化学療法が手術の代替治療になりうることを長期間の追跡結果に基づき示そうとした研究が、今回報告されたAPPAC(The Appendicitis Acuta)である。 APPACでは、虫垂切除術と抗菌化学療法に割り付けた合併症のない急性虫垂炎患者を10年後まで 追跡する計画を立て、抗菌化学療法群257人と手術 (虫垂切除術)群273人がフィンランド国内6病院から登録された。治療後の評価は外科医が担当し、穿孔、腹膜炎などにより手術が必要になった場合には 抗菌薬化学療法群にも手術を実施することとされ た。主要エンドポイントは、抗菌化学療法群が手術を要さない退院および1年時点の非再発、手術群は 虫垂切除術の成功である。1年間の追跡結果(1)によると、抗菌化学療法成功率は72.7%(186/256)であった。しかし、1年時点でのintention-to-treat(ITT) 解析による両群間の治療効果差は- 27.0%で、虫垂切除術に対する抗菌化学療法の非劣性を示すことはできなかった(非劣性マージン24%)。 本論文ではAPPAC の5年間の追跡結果が報告された。抗菌化学療法群、手術群ともに246人で、抗菌化学療法群の急性虫垂炎の累積再発率は、1年時 点で27.3%、2年時点で34.0%、3年時点で35.2%、 4年時点で37.1%、5年時点で39.1%であった。一方、 5年時点の全合併症(創感染、瘢痕ヘルニア、腹痛、 狭窄症状など)発生率は手術群24.4%、抗菌化学療 法群6.5%、抗菌化学療法群で有意に低かった。これらの結果より、抗菌化学療法は手術の代替治療法として有用なことが示唆されたと結論付けられている。しかし、割り付け後の治療がプロトコールではなく個々の外科医の裁量に委ねられており、必要以上に虫垂切除が行われた可能性があること、手術が現在主流となっている腹腔鏡下ではなく開腹であったこと、抗菌化学療法が最適な処方内容であったか不明であること、抗菌薬に起因した耐性菌問題について検討されていないことなど、いくつかの問題点が指摘されている。単純性(合併症を伴わない)急性虫垂炎の標準的治療は虫垂切除から抗菌化学療法に変わったというには、10年時点での結果も含め、さらなる検討が必要である。しかし、患者に抗菌化学療法と手術に関する情報を提供し、意思決定できるようにすべきであろう。 1. Salminen P, et al. JAMA. 2015;313(23):2340-2348.
尿中Na排泄、血圧、心血管疾患、死亡:地域単位の前向き疫学的コホート研究
尿中Na排泄、血圧、心血管疾患、死亡:地域単位の前向き疫学的コホート研究
Urinary sodium excretion, blood pressure, cardiovascular disease, and mortality: a community-level prospective epidemiological cohort study LANCET 2018 Aug 11;392(10146):496-506. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】WHOは、心血管疾患の予防対策として、国民のナトリウム摂取量を2g/日未満とすることを推奨しているが、この目標はどの国でも達成されていない。この勧告は主に血圧(BP)の短期試験による個人レベルのデータに基づいており、無作為化試験や観察研究による低ナトリウム摂取と心血管イベントの減少との関連データはない。我々は、地域レベルの平均ナトリウムおよびカリウム摂取量と心血管疾患および死亡率との関連を調査した。 【方法】Prospective Urban Rural Epidemiology研究は、21カ国で進行中である。ここでは、18カ国で行われた臨床転帰のデータを用いた解析を報告する。対象者は、一般住民から抽出された35~70歳の心血管疾患のない成人である。摂取量の代用として、朝の空腹時尿を用いて24時間のナトリウムとカリウムの排泄量を推定した。369地域(すべて50人以上)でナトリウムとカリウムの摂取量と血圧との地域レベルの関連を,255地域(すべて100人以上)で心血管疾患と死亡率との関連を評価し,個人レベルのデータを用いて既知の交絡因子について調整した。 【所見】369地域の95 767人が血圧について,255地域の82 544人が心血管予後の評価を行い,中央値は8~1年間フォローアップされた。中国では103地域中82地域(80%)が平均ナトリウム摂取量が5g/日を超えていたが,その他の国では266地域中224地域(84%)が平均3~5g/日であった。全体として、平均収縮期血圧は平均ナトリウム摂取量が1g増加するごとに2~86mmHg上昇したが、正の関連はナトリウム摂取量の最高三分位の地域でのみ見られた(異質性についてはp<0-0001)。平均ナトリウム摂取量と主要な心血管イベントとの関連は、ナトリウム摂取量の最低三分位で有意な逆相関が見られ(最低三分位<4-43 g/日、平均摂取量4-04 g/日、範囲3-42-4-43;1000年当たりの変化-1-00イベント、95%CI -2-00~-0-01, p=0497)、中間三分位では関連がなく(中三分位 4-43-5-08 g/日、平均取得4-70 g/日, 4-44-5.05;1000年当たりの変化0-24イベント、-2-12〜2-61、p=0-8391)、最高三分位では正の関連があるが有意ではない(最高三分位>5-08g/日、平均摂取量5-75g/日、>5-08〜7-49;1000年当たりの変化0-37イベント、-0-03〜0-78、p=0-0712)。中国(平均ナトリウム摂取量5-58 g/日,1000年当たり0-42イベント,95%CI 0-16~0-67,p=0-0020) では,他の国(4-49 g/日,-0-26イベント,-0-46~-0-06,p=0-0124;異質性についてはp<0-0001) に比べ脳卒中に強い関連が見られた.すべての主要な心血管アウトカムは,すべての国でカリウム摂取量の増加とともに減少した。 【解釈】ナトリウム摂取は,平均摂取量が5 g/日を超える地域でのみ心血管疾患および脳卒中と関連していた。これらの地域や国ではナトリウムを減らすが、他の地域では減らさないという戦略が適切かもしれない。 【FUNDING】人口健康研究所、カナダ保健研究所、カナダ保健省患者指向研究戦略、オンタリオ保健長期ケア省、オンタリオ心臓・脳卒中財団、欧州研究評議会。 第一人者の医師による解説 厳格な減塩と心血管疾患の関連 ランダム化試験での検証が必要 桑島 巖 NPO 法人臨床研究適正評価教育機構理事長 MMJ.February 2019;15(1):13 本論文は21カ国を対象として8.1年間追跡した大 規模疫学コホート研究 PURE(Prospective Urban Rural Epidemiology)研究の結果報告である。Na摂取量が1日摂取量5g(食塩12.7g)を超える地域(おもに中国)では、食塩摂取量増加につれて心血管イベントが上昇するが、摂取量平均4.04g(食塩10.3g)以下の低摂取群でもリスクが上昇する、いわゆる“Jカーブ現象”がみられたというのが趣旨である。厚生労働省や健康日本21が目標とする食塩摂取量1日 8g未満ではむしろリスクが上昇するということになる。本論文の特徴は、中国の地域社会でのデータが約40%を占め、そのうち80%の地域でNa摂取量 が1日5g(食塩12.7g)以上であり、平均摂取量が他の地域よりも際だって高い点である(Na 5.58g 対 4.45g;食塩14.2g 対 11.3g)。すなわち食塩摂取量とリスクの関係には地域性(community-based)が関連していることを示している。地域差が大きいことは人種による食塩感受性の違いも関連している可能性もあり、このcommunity-basedの結果を日本人 一般社会に適用することには慎重でなければならない。食塩摂取量と心血管イベントのJカーブ現象の報告は2011年のEPOCH研究(1)やO’Donnellらの観 察研究(2)でも報告されており、疫学的には真実なのかもしれない。しかし重要なことは、このような疫学観察研究の結果は、リスクと食塩摂取の因果関係を示すものではなく、減塩によるリスク低減効果の有無は高血圧や心血管疾患既往の有無といった個人的背景でも異なることを理解しておく必要があろう。食塩の低摂取群で心血管合併症が多い理由の1 つとして減塩によるレニン-アンジオテンシン系の亢進が心血管イベントを増やす可能性は否定できない。さらに低Na血症自体が慢性疾患や栄養障害を反映した結果である可能性もある。ただしK摂取と心血管イベントは逆相関するとの結果は、世界のガイドラインと一致する。 食塩摂取量と血圧あるいは心血管イベントとの関連の研究間で異なった結果がでる要因の1つは、尿中Na排泄量の測定方法である。24時間蓄尿から測定するのが標準であるが、PURE研究では早朝スポット尿を用いて1日Na排泄量を推定しているが、 信頼性の限界がある。 2013年に発表されたランダム化試験のメタアナリシス結果(3)では人種、高血圧の有無にかかわらず 食塩摂取量と血圧の関連は直線的であり、1日6g未満の減塩で収縮期血圧5.8mmHgが低下すると報告しており、やはり世界基準と矛盾しない結果を示している。しかしこの論文は、心血管イベントとの関係を示したメタアナリシスではない。日本人は食塩 摂取が過度な人種であり、減塩が心血管イベントや死亡を増やすか否かに関してはより高いエビデンスによる検証に期待したい。 1. Stolarz-Skrzypek K, et al., JAMA. 2011;305(17):1777-1785. 2. O'Donnell MJ, et al., JAMA. 2011;306(20):2229-2238. 3. He FJ, et al., BMJ. 2013;346:f1325.
