「MMJ - 五大医学誌の論文を著名医師が解説」の記事一覧

健康リスクを最小にする飲酒量は1日あたり0〜1.87ドリンク GBD 2020でのメタ解析
健康リスクを最小にする飲酒量は1日あたり0〜1.87ドリンク GBD 2020でのメタ解析
Population-level risks of alcohol consumption by amount, geography, age, sex, and year: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2020 Lancet. 2022 Jul 16;400(10347):185-235. doi: 10.1016/S0140-6736(22)00847-9. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [背景] 適度なアルコール摂取に伴う健康リスクについては、引き続き議論されています。少量のアルコールは、一部の健康上の結果のリスクを低下させる可能性がありますが、他の結果のリスクを増加させる可能性があります。これは、全体的なリスクが、地域、年齢、性別、および年によって異なる背景疾患の発生率に部分的に依存することを示唆しています。この分析では、理論上の最小リスク暴露レベル (TMREL) と非飲酒者等価 (NDE) を推定するために、22 の健康アウトカムにわたる負担加重用量反応相対リスク曲線を構築しました。 204 の国と地域を含む 21 の地域の 2020 年の疾病、傷害、リスク要因調査 (GBD) の疾病率を、5 歳の年齢グループ、性別、年齢別の個人の年ごとに使用した非飲酒者の割合1990 年から 2020 年までの 15 歳から 95 歳以上。NDE に基づいて、有害な量のアルコールを消費している人口を定量化しました。 2020 年の 15 歳から 39 歳の個人では、TMREL は 0 (95% 不確実性区間 0-0) から 0.603 (0.400-1.00) の標準飲料/日の間で変化し、NDE は 0.002 の間で変化しました。 1 日あたり (0-0) および 1.75 (0.698-4.30) の標準的な飲み物。 40 歳以上の個人では、負担加重相対リスク曲線はすべての地域で J 字型で、2020 年の TMREL は 0.114 (0-0.403) から 1.87 (0.500-3) の範囲でした。 ·30) 1 日あたりの標準的な飲み物と、1 日あたり 0·193 (0-0·900) から 6·94 (3·40-8·30) の標準的な飲み物の範囲の NDE。 2020 年に有害な量のアルコールを摂取した個人のうち、59.1% (54.3-65.4) が 15-39 歳で、76.9% (73.0-81.3) が男性でした。は、年齢や場所によって異なるアルコール消費に関する推奨事項を裏付ける強力な証拠です。より強力な介入、特に若い個人向けに調整されたものは、アルコールに起因する実質的な世界的な健康損失を減らすために必要です.[FUNDING] Bill & Melinda Gates Foundation. 第一人者の医師による解説 健康リスク最小の飲酒量は地域や年齢で大きく異なり 飲酒目標量策定には地域の実情を考慮する必要 木村 充 独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター副院長 MMJ.February 2023;19(1):24 疫学的研究では、非飲酒者に比べ、少量飲酒者の方が全死亡率が低く、飲酒量がある閾値を超えると全死亡率が上昇するJカーブ効果が報告されてきた。しかし、非飲酒者の中に健康問題による禁酒者が含まれているために死亡率が高くなるのではないか、少量飲酒者には生活環境・経済面で恵まれている人が多く含まれるために死亡率が低くなるのではないかといった、Jカーブ効果が見せかけの効果であるとの批判もあった。 2016年の世界疾病負荷研究(GBD 2016)からは、健康被害を最小にする飲酒量はゼロであると報告された(1)。しかし、研究間で結果は一致しておらず、Jカーブ効果が存在するかどうかは論争の的となっている。 今回報告されたGBD 2020による研究では、GBD 2016から更新されたメタ解析のデータを用いて、204の国・地域から22の疾病・傷害についての障害調整生存年(DALY)を算出し、理論的な健康リスクを最小にする飲酒量(TMREL)、非飲酒者と同等リスクの飲酒量(NDE)を、地域、年齢層、性別、年ごとに推定した。その結果、地域、年齢、性別に関係なく、TMRELは1日あたり0~1.87ドリンク(1ドリンクはアルコール量として10g)と低くとどまっていた。若年者は高齢者よりもTMRELとNDEが有意に少なく、15~39歳のTMRELは0~0.603ドリンク /日であったが、これは若年者では交通事故、自傷、暴力などの外傷が寄与する割合が大きいことが原因と考えられた。40~64歳では、アルコールによる健康影響は、心血管疾患やがんの寄与する割合が高くなり、全世界でのTMRELは0.527ドリンク /日(男性)、0.562ドリンク /日(女性)であり、NDEは1.69ドリンク /日(男性)、1.82ドリンク /日(女性)であった。65歳以上でも同様に、若年者よりもTMREL、NDEは高くなった。地域間では疾病負荷の原因分布は大きく異なっていた。東アジアでのTMRELは0~0.7ドリンク /日であり、地域にかかわらずTMREL、NDEに性差は認められなかった。 本研究では、健康リスクを最小にする飲酒量は、地域や年齢によって大きく異なることが示された。政策として飲酒の目標量を策定する際は、地域の実情を考慮する必要がある。若年者ではTMRELが低く、アルコールによる健康被害を減らすためには、特に若年者での飲酒を減らすことが重要と考えられる。一方でTMRELに性差が認められなかったことから、男女別の飲酒目標を決める必要はない可能性がある。日本では厚生労働省が「節度ある適度な飲酒」として1日20gの飲酒を提唱しているが、本研究の結果から考えるとやや過大かもしれない。 1. GBD 2016 Alcohol Collaborators. Lancet. 2018;392(10152):1015-1035.
2010〜19年の世界の発がん頻度と危険因子の解析 男性50.6%、女性36.3%が危険因子起因のがんで死亡
2010〜19年の世界の発がん頻度と危険因子の解析 男性50.6%、女性36.3%が危険因子起因のがんで死亡
The global burden of cancer attributable to risk factors, 2010-19: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2019 Lancet. 2022 Aug 20;400(10352):563-591. doi: 10.1016/S0140-6736(22)01438-6. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [背景]潜在的に修正可能な危険因子に起因するがんの負担の大きさを理解することは、効果的な予防および緩和戦略の開発に不可欠です。 2019 年の疾病、傷害、危険因子の世界的負担に関する研究(GBD)の結果を分析し、がん対策計画の取り組みを世界的に知らせました。 [方法] GBD 2019 の比較リスク評価フレームワークを使用して、行動、環境、および職業、および代謝の危険因子。世界がん研究基金の基準に基づいて、合計 82 のリスクと結果のペアが含まれていました。 2019 年の推定がん死亡数と障害調整生存年数 (DALY)、および 2010 年から 2019 年までのこれらの指標の変化が示されています。 % 不確実性区間 4.01-4.94) の死亡と 1 億 500 万 (95.0-116) の DALY を合わせて、がんによる全死亡の 44.4% (41.3-48.4) と 42.0すべての DALY の % (39·1-45·6)。男性では2.88百万(2.60-3.18)のリスクに起因する癌による死亡があり(すべての男性の癌による死亡の50.6%[47.8-54.1])、1.58百万(1. 36-1.84) 女性のリスクに起因する癌による死亡 (全女性の癌による死亡の 36.3% [32.5-41.3])。 2019 年の両性を合わせたリスクに起因するがんによる死亡と DALY について、世界で最も詳細なレベルでの主要な危険因子は喫煙であり、アルコール使用と高 BMI がそれに続きました。リスクに起因するがんの負荷は、世界の地域と社会人口統計学的指標 (SDI) によって異なり、2019 年のリスクに起因するがんの DALY が低い SDI の場所では、喫煙、危険なセックス、アルコールの使用が 3 つの主要な危険因子でした。 SDI の場所は、上位 3 つの世界的な危険因子ランキングを反映しています。 2010 年から 2019 年にかけて、世界のリスクに起因するがんによる死亡は 20.4% (12.6-28.4) 増加し、DALY は 16.8% (8.8-25.0) 増加し、代謝の増加率が最も高かったリスク (34.7% [27.9-42.8] および 33.3% [25.8-42.0]).