「MMJ - 五大医学誌の論文を著名医師が解説」の記事一覧

日本における院外心停止患者におけるパブリックアクセス除細動と神経学的転帰:集団ベースのコホート研究。
日本における院外心停止患者におけるパブリックアクセス除細動と神経学的転帰:集団ベースのコホート研究。
Public-access defibrillation and neurological outcomes in patients with out-of-hospital cardiac arrest in Japan: a population-based cohort study Lancet 2019 Dec 21;394(10216):2255-2262. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】緊急医療サービス(EMS)要員が到着する前に院外心停止(OHCA)を起こし、ショック状態の心拍動を起こしていた患者では、公衆アクセスによる除細動の80%以上が自然循環の持続的な回復をもたらさない。このような患者の神経学的転帰と生存率は評価されていない。我々は,このような患者の神経学的状態と生存成績を評価することを目的とした。 [METHODS]本研究は,2005年1月1日から2015年12月31日までの間に日本でOHCAを発症した1人の患者(1Zs_2008 ain ainakersZs_2008299 ainakersZs_2008 ainakers784)を対象とした,全国の人口ベースのプロスペクティブな登録簿から得られたコホート研究のレトロスペクティブ解析である。主要転帰はOHCA後30日目の良好な神経学的転帰(Cerebral Performance Category of 1または2)であり,副次的転帰はOHCA後30日目の生存率であった.本研究は、University Hospital Medical Information Network Clinical Trials Registry, UMIN000009918に登録されています。 【FINDINGS】我々は、傍観者から心肺蘇生法を受けた28人の傍観者立会型OHCAとショック性心拍数を持つ28人の患者を同定しました。このうち,2242人(8-0%)の患者はCPR+公衆アクセス除細動で自然循環の回復が得られず,25人(89-5%)の患者は救急隊到着前にCPRのみで自然循環の回復が得られなかった.好ましい神経学的転帰を示した患者の割合は、パブリックアクセス除細動を受けた患者の方が受けなかった患者よりも有意に高かった(845[37-7%]対5676[22-6%];傾向スコアマッチング後の調整オッズ比[OR]、1-45[95%CI 1-24-1-69]、p<0-0001)。OHCA後30日目に生存した患者の割合も、パブリックアクセス除細動を受けた患者の方が受けなかった患者よりも有意に高かった(987[44-0%] vs 7976[31-8%];傾向スコアマッチング後の調整済みオッズ比[OR]、1-31[95% CI 1-13-1-52]、p<0-0001)。 [INTERPRETATION]本知見は、パブリックアクセス除細動の利点、およびコミュニティにおける自動体外式除細動器のアクセス性と利用可能性の向上を支持するものである。 第一人者の医師による解説 AEDを用いた市民へのCPR教育活動推進の意義付けとなる成果 中島 啓裕/安田 聡(副院長・部門長) 国立循環器病センター心臓血管内科冠疾患科・心臓血管系集中治療科 MMJ.June 2020;16(3) 近年、市民による自動体外式除細動器(AED)使用が心室細動(VF)による院外心停止患者の蘇生率向上に有効である可能性が報告された(1)。日本では約60万台のAEDが設置されている。各団体のAED普及啓発活動にもかかわらず、市民によるAED除細動実施率は5%程度と低い。 市民によるAED除細動患者の約80%は救急隊現場到着時点では心停止が持続していることから、AEDを運び込むまでの心肺蘇生(CPR)中断や救急通報の遅れなどのデメリットが除細動不成功例の予後に与える影響を明らかにすれば、より適正なAED使用を推奨できると考えられる。しかしながら、ガイドラインによりAED使用が強く推奨されている現代において、AED使用群と未使用群で予後を比較する無作為化対照試験の実施は困難である。 そこで、本研究では日本の総務省消防庁によるウツタイン様式救急蘇生統計データを活用した。救急隊現場到着時点のVF持続患者を対象に、事前に市民がAEDを用いてCPRを実施した患者とAED なしのCPRを実施した患者の予後が比較された。 2005~15年に日本全国で発生した1,299,784 人の院外心停止患者から、市民による目撃があり CPRが実施されたVF心停止患者28,019人のうち、救急隊現場到着時点の心停止持続患者27,329 人(CPR+ AED併用群 2 ,242 人 、CPR単独群 25,087人)を解析した。 背景因子を傾向スコアで調整したところ、CPR+ AED併用群はCPR単独群 と比較して、発症から救急隊覚知までに中央値1分の遅れ(2分 対 1分:P<0.0001)を認めたものの、 主要評価項目である30日後の神経学的転帰良好な割合は有意に高値であった(38% 対 23%:調整 オッズ比 , 1.45; 95% CI, 1.24~1.69:P< 0.0001)。さらに、救急通報時から救急隊現着までにかかった時間(中央値8分[四分位範囲6~10 分])別の感度分析でも同様の結果が得られた。 本研究では、AEDによる除細動実施で心拍再開 (AEDの主要効果)を得られなかった患者においても、AEDが神経学的予後を改善させうることが示された。AEDの音声ガイダンスなどがCPRの質の改善に寄与していた可能性が示唆された。本結果は救急通報~救急隊現着までの時間に依存しないことから、日本全国において一般化されるものであり、市民に対するAEDを用いたCPR教育活動を推進していく意義付けとなるものと考える。 一般市民のAED使用は、たとえ救急隊の現場到着までに患者の自己心拍再開を得られなかったとしても、 その後の患者の良好な予後につながるという点が本研究からのメッセージである。 1. Kitamura T et al. N Engl J Med. 2016;375(17):1649-1659.
片頭痛の急性期治療における痛みと最も煩わしい関連症状に対するウブロゲパントとプラセボの効果。ACHIEVE II Randomized Clinical Trial(無作為化臨床試験)。
片頭痛の急性期治療における痛みと最も煩わしい関連症状に対するウブロゲパントとプラセボの効果。ACHIEVE II Randomized Clinical Trial(無作為化臨床試験)。
Effect of Ubrogepant vs Placebo on Pain and the Most Bothersome Associated Symptom in the Acute Treatment of Migraine: The ACHIEVE II Randomized Clinical Trial JAMA 2019 Nov 19;322(19):1887-1898. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】Ubrogepantは、片頭痛の急性期治療薬として検討されている経口カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗薬である。 【目的】片頭痛発作1回の急性期治療におけるubrogepantの有効性と忍容性をプラセボと比較して評価することである。 【デザイン・設定・参加者】米国で実施した第3相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照単発臨床試験(ACHIEVE II)(プライマリーケアおよび研究クリニック99施設、2016年8月26日~2018年2月26日)。参加者は、月に2~8回の片頭痛発作を経験している前兆のある片頭痛または前兆のない片頭痛の成人である。 【介入】中等度または重度の疼痛強度の片頭痛発作に対してウブロゲパント50mg(n=562)、ウブロゲパント25mg(n=561)またはプラセボ(n=563)である。【主要評価項目及び測定 【方法】有効性の主要評価項目は、服用後2時間における疼痛緩和及び参加者が指定した最も煩わしい片頭痛関連症状(羞明、幻覚、吐き気のうち)の消失とした。 【結果】無作為化参加者1686名のうち1465名が試験治療を受け(安全集団、平均年齢41.5歳、女性90%)、1465名のうち1355名が有効性として評価可能であった(92.5%)。2時間後の痛みの消失は、ウブロゲパント50mg群では464人中101人(21.8%)、ウブロゲパント25mg群では435人中90人(20.7%)、プラセボ群では456人中65人(14.3%)に認められました(50mg vs プラセボの絶対差、7.5%、95%CI, 2.6%-12.5%; P = .01; 25mg vs プラセボ, 6.4%; 95%CI、 1.5%-11.5%; P = .03)。2時間後に最も煩わしい関連症状がなかったと報告されたのは、ウブロゲパント50mg群463人中180人(38.9%)、ウブロゲパント25mg群434人中148人(34.1%)、そしてプラセボ群456人中125人(27.4%)であった。4%)であった(50mg対プラセボの絶対差、11.5%;95%CI、5.4-17.5%;P = .01;25mg対プラセボ、6.7%;95%CI、0.6-12.7%;P = .07)。いずれかの投与後48時間以内に最も多く見られた有害事象は、吐き気(50 mg、488人中10人[2.0%];25 mg、478人中12人[2.5%];およびプラセボ、499人中10人[2.0%])およびめまい(50 mg、488人中7人[1.4%];25 mg、478人中10人[2.1%];プラセボ、499人中8人[1.6%])であった。 【結論と妥当性】成人の片頭痛患者において、ウブロゲパントの急性期治療では、プラセボと比較して、50mgと25mgの用量で2時間後の痛みの解放率が有意に高く、50mgの用量でのみ2時間後の最も煩わしい片頭痛関連症状の欠如がみられた。ウブロゲパントの他の片頭痛急性期治療に対する有効性を評価し、非選択的患者集団におけるウブロゲパントの長期安全性を評価するために、さらなる研究が必要です。 【試験登録】ClinicalTrials. gov Identifier:NCT02867709。 