心血管イベントの予測を目的としたベースラインおよびスタチン療法中のリポ蛋白(a) 値:スタチンに関する心血管アウトカム試験の患者個別データを用いたメタアナリシス
心血管イベントの予測を目的としたベースラインおよびスタチン療法中のリポ蛋白(a) 値:スタチンに関する心血管アウトカム試験の患者個別データを用いたメタアナリシス
Baseline and on-statin treatment lipoprotein(a) levels for prediction of cardiovascular events: individual patientdata meta-analysis of statin outcome trials LANCET 2018 Oct 13;392(10155):1311-1320. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】リポ蛋白(a)の上昇は、一般人口調査において、心血管疾患の遺伝的危険因子である。 【方法】7つの無作為化プラセボ対照スタチンアウトカム試験から得られた患者レベルのデータを照合し,調和させて,致死的または非致死的冠動脈心疾患,脳卒中,血行再建術と定義した心血管イベントのハザード比(HR)を算出した。心血管イベントのHRは、あらかじめ定義されたリポ蛋白(a)群(15~<30mg/dL、30~<50mg/dL、≧50mg/dL、<15mg/dL)ごとに各試験内で推定され、多変量ランダム効果メタ解析により推定値がプールされた。 【結果】解析には、リポ蛋白(a)測定を繰り返し行った患者29069人(平均年齢62歳[SD 8]、女性8064人[28%]、リスク95 576人年中に5751件のイベント)のデータが含まれた。)スタチン治療の開始により、LDLコレステロールは減少したが(平均変化率 -39% [95% CI -43 to -35])、リポ蛋白(a)には有意な変化がなかった。ベースラインおよびスタチン治療中のリポ蛋白(a)と心血管疾患リスクとの関連はほぼ線形であり、ベースラインのリポ蛋白(a)は30 mg/dL以上、スタチン治療中のリポ蛋白(a)は50 mg/dL以上でリスクが増加した。ベースラインのリポ蛋白(a)について、年齢と性別で調整したHR(対15mg/dL)は、15mg/dL以上30mg/dL未満で1-04(95%CI 0-91-1-18)、30mg/dL以上50mg/dL未満で1-11(1-00-1-22)、50mg/dL以上では1-31(1-08-1-58)であった。オンスタチンリポ蛋白(a)のHRは0-94(0-81-1-10)、1-06(0-94-1-21)、1-43(1-15-1-76)であった。心血管疾患の既往、糖尿病、喫煙、収縮期血圧、LDLコレステロール、HDLコレステロールでさらに調整しても、HRはほぼ同じであった。スタチン投与によるリポ蛋白(a)と心血管疾患リスクとの関連は、プラセボ投与によるリポ蛋白(a)よりも強く(相互作用p=0-010)、若年でより顕著であり(相互作用p=0-008)、他の患者レベルまたは試験レベルの特性による効果修飾はなかった。 【解釈】このスタチン投与患者の個人-患者データのメタ解析では、ベースラインおよびスタチン投与によるリポ蛋白(a)の上昇により、独立に、心血管疾患リスクとほぼ直線関係が示される。本研究は、心血管疾患アウトカム試験において、リポ蛋白(a)低下仮説を検証する根拠を提供する。 第一人者の医師による解説 リポ蛋白(a)高値の残余リスク示し 低下療法の妥当性を裏付け 田中 正巳(特任講師)/伊藤 裕(教授) 慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科 MMJ.February 2019;15(1):15 スタチンによるLDLコレステロール低下療法が 心血管疾患を抑制することには今や議論の余地はない。しかしその抑制率は50%にも満たず、多くの残余リスクの存在が想定されている。本論文は、高リポ蛋白(a)血症がスタチン療法中の残余リスクであることを明らかにするとともに、リポ蛋白(a)低下療法の妥当性に言及している。 高リポ蛋白(a)血症が心血管疾患の危険因子であることは以前より知られていたが、この知見は主に 1次予防におけるエビデンスに基づいており、2次予防やスタチン療法中の患者でも危険因子であるのかは不明であった。本研究は、このような患者でもリポ蛋白(a)値が高まると直線的に心血管リスクが 高まることを明確に示した。さらに、スタチンはリ ポ蛋白(a)値を変化させず、プラセボよりもスタチン療法中の患者においてリポ蛋白(a)はより重要な危険因子である可能性を示した。本研究の最大の強みは、豊富な患者数(n = 29,069)、イベント数(n = 5,751)に基づく統計学的パワーである。従来の研究とは異なり、リポ蛋白(a)> 50 mg/dLの患者を多く含んでいる。したがって、スタチン療法中の高リポ蛋白(a)血症が心血管疾患の残余リスクであることは確からしいと言えるだろう。 本研究は無作為化対照試験のメタアナリシス、すなわちpost-hoc解析であるため、その結果の解釈には注意が必要である。日本の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」をひもとくと、「高リポ蛋白(a)血症が動脈硬化性疾患の危険因子である」とのステートメントには「E-1a(コホート研究のメタアナリシス)」という高いエビデンスレベルを付与し ている。またリポ蛋白(a)の遺伝子異常(1塩基多型) を有する患者では、血中リポ蛋白(a)値と冠動脈疾 患リスクが高いことが研究によって示されている(1) 。 これらの知見と本研究の結果を併せて考えると、高リポ蛋白(a)血症が原因、心血管疾患が結果という 因果関係の成り立つ可能性が一層高まったと言えよう。 そうなると次のステップは本論文に書かれているとおり、高値のリポ蛋白(a)を低下させた場合に心 血管疾患を実際に予防できるか証明することであ る。スタチン、エゼチミブ、フィブラートはリポ蛋 白(a)値を下げることはできず、低下作用が報告されていたPCSK9阻害薬も最近の臨床試験では低下作用を認めなかった(2) 。一方、アポリポ蛋白(a)のア ンチセンス薬を用いた第1相、第2相試験の結果が報告されている(3),(4)。リポ蛋白(a)値は用量依存的に大きく低下し、安全性には問題を認めなかったことより、このアンチセンス療法は有望視されている。 本論文は、リポ蛋白(a)低下療法に関する前向き臨床試験を行う「お墨付き」を与えたと言えよう。安全で効果的な薬剤が開発されれば、スタチン療法にもかかわらず依然として心血管疾患の残余リスクが高い患者にとって大きな福音となる。 1. Clarke R, et al. N Engl J Med. 2009;361(26):2518-2528. 2. Roth EM, et al. Int J Cardiol. 2014;176(1):55-61. 3. Tsimikas S, et al. Lancet. 2015;386(10002):1472-1483. 4. Viney NJ, et al. Lancet. 2016;388(10057):2239-2253.