危険因子は、2010 年から 2019 年の間に最大の増加を示しました。これらの修正可能な危険因子への曝露を減らすことで、世界中のがん死亡率と DALY 率が低下し、政策は地域のがん危険因子負担に合わせて適切に調整する必要があります。[資金提供]ビル & メリンダ ゲイツ財団。 第一人者の医師による解説 がんの半数近くは対策可能な危険因子による予防が可能なことを明示 西原 広史 慶應義塾大学医学部腫瘍センターゲノム医療ユニット教授 MMJ.February 2023;19(1):22 予防医学的に対応可能な危険因子に起因するがんの発症頻度を把握しておくことは、がんの発症回避や早期発見・治療につながり、総合的ながん対策として重要である。世界の疾病・傷害・危険因子負荷研究(GBD)2019からは、204国・地域におけるがんの発症数・死亡数、障害調整生存年(DALY)(1)、危険因子(2)の2019年推計値、2010~19年の推移が報告されており、本論文はさらに、がんの発症にどのような危険因子がどの程度関わっているのかを明らかにした大変興味深い報告である。著者らは、がん発症との因果関係が証明されている危険因子(日常的な行動、生活環境・職業、代謝関連[食事、BMIなど])とアウトカム(がん死亡など)の合計82のペア(がん23種類、危険因子34種類)を対象に、危険因子、がん種、地域別に2019年のがん死亡数、がんDALYを推計し、2010年の数値との比較を行った。 その結果、全体では、何かしらの危険因子に起因するがん死亡者の割合は、男性で50.6%、女性で36.3%であった。そのうちがん死亡とDALYへの影響が最も大きい危険因子は男女ともに喫煙であり、続いてアルコールとBMI高値であった。喫煙、大気汚染、職業因子は肺がん、アルコールは男性では喉頭・咽頭がんと消化管がん、女性では乳がんと消化管がん、薬物摂取歴は肝がん、食生活は消化管がん、BMI高値は男性では肝がんと消化管がん、女性で子宮がん、乳がんと強い関連が認められた。この結果は先行疫学研究の報告を裏付けるとともに、がんの発症機序を考えれば当然のことと言える。社会人口指数(SDI:収入、教育、出生率の混合指標)の低い地域では、高い地域に比べ、がん死亡者数が多く、感染対策なしの性交渉が高い危険因子となっているのはヒトパピローマウイルス(HPV)感染による子宮頸がんやヒト免疫不全ウイルス(HIV)による発がんが考えられる。2010~19年にかけて、危険因子に起因するがん死亡者数は20.4%、DALYは16.8%増加した。特に代謝関連リスクの上昇が顕著なのは世界的な生活レベル上昇とそれに伴う肥満や糖尿病者の増加に起因すると考えられる。 本研究は、がんの半数近くは対策が可能な危険因子によるものであり、がんは予防が可能であることを明示している。日本は年間約100万人の新規発症がん患者を抱える国3であり、がん予防対策は喫緊の課題である。近年は喫煙者が減っている一方で、肥満や糖尿病などの代謝関連疾患患者が増えており、こうした部分に対する集中的な対策が重要だと考えられる。 1. Global Burden of Disease 2019 Cancer Collaboration. JAMA Oncol.2022;8(3):420-444. 2. GBD 2019 Risk Factors Collaborators. Lancet. 2020;396(10258):1223-1249. 3. 最新がん統計(がん情報サービス)https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
PCI後1年でルーチンに負荷検査を実施しても 2年間での転帰改善なし
PCI後1年でルーチンに負荷検査を実施しても 2年間での転帰改善なし
Routine Functional Testing or Standard Care in High-Risk Patients after PCI N Engl J Med. 2022 Sep 8;387(10):905-915. doi: 10.1056/NEJMoa2208335. Epub 2022 Aug 28. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [背景] 心筋血行再建術後の特定の追跡調査アプローチを導く無作為化試験から得られたデータは限られています。定期的な機能検査を含むフォローアップ戦略が、経皮的冠動脈インターベンション (PCI) を受けたハイリスク患者の臨床転帰を改善するかどうかは不明です。 PCI から 1 年後の定期的な機能検査 (核負荷試験、運動心電図検査、負荷心エコー検査) のフォローアップ戦略、または標準治療単独への PCI。主要転帰は、あらゆる原因による死亡、心筋梗塞、または不安定狭心症による 2 年間の入院の複合でした。重要な副次的アウトカムには、侵襲的冠動脈造影と繰り返しの血行再建術が含まれていました。 38.7% が糖尿病で、96.4% が薬剤溶出性ステントで治療されていました。 2 年後、機能検査群では 849 人中 46 人 (Kaplan-Meier 推定、5.5%)、標準治療群では 857 人中 51 人 (Kaplan-Meier 推定、6.0%) で、主要転帰事象が発生した。グループ (ハザード比、0.90; 95% 信頼区間 [CI]、0.61 から 1.35; P = 0.62)。主要アウトカムの構成要素に関して、グループ間で違いはありませんでした。 2 年後、機能検査群の患者の 12.3%、標準治療群の 9.3% の患者が侵襲的冠動脈造影を受けており (差、2.99 パーセント ポイント、95% CI、-0.01 ~ 5.99)、8.1% およびそれぞれ 5.8% の患者が繰り返し血行再建術を受けていた (差、2.23 パーセンテージ ポイント; 95% CI、-0.22 ~ 4.68)。 [結論] PCI を受けた高リスク患者では、定期的な機能検査の追跡戦略は、標準治療単独と比較して、2 年で臨床転帰を改善しませんでした。 (CardioVascular Research Foundation および Daewoong Pharmaceutical から研究助成を受けた。POST-PCI ClinicalTrials.gov 番号、NCT03217877)。 第一人者の医師による解説 高リスク患者でもルーチン負荷検査実施に臨床的意義なし 背景に冠動脈ステント性能の向上 清末 有宏 森山記念病院循環器センター長 MMJ.February 2023;19(1):11 金属ステントを冠動脈に留置していた時代にはステント内再狭窄が20~30%に見られたため、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)実施後6カ月前後で再入院のうえ経皮的冠動脈造影(CAG)を必ず実施していたし、実際に20~30%の患者は再 PCIとなった。しかし2004年以降薬剤溶出性ステントの時代に突入し、免疫抑制薬の新生内膜増殖抑制作用により、ステント内再狭窄率は5~10%に低下した。第1世代薬剤溶出性ステントではポリマーによる血管炎症が問題となったが、その後第2世代、第3世代と日進月歩の勢いで進化を遂げ、近年ではどのステントを用いてもステント内再狭窄率は高リスクな背景を有する患者でなければ1~2%と驚異的な数字となっている。また同時に画像診断技術も大きく進歩し、心電図同期造影 CTによる冠動脈の描出はCAGに引けを取らないレベルまで質が高まりつつあり、各種の非侵襲的な機能的負荷試験も心筋虚血の検出において感度・特異度を上げてきている。 上記状況を踏まえPCI実施後の患者の臨床的経過観察をどのようにすべきか、ということに関しては各国の医療環境を考慮に入れながら長期にわたって世界的に議論が続いており、またその議論は常に最新のエビデンスとともにアップデートされることを余儀なくされている。日本では欧米諸国に比べ再CAGの敷居が低い時代が長く続いたが、近年は再 CAGをルーチンで実施することは推奨されていない。ガイドラインには本件に関する記載はないものの、日本のReACT試験では再 CAG実施群において非実施群に比べ冠疾患関連複合エンドポイントの改善は認められなかった(ハザード比 , 0.94;95%信頼区間[CI], 0.67~1.31)(1)。本論文のPOST-PCI試験ではさらに一歩進んで、PCI後の解剖学的または臨床的な高リスク患者に対して1年後にルーチンの機能的負荷試験(負荷心筋シンチ、運動負荷心電図、負荷心エコーのいずれか)を実施しても、2年間の冠疾患関連複合エンドポイントは非実施群と比較し改善しなかった(HR,0.90;95% CI, 0.61~1.35)。いろいろな方向性での解釈が可能な試験結果かとは思うが、一つ確実に言えることは冠動脈ステントの性能がいわば“Fire-and-forget”に耐えられるほどに向上したということであろうか。 1. Shiomi H, et al. JACC Cardiovasc Interv. 2017;10(2):109-117.
