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健康リスクを最小にする飲酒量は1日あたり0〜1.87ドリンク GBD 2020でのメタ解析
健康リスクを最小にする飲酒量は1日あたり0〜1.87ドリンク GBD 2020でのメタ解析
Population-level risks of alcohol consumption by amount, geography, age, sex, and year: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2020 Lancet. 2022 Jul 16;400(10347):185-235. doi: 10.1016/S0140-6736(22)00847-9. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [背景] 適度なアルコール摂取に伴う健康リスクについては、引き続き議論されています。少量のアルコールは、一部の健康上の結果のリスクを低下させる可能性がありますが、他の結果のリスクを増加させる可能性があります。これは、全体的なリスクが、地域、年齢、性別、および年によって異なる背景疾患の発生率に部分的に依存することを示唆しています。この分析では、理論上の最小リスク暴露レベル (TMREL) と非飲酒者等価 (NDE) を推定するために、22 の健康アウトカムにわたる負担加重用量反応相対リスク曲線を構築しました。 204 の国と地域を含む 21 の地域の 2020 年の疾病、傷害、リスク要因調査 (GBD) の疾病率を、5 歳の年齢グループ、性別、年齢別の個人の年ごとに使用した非飲酒者の割合1990 年から 2020 年までの 15 歳から 95 歳以上。NDE に基づいて、有害な量のアルコールを消費している人口を定量化しました。 2020 年の 15 歳から 39 歳の個人では、TMREL は 0 (95% 不確実性区間 0-0) から 0.603 (0.400-1.00) の標準飲料/日の間で変化し、NDE は 0.002 の間で変化しました。 1 日あたり (0-0) および 1.75 (0.698-4.30) の標準的な飲み物。 40 歳以上の個人では、負担加重相対リスク曲線はすべての地域で J 字型で、2020 年の TMREL は 0.114 (0-0.403) から 1.87 (0.500-3) の範囲でした。 ·30) 1 日あたりの標準的な飲み物と、1 日あたり 0·193 (0-0·900) から 6·94 (3·40-8·30) の標準的な飲み物の範囲の NDE。 2020 年に有害な量のアルコールを摂取した個人のうち、59.1% (54.3-65.4) が 15-39 歳で、76.9% (73.0-81.3) が男性でした。は、年齢や場所によって異なるアルコール消費に関する推奨事項を裏付ける強力な証拠です。より強力な介入、特に若い個人向けに調整されたものは、アルコールに起因する実質的な世界的な健康損失を減らすために必要です.[FUNDING] Bill & Melinda Gates Foundation. 第一人者の医師による解説 健康リスク最小の飲酒量は地域や年齢で大きく異なり 飲酒目標量策定には地域の実情を考慮する必要 木村 充 独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター副院長 MMJ.February 2023;19(1):24 疫学的研究では、非飲酒者に比べ、少量飲酒者の方が全死亡率が低く、飲酒量がある閾値を超えると全死亡率が上昇するJカーブ効果が報告されてきた。しかし、非飲酒者の中に健康問題による禁酒者が含まれているために死亡率が高くなるのではないか、少量飲酒者には生活環境・経済面で恵まれている人が多く含まれるために死亡率が低くなるのではないかといった、Jカーブ効果が見せかけの効果であるとの批判もあった。 2016年の世界疾病負荷研究(GBD 2016)からは、健康被害を最小にする飲酒量はゼロであると報告された(1)。しかし、研究間で結果は一致しておらず、Jカーブ効果が存在するかどうかは論争の的となっている。 今回報告されたGBD 2020による研究では、GBD 2016から更新されたメタ解析のデータを用いて、204の国・地域から22の疾病・傷害についての障害調整生存年(DALY)を算出し、理論的な健康リスクを最小にする飲酒量(TMREL)、非飲酒者と同等リスクの飲酒量(NDE)を、地域、年齢層、性別、年ごとに推定した。その結果、地域、年齢、性別に関係なく、TMRELは1日あたり0~1.87ドリンク(1ドリンクはアルコール量として10g)と低くとどまっていた。若年者は高齢者よりもTMRELとNDEが有意に少なく、15~39歳のTMRELは0~0.603ドリンク /日であったが、これは若年者では交通事故、自傷、暴力などの外傷が寄与する割合が大きいことが原因と考えられた。40~64歳では、アルコールによる健康影響は、心血管疾患やがんの寄与する割合が高くなり、全世界でのTMRELは0.527ドリンク /日(男性)、0.562ドリンク /日(女性)であり、NDEは1.69ドリンク /日(男性)、1.82ドリンク /日(女性)であった。65歳以上でも同様に、若年者よりもTMREL、NDEは高くなった。地域間では疾病負荷の原因分布は大きく異なっていた。東アジアでのTMRELは0~0.7ドリンク /日であり、地域にかかわらずTMREL、NDEに性差は認められなかった。 本研究では、健康リスクを最小にする飲酒量は、地域や年齢によって大きく異なることが示された。政策として飲酒の目標量を策定する際は、地域の実情を考慮する必要がある。若年者ではTMRELが低く、アルコールによる健康被害を減らすためには、特に若年者での飲酒を減らすことが重要と考えられる。一方でTMRELに性差が認められなかったことから、男女別の飲酒目標を決める必要はない可能性がある。日本では厚生労働省が「節度ある適度な飲酒」として1日20gの飲酒を提唱しているが、本研究の結果から考えるとやや過大かもしれない。 1. GBD 2016 Alcohol Collaborators. Lancet. 2018;392(10152):1015-1035.