侵襲的治療を受けた急性冠症候群患者における橈骨動脈と大腿動脈アクセス、ビバリルジ ンと未分画ヘパリンの比較(MATRIX):多施設共同、無作為化対照試験1年目の最終結果
侵襲的治療を受けた急性冠症候群患者における橈骨動脈と大腿動脈アクセス、ビバリルジ ンと未分画ヘパリンの比較(MATRIX):多施設共同、無作為化対照試験1年目の最終結果
Radial versus femoral access and bivalirudin versus unfractionated heparin in invasively managed patients with acute coronary syndrome (MATRIX): final 1-year results of a multicentre, randomised controlled trial LANCET 2018 Sep 8;392(10150):835-848. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】Minimizing Adverse Haemorrhagic Events by Transradial Access Site and Systemic Implementation of Angiox(MATRIX)プログラムは、侵襲的治療を受ける急性冠症候群の患者において、径方向アクセス法と大腿動脈アクセス法の比較、および糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤を選択した二価イルジンと未分画ヘパリンとの安全性と有効性を評価するために計画されました。MATRIXは,イタリア,オランダ,スペイン,スウェーデンの78施設で急性冠症候群患者を対象とした3つのネステッド無作為化多施設共同非盲検優越試験からなるプログラムであった。ST上昇型心筋梗塞患者を対象に、冠動脈造影前に橈骨または大腿動脈アクセス、および経皮的冠動脈インターベンション後の輸液または未分画ヘパリン投与(1段階選択)ありまたはなしのビバリルジンに同時に無作為(1:1)割り付けを行った。非ST上昇型急性冠症候群の患者を冠動脈造影前に橈骨または大腿動脈アクセスに無作為に(1:1に)割り付け,造影後に経皮的冠動脈インターベンションが可能と判断された場合のみ(2段階選択),アンチトロンビンの種類と治療期間のプログラムに参加させた。無作為化配列はコンピュータで作成され、ブロックされ、P2Y12阻害薬の新規または現在の使用目的(clopidogrel vs ticagrelor or prasugrel)、急性冠症候群のタイプ(ST上昇型心筋梗塞、トロポニン陽性、トロポニン陰性の非ST上昇型急性冠症候群)により層別化された。Bivalirudinは0〜75mg/kgのボーラス投与後,経皮的冠動脈インターベンション終了まで1時間あたり1〜75mg/kgの点滴を行った。ヘパリンは糖蛋白IIb/IIIa阻害剤非投与例では70〜100単位/kg,糖蛋白IIb/IIIa阻害剤投与例では50〜70単位/kgで投与された。臨床的なフォローアップは30日後と1年後に行われた。MATRIXアクセスおよびMATRIXアンチトロンビン型に関する共同主要アウトカムは、30日までの全死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合と定義した主要有害心血管イベント、および非冠動脈バイパス移植関連大出血、30日までの主要有害心血管イベントの複合と定義した臨床有害事象であった。MATRIXの治療期間に関する主要アウトカムは、緊急標的血管再血行再建術、明確なステント血栓症、または30日までの純有害臨床イベントの複合としました。解析はintention-to-treatの原則に従って行われました。本試験はClinicalTrials. gov(番号NCT01433627)に登録されている。 【所見】2011年10月11日から2014年11月7日の間に、8404人の患者を橈骨アクセス(4197人)または大腿アクセス(4207人)にランダムに割付た。この8404人のうち,7213人がMATRIXアンチトロンビン型研究に含まれ,ビバリルジン(3610人)またはヘパリン(3603人)に無作為に割り付けられた。ビバリルジンに割り付けられた患者はMATRIX治療期間試験に組み入れられ、無作為に処置後輸液あり(1799例)または処置後輸液なし(1811例)に割り付けられた。1年後、主要な有害心血管イベントは、橈骨アクセスに割り付けられた患者と大腿骨アクセスに割り付けられた患者で差がなかったが(14-2% vs 15-7%、率比0-89、95%CI 0-80-1-00、p=0-0526)、正味の有害臨床イベントは、大腿骨アクセスよりも橈骨アクセスの方が少なかった(15-2% vs 17-2%、 0-87、 0-78-0-97; p=0-0128)。ヘパリンと比較して、ビバリルジンは主要な心血管有害事象(15-8%対16-8%; 0-94, 0-83-1-05; p=0-28)および臨床上の純有害事象(17-0%対18-4%; 0-91, 0-81-1-02; p=0-10)とは関連がなかった。緊急標的血管再血行再建術,ステント血栓症,臨床的有害事象の複合は,術後のバイバルジン点滴の有無にかかわらず差がなかった(17-4% vs 17-4%;0-99, 0-84-1-16;p=0-90). 【解釈】急性冠症候群患者において,径方向アクセスは1年後の主要有害心臓イベントではなく,大腿動脈アクセスと比較して,純有害事象率が低いとされた.ビバリルジンの投与と投与後の点滴の有無は、主要な有害心血管イベントや臨床的な有害事象の発生率の低下と関連はなかった。イタリア侵襲的心臓病学会,The Medicines Company,Terumo,Canada Research Chairs Programme. 第一人者の医師による解説 出血リスク軽減も 実臨床では患者に応じた対応が必要 古賀 聖士(病院講師)/前村 浩二(教授) 長崎大学病院循環器内科 MMJ.February 2019;15(1):17 近年、PCI時の橈骨動脈アクセスと大腿動脈アクセスを比較した多数のランダム化比較試験が行われ、橈骨動脈アクセスでは出血性イベント、特にアクセスサイト関連の出血が有意に少ないことが報告されている(1) 。その結果に基づき、現在欧州のPCI ガイドラインでは、橈骨動脈は第1選択のアクセス サイトとして推奨されている(推奨度I、エビデンス レベルA)(2) 。しかし、ほとんどの研究が30日程度の 短期予後をみたものであり、橈骨動脈アクセスと長期予後の関連については明らかとなっていなかった。 本試験は、大腿動脈アクセスに対する橈骨動脈アクセスの長期的な安全性と有効性を検証するために実施された。なお、本試験は未分画ヘパリンに対するビバリルジン(日本未承認の抗トロンビン薬)の安全性と有効性も検証するデザインになっている。 結果であるが、1年の追跡で、橈骨動脈アクセス 群と大腿動脈アクセス群の間で主要心血管イベント (全死亡、心筋梗塞または脳卒中)発生率に有意差はなかったが、総臨床的有害事象(NACE;主要心血管イベントおよびnon-CABG関連大出血)は橈骨動脈 アクセス群の方が有意に少なかった。これには、橈骨動脈アクセス群では大出血、特にアクセスサイト 関連の出血(0.4% 対 1.1%)が有意に少なかったことが影響していた。また、この差は30日までに認 められ、31日から1年までのNACE発生率に有意差はなかった。なお、ビバリルジン群とヘパリン群で1年の主要心血管イベントおよびNACEに有意差はなかったが、ビバリルジン群は大出血(2.2% 対 3.3%)が有意に少なかった。 以上より、本研究はACS患者のPCIにおいて橈骨動脈は最も望ましいアクセスサイトであると結論づけている。また、ビバリルジンを使用した橈骨動 脈アクセスのPCIは、より出血性イベントを軽減で きる可能性があることについても触れられている。 日本においても、可能であれば橈骨動脈アクセスを第1選択にすることに、ほぼ異議はないであろう。 しかしACS患者では、ショックバイタルのため橈 骨動脈の触知が弱くアクセスが困難な患者があり、 また高齢の患者で鎖骨下動脈や腕頭動脈の蛇行のためカテーテル操作が困難な場合、大腿動脈アクセス の方が迅速にPCIを行える患者も経験する。また複 雑病変へのPCIで大口径カテーテルが必要な場合には橈骨動脈は不向きである。ガイドラインや臨床研 究の結果から橈骨動脈アクセスに固執するのではなく、患者に応じてアクセス部位を使い分ける臨機応変な対応が実臨床の場では求められるであろう。 1. Ferrante G, et al. JACC Cardiovasc Interv. 2016;9(14):1419- 1434. 2. Neumann FJ, et al. Eur Heart J 2018. Aug 25. doi:10.1093/ eurheartj/ehy394.