FFRガイドのPCIはIVUSガイドのPCIと比較して 心血管イベント発生は非劣性
FFRガイドのPCIはIVUSガイドのPCIと比較して 心血管イベント発生は非劣性
Fractional Flow Reserve or Intravascular Ultrasonography to Guide PCI N Engl J Med. 2022 Sep 1;387(9):779-789. doi: 10.1056/NEJMoa2201546. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [背景] 経皮的冠動脈インターベンション (PCI) の評価を受けている冠動脈疾患患者では、血行再建術とステント留置に関する意思決定のために、フラクショナル フロー リザーブ (FFR) または血管内超音波検査 (IVUS) によって手技をガイドできます。しかし、両方の目的に 1 つの方法のみを使用した場合の臨床転帰の違いは明らかではありません。血管造影) を 1:1 の比率で行い、FFR ガイドまたは IVUS ガイドのいずれかの手順を実行します。 FFR または IVUS を使用して、PCI を実行するかどうかを決定し、PCI の成功を評価する必要がありました。 FFR 群では、FFR が 0.80 以下の場合に PCI を実施することとした。 IVUS群では、PCIの基準は、70%を超えるプラーク負荷を伴う3mm 2以下または3~4mm 2の最小管腔面積であった。主要転帰は、無作為化から 24 か月後の死亡、心筋梗塞、または血行再建術の複合でした。 IVUS 群と比較した FFR 群の非劣性をテストしました (非劣性マージン、2.5 パーセント ポイント)。 [結果] PCI の頻度は、FFR 群の患者で 44.4%、IVUS 群の患者で 65.3% でした。 24 か月の時点で、FFR 群の患者の 8.1% と IVUS 群の患者の 8.5% で主要転帰イベントが発生しました (絶対差、-0.4 パーセント ポイント; 片側 97.5% 信頼度の上限間隔、2.2 パーセント ポイント; 非劣性の P = 0.01)。シアトル狭心症アンケートで報告された患者報告のアウトカムは、2 つのグループで類似していた。心筋梗塞、または 24 か月での血行再建術。 (Boston Scientific から研究助成を受けた。FLAVOR ClinicalTrials.gov 番号 NCT02673424)。 第一人者の医師による解説 FFR 対 IVUS 我が国のプラクティスに与える影響は少ない 阿古 潤哉 北里大学医学部循環器内科学教授 MMJ.February 2023;19(1):10 冠動脈の内圧を測定し冠動脈の狭窄が生理学的に有意かどうかを判断する方法がfractional flow reserve(FFR)である。また、冠動脈の解剖学的狭窄を正確に評価する方法がintravascular ultrasonography(IVUS)である。両者は基本的には全く異なるものを評価しているが、いずれの検査法も経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受ける患者の評価において、冠動脈造影を補完する診断法であるという点では共通項があると言える。 今回報告されたFLAVOUR試験は、PCIガイド用の検査法としてFFRはIVUSに勝るかという臨床的疑問を解くべく計画された。FFRガイド PCIは冠動脈造影ガイドのPCIに比べ心血管イベントが少なくなるというデータがすでにある(1)。対するIVUSガイド PCIにはそのようなデータがないため、FFRガイドの優越性を検証する試験デザインが組まれた。しかし試験開始後に、IVUSガイド PCIは冠動脈造影ガイド PCIに比べ予後の改善がみられるというデータが複数報告されたため、FFRガイド PCIのIVUSガイド PCIに対する非劣性を検討するデザインに変更された。韓国と中国の18施設で中等度狭窄のある患者1,682人を組み入れ、FFRあるいはIVUSでPCI適応の有無を判断した。結果、FFR群では44.4%、IVUS群では65.3%の患者にPCIが実施された。24カ月時点の心血管イベント(死亡、心筋梗塞、再血行再建)発生率はFFRガイド群で8.1%、IVUSガイド群で8.5%であり、非劣性が示された。 生理的虚血の評価法であるFFRと、解剖学的形態の評価法であるIVUSを比較するというのは、ともすると非常にわかりにくい試験デザインである。そもそも、安定冠動脈疾患に対する治療法の選択において、PCIか内科的治療先行かという比較試験がいくつか行われたが、死亡、心筋梗塞などのいわゆるハードエンドポイントにおいて有意差をつけた臨床試験はない。その意味では、PCIのガイド方法の変化程度ではイベントに有意差が出ないであろうというのは十分に予想される結果である。非劣性を検証するデザインに変更されたために本試験の意味合いが少し不明確になったと言える。この結果をもって、冠動脈造影ガイド PCIが標準となっている多くの国の医療環境下では、FFRガイドでad-hoc PCI(診断目的の冠動脈造影に続いて実施するPCI)を行うことにお墨付きを与える形になるかもしれない。しかし、従来から基本的にPCIをIVUSなどの冠動脈イメージングガイド下で行っている我が国では、今回の試験結果が与えるインパクトはほとんどなさそうである。 1. Xaplanteris P, et al. N Engl J Med. 2018;379(3):250-259.
2022年4月〜6月に16カ国でみられたサル痘感染症 典型的な特徴は発疹と性器病変
2022年4月〜6月に16カ国でみられたサル痘感染症 典型的な特徴は発疹と性器病変
Monkeypox Virus Infection in Humans across 16 Countries - April-June 2022 N Engl J Med. 2022 Aug 25;387(8):679-691. doi: 10.1056/NEJMoa2207323. Epub 2022 Jul 21. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [背景] 2022 年 4 月以前は、サル痘ウイルスが風土病であるアフリカ地域以外では、ヒトのサル痘ウイルス感染はほとんど報告されていませんでした。現在、世界中で症例が発生しています。伝染、危険因子、臨床症状、および感染の転帰は十分に定義されていません。 -確認されたサル痘ウイルス感染。 [結果] 2022 年 4 月 27 日から 6 月 24 日の間に 16 か国の 43 か所で診断された 528 の感染を報告します。全体として、感染者の 98% がゲイまたはバイセクシュアルの男性で、75% が白人で、41% がヒト免疫不全ウイルスに感染していました。年齢の中央値は 38 歳でした。伝染は、感染者の 95% で性行為を介して発生した疑いがありました。この症例シリーズでは、95% の人に発疹があり (64% は 10 個未満の病変)、73% は肛門性器病変、41% は粘膜病変 (54 人は単一の性器病変) でした。発疹に先行する一般的な全身的特徴には、発熱 (62%)、無気力 (41%)、筋肉痛 (31%)、および頭痛 (27%) が含まれていました。リンパ節腫脹も一般的でした (56% で報告されました)。検査を受けた 377 人中 109 人 (29%) で性感染症の併発が報告されました。暴露歴が明らかな 23 人のうち、潜伏期間の中央値は 7 日 (範囲、3 ~ 20 日) でした。サル痘ウイルス DNA は、精液を分析した 32 人中 29 人で検出されました。全体の 5% の人に抗ウイルス治療が施され、70 人 (13%) が入院しました。入院の理由は疼痛管理であり、主に肛門直腸の重度の痛み(21 人)であった。軟部組織重複感染 (18);経口摂取を制限する咽頭炎 (5);眼病変 (2);急性腎障害 (2);心筋炎 (2);および感染制御目的(13)。死亡例は報告されていません。 [結論] このケース シリーズでは、サル痘はさまざまな皮膚科学的および全身的な臨床所見とともに現れました。サル痘が伝統的に風土病であった地域以外での症例の同時同定は、さらなる地域での広がりを封じ込めるために、症例の迅速な同定と診断の必要性を浮き彫りにしています。 第一人者の医師による解説 過去のサル痘と比べて非典型的な症状が多く 病歴などを詳細に聴取し積極的に診断すべき 谷口 俊文 千葉大学医学部附属病院感染制御部准教授 MMJ.February 2023;19(1):21 2022年4月前までサル痘(現在では世界保健機関[WHO]によりMpoxと名称変更)はアフリカ以外ではほとんど報告されなかったが、現在、世界中でみかけるようになった。本論文はその感染経路や危険因子、臨床的特徴などに関する報告である。サル痘は英国保健安全保障庁(UKHSA)の定義、すなわち病変からのサル痘 PCR陽性で確定診断している。 本研究では約2カ月間に英国を中心に16カ国から528人の感染者が報告された。サル痘患者の98%はゲイまたはバイセクシュアル男性で、2%は異性愛者であった。95%で性行為による感染が疑われた。9%が天然痘ワクチン接種の既往を報告。発疹(黄斑、膿疱、小水疱、痂皮)は95%に認められ、肛門、性器に最も多く(73%)、次いで体幹・上下肢(55%)、顔(25%)、手掌または足底(10%)であった。病変は10個以下が多く、5個以下は39%にみられた。その他の所見としては、性器潰瘍(10%)、直腸痛、直腸炎、テネスムスなどを伴う直腸粘膜病変(12%)、そして口腔咽頭症状(5%)などがみられた。発熱は62%と一般的であったが、すべての患者に全身性の前駆症状があったわけではない。時系列的な評価を受けた30人の患者では、最初の皮膚病変から追加の皮膚病変までの期間中央値は5日間であった。41%がHIVに感染しており、このうちほぼ全員が有効な抗 HIV薬で治療されていた。そしてサル痘の臨床症状は、HIV感染者と非感染者で同様であった。性感染症のスクリーニングを受けた患者の29%は、微生物学的に確定された性感染症を併発していた。全患者の13%が入院し、その多くは疼痛管理や軟部組織への2次感染のためであり、2人が心筋炎、1人が喉頭蓋炎を発症した。5%がサル痘に対する治療(テコビリマット、シドホビル外用など)を受けていた。 今回の流行におけるサル痘の典型的な特徴は、発疹と性器病変であり、後者は性的接触時の感染を反映している可能性がある。過去に報告されたサル痘と比べてあまり典型的ではない症状(単一の性器潰瘍、手掌と足底の病変など)が多いため、病歴などを詳細に取った上で積極的に診断する必要がある。WHOは最近、サル痘を世界的な健康上の緊急事態と宣言し、診断、検査、ワクチン接種、治療へのアクセスの迅速化を含む、効果的かつ公平な対応の必要性を強調している。 1. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン;失神の診断・治療ガイドライン(2012 年改訂版) 2. Vyas A, et al. Int J Cardiol. 2013;167(5):1906-1911. 3. Sheldon R, et al. Eur Heart J. 2006;27(3):344-350.