第一人者の医師による解説 トリプタン無効例や禁忌例の第1選択候補 反復投与での安全性検証が必要 今井 昇 静岡赤十字病院脳神経内科部長 MMJ.June 2020;16(3) 片頭痛は急性期に頭痛だけではなく随伴症状により日常生活が著しく障害される神経疾患である。 片頭痛の急性期治療にトリプタン系薬剤や非ステ ロイド系抗炎症薬(NSAID)が使用されているが、効果が不十分である、あるいは副作用や禁忌項目のために使用できない患者は多い。 多くの研究によりカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は片頭痛の病態に重要な役割を演じていることが示され、CGRPを標的とした治療薬が開発されている。すでに抗 CGRPモノクロー ナル抗体は2019年に欧米で片頭痛予防薬として上市されている。ユブロゲパントは小分子の経口 CGRP受容体拮抗薬で、片頭痛急性期治療薬として開発された。多施設ランダム化二重盲検プラセボ 対照第 IIb相試験において、ユブロゲパントの有効性が5用量(1、10、25、50、100mg)で検討され、 25、50、100mgはプラセボに比べ服薬2時間後 の頭痛消失率が有意に高かった。 本論文は、ユブロゲパント 25、50mgの有効性 と安全性を評価するために、米国99施設で実施された多施設ランダム化二重盲検プラセボ対照第 III 相(ACHIEVE II)試験の報告である。18 ~ 65歳(平 均41.5歳)の前兆のない片頭痛または前兆のある 片頭痛の病歴を1年以上有し、発作に中等度以上の光過敏、音過敏、悪心のいずれかの随伴症状が認められる1,686人(女性90%)を対象に、中等度・ 重度の発作に対してユブロゲパント 25、50mg、 またはプラセボが投与された。主要評価項目は投与2時間後の頭痛消失と最も負担となる随伴症状(最 大負担随伴症状)の消失。最大負担随伴症状の内訳 は光過敏57%、音過敏26%、悪心17%。 解析の 結果、2時間後 の 頭痛消失率 は50mg群21.8%、 25mg群20.7%、プラセボ群14.3%で、50mg群、 25mg群ともにプラセボ群と比較し有意な頭痛改 善効果が示された(それぞれP=0.01、P=0.03)。 最大負担随伴症状 の 消失率 は50mg群38.9 %、 25mg群34.1%、プラセボ群27.4%で、50mg 群のみプラセボ群に対し有意な効果が認められた(P =0.01)。投与48時間以内の重篤な有害事象はなく、主な事象は悪心、めまいで各群に有意差はなかった。 本試験におけるユブロゲパント 50mgの有効性と安全性は、トリプタン系薬剤で報告されているものとおおむね同程度であることが示唆される。現在他の経口 CGRP受容体拮抗薬の開発も進んでいる。経口 CGRP受容体拮抗薬はトリプタン系薬 剤やNSAIDでみられる心血管・消化器への影響が少ないと考えられており、新しい片頭痛急性期治 療薬として期待される。ただ、以前開発された経口 CGRP受容体拮抗薬は肝機能障害のため開発中止に至った経緯を考慮すると、今後反復投与での安全性の確認が必要と思われる。
人から人への感染を示す2019年新型コロナウイルスに関連した肺炎の家族性クラスター:研究報告。
人から人への感染を示す2019年新型コロナウイルスに関連した肺炎の家族性クラスター:研究報告。
A familial cluster of pneumonia associated with the 2019 novel coronavirus indicating person-to-person transmission: a study of a family cluster Lancet 2020 Feb 15;395(10223):514-523. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】中国湖北省武漢市で、新型コロナウイルスに関連した肺炎の集団発生が報告された。罹患した患者は、潜在的な感染源である地元のウェットマーケットと地理的に関連していた。本研究では,武漢訪問後に中国広東省深-市に帰国し,原因不明の肺炎を呈した家族集団の患者5名と,武漢に旅行していない追加家族1名の疫学,臨床,検査,放射線,微生物学的所見を報告する.これらの患者の遺伝子配列の系統解析を行った。 【FINDINGS】2020年1月10日から、2019年12月29日から2020年1月4日の間に深センから武漢に渡航した患者6人の家族を登録した。武漢に渡航した家族6人のうち、5人が新型コロナウイルスに感染していることが確認された。さらに、武漢に渡航していない家族1名が、家族4名と数日間接触した後、ウイルスに感染しました。武漢の市場や動物との接触はなかったが、2名は武漢の病院を受診したことがあった。家族5名(36-66歳)が感染後3-6日で発熱,上気道症状,下痢,あるいはこれらの複合症状を呈した.発症から6-10日後に当院(香港大学深-病院)を受診した。彼らと無症状の子供1人(10歳)には、放射線学的に地上の肺の混濁が見られた。高齢者(60歳以上)には,より多くの全身症状,広範なX線上の肺の地表面変化,リンパ球減少,血小板減少,CRPと乳酸脱水素酵素値の上昇がみられた.これら6人の患者の鼻咽頭または咽頭スワブは,ポイントオブケア多重RT-PCRによって既知の呼吸器系微生物に対して陰性であったが,5人の患者(成人4人と子供)はこの新規コロナウイルスの内部RNA依存RNAポリメラーゼおよび表面スパイク蛋白をコードする遺伝子に対してRT-PCR陽性であり,サンガー配列決定によって確認された.これら5名のRT-PCRアンプリコンと2名のフルゲノムの次世代シーケンサーによる系統解析の結果、このウイルスは中国のカブトコウモリに見られるコウモリ重症急性呼吸器症候群(SARS)関連コロナウイルスに最も近い新規コロナウイルスであることが判明した。 【解釈】我々の発見は、病院や家庭環境におけるこの新規コロナウイルスの人対人感染や、他の地域の旅行者の感染報告と一致するものである。 【資金提供】The Shaw Foundation Hong Kong, Michael Seak-Kan Tong, Respiratory Viral Research Foundation Limited, Hui Ming, Hui Hoy and Chow Sin Lan Charity Fund Limited, Marina Man-Wai Lee, the Hong Kong Hainan Commercial Association South China Microbiology Research Fund, Sanming Project of Medicine (Shenzhen) and High Level-Hospital Program (Guangdong Health Commission)を含む。) 第一人者の医師による解説 今でこそ常識だが 一家族のクラスター研究がもたらした大きな一歩 岩田 健太郎 神戸大学医学部附属病院感染症内科教授 /診療科長 MMJ.June 2020;16(3) 新しい感染症(新興感染症)が勃発したときは、 その感染症の正体を突き止めることが急務となる。それは漸近的に行われる。一足でカント的「物自体」を掴み取ることは不可能だ(もちろん、ずっと時間をかけても掴み取れないかもしれないのだが)。よって、研究者らは寄ってたかって、それも“急いで”真実に近づこうとする。感染症のアウトブレイク時は「研究しながら、対策する」という「急ぎの態度」が必要だ。ゆっくりと腰を落ち着けてやる研究とは性格を異にする。 本研究も、今からルックバックすると「なーんだ」という研究だ。しかし、本研究があったからこそ「なーんだ」なのである。すべての研究が先人の肩の上に乗っているとはよく言われるが、本研究のもたらした恩恵、すなわちSARS-CoV-2(論文発 表時は2019-nCoV)がヒト -ヒト感染を起こすという、現在では誰でも知っている「常識」を初めて看破した。その過程をここで追体験したい。 本研究は2019年12月29日から翌年1月4日 に広東省深圳市から湖北省武漢まで旅行した家族 6人を調査した。そのうち5人が新型コロナウイルスに感染し、香港大学深圳病院を受診。1月1日 に1人が熱と下痢を発症し、その後他の家族も発症した。4人は症状があったが、10歳の子は無症状だった。しかし、胸部 CTではすりガラス陰影が認められた。新型コロナウイルス感染はRT-PCR法で確定診断された。さらに武漢に行かなかった別の家族1人も同じ感染症に罹患し、RT-PCR法で診断が確定した。 聞き取り調査により、当初感染源と目された海鮮市場や動物との接触は否定された。武漢で接触した親戚にも発熱や咳が認められた。また、そうした親戚の中には肺炎として12月29日に武漢の病院を受診し、別の親戚が付き添っていた。武漢に行かなかった家族の感染が判明した事実も合わせ、 ヒト─ヒト感染があったことが示唆された。その後 ウイルスの全ゲノムシークエンシングが行われ、 遺伝子情報を用いた系統樹が作成された。リニエイジ Bのベータコロナウイルスに典型的な配列が RNAポリメラーゼ、スパイク蛋白、全ゲノムから見いだされた。患者2と患者5の全ゲノムはほぼ同じで、違いは塩基2つ分だけであった。 5月中旬でも 世界中で 猛威 を ふ る っ て い る COVID-19。私の周りでも院内外のアウトブレイクが起きている。アウトブレイクは巨大な対策を要し、それは担当者にとって苦痛以外の何物でもない。しかし、そこから得る新たな学びもある。まだ まだ分からないことの多いCOVID-19。学びを重ね、 理解を深め、少しでも近づき続けたいと考えながら本論文も読み直した。
2019年新型コロナウイルスのゲノム特性解析と疫学:ウイルスの起源と受容体結合の意味するところ
2019年新型コロナウイルスのゲノム特性解析と疫学:ウイルスの起源と受容体結合の意味するところ