コントロール不十分な1型糖尿病におけるハイブリッドクローズドループ型インスリンデ リバリー:多施設共同、12週間無作為化試験
コントロール不十分な1型糖尿病におけるハイブリッドクローズドループ型インスリンデ リバリー:多施設共同、12週間無作為化試験
Closed-loop insulin delivery in suboptimally controlled type 1 diabetes: a multicentre, 12-week randomised trial LANCET 2018 Oct 13;392(10155):1321-1329. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】1型糖尿病患者にとって、血糖コントロールの達成は依然として困難である。6歳以上の最適にコントロールされていない1型糖尿病患者を対象に、センサー付きポンプ療法と比較した昼夜ハイブリッド閉ループインスリン投与の有効性を評価した。 【方法】このオープンラベル、多施設、多国籍、単一期間、並行無作為化対照試験では、英国の4病院と米国の2施設の糖尿病外来クリニックから参加者を募集した。インスリンポンプで治療を受けている6歳以上の1型糖尿病で,血糖コントロールが最適でない(糖化ヘモグロビン[HbA1c] 7-5-10-0%) 参加者を12週間の自由生活でハイブリッド閉ループ療法またはセンサー補強型ポンプ療法にランダムに割付けた。インスリンポンプと持続的グルコースモニタリングのトレーニングは4週間のランイン期間中に行われた。対象者は中央無作為化ソフトウェアにより無作為に割り付けられた。2群への割り付けは非盲検下で行われ、無作為化は施設内でHbA1cが低い(8~5%未満)か高い(8~5%以上)かで層別化された。主要評価項目は、無作為化後12週目にグルコース濃度が3-9-10-0mmol/Lの目標範囲内に収まった時間の割合とした。主要評価項目と安全性評価項目の解析は、無作為化されたすべての患者さんで行われました。本試験はClinicalTrials. govに登録されており、番号はNCT02523131、募集は終了している。 【所見】2016年5月12日から2017年11月17日まで、114名がスクリーニングされ、適格患者86名がハイブリッド閉ループ療法(n=46)またはセンサー補強ポンプ療法(n=40;対照群)にランダムに割り当てられた。グルコース濃度が目標範囲内にあった時間の割合は、コントロール群(54%、SD9、平均変化率差10-8%ポイント、95%CI 8-2~13-5、p<0-0001)と比較して、クローズドループ群で有意に高かった。クローズドループ群では,HbA1cがスクリーニング値の8-3%(SD 0-6)から4週間のランイン後に8-0%(SD 0-6)へ,12週間の介入期間後に7-4%(SD 0-6)へ低下した.対照群では,HbA1c値はスクリーニング時に8-2%(SD 0-5),ランイン後に7-8%(SD 0-6),介入後に7-7%(SD 0-5)であり,HbA1c割合の減少は対照群と比較して閉ループ群では有意により大きかった(変化の平均差 0-36%,95%CI 0-19 ~ 0-53;p<0-0001)。グルコース濃度が3-9mmol/L未満(変化の平均差-0-83%ポイント、-1-40から-0-16;p=0-0013)および10-0mmol/L以上(変化の平均差-10-3%ポイント、-13-2から-7-5;p<0-0001)で過ごした時間は、コントロール群と比較してクローズドループ群で短くなっていました。センサーで測定したグルコースの変動係数は,介入間で差がなかった(変化の平均差 -0-4%,95% CI -1-4%~0-7%;p=0-50).同様に,1日の総インスリン量にも差はなく(変化の平均差0-031 U/kg/日,95% CI -0-005~0-067;p=0-09), 体重にも差はなかった(変化の平均差0-68 kg,95% CI -0-34~1-69;p=0-19 ).重篤な低血糖は発生しなかった。クローズドループ群では輸液セットの不具合により糖尿病性ケトアシドーシスが1件発生した。その他の有害事象は、クローズドループ群で13件、対照群で3件であった。 【解釈】ハイブリッドクローズドループインスリン投与は、最適にコントロールされていない1型糖尿病患者の幅広い年齢層で低血糖のリスクを低減しながら血糖コントロールを改善する。 【FUNDING】JDRF、NIHR、Wellcome Trust。 第一人者の医師による解説 さらなる改良が望まれるインスリンデリバリーシステム 松久 宗英 徳島大学先端酵素学研究所糖尿病・臨床研究開発センターセンター長・教授 MMJ.February 2019;15(1):19 本研究はハイブリッドクローズドループインスリンポンプの有用性と安全性を示した研究である。 Cambridge 大学が開発した Day-and-night hybrid closed-loop(FlorenceD2A closed-loop)システムに、 ミニメド620G(Medtronic)とスマートフォンを連係させたシステムを使用している。先進的インスリン機器の検証は、入院患者を対象とした完全監視下 の閉鎖的環境から、目の行き届くサマーキャンプやホテル生活、そして最後に自由生活での実証へと段階的に進められる。本研究はその最終段階に相当し、 かつ最も良い適応と考えられる血糖管理不十分な幅広い年齢の1型糖尿病患者を対象に12週間行われた研究である。 今回使用されたクローズドループインスリンポンプはハイブリッド型と呼ばれ、安定した状態では CGMによる皮下間質ブドウ糖濃度に応じたインスリン持続注入が行われ、夜間に優れた血糖管理が得られる。しかし、現状のインスリン注入アルゴリズ ムでは、食事による急激な血糖上昇を十分に抑制できないことが示されている。この理由として、皮下 インスリンの作用時間の遅れ、皮下間質と血漿のブドウ糖濃度のずれ、食事量評価の自動化の困難さなど複数の要因がある。また、血糖管理手段がインスリンによる血糖降下ベクトルしかないことも大きな要因である。そこで、カーボカウントに基づく追加インスリン量を患者が自己注入する従来の方法を併用するため、ハイブリッド型とされる。 本研究では血糖管理不十分の1型糖尿病患者に対し、これまでのSAPと比較して、HbA1cを0.36% 低下させ、平均センサーブドウ糖濃度、目標ブドウ 糖濃度達成時間、SDでみた血糖変動の改善もみられ、安定した血糖改善効果が示された。一方、低血糖の頻度や重症低血糖は両群間で同等であった。また、注入トラブルで糖尿病ケトアシドーシスが発症したことから、安全性の面では従来のSAPを凌駕するには至っていない。 これからも、より作用発現の早いインスリン製剤 の開発や、血糖上昇ベクトルを持つグルカゴンの併 用注入が可能なバイオニックインスリンポンプ(1)などの開発が進められており、1型糖尿病のより良い 管理が実現し、合併症のかなりの抑制が期待される。 ただし、これら先進機器も一定の機器トラブルを起 こすリスク、医療コスト、操作の煩雑さなど最後まで課題の克服に向けた研究開発が必要とされる。 1. El-Khatib FH, et al. Lancet. 2017;389(10067):369-380.