コロナ禍の2022年前半の英国で小児に重症急性肝炎が流行
コロナ禍の2022年前半の英国で小児に重症急性肝炎が流行
Clinical Spectrum of Children with Acute Hepatitis of Unknown Cause N Engl J Med. 2022 Aug 18;387(7):611-619. doi: 10.1056/NEJMoa2206704. Epub 2022 Jul 13. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】2022年1月以降、小児における原因不明の急性肝炎の報告が増加しています。症例は複数の大陸で報告されていますが、ほとんどは英国で報告されています。原因物質を特定するための調査が進行中です。血清に関連して、A型肝炎からE型肝炎ではなく、代謝的、遺伝的、遺伝的、先天的、または機械的原因を持たない、確認された急性肝炎の英国健康安全保障局の症例定義を満たす肝炎を持っていた1リットルあたり500 IUを超えるアミノトランスフェラーゼレベル。医療記録をレビューし、人口学的特徴、臨床的特徴、肝生化学的検査、血清学的検査、肝向性ウイルスやその他のウイルスの分子検査の結果、および放射線学的および臨床的転帰を文書化しました。結果は、状態の改善、肝移植、または死亡として分類されました。年齢の中央値は 4 歳 (範囲、1 ~ 7 歳) でした。一般的な症状は、黄疸 (93% の子供)、嘔吐 (54%)、下痢 (32%) でした。ヒトアデノウイルスの分子検査を受けた30人の患者のうち、27人(90%)が陽性でした。劇症肝不全は 6 人の患者 (14%) で発生し、その全員が肝移植を受けました。死亡した患者はいなかった。肝移植を受けた 6 人を含むすべての子供は退院した.この病気は確立されていません。 第一人者の医師による解説 アデノウイルス 41Fとアデノ随伴ウイルス 2型のツインデミックが関与か 森内 浩幸 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科小児科学教授 MMJ.February 2023;19(1):6 2022年初頭、英国から原因不明の小児重症肝炎が多発していると報告され、世界を驚かせた。その後世界中から同様の症例が世界保健機関(WHO)に登録され、9月29日までに555例が集まったが、そのほとんどは地域的(スコットランド)・時間的(1~6月[ピーク 3~4月])に集積していた。 本論文は英国の小児肝移植センターで2022年1月1日~4月11日に経験された重症急性肝炎44人の報告である。いずれも従来は健康な1~7歳児で、6人に肝移植が行われた。既知の原因は否定されたが、30人中27人(90%)でアデノウイルスが検出された。肝組織中にウイルス封入体やアデノウイルス抗原は検出されなかったが、肝組織粉砕液からは6人中3人でアデノウイルス DNAがPCR法で検出され、塩基配列よりアデノウイルス41Fと推定された。アデノウイルスは免疫健常宿主に肝炎を起こさず、41Fは胃腸炎ウイルスに過ぎない。その後も英国ではアデノウイルスが過半数の症例から検出され、その多くが41Fであった(1)。 その後の知見に基づく仮説はこうだ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防策の緩和後、スコットランドにおいてアデノウイルス 41Fとアデノ随伴ウイルス 2型(AAV2)が同時流行した。AAV2は単独では増殖できず、ヘルパーウイルスを必要とし、アデノウイルスは代表的なヘルパーウイルスである。この2つのウイルスに同時感染した子どもの肝臓でAAV2が活発に増殖し、感染した肝細胞に対して宿主免疫系(特に細胞性免疫)が攻撃を加えることによって肝炎が起こる。このような免疫攻撃はある種のヒト白血球抗原(HLA)(DRB1*04:01)を有する人に起こりやすい。このHLA型は北欧に多く、スコットランド人の15.6%が保有する。スコットランドの研究では患児の多くからAAV2が検出されたが、健常対照児からは検出されなかった。また患児の89%が上述のHLA型であった(2)。 このような機序の肝炎には前例がある。D型肝炎ウイルスもB型肝炎ウイルスというヘルパーウイルスがいなければ増殖できず肝炎は起こせない。またウイルス性肝炎の多くは、ウイルスが直接肝細胞を破壊するのではなく、ウイルス感染肝細胞を宿主の細胞性免疫が認識して破壊する。そしてHLA型と感染症との相性も以前から知られている(HIV、C型肝炎など)。まだ完全に証明されたわけではないが、これが本当ならコロナ禍に生じた各 種感染症の疫学の乱れから起こったツインデミック(アデノウイルス 41FとAAV2)が起こした現象だったと言える。「新興感染症」が既知の2種類のウイルスと宿主の遺伝背景の組み合わせでも起こるかもしれないということだ。 1. Gong K, et al. Front Pharmacol. 2022;13:1056385. 2. Ho A, et al. medRxiv 2022.07.19.22277425.
週1回皮下注持続性 GLP-1アゴニストは10〜18歳未満の肥満2型糖尿病患者の糖代謝を改善
週1回皮下注持続性 GLP-1アゴニストは10〜18歳未満の肥満2型糖尿病患者の糖代謝を改善
Once-Weekly Dulaglutide for the Treatment of Youths with Type 2 Diabetes N Engl J Med. 2022 Aug 4;387(5):433-443. doi: 10.1056/NEJMoa2204601. Epub 2022 Jun 4. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [背景] 2 型糖尿病の発生率は若者の間で増加しています。グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニストであるデュラグルチドによる週1回の治療は、2型糖尿病の若者の血糖コントロールに関して有効である可能性があります.ライフスタイルの変更のみまたはメトホルミンで、基礎インスリンの有無にかかわらず、1:1:1 の比率で治療を受けている参加者 (10 歳から 18 歳未満、ボディマス指数 [BMI]、> 85 パーセンタイル) を無作為に割り当てました。週に 1 回、プラセボ、デュラグルチド 0.75 mg、またはデュラグルチド 1.5 mg の皮下注射を受けます。その後、参加者は 26 週間の非盲検延長試験に参加し、プラセボを投与されていた人が毎週 0.75 mg のデュラグルチドの投与を開始しました。主要評価項目は、26 週での糖化ヘモグロビン レベルのベースラインからの変化でした。二次エンドポイントには、7.0%未満の糖化ヘモグロビンレベルと、空腹時グルコース濃度およびBMIのベースラインからの変化が含まれていました。安全性も評価されました。 [結果] 合計 154 人の参加者が無作為化されました。 26 週の時点で、糖化ヘモグロビンの平均レベルはプラセボ群で増加し (0.6 パーセント ポイント)、デュラグルチド群で減少しました (0.75 mg 群で -0.6 パーセント ポイント、1.5 mg 群で -0.9 パーセント ポイント、プラセボに対する両方の比較で P < 0.001)。 26 週の時点で、プールされたデュラグルチド群の参加者の割合が、プラセボ群よりも高く、7.0% 未満の糖化ヘモグロビン レベルでした (51% 対 14%、P < 0.001)。空腹時血糖値はプラセボ群で増加し(1デシリットルあたり17.1mg)、プールされたデュラグルチド群で減少し(1デシリットルあたり-18.9mg、P <0.001)、BMIの変化にグループ間差はありませんでした.胃腸の有害事象の発生率は、プラセボよりもデュラグルチド療法の方が高かった.デュラグルチドの安全性プロファイルは、成人で報告されたものと一致していました。メトホルミンまたは基礎インスリンの有無にかかわらず、BMI に影響を与えずに治療を受けている。 (Eli Lilly から研究助成を受けた。AWARD-PEDS ClinicalTrials .gov 番号 NCT02963766)。 第一人者の医師による解説 消化器症状の懸念はあるが デュラグルチドは血糖管理に有効 内潟 安子 東京女子医科大学附属足立医療センター病院長 特任教授 MMJ.February 2023;19(1):18 肥満2型糖尿病患者、特に若い年代の当該患者は世界的に急増し、糖尿病性合併症の急速な進展もみられる。若い糖尿病患者に対する治療指針の根拠の1つに米国 TODAY試験が有名であるが、推奨の第1治療薬メトホルミンでは対象患者のおよそ半数が血糖管理に失敗し、膵β細胞機能の急激な悪化を阻止できなかった(1)。若い糖尿病患者は成人の糖尿病患者と比較し、その病因的背景は相等であると言われるのだが、インスリン抵抗性、膵β細胞機能不全ともに成人2型糖尿病より迅速に重症化しやすいのではないかと考えられる(2),(3)。その一方、若い糖尿病患者への薬物療法は成人2型糖尿病の薬物療法ほどには進歩していない。 本論文は、10歳~18歳未満の肥満2型糖尿病患者を対象に、成人の2型糖尿病に広く使用されているグルカゴン様ペプチド(GLP)-1アゴニストのデュラグルチドを0.75mg、1.5mg、もしくはプラセボを週1回皮下投与する群に無作為に割り付け、26週間後の経過を比較した第3相二重盲検優越性試験(AWARD-PEDS)の報告である。対象は各群約50人で、年齢分布、性別、人種構成、体格指数(BMI)(34前後)、HbA1c値(8.0%前後)、ベースライン治療(メトホルミン単独63%前後、メトホルミン+基礎インスリン併用25%前後、基礎インスリン治療単独3%前後)に関して3群間で同様であった。 26週時点の結果は以下のとおりである。平均HbA1c値はプラセボ群で0.6%上昇し、デュラグルチド 0.75mg群、1.5mg群ではそれぞれ0.6%、0.9%低下した(いずれもP<0.001)。HbA1c値が7.0%未満であった参加者の割合は、プラセボ群14%に対して、デュラグルチド 0.75mg群と1.5mg群の統合群では51%であった(P<0.001)。空腹時血糖値は、プラセボ群で17.1mg/dL上昇、デュラグルチド統合群では18.9mg/dL低下した(P<0.001)。BMIの増減に関して有意な群間差はなかった。消化器症状はデュラグルチド群に多くみられたが、デュラグルチドの安全性プロファイルは成人2型糖尿病での報告と同様であった。 今回の検討から、10代の肥満2型糖尿病患者において、メトホルミン服用の有無や基礎インスリン治療の有無に関係なく、デュラグルチドは0.75mgであれ1.5mgであれ投与26週間後に、減量効果はみられなかったが、血糖値の良好化に関してプラセボよりも有意な効果を得られることが明らかとなった。 1. TODAY Study Group. N Engl J Med. 2012;366(24):2247-2256. 2. RISE Consortium. Diabetes Care. 2018;41(8):1696-1706. 3. Utzschneider KM, et al. Diabetes Res Clin Pract. 2021;178:108948.