症候性重症大動脈弁狭窄症患者に対する経カテーテル大動脈弁置換術における自己拡張型人工弁とバルーン拡張型人工弁の安全性と有効性:無作為化非劣性試験。
症候性重症大動脈弁狭窄症患者に対する経カテーテル大動脈弁置換術における自己拡張型人工弁とバルーン拡張型人工弁の安全性と有効性:無作為化非劣性試験。
Safety and efficacy of a self-expanding versus a balloon-expandable bioprosthesis for transcatheter aortic valve replacement in patients with symptomatic severe aortic stenosis: a randomised non-inferiority trial Lancet 2019 ;394 (10209):1619 -1628. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)は、症候性重症大動脈弁狭窄症の高齢患者に対する好ましい治療選択肢である。利用可能なTAVRシステムの特性の違いは、臨床転帰に影響を与える可能性がある。TAVRを受ける患者において,自己拡張型ACURATE neo TAVRシステムとバルーン拡張型SAPIEN 3 TAVRシステムを,初期の安全性と有効性について比較した。 【方法】この無作為化非劣性試験において,症候性の高度大動脈狭窄症の治療で経大腿TAVRを受けており,手術リスクが高いと考えられる患者(75歳以上)をドイツ,オランダ,スイス,イギリスの20の三次心臓弁センターで募集した。参加者は、コンピュータベースの無作為並べ替えブロック方式により、ACURATE neoまたはSAPIEN 3による治療を受ける群に1対1で無作為に割り付けられ、試験施設と胸部外科学会予測死亡リスク(STS-PROM)カテゴリーにより層別化された。安全性と有効性の主要複合エンドポイントは、全死亡、あらゆる脳卒中、生命を脅かすまたは障害をもたらす出血、主要血管合併症、治療を必要とする冠動脈閉塞、急性腎障害(ステージ2または3)、弁関連症状または鬱血性心不全による再入院、再手術を必要とする弁関連機能不全、中程度または重度の人工弁逆流、手術後30日以内の人工弁狭窄で構成されました。エンドポイント評価者は治療割り付けに対してマスクされていた。ACURATE neo の SAPIEN 3 に対する非劣性は intention-to-treat 集団において、主要複合エンドポイントのリスク差マージンを 7-7% とし、片側 α を 0-05 とすることで評価されました。本試験はClinicalTrials. govに登録されており(番号NCT03011346)、継続中ですが募集はしていません。 【所見】2017年2月8日から2019年2月2日までに、最大5132人の患者をスクリーニングし、739人(平均年齢82-8歳[SD 4-1]、STS-PROMスコア中央値3-5%[IQR 2-6-5-0])が登録されました。ACURATE neo群に割り付けられた372例中367例(99%)、SAPIEN 3群に割り付けられた367例中364例(99%)で30日の追跡調査が可能であった。30日以内に主要評価項目はACURATE neo群87例(24%)、SAPIEN 3群60例(16%)で発生し、ACURATE neoの非劣性は満たされなかった(絶対リスク差7-1%[95%信頼限界上12-0%]、P=0-42)。主要評価項目の二次解析では、SAPIEN 3デバイスのACURATE neoデバイスに対する優越性が示唆された(リスク差の95%CI:-1-3~-12-9、p=0-0156)。ACURATE neo群とSAPIEN 3群では,全死亡(9例[2%] vs 3例[1%]),脳卒中(7例[2%] vs 11例[3%])の発生率は変わらなかったが,急性腎障害(11例[3%] vs 3例[1%]),中度または重度の人工大動脈逆流(34例[9%] vs 10例[3%])はACURATE neo群に多く見られた.【解説】自己拡張型ACURATE neoを用いたTAVRは、バルーン拡張型SAPIEN 3デバイスと比較して、初期の安全性と臨床効果のアウトカムにおいて非劣性を満たさないことが示された。早期の安全性と有効性の複合エンドポイントは、異なるTAVRシステムの性能を識別するのに有用であった。 【FUNDING】Boston Scientific(アメリカ)。 第一人者の医師による解説 SAPIEN 3の安定性とACURATE neoの課題が明確に 小山 裕 岐阜ハートセンター心臓血管外科部長 MMJ.April 2020;16(2) 経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)は、大動脈弁狭窄症に対する治療として、日本でも大きな役割を果たしている。