スウェーデンの関節リウマチ患者におけるTumor Necrosis Factor Inhibitorsと癌の再発。全国規模の人口に基づくコホート研究
スウェーデンの関節リウマチ患者におけるTumor Necrosis Factor Inhibitorsと癌の再発。全国規模の人口に基づくコホート研究
Tumor Necrosis Factor Inhibitors and Cancer Recurrence in Swedish Patients With Rheumatoid Arthritis: A Nationwide Population-Based Cohort Study Ann Intern Med. 2018 Sep 4;169(5):291-299. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】がん既往歴のある患者における腫瘍壊死因子阻害薬(TNFi)の使用は依然として臨床上のジレンマである 【目的】関節リウマチ(RA)におけるTNFi治療ががん再発リスクの増加と関連しているかどうかを検討すること 【デザイン】全国の登録簿のリンケージに基づいた人口ベースのコホート研究。設定]スウェーデン. 【参加者】がんと診断された後、2001年から2015年の間にTNFi治療を開始したRA患者と、生物学的製剤の投与を受けたことのないRAと同一がん歴の患者をマッチングさせた. 【測定法】主要アウトカムはがんの初発再発であった.ハザード比(HR)の推定には、時間、がんの種類、がんが浸潤性かin situか(一部の患者では腫瘍、リンパ節、転移(TNM)分類システムの病期)を考慮した調整済みCox比例ハザードモデルを使用した。 【結果】TNFi治療を開始した患者467人(がん診断後の平均期間、7.9年)のうち、がんの再発は42人(9.0%;追跡調査の平均期間、5.3年)であった;同じがん歴を有する2164人のマッチアップ患者のうち、155人(7.2%;追跡調査の平均期間、4.3年)で再発があった(HR、1.06[95%CI、0.73~1.54])。がんの病期で一致させた患者サブセット、または指標となるがんの診断からTNFi治療開始までの期間が類似している患者サブセットの解析、および一致させていない解析では、ハザード比は1に近かった。 【Limitation】アウトカムアルゴリズムは一部検証されておらず、指標がんの予後が良好な患者ほどTNFi治療を受ける可能性が高い場合、チャネリングバイアスが生じる可能性があった。 【結論】本知見は、TNFi治療がRA患者におけるがん再発リスクの増加とは関連していないことを示唆しているが、有意なリスク増加を完全に排除することはできなかった。主な資金源]ALF(ストックホルム郡議会における保健医療分野の医学教育・研究に関する協定)、スウェーデン癌協会、スウェーデン戦略研究財団、スウェーデン研究評議会。 第一人者の医師による解説 レジストリデータ使用の国家規模コホート研究 エビデンス構築に貢献 岩崎 基 国立がん研究センター社会と健康研究センター疫学研究部部長 MMJ.February 2019;15(1):20 関節リウマチ患者などに対するTNF阻害療法は、その作用機序により悪性腫瘍のリスクが上昇する 可能性が懸念されている。また悪性腫瘍の既往歴・ 治療歴を有する患者がTNF阻害薬を使用した場合の再発リスクへの影響も懸念されている。再発リスクや2次がん罹患リスクとの関連を調べた先行研究は少なく、リスク上昇の報告はない。先行研究 の課題として、TNF阻害療法を受ける患者は進行がん患者が少ないなど再発リスクの低い患者が対象になっていた可能性が指摘されている。そこで、本研究では病期、診断からTNF阻害療法開始までの期間を考慮した解析を実施したが、生物学的製剤非使用群に比べて、統計学的に有意な再発リスクの上昇は観察されなかった。 本研究の方法論上の最大の特徴は、レジストリデータを用いて研究目的に合致した国家規模のコ ホートを構築している点である。本研究では、患者登録、がん登録、処方薬登録などの公的レジストリとリウマチ分野のQuality Registryを用いて、対象者の特定、治療と交絡要因に関する情報の取得、 アウトカムであるがんの再発の把握がなされた。 異なるレジストリをリンケージするために国民に付与された個人識別番号(PIN)が利用された。また、このような登録情報を疫学研究に用いる際には、 その妥当性を明らかにしておくことが重要であるが、患者登録から把握した疾患の妥当性について はすでに数多くの報告がなされている(関節リウマチ患者の陽性反応的中度は約90%)(1)。 スウェーデンの豊富なレジストリを用いて構築されたコホートにおいて、再発リスクの関連要因 を丁寧に調整した結果を示すことができた点は、 本研究の大きな成果である。一方、この規模でも十 分なサンプルサイズとは言えず、リスク上昇の可 能性は否定できない。また、観察研究のため未観察の交絡要因の影響は否定できず、情報がなく考慮できていない要因(治療開始時の病勢、喫煙など)の影響についても留意が必要である。 このように解釈の上で留意が必要ではあるが、 レジストリデータの利活用は、臨床上の疑問に答えるエビデンスの創出という点で大きな可能性を有している。日本においても、このようなレジストリデータなど、いわゆるリアルワールドデータを用いて、質の高い疫学研究が実施できる環境が整備 され、エビデンス構築に貢献できることを期待したい。 1. Ludvigsson JF, et al. BMC Public Health. 2011;11:450. doi:10.1186/1471- 2458-11-450.
肥満症患者の体重減少に対するセマグルチドの有効性と安全性をリラグルチドおよびプラセボと比較:無作為化、二重盲検、プラセボおよびアクティブコントロール、用量設定、第 2 相試験
肥満症患者の体重減少に対するセマグルチドの有効性と安全性をリラグルチドおよびプラセボと比較:無作為化、二重盲検、プラセボおよびアクティブコントロール、用量設定、第 2 相試験
Efficacy and safety of semaglutide compared with liraglutide and placebo for weight loss in patients with obesity: a randomised, double-blind, placebo and active controlled, dose-ranging, phase 2 trial Lancet 2018 Aug 25 ;392 (10148 ):637 -649 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】 肥満は公衆衛生上の大きな問題であり、体重管理のための新しい医薬品が必要とされている。そこで、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)アナログのセマグルチドについて、リラグルチド及びプラセボと比較して、体重減少を促進する有効性と安全性を評価しました。 【方法】無作為化、二重盲検、プラセボ及び活性対照、多施設、用量設定、第2相試験を実施しました。本試験は、71の臨床施設を含む8カ国で行われました。対象者は、糖尿病のない、肥満度(BMI)30kg/m2以上の成人(18歳以上)です。56のブロックサイズで、参加者を各活性治療群(セマグルチド[0-05 mg、0-1 mg、0-2 mg、0-3 mg、または0-4 mg;1日0-05 mgで開始し4週間ごとに段階的に増加]またはリラグルチド[3-0 mg;1日0-6 mgで開始し週0-6 mgごとに増加])または適合プラセボ群(活性治療群と同じ注入量と増加スケジュール)に6対1の比率でランダムに割り付けました。すべての投与量は1日1回、皮下注射で投与されました。参加者と治験責任医師は、割り付けられた治療法についてマスキングされたが、目標投与量についてはマスキングされなかった。主要評価項目は、52週目の体重減少率であった。主要解析はintention-to-treat ANCOVA法により行われ、欠損データはプラセボ群から抽出された。本試験はClinicalTrials. govに登録されており、番号はNCT02453711。 【FINDINGS】2015年10月1日から2016年2月11日の間に、957人がランダムに割り付けられた(有効治療群ごとに102~103人、プラセボプール群に136人が割り付けられた)。平均ベースライン特性は、年齢47歳、体重111-5kg、BMI39-3kg/m2などであった。体重データは、957人中891人(93%)から52週目に入手できた。推定平均体重減少率は、プラセボ群-2-3%に対し、セマグルチド群-6-0%(0-05mg)、-8-6%(0-1mg)、-11-6%(0-2mg)、-11-2%(0-3mg)、-13-8%(0-4mg)であった。セマグルチド群はプラセボ群に対してすべて有意であり(未調整p≦0-0010)、多重試験で調整後も有意であった(p≦0-0055)。セマグルチド0~2mg以上とリラグルチドの平均体重減少率は、いずれも有意であった(-13~8% vs -11~2% vs -7~8%)。推定体重減少率10%以上は、プラセボ投与群では10%、セマグルチド0-1mg以上投与群では37~65%に認められました(p<0-0001 vs プラセボ)。セマグルチドの全用量において、新たな安全性の懸念はなく、概ね良好な忍容性を示しました。最も一般的な有害事象は、GLP-1受容体作動薬で以前に見られたように、吐き気を主とする用量に関連した消化器症状であった。 【解釈】食事療法および身体活動に関するカウンセリングとの併用において、セマグルチドは52週間にわたり忍容性が高く、すべての用量でプラセボと比較して臨床的に適切な体重減少が認められた。 