冠動脈造影における急性腎障害 臨床意思決定支援ツールで発生率低下
冠動脈造影における急性腎障害 臨床意思決定支援ツールで発生率低下
Effect of Clinical Decision Support With Audit and Feedback on Prevention of Acute Kidney Injury in Patients Undergoing Coronary Angiography: A Randomized Clinical Trial JAMA. 2022 Sep 6;328(9):839-849. doi: 10.1001/jama.2022.13382. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [重要] 造影剤関連急性腎障害 (AKI) は、冠動脈造影および経皮的冠動脈インターベンション (PCI) の一般的な合併症であり、高額な費用と有害な長期転帰に関連しています。冠動脈造影または PCI 後の AKI の予防に効果的です。 [デザイン、設定、および参加者] カナダのアルバータ州で、3 つの心臓カテーテル研究所のすべての侵襲性心臓専門医を対象に無作為化されたステップウェッジ クラスター無作為化臨床試験が実施されました。 2018 年 1 月から 2019 年 9 月までの介入のさまざまな開始日。適格な患者は、非緊急冠動脈造影、PCI、またはその両方を受けた 18 歳以上でした。透析を受けていない人; 5%を超えるAKIリスクが予測された人。 34 人の医師が、選択基準を満たした 7,106 人の患者の中で 7,820 の処置を行いました。参加者のフォローアップは 2020 年 11 月に終了しました。 [介入] 介入期間中、心臓専門医は教育的アウトリーチ、造影剤量と血行動態に基づく輸液目標に関するコンピュータ化された臨床的意思決定支援、および監査とフィードバックを受けました。コントロール(介入前)期間中、心臓専門医は通常のケアを提供し、介入を受けませんでした。 [主な結果と測定値]主要な結果はAKIでした。造影剤量、静脈内輸液投与、主要な有害心血管イベントおよび腎臓イベントを含む 12 の二次的転帰がありました。分析は、時間調整モデルを使用して実施されました。 [結果] 診療グループとセンターによって 8 つのクラスターに分割された 34 人の参加心臓専門医のうち、介入グループには、4032 人の患者 (平均年齢、70.3 [SD、 10.7] 年; 1384 人は女性 [32.0%]) であり、対照群には 3251 人の患者のうち 3493 回の手術を行った 34 人が含まれていた (平均年齢、70.2 [SD, 10.8] 歳; 1151 人は女性 [33.0%])。 AKI の発生率は、介入期間中 7.2% (4327 処置後の 310 イベント)、対照期間中の 8.6% (3493 処置後の 299 イベント) でした (グループ間差、-2.3% [95% CI、-0.6% to -4.1%]; オッズ比 [OR], 0.72 [95% CI, 0.56 ~ 0.93]; P = .01)。事前に指定された 12 の副次的結果のうち、8 つは有意差を示しませんでした。過剰な造影剤を使用した手技の割合は、対照期間中の 51.7% から介入期間中に 38.1% に減少しました (グループ間差、-12.0% [95% CI、-14.4% から -9.4%];または、0.77 [95% CI、0.65 ~ 0.90]; P = .002)。輸液が不十分な適格患者の処置の割合は、対照期間中の 75.1% から介入期間中に 60.8% に減少しました (グループ間差、-15.8% [95% CI、-19.7% ~ -12.0] %]; OR、0.68 [95% CI、0.53 ~ 0.87]; P = .002)。主要な有害心血管イベントまたは主要な有害腎イベントにおいて、グループ間で有意差はありませんでした。対照期間中に治療を受けた患者と比較して AKI を発症し、時間調整後の絶対リスクは 2.3% 減少しました。この介入がこの研究設定の外で有効性を示すかどうかは、さらなる調査が必要です.[試験登録]ClinicalTrials.gov 識別子: NCT03453996. 第一人者の医師による解説 LVEDPに代わる別な因子の利用で より応用範囲が拡大する可能性 小泉 淳 千葉大学大学院医学研究院画像診断・放射線腫瘍学(放射線科)特任教授 MMJ.February 2023;19(1):15 造影剤関連の急性腎障害(AKI)は、冠動脈造影および経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の一般的な合併症であり、高額な費用と患者に透析など長期的な悪影響を及ぼしうる。本論文は、カナダ・アルバータ州で実施された、34人の心臓専門医による7,820の処置を対象とした、侵襲性心臓専門医に対する臨床意思決定支援システムのAKI軽減に関するステップウェッジクラスター無作為化臨床試験の報告である。透析患者、ST上昇型心筋梗塞への緊急 PCI、およびAKIのリスクが5%以下の患者は除外された。参加医師は、まずAKIおよびその予防に関する1時間の教育セッションを受講した。心臓専門医は、手技前にスタッフからePRISMツール(Health Outcomes Sciences)を元に計算された安全な造影剤の量の目標を受け、心臓カテーテル検査中に得られた左心室拡張末期圧測定値(LVEDP)を元に計算された静脈内輸液量目標値を告知された。実際に使用された造影剤量と輸液量が記録され、以後3カ月ごとにAKI発生率について報告された。その結果、ePRISMにより計算された造影剤量に比べて過剰な造影剤量を使用した手技の割合は、対照期間中の51.7%から介入期間中に38.1%に低下した(群間差 , -12.0%;95%信頼区間[CI],-14.4 ~-9.4%;時間調整オッズ 比[OR], 0.77;95 % CI, 0.65 ~ 0.91;P=0.002)。LVEDPを元に計算された静脈内輸液量目標値に比べて不十分な静脈内輸液が与えられた割合は、対照期間中の75.1%から介入期間中に60.8%に低下したが(群間差 , -15.8%;95%CI, -19.7~ -12.0%;OR, 0.68;95%CI, 0.53~ 0.87;P=0.002)、主要な心血管・腎イベントに関して有意な群間差はなかった。しかし、介入期間中のAKI発生率は7.2%と対照期間の8.6%に対して有意差がみられ、時間調整されたAKI絶対リスク低下は2.3%であった。なお、ePRISMの入力項目に“Black or African American”はあるが、日本人を含む黄色人種の選択肢はなく、糖尿病に関しても有無のみで程度を入力する項目はない。今回の介入が本研究環境以外の日本でも有効であるかどうかは国内でさらなる検討が必要であろう。一方、左室造影に代わって超音波検査が行われている時代で,LVEDPを測らなければいけないのは現実的ではないようにも思われる。CTの普及・実施率が世界一である日本では、CT時に使用される造影剤によるAKI予防も重要であり、LVEDPに代わる別な因子が輸液量決定に使えるなら、より応用範囲が拡大するかもしれない。今後の研究が待たれる。 1. James MT, et al. Can J Cardiol.2019;35(9):1124-1133. 2. Malik AO, et al. Am Heart J.2021;234:51-59. 3. Brar SS, et al. Lancet 2014;383(9931):1814-1823.