Genomic characterisation and epidemiology of 2019 novel coronavirus: implications for virus origins and receptor binding Lancet 2020 Feb 22;395(10224):565-574. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】2019年12月下旬、中国・武漢で原因不明の微生物によるウイルス性肺炎を呈した患者が報告された。その後、原因病原体として新規コロナウイルスが同定され、2019 novel coronavirus(2019-nCoV)と仮称された。2020年1月26日現在、2019-nCoV感染症は2000例以上確認されており、そのほとんどが武漢在住者または訪問者であり、ヒトからヒトへの感染が確認されている。 【方法】武漢の華南水産市場を訪問した9名の入院患者から採取した気管支肺胞洗浄液と培養分離株のサンプルについて次世代シーケンサーで解析を行った。これらの個体から2019-nCoVの完全および部分ゲノム配列が得られた。ウイルスコンティグをサンガーシークエンスで連結して全長ゲノムを得、末端領域はcDNA末端の迅速増幅で決定した。これらの2019-nCoVゲノムと他のコロナウイルスのゲノムの系統解析は、ウイルスの進化の歴史を決定し、その起源と思われるものを推測するのに役立てられた。ホモロジーモデリングにより、ウイルスの受容体結合の可能性を探った。 【調査結果】9人の患者から得られた2019-nCoVの10個のゲノム配列は、99-98%以上の配列同一性を示し、極めて類似していた。注目すべきは、2019-nCoVは、2018年に中国東部の舟山で採取された2つのコウモリ由来の重症急性呼吸器症候群(SARS)様コロナウイルス、bat-SL-CoVZC45およびbat-SL-CoVZXC21と近縁(88%の同一性)でしたが、SARS-CoV(約79%)およびMERS-CoV(約50%)より遠かったということです。系統解析の結果、2019-nCoVはベタコロナウイルス属のサルベコフイルス亜属に属し、最も近縁のbat-SL-CoVZC45およびbat-SL-CoVZXC21との枝長が比較的長く、SARS-CoVとは遺伝的に異なることが判明しました。注目すべきは、相同性モデリングにより、2019-nCoVは、いくつかの重要な残基でアミノ酸が異なるにもかかわらず、SARS-CoVと同様の受容体結合ドメイン構造を持っていることが明らかになった。 【解釈】2019-nCoVはSARS-CoVから十分に分岐し、新しいヒト感染性ベータコロナウイルスと見なされる。我々の系統解析は、コウモリがこのウイルスの本来の宿主である可能性を示唆しているが、武漢の海産物市場で売られている動物が、ヒトへのウイルス出現を促進する中間宿主である可能性もある。重要なのは、構造解析により、2019-nCoVがヒトのアンジオテンシン変換酵素2受容体に結合する可能性があることが示唆されたことである。本ウイルスの今後の進化、適応、拡散について早急に調査する必要がある。 【資金提供】中国国家重点研究開発計画、中国感染症制御・予防国家重点プロジェクト、中国科学院、山東第一医科大学 第一人者の医師による解説 ヒトのアンジオテンシン変換酵素2受容体に結合する可能性を示唆 下畑 享良 岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野教授 MMJ.June 2020;16(3) 新型 コ ロ ナ ウ イ ル ス 感染症(COVID-19)は、 2019年12月に中国武漢で報告されて以来、世界 的にパンデミックとなった。本論文は中国疾病管 理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention;CDC)が 論文発表前に公開し、 直ちに世界で共有されたものである。COVID-19 の病原体であるSARS-CoV-2のゲノム配列を系統 解析し、その由来と構造を検討している。 まず武漢の海鮮市場を訪 れ た8人 を 含 む9人 の入院患者の気管支肺胞洗浄液と咽頭拭い液からウイルス株を培養分離し、次世代シークエンサーを用いて解析している。9人から分離したSARSCoV-2のゲノム配列は類似し、99.98%以上の同一性があった。このことからこのウイルスは、生じてからの時間経過は短いことが示唆される。 次に、取得した完全ないし部分的なゲノムシーケンスを用いてウイルスコンティグ(ゲノム断片)を接続、完全長ゲノムを取得し、さらにcDNA末端 の増幅により末端領域を決定した。このウイルス ゲノムと他のコロナウイルスの系統解析を行い、 ウイルスの進化の歴史を決定し、起源を推測した。 結果として、SARS-CoV-2は、2018年に中国東部で収集された重症急性呼吸器症候群(SARS)類似の2つのコウモリ由来のコロナウイルス(bat-SLCoVZC45およびbat-SL-CoVZXC21)と88% の同一性があったが、SARS および中東呼吸器症 候群(MERS)の 病原体 で あるSARS-CoVおよびMERS-CoVとは、同一性 が そ れ ぞ れ 約79%、 約50%と低いことが判明した。つまりSARSや MERSの病原体よりもコウモリ由来コロナウイルスに近縁であるが、同一ではなく、おそらく海鮮市場で売られていた動物がコウモリから感染し、中間宿主となり、ゲノム配列が変化したものと推測された。実際に、この時期のコウモリは冬眠中で、 コウモリからヒトへの直接の感染は考えにくかった。また、ウイルスが感染する際に使用する受容体としては、SARS-CoVと同じアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体を用いることが分かった。 結論として、系統解析において、SARS-CoV-2は βコロナウイルス属サルベコウイルス亜属に分類 さ れ、最 も 近 い 近縁 のbat-SL-CoVZC45やbatSL-CoVZXC21のように比較的長い分枝長を持ち、 SARS-CoVやMERS-CoVとは異なっていた。また、 SARS-CoV-2がヒトのACE2受容体に結合できる可能性があることが示唆された。
ヒトの便中における種々のマイクロプラスチックの検出。プロスペクティブ・ケースシリーズ。
ヒトの便中における種々のマイクロプラスチックの検出。プロスペクティブ・ケースシリーズ。
Detection of Various Microplastics in Human Stool: A Prospective Case Series Ann Intern Med 2019 Oct 1;171(7):453-457. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】マイクロプラスチックは自然環境中に遍在している。マイクロプラスチックの摂取は海洋生物で報告されており、粒子が食物連鎖に入る可能性がある。 【目的】ヒトの糞便にマイクロプラスチックがあるかどうかを調べ、ヒトがマイクロプラスチックを不本意に摂取しているかどうかを調べる。 【デザイン】段階的な指示に従って食事日記を書き、便を採取したプロスペクティブケースシリーズ。 【参加者】33歳から65歳の健康なボランティア8名 【測定方法】化学物質消化後、フーリエ変換赤外顕微鏡を用いて、便サンプル中の一般的な10種類のマイクロプラスチックの存在と形状を分析した。 【結果】8つの便サンプル全てがマイクロプラスチック陽性であった。ヒトの便10gあたり中央値で20個のマイクロプラスチック(大きさ50-500μm)が同定された。全体として9種類のプラスチックが検出され、ポリプロピレンとポリエチレンテレフタレートが最も多く検出された。 【結論】ヒトの便からは様々なマイクロプラスチックが検出され、異なる供給源から不用意に摂取されたことが示唆された。マイクロプラスチックの摂取の程度と人間の健康への潜在的影響についてさらなる研究が必要である。 第一人者の医師による解説 生体検体中のマイクロプラスチック 検出方法のさらなる研究必要 石橋 由基/岡村 智教(教授)  慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室 MMJ.April 2020;16(2) プラスチックの生産量は年間3億5000万トンになり、指数関数的に増加している。マイクロプラスチックは5mm以下のプラスチック粒子と定義されることが多いが、それによる水中、地上、空気の汚染ならびに健康への影響が懸念されている。いくつかの先行研究では、動物において胃腸の組織や臓器への移行が確認されている。 しかし、人体への影響に関する疫学研究はいまだ不十分であり、世界保健機関(WHO)は「プラスチック粒子、特にナノレベルの粒子の物理的なハザードに関連する毒性の確かな結論を引き出す十分な情報はないが、 懸念であることを示唆する信頼できる情報はない」と述べている(1),(2)。 本研究では、日本(東京)を含む8カ国、8人のボランティアから便を採取し、便中のマイクロプラスチックを分析した。また曝露要因を調べるために、採取前6~7日間の食事内容や生活習慣を調査した。結果として8検体すべての便サンプルがマイクロプラスチック検査で陽性を示し、便10gあたり中 央値20個のマイクロプラスチックが確認された。 全体として、9種類のプラスチックが検出され、ポリプロピレンとポリエチレンテレフタレートが最も多かった。便中のマイクロプラスチックに関する報告は本研究が初であり、その点でこの研究は新しい知見を追加している。しかしながら、結果の解釈には注意が必要である。   まず著者らも研究の限界として言及しているように、サンプル数が少なく、サンプルの代表性に問題がある。さらにマイクロプラスチック測定上の問題として、(1)前処理に使用した固定剤(ブロノポール)がポリマー特性に与える影響に関する検討が論文中で示されていない(2)定量結果の精度を確認するためのポジティブコントロールについての記載がない(3)ネガティブコントロールの詳細が示されていない(標準誤差、サンプル数も含めた報告が必要である)(4)検査の際の実験室環境に関する情報が記載されていない──などの問題 が挙げられる。 上記は水中におけるマイクロプラスチック調査に用いられる測定品質の評価基準(3)であるが、便中の測定でも同様の基準が必要と考えられる。その意味で、今後は健康への影響のエビデンスだけでなく、生体検体中のマイクロプラスチック測定のバリデーションに関する研究の蓄積も求められている。 1. 国立医薬品食品衛生研究所:食品安全情報(化学物質) No.20 (2019) 別添     【WHO】情報シート:飲料水中マイクロプラスチック . URL: https://bit.ly/2PRcfA7 2. WHO (2019). Information sheet: Microplastics in drinking-water. URL:https://bit.ly/2QdT56n 3.Koelmans AA et al. Water Res. 2019;155:410-422.