【FUNDING】Novo Nordisk A/S. 第一人者の医師による解説 糖尿病含む肥満関連疾患の発症抑制にも期待 脇 裕典 東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科講師 MMJ.February 2019;15(1):21 新しいグルカゴン様ペプチド -1(GLP-1)受容体アゴニストであるセマグルチドは現在、週1回 注射薬が日本で2型糖尿病治療薬として承認されている。他のGLP-1受容体アゴニストと同様、セマグルチドは2型糖尿病の改善のみならず、体重減少効果が知られている。本研究は、オーストラリ ア、欧州、北米の2型糖尿病非合併の成人肥満(BMI 30kg/m2以上)患者957人を対象にセマグルチド 1日1回52週間投与による体重減少率を主要評 価項目に定め、体重減少効果と安全性に関してリラグルチドおよびプラセボと比較した多施設共同無 作為化二重盲検用量反応第2相試験である。 対象者の平均年齢 は47歳、平均体重 は111.5 kg、BMIは39.3kg/m2。プ ラ セ ボ 群 で は 体重 減少(減少率)は-2.48kg(-2.3%)であるの に 対 し、セ マ グ ル チ ド 0.05、0.1、0.2、0.3、 0.4mg群 で は そ れ ぞ れ -6.66kg(-6.0%)、 -9.34kg(-8.6%)、-12.30kg(-11.6%)、 -12.45kg( -11.2 %)、-15.15kg( -13.8 %) で あ り、そ の 差 は 有意 で あ っ た(P<0.001)。 10%以上の体重減少率がみられた患者はプラセ ボ 群10%に 対してセ マグ ル チド 群(0.1mg以 上)37~65%で差はいずれも有意であった(P< 0.0001)。セマグルチドの体重減少効果は52週 間にわたって観察された。 リラグルチド 3mg群との比較では、セマグル チ ド 群(0.2mg以上 )の 体重減少率( -13.8 ~ -11.2 %)は リ ラ グ ル チ ド 群 の 体重減少率 (-7.8%)よりも有意に大きかった(P≦0.05)。 主な副作用である嘔気の頻度はプラセボ群18%に 対し、セマグルチド群(0.05~0.4mg)で31~ 48%と高いが、リラグルチド 3mg群では45%で 忍容性は同程度であると考えられた。 本試験では、摂取カロリーで500 kcalの減少と 最低週150分の運動を指導されており、食事・運 動療法の併用が重要である可能性には留意したい。 セマグルチドは2型糖尿病の臨床試験(SUSTAIN 6)において心血管イベント(3 point‒MACE)を 有意に減少させたことが注目されている(1)。今回、 糖尿病非合併肥満患者の体重コントロールに有効な結果が示されたことから、糖尿病を発症していない肥満者において糖尿病を含む関連疾患の発症 抑制効果を有するかもしれない。現在、肥満症治療 薬としての第3相試験が進行中で、今後の結果が 期待される。 1. Marso SP et al. N Engl J Med. 2016;375(19):1834-1844.
世界、地域、国別の年齢・性別死亡率と平均余命、1950~2017年:Global Burden of Disease Study 2017の系統的分析
世界、地域、国別の年齢・性別死亡率と平均余命、1950~2017年:Global Burden of Disease Study 2017の系統的分析
Global, regional, and national age-sex-specific mortality and life expectancy, 1950-2017: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2017 LANCET 2018 Nov 10;392(10159):1684-1735. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】年齢別死亡率と平均余命の評価は、国連経済社会局人口部(UNPOP)、米国国勢調査局、WHO、および世界疾病・傷害・リスク要因調査(GBD)の過去の反復調査の一部として行われてきた。)GBD の以前の版では、UNPOP による人口推定値が使用されたが、これは GBD の死亡者数の推定値と内部的に一貫性のある方法で導き出されたものではない。GBDの現在の反復、GBD 2017は、以前の評価を改善し、グローバルな集団の死亡率の経験のタイムリーな推定値を提供します。 【方法】GBDは、1950年から2017年の間の死亡率の推定値を作成するために、23年齢グループ、両性、および195カ国と領土、16カ国のサブナショナルな場所を含む918の場所について、利用できるすべてのデータを使用しています。使用したデータは、バイタル登録システム、サンプル登録システム、家庭調査(完全出生歴、要約出生歴、兄弟姉妹歴)、センサス(要約出生歴、世帯死亡)、人口動態監視サイトなどである。合計で、この分析には8259のデータソースが使用された。出生から5歳までと15歳から60歳までの死亡確率の推定値を作成し、モデル生命表システムに入力して、すべての場所と年について完全な生命表を作成した。致命的な不連続性とHIV/AIDSによる死亡率は別々に分析され、その後、推定に組み込まれる。年齢別死亡率と開発状況との関係は、25歳以下の出生率、教育、所得に基づく複合指標である社会人口統計指数を用いて分析する。GBD 2017では、GBD 2016と比較して、主に4つの方法論的改善がなされている。622の追加データソースが組み込まれたこと、GBD研究によって生成された新しい推定人口が使用されたこと、分析の異なる要素で使用される統計手法がさらに標準化・改善されたこと、分析が20年遡って1950年から始まるように拡張されたこと。 【FINDINGS】Global, 18-7% (95% uncertainty interval 18-4-19-0) of deaths were registered in 1950 and that proportion has steadily increasing, in 58-8% (58-2-59-3) of all deaths are registered in 2015.世界レベルでは、1950年から2017年の間に、男性の平均寿命は48-1歳(46-5-49-6)から70-5歳(70-1-70-8)へ、女性は52-9歳(51-7-54-0)から75-6歳(75-3-75-9)へ伸びています。このような全体的な進展にもかかわらず、2017年の出生時平均寿命にはかなりのばらつきが残っており、中央アフリカ共和国の男性の49-1歳(46-5-51-7)からシンガポールの女性の87-6歳(86-9-88-1)まで幅がある。年齢層を超えて最も進歩したのは5歳未満の子どもで、5歳未満の死亡率は1950年の出生1000人あたり216-0人(196-3-238-1)から2017年の出生1000人あたり38-9人(35-6-42-83)まで減少し、国によって大きな減少がみられた。それでも、2017年の世界の5歳未満の子どもの死亡者数は500万~400万人(5-2-5-6)でした。成人、特に成人男性については、進展はあまり顕著ではなく、変動が大きく、いくつかの国で死亡率が停滞または上昇していた。1950年から2017年までの男女の平均寿命の差は、世界レベルでは比較的安定しているものの、超地域間で特徴的なパターンを示し、一貫して中央ヨーロッパ、東ヨーロッパ、中央アジアで最も大きく、南アジアで最も小さくなっている。また、開発に基づいて予想される死亡率と比較して観測された死亡率では、国や時間によってパフォーマンスが変化していた 【解釈】年齢性別死亡率のこの分析は、国によって人口死亡率に驚くほど複雑なパターンがあることを示すものである。この研究結果は、5歳未満児の死亡率の大幅な低下など、世界的な成功を強調している。これは、数十年にわたる地域、国、世界の重要なコミットメントと投資を反映したものである。しかし、同時に懸念される死亡率パターン、特に成人男性や、女性においては、本調査の期間中、多くの国で死亡率が停滞し、場合によっては上昇していることにも注意を喚起している。 第一人者の医師による解説 5歳未満児の劇的な死亡率低下と、停滞する成人期前期の健康増進 野村 周平 東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室助教 MMJ.April 2019;15(2) 保健政策立案や保健介入における優先順位決定のためには、その基礎データとして、疾患別の死亡や障害、それらの原因となりうる危険因子に関する比較可能なエビデンスは必須である。その先駆けとして1991年に開始された世界の疾病負荷研究(Global Burden of Disease:GBD)は、複数の疾患や危険因子をすべて同時にかつ包括的に解析した野心的プロ ジェクトであった。その初期の成果は、「世界開発 報告1993年度版:健康への投資(世界銀行)」などで 発表され(1)、大きな反響を得た。 時は巡り、GBD研究は米国ワシントン大学保健指標・保健評価研究所(IHME)を事務局とし、GBD 2010プロジェクトが2007年に始動。多くの議論や方法論的発展を経て、1990~2010年の世界の疾病負荷が推計され、その成果は2012年に7編の原著論文としてLancetで発表された。プロジェクトはその後、GBD2013、GBD2015、GBD2016と続き、 データ収集の拡大、最新の統計技術の適用、方法論の改善を繰り返してきた。本論文は、これまでにない量・種類のデータを収集、包括的で多面的な新手法で解析された最新のGBD2017プロジェクトの研究成果からの1編である(2) 。 