症候性頭蓋内動脈狭窄症に対するステント治療は内科的治療への優位性を示せず
症候性頭蓋内動脈狭窄症に対するステント治療は内科的治療への優位性を示せず
Effect of Stenting Plus Medical Therapy vs Medical Therapy Alone on Risk of Stroke and Death in Patients With Symptomatic Intracranial Stenosis: The CASSISS Randomized Clinical Trial JAMA. 2022 Aug 9;328(6):534-542. doi: 10.1001/jama.2022.12000. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [重要] 以前の無作為化試験では、一般的に、症候性の重度の頭蓋内アテローム性動脈硬化性狭窄を有する患者の薬物療法にステント留置術を追加しても害があるか、または利益がないことが示されていますが、洗練された患者選択とより経験豊富な外科医が結果を改善する可能性があるかどうかは不明のままです. [目的]症候性の重度の頭蓋内アテローム性動脈硬化性狭窄症患者におけるステント留置と内科療法と内科療法単独を比較すること。重度の頭蓋内狭窄 (70%-99%) に起因する一過性脳虚血発作または非障害性、非穿通枝 (非脳幹または非大脳基底核末端動脈として定義) 領域虚血性脳卒中の合計 380 人の患者、および最新の発作から 3 週間以上の期間虚血症状の発症は、2014 年 3 月 5 日から 2016 年 11 月 10 日の間に募集され、3 年間追跡調査された (最終追跡調査: 2019 年 11 月 10 日)。単独で(n = 182)。薬物療法には、90 日間の 2 剤併用抗血小板療法(その後は 1 回の抗血小板療法)と脳卒中危険因子のコントロールが含まれていました。日から1年。 2 年目と 3 年目の適格な動脈領域での脳卒中、3 年目の死亡率を含む 5 つの二次的転帰がありました。 [73.5%]) と 343 (95.8%) が試験を完了しました。ステント留置と薬物療法のグループと薬物療法のみのグループでは、脳卒中または死亡のリスクの主要アウトカムに有意差は見られなかった (8.0% [14/176] vs 7.2% [13/181]; 差、0.4% [95] % CI、-5.0% ~ 5.9%]; ハザード比、1.10 [95% CI、0.52-2.35]; P = .82)。事前に指定された 5 つの副次的エンドポイントのうち、2 年で適格な動脈領域の脳卒中を含む有意差を示したものはありませんでした (9.9% [17/171] 対 9.0% [16/178]; 差、0.7% [95% CI、- 5.4% から 6.7%]; ハザード比、1.10 [95% CI、0.56-2.16]; P = .80) および 3 年 (11.3% [19/168] vs 11.2% [19/170]; 差、-0.2 % [95% CI、-7.0% ~ 6.5%]; ハザード比、1.00 [95% CI、0.53-1.90]; P > .99)。 3 年時点での死亡率は、ステント留置術と薬物療法を併用したグループでは 4.4% (7/160) であったのに対し、薬物療法のみのグループでは 1.3% (2/159) でした (差、3.2% [95% CI、-0.5% ~ 6.9%] ; ハザード比 3.75 [95% CI 0.77-18.13]; P = .08). [結論と関連性] 症候性の重度の頭蓋内動脈硬化性狭窄による一過性脳虚血発作または虚血性脳卒中の患者では、経皮経管血管形成術の追加と内科的治療単独と比較して、内科的治療へのステント留置術は、30日以内の脳卒中または死亡のリスク、または30日を超えて1年間の対象となる動脈領域での脳卒中のリスクに有意差はありませんでした.この調査結果は、症候性の重度の頭蓋内アテローム性動脈硬化性狭窄を有する患者の治療のための内科療法への経皮経管血管形成術およびステント留置術の追加を支持していません.[試験登録]ClinicalTrials.gov識別子: NCT01763320. 第一人者の医師による解説 頭蓋内動脈狭窄症に対する血管内治療は当面の間 限定的な患者への実施にとどまるだろう 秋山 武紀 慶應義塾大学医学部脳神経外科専任講師 MMJ.February 2023;19(1):8 頭蓋内動脈狭窄症はアジアで頻度が高く、薬物療法での脳梗塞再発率が高い疾患である。このため血管内治療(経皮的脳血管形成術および頭蓋内ステント留置術)による予後の改善が期待され、さまざまな研究が行われてきたが、SAMMPRIS試験(1)などでは血管内治療の周術期合併症リスクが非常に高い(15%前後)ために内科的治療に対する優位性を示すことができずにいた。今回、厳密な患者選択と術者限定を行うことで周術期合併症リスクが低下し、頭蓋内動脈狭窄症に対するステント治療の有益性が証明されるという仮説のもと、CASSISS(China Angioplasty and Stenting for Symptomatic Intracranial Severe Stenosis)試験が行われた。本試験は2014年3月~16年11月に患者組み入れを行い、1年以内に一過性脳虚血発作または軽症脳梗塞を発症、頭蓋内主幹動脈(内頚動脈、中大脳動脈 M1、椎骨・脳底動脈)に70 ~99%の動脈硬化性狭窄を有し、虚血発症後3週間を経過した患者358人を対象とした。穿通枝梗塞・大梗塞や進行性に増悪する神経症状を有する患者などは除外された。3年以内に頭蓋内狭窄に対する血管内治療30例以上を経験、30日後の死亡・脳梗塞発生率が15%未満である術者に限定された。治療プロトコールは抗血小板薬2剤と最善の内科的治療(LDL-C 100mg/dL、血圧140/90mmHg、HbA1c 6.5%未満、生活習慣の改善)は共通、血管内治療はバルーンおよび自己拡張型頭蓋内ステント(WingspanR)の使用という一般的な手技で行われた。 その結果、主要評価項目(30日以内の脳卒中・死亡、30日以降1年以内の支配領域における脳卒中)の発生率は血管内治療群8.0%、内科的治療群7.2%であった。副次評価項目の1つである3年以内の支配領域の脳卒中は血管内治療群11.3%、内科的治療群11.2%であり、主要、副次評価項目ともに2群間に有意差を認めなかった。すなわち、患者選択、術者限定を行っても症候性頭蓋内動脈狭窄症における血管内治療の内科的治療に対する優位性は示されなかった。 CASSISS試験は先行試験の批判に応え、血管内治療の優位性を示しやすい条件のもと行われたが、やはり内科的治療の成績を上回ることはなかった。本試験における血管内治療の周術期合併症発生率は5%であり、決して高いものではない。今後も薬物療法の進歩が続くことを考えると、それを上回る血管内治療の成績を示すことは現状のデバイスでは困難かもしれない。頭蓋内動脈狭窄症に対する血管内治療は当面の間、限定的な患者に行われることになるとともに、革新的なデバイスの開発が求められるであろう。 1. Derdeyn CP, et al. Lancet. 2014;383(9914):333-341.