英国の国民保健サービスのパフォーマンスと他の高所得国との比較:観察的研究。
英国の国民保健サービスのパフォーマンスと他の高所得国との比較:観察的研究。
Performance of UK National Health Service compared with other high income countries: observational study BMJ 2019 Nov 27 ;367:l6326 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】英国国民保健サービス(NHS)は、持続的な財政圧迫、需要の増加、社会的ケアの削減に直面していることから、他の高所得国の医療制度と比較してどのように機能しているかを明らかにする。 【デザイン】ユーロスタットや経済協力開発機構などの主要国際機関の二次データを用いた観察研究 【設定】英国および高所得比較対象9か国の医療制度。 【主なアウトカム指標】人口と医療保障、医療と社会支出、構造的能力、利用、医療へのアクセス、医療の質、人口の健康という7つの領域にわたる79指標。 【結果】英国は2017年に調査した他のすべての国と比較して、一人当たりの医療費が最も少なく(英国3825ドル(2972円、3392ユーロ)、平均5700ドル)、支出の伸びはやや低かった(過去4年間の国内総生産比は平均0.07%に対し、0.02%)。英国は、利用率(入院数)が平均レベルであるにもかかわらず、アンメットニーズが最も低く、一人当たりの医師と看護師の数も最低レベルであった。英国は平均寿命(平均 81.7 歳に対し 81.3 歳)と乳がん、子宮頸がん、結腸がん、直腸がんなどのがんの生存率が平均をわずかに下回っていた。腹部手術後の術後敗血症(10万人退院あたり英国2454人、平均2058人)、急性心筋梗塞の30日死亡率(英国7.1%、平均5.5%)、虚血性脳炎(英国9.6%、平均6.6%)など、いくつかの医療サービスのアウトカムが悪かったが、英国は、平均を下回っていた。6%)、関節手術後の深部静脈血栓症は平均より低く、医療関連感染も少なかった。 【結論】NHSは、医療サービスの成果を含め、良好なパフォーマンスを示しているが、支出、患者の安全、国民の健康はすべて平均以下からせいぜい平均であった。これらの結果を総合すると、NHSが人口動態の圧力が高まっているときに同等の健康成果を達成したいのであれば、労働力と長期ケアの供給を増やすためにもっと支出し、社会支出の減少傾向を減らして比較対象国の水準に合わせる必要があるかもしれないことが示唆される。 第一人者の医師による解説 医療従事者確保や介護へさらに資金を投入しなければ 公共医療システム維持は困難 西岡 祐一(助教)/今村 知明(教授) 奈良県立医科大学公衆衛生学講座 MMJ.April 2020;16(2) 英国の英国保健サービス(UK National Health Service;NHS)は1948年に設立された世界で 最も包括的な公共医療システムの1つである(1)。近年 NHSは「患者の需要を満たす」「費用の負担を減 らす」という2つの相反する問題に直面している。 世界のあらゆるヘルスケアサービスが同じ問題に直面しており、患者の需要と医療・介護費用のバランスは難しい。実際、英国では2010年から17年までのヘルスケアの需要増大に比較し、費用の負 担は増えていないと言われている(2)。英国の現状と目指すべき方向性を提案するために、著者らは、NHSと高所得国、経済協力開発機構(OECD)加盟国35カ国、欧州連合(EU)加盟国28カ国のヘルス ケアデータを用いて医療費、アクセス、質、予後などさまざまな指標について記述疫学研究を実施した。 英国の1人当たりの医療費は高所得国で最も低く、 OECDやEUの平均程度であった。英国の平均寿命、さまざまな悪性腫瘍の5年生存率は、高所得国の平均よりやや低い傾向にあった。関節手術後の深部静脈血栓症や医療関連感染症の発生率は高所得国の平均より低かったが、健康指標水準は高所得国で最も悪く、さらに過去10年間で増悪傾向であった。 また、英国ではEU国籍の医療従事者が2015年以降急速に減少している。英国のEU離脱に関連していると考えられているが、特に人口当たりの看護師数は急速に減少している。このように社会情勢の変化も相まって、このままでは英国が他の高所 得国と同じレベルの公共医療システムを維持できなくなる可能性がある。 NHSが他の高所得国と同等の健康指標水準を達成するために、あるいは健康指標の悪化に歯止めをかけるためには、人口当たりの医師数、看護師数や介護費用など他の国と比べて低い水準にあるもの、健康指標が悪化しているものに積極的に資金を投入していく必要がある。 本研究は、他国との比較により英国の現状や指標の推移を明らかにしただけでなく、データに基づいた政策提言を行った。さらに、英国のEU離脱など予測困難な社会情勢の変化により、ヘルスケアサービスが影響を受けたことを示唆する有用な分析例である(3)。ただし、本研究では独立して設定・運営されている英国の4つの構成国(イングランド、 スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)の全体を集計しており、構成国間で差がある可能性 もあり、解釈には注意が必要である。引き続き、ヘルスケア関連のデータベースを用いた疫学研究が増加し、医学のさらなる発展につながることを期待したい。 1. Klein R et al. N Engl J Med. 2004;350(9):937-942. 2. Mossialos E et al. Lancet. 2018;391(10125):1001-1003. 3. Goddard AF et al. JAMA. 2016;316(14):1445-1446.