バルーン拡張型弁である SAPIENは、外科手術不能・高リスク患者を無作為化したPARTNER Ⅰ試験から、その改良とともに手術低リスク患者に適応拡大したPARTNER III試験により外科手術に対する優位性が示されるまでになった。バルーン拡張型弁と自己拡張型弁の比較に関しては、バルーン拡張型弁の方が良好なデバ イス成功率を示したCHOICE試験、複合エンドポイントで同等な早期成績を示したSOLVE-TAVI試験がある。 本研究(SCOPE Ⅰ試験)は、欧州4カ国20施設 で75歳以上の手術リスクのある症候性大動脈弁狭 窄症患者739人( 平均年齢82.8歳、STS-PROM スコア中央値3.5%)を経大腿動脈アプローチによるTAVRにおいて、新しい自己拡張型弁である ACURATE neo(日本未承認)群とバルーン拡張型弁であるSAPIEN 3群に無作為化し、早期安全性と臨床的有効性の非劣性を検証した。 治療目標比較 (intention to treat)において、ACURATE neo群 はSAPIEN 3群と比較し、1次安全性・有効性複合 エンドポイント(全死亡、脳卒中、重篤な出血、血管 合併症、治療を要する冠動脈閉塞、急性腎障害など)で非劣性を示せなかった(エンドポイント発生率: 24% 対 16%;Pnoninferiority=0.42)。また2次解 析で、急性腎障害、弁機能不全においてSAPIEN 3 の優位性が示唆された(Psuperiority=0.0156)。心臓超音波評価 では、ACURATE neo群 はSAPIEN 3群と比較し、中等度以上の弁周囲逆流が多かったが(9.4% 対 2.8%;P<0.0001)、弁平均圧 較差は低く(中央値7 mmHg 対 11 mmHg;P< 0.0001)、有効弁口面積は大きかった(中央値1.73 cm2 対 1.47 cm2:P<0.0001)。両群ともに全死亡、脳卒中、新規ペースメーカー植え込みの頻度は低く、良好な成績であった。 本研究では、日本未導入のACURATE neoが SAPIEN 3に対する非劣性を示せず、SAPIEN 3の安定した成績が示された一方で、ACURATE neo の課題も明らかになった。急性腎障害の発生は造影剤使用量や手技時間の影響を受けると考えられることから、手技や症例選択による改善の余地があり、 弁周囲逆流もデバイスの改良で軽減されうる。今回の結果では自己拡張型弁の方がより大きい有効弁口面積を得られることが示されており、体格の小さい日本人や狭小弁輪には、さらに改良された ACURATE neoの導入が期待される
ナトリウム-グルコースコトランスポーター-2阻害薬と重症尿路感染症のリスク。人口ベースのコホート研究。
ナトリウム-グルコースコトランスポーター-2阻害薬と重症尿路感染症のリスク。人口ベースのコホート研究。
Sodium-Glucose Cotransporter-2 Inhibitors and the Risk for Severe Urinary Tract Infections: A Population-Based Cohort Study Ann Intern Med 2019;171:248-256. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】ナトリウム-グルコースコトランスポーター2(SGLT-2)阻害薬による重症尿路感染症(UTI)のリスクを評価した先行研究では、相反する知見が報告されている。 【目的】SGLT-2阻害薬の使用を開始した患者が、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬やグルカゴン様ペプチド-1受容体(GLP-1)アゴニストの使用を開始した患者と比較して、重篤な尿路感染症(UTI)のリスクが高いかどうかを評価すること。 【デザイン】人口ベースのコホート研究 【設定】米国の大規模コホート研究2件(2013年3月)。症例数は1,000例を超えているが、そのうちの1,000例を超えているのは、1,000例以上である。対象者は18歳以上、2型糖尿病、SGLT-2阻害薬とDPP-4阻害薬(コホート1)またはGLP-1アゴニスト(コホート2)の使用を開始した患者であった。 測定 【方法】一次アウトカムは重篤なUTIイベントであり、一次UTI、UTIを伴う敗血症、腎盂腎炎の入院と定義した。 【結果】2つのデータベースの中から、傾向スコアを1:1でマッチングさせた後、コホート1では123,752人、コホート2では111,978人の患者が同定された。