痛風患者における発作は発作後の近い将来の心血管イベントと関連する
痛風患者における発作は発作後の近い将来の心血管イベントと関連する
Association Between Gout Flare and Subsequent Cardiovascular Events Among Patients With Gout JAMA. 2022 Aug 2;328(5):440-450. doi: 10.1001/jama.2022.11390. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】痛風は心血管疾患と関連があります。痛風の再燃と心血管イベントとの時間的関連性は調査されていません。 [目的]最近の痛風の再燃後に心血管イベントのリスクが一時的に増加するかどうかを調査すること。 [デザイン、設定、および参加者]レトロスペクティブな観察研究が実施されました。 1997 年 1 月 1 日から 2020 年 12 月 31 日までの英国の Clinical Practice Research Datalink からの電子カルテを使用。季節と年齢、痛風の再燃と心血管イベントを有する1421人の患者の間で実施されました。急性心筋梗塞または脳卒中。最近の以前の痛風再燃との関連性は、ネストされたケースコントロール研究で 95% CI の調整済みオッズ比 (OR) を使用し、自己管理型ケース シリーズで 95% CI の調整済み発生率比 (IRR) を使用して測定されました。痛風の新たな診断を受けた患者 (平均年齢、76.5 歳、男性 69.3%、女性 30.7%) では、心血管イベントが発生した 10,475 人の患者が、心血管イベントのない 52,099 人の患者と一致しました。心血管イベントが発生した患者は、心血管イベントが発生しなかった患者と比較して、0~60 日以内に痛風が再燃する確率が有意に高かった (204/10 475 [2.0%] vs 743/52 099 [1.4%]; 調整済み OR , 1.93 [95% CI, 1.57-2.38]) および過去 61 日から 120 日以内 (170/10 475 [1.6%] vs 628/52 099 [1.2%]; 調整済み OR, 1.57 [95% CI, 1.26- 1.96])。過去 121 日から 180 日以内に痛風再発のオッズに有意差はありませんでした (148/10 475 [1.4%] vs 662/52 099 [1.3%]; 調整済み OR、1.06 [95% CI、0.84-1.34] )。自己管理された症例シリーズ (N = 1421) では、0 日から 60 日までの 1000 人日あたりの心血管イベント発生率は 2.49 (95% CI 2.16-2.82) でした。 2.16 (95% CI、1.85-2.47) 61 日から 120 日以内。痛風の再燃後 121 日から 180 日以内に 1.70 (95% CI 1.42-1.98)、150 日または 181 日以内の 1000 人日あたりの心血管イベント発生率は 1.32 (95% CI 1.23-1.41)痛風の再燃から540日後まで。痛風再燃の 150 日前または 181 ~ 540 日後と比較すると、心血管イベントの発生率の差は 1,000 人・日あたり 1.17 (95% CI、0.83 ~ 1.52) であり、調整済み IRR は 1.89 (95% CI、1.54) でした。 -2.30) 0 日から 60 日以内。 1000 人日あたり 0.84 (95% CI、0.52-1.17)、61 ~ 120 日以内に 1.64 (95% CI、1.45-1.86)。 [結論と関連性] 痛風の患者のうち、痛風を経験した人心血管イベントは、そのようなイベントを経験しなかった人と比較して、前の日に最近痛風が再発する可能性が有意に高かった.これらの調査結果は、痛風の再燃が、再燃後の心血管イベントの一時的な増加と関連していることを示唆しています。 第一人者の医師による解説 最も肝心なのは生活習慣改善などによる痛風発作の予防 脇野 修 徳島大学大学院医歯薬学研究部腎臓内科学分野教授 MMJ.February 2023;19(1):20 心血管イベントの基盤病態には炎症が存在する。痛風は特に高齢者に多い全身性の炎症疾患で(1)、痛風患者は心血管イベントの発症率が高い(2)。日本のガイドラインによれば、痛風は高尿酸血症を必須条件とし、尿酸 -ナトリウム結晶による急性関節炎(痛風発作)をすでに生じた状態である(3)。痛風関節炎を伴わない無症候性高尿酸血症とは区別される。痛風自体は微小炎症を特徴とし、炎症性サイトカイン、血中活性酸素濃度の上昇、neutrophil extracellular trapの形成、内皮障害、血小板活性化などの病態を認め、動脈硬化性塞栓症発症の基盤となる。さらに、痛風発作はNAPL3インフラマソームの活性化により生じ、NAPL3インフラマソーム阻害薬は心血管イベントの発症を予防することが示されている。以上のことより痛風発作はその後の心血管イベント発症と関連があることが推測されるが、時間的因果関係の証明はなされていない。 そこで本研究では、英国の電子医療記録を用いて、痛風診断後に心血管イベント(急性心筋梗塞または脳卒中)を起こした患者(症例)と、年齢、性、罹病期間を一致させた心血管イベントを起こしていない患者(対照)を比較することで、痛風発作後に一時的に心血管イベント発症が増加するかどうかを検討した。その結果、症例群では対照群に比べ0~60日前および61~120日前の痛風発作の出現が有意に高かった(それぞれオッズ比1.93および1.57)。一方、121~180日前の痛風発作の出現には群間差がなかった。痛風発作と心血管イベントを発症した症例のみで行ったself-controlled case series解析によると、1,000人・年あたりの心血管イベント発症数は痛風発作後0~60日は2.49件、61~120日は2.16件、121~180日は1.70件、一方、150日前か181~540日後は1.32件であった。150日前か181~540日後をベースラインとして算出した心血管イベントの調整発症率比は、痛風発作0~60日後1.89、61~120日後1.64、121~180日後1.29であった。以上より、痛風患者において心血管イベントを発症した患者はその前の近いうちに痛風発作を起こしている可能性が高い。すなわち、痛風発作を起こした場合はその後の心血管イベント発症に関連することが明らかとなった。 本研究の感度分析では、標準的治療であるコルヒチン、非ステロイド系抗炎症薬、ステロイドの各使用群でも痛風発作に伴う心血管イベント増加が認められていることから、追加治療の潜在的な役割も期待される。ただし、リスクの絶対差は痛風発作後0~60日で0.6%(2.0%[症例群] 対 1.4%[対照群])であり、最も肝心なのは生活習慣改善などによる痛風発作の予防である。 1. Roth GA, et al. J Am Coll Cardiol. 2020;76(25):2982-3021. 2. Choi HK, et al. Circulation. 2007;116(8):894-900. 3. 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第 3 版(2019 年改訂)
トラネキサム酸の高用量持続点滴投与は心臓手術における輸血率を低減
トラネキサム酸の高用量持続点滴投与は心臓手術における輸血率を低減
Effect of High- vs Low-Dose Tranexamic Acid Infusion on Need for Red Blood Cell Transfusion and Adverse Events in Patients Undergoing Cardiac Surgery: The OPTIMAL Randomized Clinical Trial JAMA. 2022 Jul 26;328(4):336-347. doi: 10.1001/jama.2022.10725. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】トラネキサム酸は、心臓手術における失血や輸血の軽減に推奨されています。しかし、高用量のトラネキサム酸が、心臓手術における血栓性合併症や発作のリスクを増加させることなく、低用量よりも優れた血液節約効果をもたらすかどうかは不明のままです。心肺バイパスを伴う心臓手術を受ける患者における低用量トラネキサム酸。この研究には、2018 年 12 月 26 日から 2021 年 4 月 21 日まで、中国の 4 つの病院で 3079 人の患者が登録されました。最終フォローアップは 2021 年 5 月 21 日でした。 kg プライム (n = 1525) または 10 mg/kg ボーラス、2 mg/kg/h 維持用量、および 1 mg/kg プライムを含む低用量レジメン (n = 1506)。[主な結果主要な有効性エンドポイントは、手術開始後の同種赤血球輸血率であり(優越性仮説)、主要な安全性エンドポイントは、術後30日間の死亡率、発作、腎機能障害の複合値でした(ステージ 2 または 3 の腎臓病: Improving Global Outcomes [KDIGO] 基準)、および血栓性イベント (心筋梗塞、虚血性脳卒中、深部静脈血栓症、および肺塞栓症) (マージン 5% の非劣性仮説)。主要な安全性エンドポイントの個々の構成要素を含む、15 の副次的エンドポイントがありました。 [結果] 治療群に無作為に割り付けられた 3079 人の患者 (平均年齢 52.8 歳、女性 38.1%) のうち、3031 人 (98.4%) が試験を完了しました。 .同種赤血球輸血は、高用量群の患者 1525 人中 333 人 (21.8%)、低用量群の患者 1506 人中 391 人 (26.0%) で発生した (リスク差 [RD]、-4.1% [片側97.55% CI、-∞ ~ -1.1%]; 相対リスク、0.84 [片側 97.55% CI、-∞ ~ 0.96; P = .004])。術後発作、血栓性イベント、腎機能障害、および死亡の複合は、高用量群の 265 人の患者 (17.6%) および低用量群の 249 人の患者 (16.8%) で発生した (RD、0.8%; 片側97.55% CI、-∞ ~ 3.9%; 非劣性の場合は P = .003)。事前に指定された 15 の二次エンドポイントのうち 14 は、高用量群の 15 人の患者 (1.0%) と低用量群の 6 人の患者 (0.4%) で発生した発作を含め、群間で有意差はありませんでした (RD、0.6 %; 95% CI, -0.0% to 1.2%; P = .05). [結論と関連性] 心肺バイパスを伴う心臓手術を受けた患者では、高用量は低用量のトラネキサム酸注入と比較して統計的に中程度の結果でした.同種赤血球輸血を受け、30 日死亡率、発作、腎機能障害、および血栓性イベントからなる複合主要安全性エンドポイントに関して非劣性の基準を満たした患者の割合が大幅に減少しました。[試験登録]臨床試験。政府識別子: NCT03782350。 第一人者の医師による解説 RCTによる低用量群との比較で 有害事象を増加させず輸血率低下効果を示した貴重な研究 島村 和男 大阪大学大学院医学系研究科外科学講座心臓血管外科学准教授 MMJ.February 2023;19(1):12 心臓手術に用いられる人工心肺(CPB)は線溶系を亢進させ,術中・術後の出血傾向を促進することが知られている。このため凝固障害を予防する目的で体外循環の施行中に線溶阻害薬が投与され、近年ではトラネキサム酸が主に使用されてきた。しかしながら、高用量のトラネキサム酸による有害事象として、てんかんと血栓塞栓症が報告されており、2017年に報告された多施設共同無作為化試験(1)では、冠動脈バイパス手術におけるトラネキサム酸1回投与の輸血量低減効果が示されたものの、てんかん発生率の上昇が認められた。一方、トラネキサム酸の持続点滴投与は1回投与に比べ安定した血中濃度が維持され、かつピーク濃度を低下させることから、理論的には有害事象を減少させ安定した止血効果が得られるとの報告(2)もあり、さまざまなトラネキサム酸投与プロトコールがこれまで使用されてきた。 本論文で報告されているOPTIMAL試験は、CPBを使用する心臓手術例に対するトラネキサム酸持続点滴投与の有効性を検証する二重盲検無作為化試験であり、2018年12月~ 21年4月に中国4施設で実施された。対象患者は、高用量群(ボーラ ス 静注30mg/kg+術中維持量16mg/kg/時、CPB充填2mg/kg)または低用量群(ボーラス静注10mg/kg+術中維持量2mg/kg/時、CPB充填1mg/kg)に、1対1の比で割り付けられた。3,079人(平均年齢52.8歳、女性38.1%)が無作為化の対象となり、このうち3,031人(98.4%)が試験を完了し、高用量群に1,525人、低用量群に1,506人が割り付けられた。結果では、少なくとも1回の同種赤血球輸血を受けた患者の割合は、高用量群は21.8%と低用量群の26.0%に比べ有意に低かった(群間リスク差[RD], -4.1%、リスク比 , 0.84;P=0.004)。また、安全性の主要複合エンドポイント発現率は、高用量群17.6%、低用量群16.8%と、高用量群の低用量群に対する非劣性が確認された(群間 RD, 0.8%;非劣性検定 P=0.003)。てんかん発作は、高用量群15例(1.0%)、低用量群6例(0.4%)に発現したが、両群間に有意差はなかった(群間 RD, 0.6%;P=0.05)。 本論文ではトラネキサム酸持続投与の有効性が高いエビデンスレベルにて示されており、心臓血管外科手術の安全性向上に寄与する投与プロトコールが提示された点で貴重なものと考えられる。 1. Myles PS, et al. N Engl J Med. 2017;376(2):136-148. 2. Dowd NP, et al. Anesthesiology. 2002;97(2):390-399.