急性骨髄性白血病の小児および若年成人患者における侵襲性真菌症に対するカスポファンギンとフルコナゾールの予防投与効果。無作為化臨床試験。
急性骨髄性白血病の小児および若年成人患者における侵襲性真菌症に対するカスポファンギンとフルコナゾールの予防投与効果。無作為化臨床試験。
Effect of Caspofungin vs Fluconazole Prophylaxis on Invasive Fungal Disease Among Children and Young Adults With Acute Myeloid Leukemia: A Randomized Clinical Trial JAMA 2019 Nov 5;322(17):1673-1681. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】急性骨髄性白血病の小児、青年、若年成人は、酵母とカビの両方による生命を脅かす侵襲性真菌症のリスクが高い。 【目的】急性骨髄性白血病化学療法後の好中球減少時の侵襲性真菌症および侵襲性アスペルギルス症に対してカスフォンギンとフルコナゾールの予防の有効性を比較することである。 【デザイン、設定および参加者】この多施設共同無作為化オープンラベル臨床試験は、米国およびカナダの115施設で治療を受けている新規診断のde novo、再発、二次性急性骨髄性白血病の3カ月から30歳の患者を登録した(2011年4月から2016年11月、最終フォローアップ2018年6月30日) 【介入】参加者を最初の化学療法サイクルでカスフォンギンを用いた予防(n=257)またはフルコナゾール(n=260)にランダムに割り付けた。 【主要アウトカムおよび測定法】主要アウトカムは、盲検中央判定による侵襲性真菌症の証明または可能性の判定であった。副次的アウトカムは、侵襲性アスペルギルス症、経験的抗真菌療法、および全生存とした。 【結果】2回目の中間有効性解析と394人の患者に基づく予定外の無益性解析で無益性が示唆されたため、試験は登録が締め切られた。無作為化された517名(年齢中央値9歳[範囲:0~26歳],女性44%)のうち,508名(98%)が試験を完遂した。23 件の証明または可能性のある侵襲性真菌症イベント(カスポファンギン 6 件対フルコナゾール 17 件)には、カビ 14 件、酵母 7 件、さらに分類されない真菌 2 件が含まれていた。5ヵ月間の侵襲性真菌症の累積発生率は,カスポファンギン群3.1%(95% CI, 1.3%-7.0%) vs フルコナゾール群7.2%(95% CI, 4.4%-11.8%)(overall P = .03)であった(logank検定).また、証明または可能性のある侵襲性アスペルギルス症の累積発生率は、カスポファンギン群で0.5%(95%CI、0.1%-3.5%)、フルコナゾール群で3.1%(95%CI、1.4%-6.9%)だった(ログランクテストによる全P = 0.046)。経験的抗真菌療法(カスポファンギン 71.9% vs フルコナゾール 69.5%、全体 P = 0.78、log-rank 検定)および 2 年全生存率(カスポファンギン 68.8% vs フルコナゾール 70.8%、全体 P = 0.66 log-rank 検定)は統計的に有意差を認めないこととなりました。最も一般的な毒性は、低カリウム血症(カスポファンギン22 vs フルコナゾール13)、呼吸不全(カスポファンギン6 vs フルコナゾール9)、アラニントランスアミナーゼ上昇(カスポファンギン4 vs フルコナゾール8)だった。 【結論と関連性】急性骨髄性白血病の小児、青年、若年成人において、フルコナゾールと比較してカスポファンギンで予防を行うと侵入真菌症発生率は著しく低下する結果となった。本結果は、カスポファンギンが侵襲性真菌症に対する予防薬として考慮される可能性を示唆しているが、無益性を示唆すると思われる予定外の中間解析による早期終了により、研究の解釈には限界がある。 【試験登録】 ClinicalTrials. gov Identifier:NCT01307579. 第一人者の医師による解説 至適予防法検証には 抗糸状菌活性のあるアゾール系とキャンディン系の比較必要 宮入 烈 国立成育医療研究センター感染症科診療部長 MMJ.April 2020;16(2) 深在性真菌症は小児の急性骨髄性白血病(AML) 患者の予後を左右する重大な合併症である。成人AMLでは、ポサコナゾールの予防的投与が欧米のガイドラインで推奨されている。一方、小児 AML ではいまだに抗糸状菌活性の乏しいフルコナゾールが推奨されている。本論文は、糸状菌および酵母に活性が期待できるカスポファンギンの予防効果をフルコナゾールと比較するため、米国を中心に実施された多施設共同ランダム化比較試験の報告 である。最終的に508人が主解析の対象となり、カスポファンギン群における深在性真菌症の5カ月累積発生率は3.1%でフルコナゾール群の7.2% と有意差が示され、アスペルギルス感染症確定例の発生も有意に少なかった。より有効な選択肢のエビデンス構築にかかわる重要な知見と言えるが、考察すべきポイントが2点挙げられる。 従来、フルコナゾールはカンジダなど酵母による感染症の治療や予防には有効であるが、予後を左右するアスペルギルス症など糸状菌には無効であり問題視されていた。抗糸状菌活性があるカスポファンギンがより有効であるという今回の結果は想定内であったが、真菌症予防としてこの2剤の比較が最適であったかというと疑念が残る。内服可能で抗アスペルギルス活性のあるボリコナゾールなどのアゾール系薬剤との比較が今後の課題と思われる。 著者らは、カスポファンギン投与下の深在性真菌症発生率は成人におけるポサコナゾール 経口投与と同等であり、ポサコナゾールによる有害事象発生率の高さに言及しているが、カスポファンギンの点滴静注投与による不利益については触れていない。 本試験は進行中に独立データモニタリング委員会の指摘により臨時の解析が行われた。そこで、無益性の判定により早期中止となったものの、最終解析で有意差が認められたことは特筆すべきである。大規模なランダム化比較試験は、被験者への負担を伴い、多大な労力と資金がつぎ込まれることから、早期中止により効率化が期待される。 その一方で、今回のように有益な検討が早期に中止される可能性もあることは従来から指摘されている。今回、中間解析と最終解析で結果が一致しなかった理由として、中間解析では侵襲性真菌感染症のない患者の解析が早い段階で行われたため、発生率が低くみつもられたこと、中間解析が行われている間も患者登録が続けられ最終解析に114人が追加されたことが挙げられている。今後の中間解析の在り方について示唆を含む検討といえる。
新規に診断された2型糖尿病患者におけるビルダグリプチンとメトホルミンの早期併用療法とメトホルミン単剤逐次投与の血糖値耐久性(VERIFY):5年間の多施設共同無作為化二重盲検比較試験。
新規に診断された2型糖尿病患者におけるビルダグリプチンとメトホルミンの早期併用療法とメトホルミン単剤逐次投与の血糖値耐久性(VERIFY):5年間の多施設共同無作為化二重盲検比較試験。
Glycaemic durability of an early combination therapy with vildagliptin and metformin versus sequential metformin monotherapy in newly diagnosed type 2 diabetes (VERIFY): a 5-year, multicentre, randomised, double-blind trial Lancet 2019; 394: 1519 -1529. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】糖尿病合併症を遅らせるためには、良好な血糖コントロールを持続させる早期の治療強化が不可欠である。Vildagliptin Efficacy in combination with metfoRmIn For early treatment of type 2 diabetes(VERIFY)は、新たに2型糖尿病と診断された患者を対象に、34か国254施設で行われた無作為化二重盲検並行群間試験である。試験は、2週間のスクリーニング検査、3週間のメトホルミン単剤でのランイン期間、5年間の治療期間からなり、さらに試験期間1、2、3に分割されました。対象は、登録前2年以内に2型糖尿病と診断され、中心静脈血糖値(HbA1c)が48〜58mmol/mol(6-5〜7-5%)、体格指数22〜40kg/m2の18〜70才の患者さんでした。患者さんは1:1の割合で、早期併用療法群と初期メトホルミン単剤療法群に、対話型応答技術システムを用いて、層別化なしの単純無作為化により、ランダムに割り付けられました。患者、治験責任医師、評価を行う臨床スタッフ、データ解析者は、治療割り付けについてマスクされていた。試験期間1では、メトホルミン(1日安定量1000mg、1500mg、2000mg)とビルダグリプチン(50mg)1日2回の早期併用療法、または標準治療のメトホルミン単独療法(1日安定量1000mg、1500mg、2000mg)およびプラセボ1日2回投与が患者さんに実施されました。初回治療でHbA1cを53mmol/mol(7-0%)以下に維持できなかった場合、13週間間隔で連続した2回の定期診察で確認され、メトホルミン単独療法群の患者にはプラセボの代わりにビルダグリプチン50mg1日2回投与が行われ、すべての患者が併用治療を受ける第2期試験に移行した。主要評価項目は、無作為化から初回治療失敗までの期間とし、期間1を通じて無作為化から13週間隔で2回連続した定期診察時にHbA1c測定値が53mmol/mol(7-0%)以上と定義されました。全解析セットには、少なくとも1つの無作為化された試験薬の投与を受け、少なくとも1つの無作為化後の有効性パラメータが評価された患者さんが含まれています。