本研究の重要な発見の1つは、過去半世紀にわたる5歳未満児の死亡率の劇的な低下だ。1950年時の 約5分の1程度にまで低下した。このすばらしい成果は、世界、地域、国レベルの数十年にわたるコミットメントと投資、とりわけ2000年以降の全世界的なワクチンキャンペーンの果たした役割が大きい(3) 。しかしながら、依然として毎年520万人以上 の5歳未満児が死亡していることが本研究で認められており、やるべきことはまだ多く残っている。子どもの死亡率の急激な低下以外にも、GBD 2017の結果は、5歳を過ぎて生き延びる子どもが青年期や壮年期に死亡する可能性は依然高いことを示している。特に20~45歳のグループでは、死亡率の改善 は1990年以降停滞しており、2000年ごろには増加 もみられた。 GBD2017 では、 社会人口学的インデックス (Socio-Demographic Index:SDI)と呼ばれる、収入、 教育レベル、出生率という3つの側面に関して、ある国における平均達成度を測るための指標を使用し ている。例えば本研究では、各国の死亡率をSDIに基づき分類することで、同程度の開発レベルにある 国々の中で、具体的にどの国が低い死亡率を達成しているか、または相対的に達成が遅れているかを確認できる。 世界的に健康増進が進む中、地域や年齢によってその進展は大きく異なる。本研究成果は、世界の健康指標(死亡率)における課題を、国別(国によっては地方別)、年齢別、性別レベルで評価し、それら に対応する最善の方法を見つけるための新たなデータを提示するものだ。顕著な死亡率低下を実現してきた国々の成功の原動力を学び、各国レベルで新たな研究プロジェクト遂行や政策立案、自国の国民を対象とした詳細な疾病負荷研究などに活かされることが期待される(4) 。一方で、達成の遅れている国々には緊急の注意を払う必要がある。 1.The World Bank. World Development Report 1993:Investing in Health. Washington, D.C.:World Bank;1993. 2. The Lancet. Lancet. 2018;392(10159):1683. 3. Haakenstad A, et al. Health Aff(Millwood). 2016;35(2):242- 249. 4. Murray CJL, Lopez AD. Lancet. 2017;390(10100):1460-1464.
2017年米国心臓病学会/米国心臓協会血圧ガイドラインを用いた若年成人における血圧分類とその後の心血管イベントとの関連性
2017年米国心臓病学会/米国心臓協会血圧ガイドラインを用いた若年成人における血圧分類とその後の心血管イベントとの関連性
Association of Blood Pressure Classification in Young Adults Using the 2017 American College of Cardiology/American Heart Association Blood Pressure Guideline With Cardiovascular Events Later in Life JAMA 2018 Nov 6 ;320 (17 ):1774 -1782. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】若年成人期の血圧(BP)レベルと中年期までの心血管疾患(CVD)イベントとの関連についてはほとんど知られていない。 【目的】2017年米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)BPガイドラインで定義された高血圧を40歳前に発症した若年成人は、正常血圧維持者と比較してCVDイベントリスクが高くなるかどうかを評価することである。 【デザイン、設定および参加者】1985年3月に開始された前向きコホート研究Coronary Artery Risk Development in Young Adults(CARDIA)研究において解析を実施した。CARDIAでは,米国の4つのフィールドセンター(アラバマ州バーミンガム,イリノイ州シカゴ,ミネソタ州ミネアポリス,カリフォルニア州オークランド)から18~30歳のアフリカ系米国人と白人5115人が登録された。アウトカムは2015年8月まで入手可能であった。 【曝露】初診から40歳以降に最も近い検査までに測定された最高血圧を用いて,各参加者を正常血圧(未治療収縮期血圧[SBP]<120mmHg,拡張期血圧[DBP]<80mmHg:n=2574)に分類した。)BP上昇(未治療のSBP 120-129 mm HgおよびDBP <80 mm Hg;n = 445)、ステージ1高血圧(未治療のSBP 130-139 mm HgまたはDBP 80-89 mm Hg;n = 1194)、またはステージ2高血圧(SBP ≥140 mm Hg, DBP≥90 mm Hg, または降圧剤を服用;n = 638)であった。 【主要評および測定法】CVDイベント:致死性および非致死性の冠動脈性心疾患(CHD),心不全,脳卒中,一過性脳虚血発作,末梢動脈疾患(PAD)への介入。 【結果】最終コホートには成人4851人(アウトカム追跡開始時の平均年齢,35.7歳[SD,3.6];女性2657人[55%];アフリカ系アメリカ人2441人[50%];降圧剤服用206人[4%])を含める。中央値18.8年の追跡期間中に,228件のCVDイベントが発生した(CHD,109件,脳卒中,63件,心不全,48件,PAD,8件)。正常血圧,血圧上昇,ステージ1高血圧,ステージ2高血圧のCVD発生率は,それぞれ1000人年当たり1.37(95%CI,1.07-1.75),2.74(95%CI,1.78-4.20),3.15(95%CI, 2.47-4.02),8.04(95% CI,6.45-10.03 )であった。多変量調整後,BP上昇,ステージ1高血圧,ステージ2高血圧のCVDイベントのハザード比は,正常BPに対してそれぞれ1.67(95%CI,1.01-2.77),1.75(95%CI,1.22-2.53)および3.49(95%CI,2.42-5.05)であった。 【結論と関連性】若年成人において,2017年米国心臓病学会/米国心臓協会(ACC/AHA)ガイドラインの血圧分類で定義された40歳前の血圧上昇,ステージ1高血圧,ステージ2高血圧の者は,40歳前の血圧が正常の者と比較してその後の心血管疾患イベントリスクが有意に高かった。ACC/AHA血圧分類システムは、心血管疾患イベントのリスクが高い若年成人を特定するのに役立つ可能性があります。 第一人者の医師による解説 若年成人の血圧異常への介入と、さらに若い年齢層での研究が必要 粟津 緑 慶應義塾大学医学部小児科非常勤講師 MMJ.April 2019;15(2) 2017年に発表された米国高血圧ガイドラインは、従来の高血圧前症(prehypertension、収縮期血圧 120 ~ 139 /拡張期血圧 80 ~ 89 mmHg) という分類を廃止し、120~129/80mmHg未満を 血圧上昇(elevated blood pressure)、130 ~ 139 /80 ~ 89 mmHgをstage 1 高血圧、 140/90mmHg以上をstage 2高血圧とした。 高血圧の基準が下がったため若年成人の患者数は 2~3倍に増加した。しかしすぐ薬物療法を行うのではなく、まず生活習慣の改善を指導し、その後も改善しなければ、心血管疾患の既往があるか、10 年間の動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)リスクスコアが10%以上である場合に薬物療法を行うよう推奨されている。これにより降圧薬が必要な患者数はわずかな増加にとどまる。一方、ASCVDリスクスコアは40~79歳を対象に設定されたものであるため、若年成人(40歳未満)の多くはリスクが低く薬物療法の適応にならないという問題がある。 本研究は登録時18~30歳の米国人を対象としたCARDIA研究データに2017年基準を適用し検討した。血圧上昇群およびstage 1高血圧群の心 血管疾患発症リスクは 正常血圧群(120mmHg未 満 /80mmHg未満)に比べて有意にそれぞれ1.67、 1.75倍高かった。 本研究と同様の研究が韓国でも行われ、血圧異常者(血圧上昇と高血圧)の正常血圧者に対するハザード比は米国と同様に有意に上昇していた(1)。中年・老年層における同様の研究は多いがこの2研究は若年成人を対象とした初めての研究である。 両研究に共通した点がいくつかある。まず対象の半数以上が血圧異常に分類された。この理由として血圧測定法が適切でなかった可能性が考えられる。信頼性のある24時間血圧測定は行われていない。若年者では高血圧のレッテルを貼る前に真の高血圧であるか否かを確認することがより望ましい。また血圧上昇群とstage 1高血圧群は正常血圧群に比べBMIが大きく、糖・脂質代謝異常合併も多かった。したがってこれらが心血管疾患発症へ関与した可能性もある。若年血圧異常者には生活習慣の改善指導、糖・脂質代謝異常の是正も重要である。 今後、以上の点を考慮した介入研究が必要である。 また本研究の対象は18~30歳であるが、結果を外挿すると小児・思春期の軽度血圧上昇が将来の心血管リスクになる可能性もある。血圧はトラッキングするからである。小児の血圧基準はパーセ ンタイル値で定義されている。心血管疾患との関係が不明であるため便宜的に定義しているのであるが、本研究を発展させ、臓器障害マーカー(左室 肥大など)を盛り込みつつ成人のように心血管リスクとなる血圧値を設定することが望まれる。 1. Son JS1, et al. JAMA. 2018 Nov 6;320(17):1783-1792.