呼吸補助が必要な急性期小児患者で高流量鼻カニューレ療法はCPAPに非劣性
呼吸補助が必要な急性期小児患者で高流量鼻カニューレ療法はCPAPに非劣性
Effect of High-Flow Nasal Cannula Therapy vs Continuous Positive Airway Pressure Therapy on Liberation From Respiratory Support in Acutely Ill Children Admitted to Pediatric Critical Care Units: A Randomized Clinical Trial JAMA. 2022 Jul 12;328(2):162-172. doi: 10.1001/jama.2022.9615. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [重要] 急性期の小児に対する非侵襲的呼吸補助の最適な一次モードは不明です。 [デザイン、設定、および参加者] 英国の 24 の小児救命救急ユニットで実施された実用的、多施設、無作為化非劣性の臨床試験2019 年 8 月から 2021 年 11 月の間に募集され、2022 年 3 月に最後のフォローアップが完了した、非侵襲的呼吸補助が必要であると臨床的に評価された 0 歳から 15 歳までの 600 人の急性疾患の子供の中で。患者の体重 (n = 301) に基づく流量での HFNC または 7 ~ 8 cm H2O の CPAP (n = 299)。これは、参加者があらゆる形態の呼吸補助 (侵襲的または非侵襲的) から解放された 48 時間の期間の開始として定義され、0.75 の調整済みハザード比の非劣性マージンに対して評価されました。救命救急室退院時の死亡率、48 時間以内の挿管、鎮静の使用など、7 つの副次評価項目が評価されました。サポートは 22 で開始されませんでした (HFNC: 5; CPAP: 17)。 573 人の子供 (HFNC: 295; CPAP: 278) が一次分析に含まれました (年齢の中央値、9 か月; 226 人の女の子 [39%])。 HFNC グループの解放までの時間の中央値は 52.9 時間 (95% CI、46.0 ~ 60.9 時間) であったのに対し、CPAP グループでは 47.9 時間 (95% CI、40.5 ~ 55.7 時間) (絶対差、5.0 時間 [95% CI - 10.1 ~ 17.4 時間]; 調整ハザード比 1.03 [片側 97.5% CI、0.86-∞])。これは非劣性の基準を満たしていました。事前に指定された 7 つの副次的転帰のうち、3 つが HFNC グループで有意に低かった。救命救急入院の平均期間 (5 日対 7.4 日、調整平均差、-3 日 [95% CI、-5.1 ~ -1 日]);および平均急性入院期間 (13.8 日 vs 19.5 日; 調整平均差、-7.6 日 [95% CI、-13.2 ~ -1.9 日])。最も一般的な有害事象は鼻の外傷でした (HFNC: 6/295 [2.0%]; CPAP: 18/278 [6.5%])。ケアユニットでは、CPAP と比較した HFNC は、呼吸補助から解放されるまでの時間について非劣性の基準を満たしていました。[試験登録]ISRCTN.org 識別子: ISRCTN60048867. 第一人者の医師による解説 高流量鼻カニューレ療法の使いどころはステップアップ 不快感を軽減し鎮静薬使用の頻度が低い 志馬 伸朗 広島大学大学院医系科学研究科救急集中治療医学教授 MMJ.February 2023;19(1):9 呼吸サポートは、集中治療を要する小児患者において、最も頻繁に適用される臓器補助である。近年、気管挿管による侵襲的換気の弊害の認識が高まり、非侵襲的換気の適用により挿管を回避する試みが重要視されている。従来、小児患者に対する非侵襲的換気サポートは経鼻プロングあるいはマスクを用いた持続気道陽圧(CPAP)であったが、患者認容度が高く使いやすい高流量鼻カニューレ療法(HFNC)が普及してきた(1)。 非侵襲的換気の適用は、「ステップアップ」=気管挿管前の使用と、「ステップダウン」=抜管後の使用に分けられる。FIRST-ABC研究ではこの2つの状態を対象に、独立したランダム化比較試験を行った。既報 の ス テップ ダ ウン 研究 で はHFNCはCPAPに対する非劣性を示せなかった(2)。本研究では「ステップアップ」時のHFNCがCPAPに非劣性であるか検討した。24ユニットから登録された小児患者573人のデータが解析された。原疾患の約半数は急性細気管支炎で、残りは他の呼吸器疾患、喘息、心疾患、敗血症など多彩であった。HFNC群の開始流量は体重12kg未満では2L/kg/分、12kg以上ではプロトコールにより設定され、離脱に際して流量を50%減らした。CPAP群は、7 ~ 8cmH2Oの空気圧で開始され、離脱時には5cmH2Oまで下げられた。HFNC群の33.1%、CPAP群の53.3%において、中央値でそれぞれ6.1、4.5時間後に治療失敗が生じた。CPAPからHFNCへの切り替えは、HFNCからCPAPへの切り替えよりも多かった(30.9% 対 20.0%)。切り替えの理由は、HFNC群では主に臨床的悪化、CPAP群では患者の不快感に関連していた。鎮静薬の使用頻度はHFNC群(27.7%)がCPAP群(37.0%)よりも低かった。 本研究は、呼吸補助を必要とする小児呼吸不全患者において、HFNCはCPAPと同様に気管挿管を回避する一手段となりうることを示している。より重要なことに、HFNCは不快感に関連する治療失敗率が低いことに加え、不快感を軽減しデバイス装着を維持するために鎮静薬を要する頻度が低い。“こどもに優しい”は、小児医療における不変のキーワードであり、洗練されたデバイスを用いたより非侵襲的な介入により高い効果が得られることは、小児患者にとって何よりも福音である。ステップアップにおける効果発現にも、この認容性の良さが関係しているだろう。HFNCは日本の臨床現場に急速に普及したが、まだ標準化の余地がある(3)。幸いにもクリニカルエビデンスの集積は盛んであり、より良い使用法、適応、あるいは限界が明確化されることを望む。 1. Kwon JW. Clin Exp Pediatr. 2020;63(1):3-7. 2. Ramnarayan P, et al. JAMA. 2022;327(16):1555-1565. 3. Kawaguchi A, et al. Pediatr Crit Care Med. 2020;21(5):e228-e235.