安全性解析セットには、無作為化された試験薬を少なくとも1回投与されたすべての患者さんが含まれます。本試験はClinicalTrials. gov、NCT01528254に登録されている。 【所見】試験登録は2012年3月30日に開始し、2014年4月10日に完了した。スクリーニングされた4524人のうち、2001人の適格者が早期併用療法群(n=998)または初期メトホルミン単剤療法群(n=1003)に無作為に割り付けられた。合計1598名(79-9%)の患者が5年間の研究を完了した。早期併用療法群811例(81-3%)、単剤療法群787例(78-5%)であった。第1期の初回治療失敗の発生率は、併用療法群429例(43-6%)、単剤療法群614例(62-1%)であった。単剤治療群で観察された治療失敗までの期間の中央値は36-1(IQR 15-3-未到達[NR])カ月であり、早期併用療法を受けた患者の治療失敗までの期間の中央値は61-9(29-9-NR)カ月で試験期間を超えているとしか推定できない。5年間の試験期間中、早期併用療法群では単剤療法群と比較して初回治療失敗までの期間の相対リスクの有意な減少が認められました(ハザード比0-51[95%CI 0-45-0-58]、p<0-0001)。いずれの治療法も安全で忍容性が高く、予期せぬ新たな安全性所見はなく、試験治療に関連する死亡例もなかった。 【解釈】新たに2型糖尿病と診断された患者に対して、ビルダグリプチン+メトホルミン併用療法による早期介入は、現在の標準治療である初期メトホルミン単独療法と比較して長期的に大きく持続する利益をもたらす。【助成】ノバルティス。 第一人者の医師による解説 アジア人で効果高いDPP-4阻害薬 日本人の併用はより効果的な可能性 林 高則 医薬基盤・健康・栄養研究所臨床栄養研究部室長/窪田 直人 東京大学医学部附属病院病態栄養治療部准教授 MMJ.April 2020;16(2) 2型糖尿病の初期治療としてはメトホルミンの 使用が推奨されており、その後段階的に治療強化がなされるが、この治療強化はしばしば遅れ(臨床 的な惰性;clinical inertia)、推奨される血糖管理目標を達成できていない患者も多い。近年、初期からの併用療法がメトホルミン単剤療法より有用であるとの報告もあるが、長期の有用性や段階的な併用療法に対する優位性などについては十分なエビデンスがない。今回報告されたVERIFY試験は治療 歴のない2型糖尿病患者を対象に、メトホルミンとビルダグリプチンの早期併用療法による長期の血糖コントロール持続性や安全性について、メトホ ルミンによる単剤療法との比較を行った初めての研究である。 対象は新たに診断された2型糖尿病患者約2,000 人で、5年間の追跡が行われた。結果、早期併用群では単剤群と比較して、初期治療失敗までの期間の相対リスクが有意に低下した(ハザード比[HR], 0.51)。本研究では初期治療失敗後に単剤群はビルダグリプチンを併用する2次治療に移行し、この2次治療失敗までの期間を副次項目として評価して いるが、注目すべきことに早期併用群では2次治療 失敗までの期間の相対リスクも有意に低下している(HR,0.74)。つまり単に2剤併用の有用性を示しているのではなく、早期より併用療法を行うことで長期間の良好な血糖コントロール維持が可能であることが示された。    また、探索的項目として評価された心血管イベント発症も早期併用群において少ないことが示されたが、本研究は心血管イベント発症を評価するためにデザインされておらず、十分な検出力はなく、 結論を出すにはさらなる研究が必要である。 DPP-4阻害薬は非アジア人と比較してアジア人 で血糖低下効果が高いことが示されている(1)。本研究における東アジア地域でのサブ解析においても、早期併用群では初期治療失敗までの期間の相対リスクが大きく低下しており(HR, 0.37)、日本人でもメトホルミンとDPP-4阻害薬の早期併用療法はより効果的である可能性が期待される。 今回の結果は、2型糖尿病患者に対するメトホルミンとビルダグリプチンの早期併用療法は持続的な血糖コントロール達成のために有用であることを示している。ビルダグリプチン以外の薬剤での早期併用療法が同様の結果をもたらすかどうかは 興味深い点であり、現在進行中のGRADE研究(2) (メトホルミンにSU薬、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体 アゴニスト、インスリンのいずれかを併用し、長期の有用性を検討)を含め今後さらなるエビデンス の蓄積が望まれる。 1. Kim YG, et al. Diabetologia. 2013; 56 (4) : 696-708. 2. Nathan DM, et al. Diabetes Care. 2013; 36 (8) : 2254–2261.
妊娠中の母体の糖尿病と子孫の心血管疾患の早期発症:追跡調査の40年と集団ベースのコホート研究。
妊娠中の母体の糖尿病と子孫の心血管疾患の早期発症:追跡調査の40年と集団ベースのコホート研究。
Maternal diabetes during pregnancy and early onset of cardiovascular disease in offspring: population based cohort study with 40 years of follow-up BMJ 2019 Dec 4 ;367:l6398 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】妊娠前または妊娠中に診断された母体性糖尿病と、人生の最初の40年間の子孫の早期発症心血管疾患(CVD)との関連を評価すること。 【デザイン】人口コホート研究。追跡調査は出生時から開始され、CVDの初回診断、死亡、移住、2016年12月31日のいずれか早い方まで継続された。母体糖尿病と子孫における早期発症CVDのリスクとの関連を検討した。Cox回帰は、母親のCVDの既往歴または母親の糖尿病合併症がこれらの関連に影響を与えたかどうかを評価するために使用された。暦年、性、単胎児の状態、母親の因子(偏生、年齢、喫煙、教育、同居、出産時の居住地、出産前のCVDの既往歴)、および父親の出産前のCVDの既往歴について調整が行われた。累積罹患率はすべての個人で平均化し、競合イベントとしてCVD以外の原因による死亡を扱いながら因子を調整した。 【結果】追跡調査の40年までの間に、糖尿病を有する母親の1153人の子孫と糖尿病を有さなかった母親の91 311人の子孫がCVDと診断された。糖尿病を持つ母親の子孫は、早期発症CVD(ハザード比1.29(95%信頼区間1.21〜1.37)、年齢13.07%(12.92%〜13.21%)の40歳で母親の糖尿病にさらされていない子孫の間の累積発生率13.07%(12.92%〜13.21%)、さらされたとさらされていない子孫の間の累積発生率の差4.72%(2.37%〜7.06%))の全体的な率が29%増加していた。兄弟姉妹設計では、全コホートを対象とした対をなした設計と同様の結果が得られた。妊娠前糖尿病(1.34(1.25~1.43))と妊娠糖尿病(1.19(1.07~1.32))の両方が、子供のCVD発症率の増加と関連していた。また、特定の早期発症CVD、特に心不全(1.45(0.89~2.35))、高血圧症(1.78(1.50~2.11))、深部静脈血栓症(1.82(1.38~2.41))、肺塞栓症(1.91(1.31~2.80))の発症率の増加にもばらつきが見られた。CVDの発生率の増加は、小児期から40歳までの早期成人期までの年齢層別にみられた。増加率は、糖尿病合併症を持つ母親の子供でより顕著であった(1.60(1.25~2.05))。糖尿病と併存するCVDを持つ母親の子供の早期発症CVDの発生率が高い(1.73(1.36~2.20))のは、併存するCVDの付加的な影響と関連していたが、糖尿病とCVDとの間の相互作用によるものではなかった(相互作用のP値は0.94)。94) 【結論】糖尿病を持つ母親の子供、特にCVDや糖尿病合併症の既往歴を持つ母親の子供は、小児期から成人期の早期発症CVDの割合が増加している。もし母親の糖尿病が子孫のCVD率の増加と因果関係があるとすれば,出産可能年齢の女性における糖尿病の予防,スクリーニング,治療は,次世代のCVDリスクを低減するのに役立つ可能性がある。 第一人者の医師による解説 母親の糖尿病管理が子どものCVDリスク低下の鍵か 今後の検討を期待 服部 幸子 東都クリニック糖尿病代謝内科 MMJ.April 2020;16(2) 妊娠中の母親の糖尿病状態は子どもの先天性心疾患、肥満、糖尿病と関連することや、将来の心血管疾患(CVD)リスクの上昇に関与していることが知られている。また、糖尿病の母親をもつ子どもは メタボリック症候群やその他のCVD危険因子を有する確率が高いことも知られている。しかし、出生前の母親の糖尿病状態が、子どもの生涯における CVDリスクにどの程度影響を及ぼすかは不明である。 本研究では、妊娠中の母体糖尿病状態が子どもの早期 CVD発症リスク上昇に与える影響について、 デンマーク人のコホート研究のデータに基づいて、 その子どもの出生時より40歳に至るまで検討した。すなわち「異なる糖尿病タイプの母親」、「CVDの既往のある糖尿病の母親」、また「妊娠前に既に糖尿 病合併症のある母親」から生まれた子どものCVD リスク上昇に対する影響を調査した。 その結果、デンマークの243万2000人の新生児を対象に40 年間のフォローアップが実施され、糖尿病の母親をもつ子ども1,153人、および非糖尿病の母親をもつ子ども91,311人がCVDと診断された。糖尿病 の母親をもつ子どもでは早期 CVD発症リスクが ハザード比(HR)で29%上昇し、妊娠前糖尿病のある母親の子ども(HR, 1.34)、妊娠糖尿病の母親をもつ子ども(HR, 1.19)の両方でリスク上昇が認められた。また、母親の糖尿病の種類(1型、2型)による子どもの早期 CVD発症リスクに違いはなかった。糖尿病合併症を有する母親の子どもでは早期 CVD発症リスクはより高く(HR, 1.60)、さらにCVDの既往を伴う糖尿病の母親の子どもではより高いCVD発症リスクが認められた(HR, 1.73)。 以上の結果から、著者らは、子宮内糖尿病環境は子どものCVD発症にあたかもプログラミングされたような影響がある可能性を示唆し、特に、CVD 既往あるいは糖尿病合併症を有する糖尿病の母親からの子どもは早期 CVD発症リスクが高いという事実は公衆衛生戦略を立てる上に重要であると指摘している。今後の研究課題としては、子どもの生涯におけるCVD発症を減少させうる妊娠中の血糖コントロールを挙げている。 本論文には血糖管理状態とリスクの関係についての記載はないが、日本では出生率の低下が進み、一方で妊娠時の母親の年齢が上昇していることから、以前に増して妊娠前糖尿病管理と計画妊娠、妊娠中の厳格な血糖管理が重要と考えられる。これらが今後出生する子どもの生涯におけるCVDを含むさまざまな疾患のリスク低下につながるよう血糖管理基準を含む今後のさらなる検討が期待される。