心房細動に対する抗凝固療法の臨床的純益に及ぼす脳卒中発症率のばらつきの影響
心房細動に対する抗凝固療法の臨床的純益に及ぼす脳卒中発症率のばらつきの影響
Effect of Variation in Published Stroke Rates on the Net Clinical Benefit of Anticoagulation for Atrial Fibrillation Ann Intern Med. 2018 Oct 16 ;169 (8 ):517 -527 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】抗凝固療法を受けていない非弁膜症性心房細動(AF)患者の脳卒中発症率は、発表された研究によって大きく異なり、その結果、AFにおける抗凝固療法の正味の臨床的利益に与える影響は不明である。 【目的】発表されたAFの脳卒中発症率のばらつきが、抗凝固療法の正味の臨床的利益に与える影響を明らかにする。ワルファリンをベースケースとし,非ビタミンK拮抗薬の経口抗凝固薬(NOAC)を二次解析でモデル化した。 【設定】地域在住の成人。【対象】心房細動を発症した成人33 434人。 【測定】質調整生命年(QALYs)。 【結果】33 434人のうち,CHA2DS2-VASc(うっ血性心不全,高血圧,年齢,糖尿病,脳卒中,血管疾患)のスコアが2以上であったのは27 179人であった。これらの患者に対するワルファリンによる抗凝固療法の人口利益は,ATRIA(AnTicoagulation and Risk Factors In Atrial Fibrillation)試験の脳卒中発生率を用いた場合に最も少なく,Danish National Patient Registryの脳卒中発生率を用いた場合に最も多かった(6290QALYs[95%CI,±2.3%] vs. 24 110QALYs[CI,±1.9%],P<0.001)。抗凝固療法の最適なCHA2DS2-VAScスコアの閾値は、ATRIAの脳卒中率を用いて3以上、スウェーデンのAFコホート研究の脳卒中率を用いて2以上、SPORTIF(Stroke Prevention using ORal Thrombin Inhibitor in atrial Fibrillation)研究の脳卒中率を用いて1以上、デンマークのNational Patient Registryの脳卒中率を用いて0以上であった。NOACによる頭蓋内出血の割合が低いことを考慮すると、CHA2DS2-VAScスコアの最適な閾値は減少したが、これらの閾値はまだ大きく異なっていた。 【Limitation】測定された利益は他の集団に一般化しない可能性がある。 【結論】抗凝固療法を受けていない患者の心房細動による脳卒中発生率の公表値のばらつきは、抗凝固療法の正味の臨床的利益に何倍ものばらつきをもたらしている。ガイドラインは、抗凝固療法を推奨するための現在の脳卒中リスクスコアの閾値の不確実性をよりよく反映すべきである。[主要な資金源]なし。 第一人者の医師による解説 抗凝固療法のNCBを勘案したスコアの日本版推奨閾値の検討必要 矢坂 正弘 国立病院機構九州医療センター脳血管センター部長 MMJ.April 2019;15(2) 抗凝固療法未施行の非弁膜症性心房細動(AF)患者における公表されている脳卒中発症率は研究ごとに大きく異なるが、その変動が抗凝固療法のnet clinical benefit(NCB)に及ぼす影響は明らかにされていない。そこで、著者らは代表的な4つの研究(ATRIA、SPORTIF、Swedish AFコホート研究、 Danish National Patient Registry)から抗凝固療法未施行の非弁膜症性 AF患者における公表されているCHA2DS2 -VAScスコアごとの脳梗塞発症率を調べ、既報の脳梗塞、頭蓋内出血、頭蓋外大出血の発症率などを用い、マルコフモデルを作成し、 質調整生存年(QALY)を指標としたNCBをAF患者33,434人で算出した。4研究間でQALYが異なるか否かを明らかにするとともに、抗凝固療法で最大の益が得られるCHA2DS2 -VAScスコア閾値を求めた(1)。 その結果、CHA2 DS2 -VAScスコア 2以上に 27,179人が該当し、ワルファリンを用いた抗凝固療法のQALYは、ATRIAデータを用いた場合が最も小さく(6,290 QALY;95% CI, ±2.3%)、 Danish National Patient Registryデータを用いた場合が最も大きく(24,110 QALY;95% CI, ±1.9%)、両者で約4倍の差があった(P< 0.001)。ワルファリンによる抗凝固療法のため最適 CHA2DS2 -VAScスコア閾値は、ATRIAを用いると3以上、Swedish AFコホートでは2以上、 SPORTIFで は1以上、Danish National Patient Registryで は0以上であった。直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)を 用いた抗凝固療法 のQALYは ATRIAデータを用いた場合が最も小さく(7,080 QALY;95 % CI, ±1.5 %)、Danish National Patient Registryデータを用いた場合が最も大きく(24,770 QALY;95% CI, ±2.0%)、両者 で約4倍の差があった。抗凝固療法のための最適 CHA2DS2 -VAScスコア閾値は、ATRIAを用いる と2以上、Swedish AFコホートやSPORTIFでは 1以上、Danish National Patient Registryでは0 以上となった。著者らは、抗凝固療法未施行の非弁膜症性 AF患者における脳卒中発症率の変動は、抗凝固療法のNCBに影響を及ぼすので、ガイドラインではこの脳梗塞発症率の不確実性をリスク閾値の設定に反映させるべきであると結んでいる。 日本ではAF有病率が米国 の3分の2程度(2)で、 同等のリスクスコアでも脳梗塞発症率は低いと報告されている(3)ことから、日本でもワルファリンやDOACのNCBを勘案したCHADS2スコアや CHA2DS2 -VAScスコアの至適推奨閾値の検討が望まれる。 1. Shah SJ, et al. Ann Intern Med. 2018;169(8):517-527. 2. 日本循環器学会「心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013 年改訂版)」 委員会:http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_inoue_h.pdf(2019 年 3 月 4 日閲覧) 3. Suzuki S, et al. Circ J. 2015;79(2):432-438.