コホート1では、新たにSGLT-2阻害薬を投与された人の重篤なUTIイベントは61件(1000人年あたりの発生率[IR]1.76)であったのに対し、DPP-4阻害薬投与群では57件(IR、1.77)であった(HR、0.98[95%CI、0.68~1.41])。コホート2では、SGLT-2阻害薬投与群では73件(IR、2.15)のイベントが発生したのに対し、GLP-1アゴニスト群では87件(IR、2.96)(HR、0.72 [CI、0.53~0.99])であった。結果は、感度解析において、年齢、性別、虚弱性のいくつかのサブグループ内で、カナグリフロジンとダパグリフロジンを個別に投与した場合でも、ロバストなものでした。さらに、SGLT-2阻害薬は外来UTIリスクの増加とは関連していなかった(コホート1:HR、0.96 [CI、0.89~1.04]、コホート2:HR、0.91 [CI、0.84~0.99])。 【限界】本試験所見の一般化可能性は、商用保険加入患者に限定されている可能性がある。 【結論】日常臨床でみられる大規模コホートにおいて、SGLT-2阻害薬治療を開始した患者における重度および非重度の尿路イベントのリスクは、他の第2選択抗糖尿病薬による治療を開始した患者におけるリスクと同程度であった。 第一人者の医師による解説 高齢者などの高リスク患者 引き続き注意が必要 稲垣 暢也 京都大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌・栄養内科学教授 MMJ.February 2020;16(1) SGLT2阻害薬は性器感染症を増加させることは 広く認められているが、尿路感染症との関連については不明な点が多い。また、米食品医薬品局(FDA) は2015年、SGLT2阻害薬の添付書類に重症尿路 感染症に関する警告を加えたが、服用時にみられる尿路感染症の多くは軽度~中等度であり、重症尿路感染症との関係は不明である。 本論文は、2013年3月~ 15年9月に、米国の 2つの民間保険請求データベースを用いて、18歳 以上の2型糖尿病患者を対象に実施されたコホート研究の報告である。コホート 1(123,752人) では、SGLT2阻害薬 またはDPP-4阻害薬 を開始 した患者の間で、コホート 2(111,978人)では、 SGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬を開始 した患者の間で比較検討が行われた。それぞれのコホートにおいて、1:1の傾向スコアマッチングを 行っている。主要評価項目は重症尿路感染症(初回 尿路感染症、尿路感染症による敗血症、または腎盂腎炎による入院の複合)とし、副次評価項目は抗菌薬で外来治療を行った尿路感染症(非重症尿路感染 症)とした。 そ の 結果、主要評価項目 で あ る 重症尿路感染 症 の 発生率 は、コ ホ ー ト 1でSGLT2阻害薬群 1.76/1,000人・年、DPP-4阻害薬群1.77/1,000 人・年と有意差はなく(相対リスク[RR], 0.98; 95%信頼区間[CI], 0.68 ~ 1.41)、コホート 2で は、SGLT2阻害薬群2.15 /1,000人・年、GLP-1 受容体作動薬群2.96 /1,000人・ 年 で、SGLT2 阻害薬群においてやや低かった(RR, 0.72;95% CI, 0.53 ~ 0.99)。副次評価項目の非重症尿路感 染症についても、両コホートにおいて、SGLT2阻害薬群で有意に多いという結果は得られなかった。 SGLT2阻害薬を新たに開始した患者をそれぞれ5万人以上含むリアルワールドの本コホート研 究では、SGLT2阻害薬による重症・非重症の尿路感染症の増加は認められなかった。しかし、本研究では、尿路感染症の既往やリスク(水腎症、膀胱尿 管逆流、脊髄損傷、カテーテル使用など)がある患者、 腎機能障害や妊娠糖尿病、がんなどの患者、老人ホー ムやホスピス入所患者などが除外されている点や、 糖尿病の罹病期間、体格指数(BMI)、HbA1cなどに関する情報が不足している点に注意すべきである。 今後、重症尿路感染症のリスクが特に高い高齢者など、高リスク患者については、さらなるエビデンス が必要であるとともに、引き続き尿路感染症に注意する必要があると思われる。
化学療法誘発性心筋症患者における心臓再同期療法と左室駆出率の変化との関連性。
化学療法誘発性心筋症患者における心臓再同期療法と左室駆出率の変化との関連性。