慢性腎臓病患者におけるBaclofenと脳症の関連性。
慢性腎臓病患者におけるBaclofenと脳症の関連性。
Association of Baclofen With Encephalopathy in Patients With Chronic Kidney Disease JAMA 2019 ;322 (20):1987 -1995. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】少なくとも30の症例報告が、慢性腎臓病(CKD)患者における筋弛緩薬バクロフェンと脳症の関連性を示している。 【目的】CKD患者で、バクロフェンを1日20mg以上と1日20mg未満で新規処方した場合の30日間の脳症リスクを比較することである。副次的目的は,バクロフェン使用者と非使用者の脳症リスクを比較することであった。 デザイン・設定・参加者】カナダ・オンタリオ州(2007~2018年)における,リンクした医療データを用いたレトロスペクティブな人口ベースコホート研究であった。参加者は,CKD(推定糸球体濾過量[eGFR]<60 mL/min/1.73 m2で透析を受けていないと定義)を有する高齢者(66歳以上)15 942名であった。一次コホートは、バクロフェンを新たに処方された患者に限定し、二次コホートの参加者は新規使用者と非使用者とした。 【 暴露】経口バクロフェン20mg/日以上 vs 20mg/日未満の処方。 【主要アウトカムと測定】バクロフェン開始後30日以内にせん妄、意識障害、一過性意識変化、一過性脳虚血発作、特定できない認知症と主病名を定義した脳症の入退院。ベースラインの健康状態の指標で比較群のバランスをとるために、傾向性スコアに治療の逆確率加重を用いた。加重リスク比(RR)は修正ポアソン回帰で、加重リスク差(RD)は二項回帰で求めた。事前に規定したサブグループ解析をeGFRカテゴリー別に実施した。 【結果】主要コホートはCKD患者15 942例(女性9699例[61%],年齢中央値77歳[四分位範囲71~82],バクロフェン開始量20 mg/日以上9707例[61%],<20 mg/日6235例[39%])より構成された。主要転帰である脳症による入院は,バクロフェンを 1 日 20 mg 以上で開始した患者 108/9707 例(1.11%),バクロフェンを 1 日 20 mg 未満で開始した患者 26/6235 例(0.42%)で発生した;重み付け RR,3.54(95% CI,2.24~5.59),重み付け RD,0.80%(95% CI,0.55%~1.04%).サブグループ解析では,絶対リスクはeGFRが低いほど徐々に増加した(重み付けRD eGFR 45~59,0.42%[95% CI,0.19%-0.64%];eGFR 30~44,1.23%[95% CI,0.62%-1.84%];eGFR <30,2.90%[95% CI,1.30%-4.49%],P for interaction,<.001]).非使用者284 263人との二次比較では、バクロフェン使用者の両群で脳症のリスクが高かった(<20 mg/d加重RR, 5.90 [95% CI, 3.59 to 9.70] および≥20 mg/d加重RR, 19.8 [95% CI, 14.0 to 28.0] )。 【結論と関連性】バクロフェンを新規処方されたCKD高齢者において、30日の脳症発生率は低用量と比べ高用量処方者において増加した。検証された場合、これらのリスクはバクロフェン使用の利益と釣り合うものでなければならない。 第一人者の医師による解説 腎排泄型のバクロフェン 脳症発症機序は不明だが臨床上重要な問題を提起 中嶋 秀人 日本大学医学部内科学系神経内科学分野教授 MMJ.April 2020;16(2) バクロフェンは中枢作用型γ -アミノ酪酸受容体 アゴニストであり、筋弛緩薬として脳血管障害、変性疾患、脊椎疾患などによる痙縮の治療に用いられるほか、三叉神経痛や胃食道逆流症にも使用されることがある。またアルコール依存症においては腹側線条体で上昇しているドパミンをバクロフェンが抑制的に調節すると考えられ、その治療効果を示唆する報告もある。 他の多くの筋弛緩薬が肝代謝型であるのに対して、バクロフェンは腎排泄 型のため腎機能低下に伴い排泄半減期が延長する。これまでバクロフェンの使用により脳症を発症した慢性腎臓病(CKD)症例が報告されていることより、腎機能の低下する高齢者においてバクロフェン関連脳症のリスクが上昇することが危惧される。 本論文は、カナダ・オンタリオ州の患者情報を登録したデータベースを利用し、新規にバクロフェンを 処方した66歳以上 のCKD(推算糸球体濾過 量[eGFR] 60 mL/分 /1.73 m2未満であるが透析を受けていないものと定義)患者15,942人を対象に、バクロフェン投与量20mg/日以上群と 20mg/日未満群に分け、バクロフェン投与開始から30日以内の脳症入院リスクを比較した後ろ向きコホート研究の報告である。なお、脳症は、せん妄、見当識障害、一過性の意識の変化、一過性脳虚 血発作、分類不能な認知症の診断として規定された。 その結果、主要評価項目であるバクロフェン開始後 30日以内の脳症による入院は20mg/日以上群で 1.11%、20mg/日未満群では0.42%に発生し、高用量群で脳症入院リスクが上昇した(重み付けリスク比[RR], 3.54[95% CI, 2.24~5.59];重み付けリスク差[RD], 0.80%[0.55~1.04%])。 また、バクロフェン開始から入院までの期間の中央値 は、20mg/日以上群では3日間( 四分位範囲 [IQR], 2~5)、20mg/日未満群 では8日間(3 ~12)であった。さらに、バクロフェン非使用者 284,263人の脳症発症率は0.06%であり、バクロフェン 20mg/日未満群、20mg/日以上群とも脳症入院リスクが高かった(重み付けRRはそれぞれ5.90[95 % CI, 3.59~9.70]、19.8[14.0 ~28.0])。 バクロフェンには眠気、めまい、ふらつきなどの副作用があるが、過剰な血中バクロフェンが脳症を起こす機序については不明な点も多い。しかし、新規にバクロフェンが開始された高齢 CKD患者において、低用量群に比べて高用量群では、より高頻度かつより早期に脳症が発症することから、臨床上重要な問題を提起しており、興味深い研究結果と考えられる。
世界の国や地域における末期腎臓病のケアの状況:国際断面調査。
世界の国や地域における末期腎臓病のケアの状況:国際断面調査。
Status of care for end stage kidney disease in countries and regions worldwide: international cross sectional survey BMJ 2019 ;367:l5873 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】腎代替療法(透析と移植)と保存的腎臓管理を提供するための世界的な能力(利用可能性、アクセス性、品質、価格)を明らかにする。 デザイン]国際横断的調査。 【設定】国際腎臓学会(ISN)が2018年7月から9月に182か国を調査した。 【参加者】ISNの国・地域のリーダーが特定した主要なステークホルダー。 [MAIN OUTCOME MEASURES]腎代替療法と保存的腎臓管理のコアコンポーネントを提供する国の能力のマーカー。 結果]182カ国中160(87.9%)から回答があり、世界の人口の97.8%(7億5,010万人のうち7億3,850万人)が含まれていた。腎代替療法と保存的腎臓管理に関する能力と構造、すなわち、資金調達メカニズム、医療従事者、サービス提供、利用可能な技術に大きなばらつきがあることが判明した。治療中の末期腎臓病の有病率に関する情報は、世界218カ国のうち91カ国(42%)で入手可能でした。推定値は人口100万人あたり4〜3392人と800倍以上のばらつきがあった。ルワンダは低所得国で唯一、治療中の疾患の有病率に関するデータを報告していた。アフリカの53カ国中5カ国(10%未満)がこれらのデータを報告していた。159カ国のうち、102カ国(64%)が腎代替療法に公的資金を提供していた。159カ国のうち68カ国(43%)が医療提供の時点で料金を徴収せず、34カ国(21%)が何らかの料金を徴収していた。血液透析は156カ国中156カ国(100%)、腹膜透析は156カ国中119カ国(76%)、腎臓移植は155カ国中114カ国(74%)で実施可能と報告されている。透析と腎移植は、これらのサービスを提供している154カ国のうち、それぞれ108(70%)と45(29%)のみで、50%以上の患者が利用可能でした。保存的腎臓管理は154カ国中124カ国(81%)で利用可能であった。世界の腎臓専門医数の中央値は人口100万人あたり9.96人であり、所得水準によって差があった。 【結論】これらの包括的データは、末期腎臓病患者に最適なケアを提供する各国の能力(低所得国を含む)を示すものである。このような疾患の負担、腎代替療法や保存的腎臓管理の能力にはかなりのばらつきがあることを示しており、政策に影響を与えるものである。 第一人者の医師による解説 持続可能な発展のため 腎臓病診療の国家間格差の是正を 岡田 啓(糖尿病・生活習慣病予防講座特任助教)/南学 正臣(腎臓内科学・内分泌病態学教授) 東京大学大学院医学系研究科 MMJ.April 2020;16(2) 本研究は、国際腎臓学会(ISN)が主導する世界腎 疾患治療地図(Global Kidney Health Atlas)調査の第2弾である。第1弾は、地域間・地域内での腎臓病診療における格差が記述されていたが、診療実態の詳細やアクセス・供給能力、また腎疾患でも末期腎不全医療について記述されていないことが限界であった(1)。そこで、第2弾となる本研究では、第1弾を拡張して、末期腎不全医療に対する詳細な供給能力・アクセス・質と世界的な腎疾患がもたらす「負荷」を記述し、低中所得国での政策立案に有用なものとなっている。 研究 デザインとしては、2018年7~9月 に 182カ国を対象にISNが行った調査をもとにした 国際共同横断的研究で、対象者はISN加入の地域代表者が選んだ関係者(stakeholder)、アウトカムは 対象国の腎代替療法と保存期腎疾患治療を実行できる能力とされた。調査の結果は、腎代替療法と保存期腎疾患治療の供給能力と制度に大きな差異が 存在することが明らかになった。 具体的には、末期腎不全の治療実施割合は、100万人当たり4人から3,392人と800倍以上の差異を認めた。159 カ国中、64%が 腎代替療法に 公的資金を投入し、 43%は同治療を無償で、21%は有償で提供していた。血液透析は100%、腹膜透析は76%、腎移植は74%の国で実施されていた。半数以上の患者への供給能力を持つ国は、透析で70%、腎移植では29%のみであった。保存期腎疾患治療を利用できる国は81%であった。腎臓専門医は100万人当たり9.96人(中央値)で、この割合は所得水準と 関連していた。 本研究は、末期腎不全患者治療への供給能力が国家間で大きく異なることを明らかにした。強みとしては人口カバー率が98%にも上ること、弱みとしては低所得国の情報が不足していることである。実際は本報告よりさらに腎疾患による負荷がかかっている状況だと推察される。世界的に近年話題になっている「持続可能な発展」を成し遂げるためにも、腎代替療法は低所得国でも、腎疾患による機会損失を生まないために提供されるべきである。 日本の現状は、腎臓専門医へのアクセスは地域によって異なり、一部では腎臓専門医の不足が示唆されている(2)。地域における腎臓専門医の数が腎臓病診療の質と相関することを示唆する報告もある(3)。日本腎臓学会もこの問題を解決すべく努力しており、加えて患者支援・教育や他職種との連携を促進するなどの目的で、日本腎臓病協会が主体となり腎臓病療養指導士という制度を作っている。これらの活動により、日本でも腎臓病診療に地域格差が なくなることが望まれる。 1. Bello AK et al. JAMA. 2017 ;317(18):1864-1881. 2. 日腎会誌 2013;55(8):1391 - 1400. 3. Inoue R et al. Clin Exp Nephrol. 2019 Jun;23(6):859-864
重症小児患者における多臓器不全症候群に対する新鮮赤血球輸血と標準発行赤血球輸血の効果。無作為化臨床試験
重症小児患者における多臓器不全症候群に対する新鮮赤血球輸血と標準発行赤血球輸血の効果。無作為化臨床試験
Effect of Fresh vs Standard-issue Red Blood Cell Transfusions on Multiple Organ Dysfunction Syndrome in Critically Ill Pediatric Patients: A Randomized Clinical Trial JAMA 2019 Dec 10;322(22):2179-2190 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】重症小児患者に対する赤血球保存年齢の臨床的影響は、大規模な無作為化臨床試験で検討されていない。 【目的】重症小児において、新鮮赤血球(7日以下保存)の輸血が、標準発行赤血球の使用と比較して新規または進行性の多臓器不全症候群を減らすかどうかを判断することである。 【デザイン・設定・参加者】The Age of Transfused Blood in Critically-Ill Children試験は、2014年2月から2018年11月にかけて50の三次医療施設で行われた国際多施設共同盲検化無作為化臨床試験であった。集中治療室入室後7日以内に最初の赤血球輸血が行われた、生後3日~16歳の小児患者を対象とした。合計15568人の患者をスクリーニングし、13308人を除外した。 【介入】患者を新鮮赤血球または標準発行赤血球のいずれかを投与するよう無作為に割り付けた。合計1538人の患者が無作為化され、新鮮赤血球群768人、標準発行群770人となった。 法]主要アウトカム指標は、新規または進行性の多臓器不全症候群で、28日間または退院または死亡まで測定された。 【結果】無作為化された1538名のうち、1461名(95%)が一次解析に含まれ(年齢中央値1.8歳、女子47.3%)、そのうち新鮮赤血球群に728名、標準発行群に733名が無作為に割り付けられた。保存期間の中央値は,新鮮群 5 日(四分位範囲 [IQR], 4~6 日)に対して標準発行群 18 日(IQR, 12~25 日)であった(P < 0.001).新規または進行性の多臓器不全症候群については,新鮮赤血球群(728 例中 147 例[20.2%])と標準発行赤血球群(732 例中 133 例[18.2%])に有意差はなく,未調整絶対リスク差は 2.0%(95% CI,-2.0%~6.1%;P = .33)であった.敗血症の有病率は,新鮮群では 25.8%(619 例中 160 例),標準発行群では 25.3%(608 例中 154 例)であった.急性呼吸窮迫症候群の有病率は,新鮮群では 6.6%(619 例中 41 例),標準発行群では 4.8%(608 例中 29 例)であった.集中治療室での死亡率は新鮮群4.5%(728例中33例)に対して標準発行群3.5%(732例中26例)だった(P = .34)。 【結論と関連性】重症小児患者において、新鮮赤血球の使用は標準発行赤血球と比較して新規または進行性の多臓器不全症候群(死亡率を含む)の発生率を低減しなかった。 【試験登録】 ClinicalTrials. gov Identifier:NCT01977547。 第一人者の医師による解説 血液製剤の保存期間 どの年齢でも予後悪化の因子でない可能性 寺田 類/岡崎 仁(教授) 東京大学医学部附属病院輸血部 MMJ.April 2020;16(2) 赤血球製剤の保存期間が長くなると、製剤中の赤血球のviabilityは低下し、赤血球の重要な役割である酸素運搬能が低下してくる。保存期間の長い赤血球製剤を重症患者に輸血すると臓器不全の発生率や死亡率が上昇するのではないかと危惧され、今までに多くの観察研究や無作為化試験が行われてきた。しかし、赤血球の保存期間と死亡率や多臓器 機能障害スコアの変化に有意な関係性は見いだされていない。 しかし、こうした研究のほとんどは成人を対象としたもので、新生児や心臓外科手術患者など重症小児患者では保存期間による違いが予後に影響するかどうかは不明である。また、重症小児患者に対してどの程度の保存期間の赤血球製剤を使用するかは、病院や血液製剤センターの方針などにより一律ではないのが現状である(1)。 そこで本論文で報告された多施設共同無作為化試験では、重症小児患者において、血液製剤の保存期間が死亡率や患者予後と強く相関する多臓器不全の新規発症・増悪に与える影響を調べている。対象は、米国、カナダ、フランスなど50施設の小児集中治療室(PICU)で輸血を受けた生後3日から16歳までの患者で、保存期間7日以内(中央値 , 5日)の赤血球を輸血した群728人と、標準的な 保存期間(中央値 , 18日)の赤血球を輸血した群 733人の転帰が比較された。 その結果、主要評価項目である多臓器不全の増悪に加え、副次評価項目の28、90日死亡率、敗血症や急性呼吸促迫症候群(ARDS)、院内感染の発生率に関して保存期間の違いによる有意差は認められなかった。また、年齢、施設、国、性別、合併症、疾患の重症度で調整した解析でも結果は変わらなかった。 日本における赤血球製剤の使用期限は採血後21 日で、世界的な使用期限42日の半分であり、元来保存期間の短い製剤が供給されている。しかし、献血者の減少や少子高齢化による血液製剤の不足が懸念されている昨今においては、いつでも重症小児患者に優先的に保存期間の短い新鮮な赤血球製剤を供給できるかは必ずしも定かではない。 今回の結果が日本人にも同様に当てはめられるのか、また死亡などの重要な因子以外に与える影響についての検討も今後必要ではあるが、血液製剤を運用する病院や血液センター、また治療を受ける側としても意味のある1つの結果と言えるだろう。 どの年齢においても、現状での保存期間による製剤の変化は臨床上、患者の予後に影響を与えるまでの変化ではないのかもしれない。 1. Spinella PC et al. Transfusion. 2010;50(11):2328-2335.
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