Association of Cardiac Resynchronization Therapy With Change in Left Ventricular Ejection Fraction in Patients With Chemotherapy-Induced Cardiomyopathy JAMA 2019 ;322 (18):1799 -1805. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】化学療法誘発性心筋症の発生率は増加しており、臨床転帰不良と関連している。 【目的】化学療法誘発性心筋症患者における心臓再同期療法(CRT)と心機能改善、および臨床改善との関連性を評価すること。 【デザイン、設定および参加者】Multicenter Automatic Defibrillator Implantation Trial-Chemotherapy-Induced Cardiomyopathyは、米国内の心臓腫瘍学プログラムを有する12の三次センターで2014年11月21日から2018年6月21日の間に実施した非対照・前向き・コホートスタディである。左室駆出率低下(LVEF≦35%)、New York Heart AssociationクラスII-IV心不全症状、広QRS複合体のため、化学療法による心筋症が確立した患者30名をCRT植え込み、CRT植え込み後6ヶ月間フォローアップを行った。最終フォローアップ日は2019年2月6日。 【曝露】標準治療によるCRT植え込み。 【主要アウトカムと測定】主要エンドポイントはCRT開始後のベースラインから6ヶ月後までのLVEFの変化とした。副次的評価項目は全死亡,左室収縮末期容積と拡張末期容積の変化とした。 【結果】登録された30例(平均[SD]年齢,64[11]歳,女性26例[87%],73%に乳癌歴,20%にリンパ腫または白血病歴)において,26例で一次エンドポイントのデータが,23例で二次エンドポイントのデータが利用可能であった。患者は左脚ブロックのある非虚血性心筋症で、LVEF中央値は29%、平均QRS時間は152msであった。CRTを行った患者では、6ヵ月後の平均LVEFが28%から39%に統計的に有意に改善した(差、10.6% [95% CI, 8.0%-13.3%]; P < .001)。これには,LV 収縮末期容積の 122.7 から 89.0 mL への減少(差 37.0 mL [95% CI,28.2-45.8]),LV 拡張末期容積の 171.0 から 143.2 mL への減少(差 31.9 mL [95% CI,22.1-41.6]) が伴った(いずれも P<.001 ).有害事象は、処置に関連した気胸(1例)、装置ポケットの感染(1例)、およびフォローアップ中に入院を必要とした心不全(1例)であった。 【結論と関連性】化学療法による心筋症の患者を対象としたこの予備的研究では、CRTは6ヵ月後のLVEFの改善と関連していた。この知見は、サンプルサイズが小さいこと、フォローアップ期間が短いこと、対照群を設定していないことにより制限される。 【臨床試験登録】ClinicalTrials. gov Identifier:NCT02164721 第一人者の医師による解説 がん患者へのCRT導入 有望だが原疾患の予後も勘案する必要 諏訪 惠信(助教)/塩島 一朗(教授) 関西医科大学第二内科学講座 MMJ.April 2020;16(2) 抗がん剤の進歩によって、がん患者の長期生存が可能となった。しかし、その中にはアントラサイクリン系薬剤に代表される心毒性を有する抗がん剤によって心不全に至った化学療法関連心筋症の患者が含まれる。アントラサイクリン系薬剤は用量依存的に心毒性を発現させることが知られているが、その有効性から現在も頻用されている。抗がん剤の影響で左脚ブロックを合併した化学療法関連心筋症患者に対する治療を検討した報告は少な い。特に心臓再同期療法(CRT)を用いた多施設前向きコホート研究の報告は本論文が初めてとなる。 組み入れ基準は、2014年11月~18年6月に 米国の腫瘍循環器内科を有する12施設で化学療法を受けた18~80歳の患者で、化学療法によって CRTの適応クラス 1または2に至った患者である。 患者は、化学療法前に心機能障害がないこと、かつがん治療終了後少なくとも6カ月間に収縮機能障 害を伴う臨床的心不全の発症がないことが確認されている。CRT導入から6カ月後に心臓超音波検査が行われ、心尖部2腔像と4腔像のSimpson法 で左室容積と左室駆出率が計測された。主要評価項目は6カ月後の左室駆出率の変化、副次評価項目は 全死亡および左室容積の変化とされた。NYHA心機能分類の変化や左房サイズの変化も検討された。 登録患者は30人( 平均年齢61歳、女性87 %) であった。原疾患は乳がん73%、リンパ腫または白血病20%、肉腫7%であった。83%の患者 にアントラサイクリン系薬剤が投与された(平 均投与量307 mg/m2)。心不全重症度は、NYHA II 57%、NYHA III 43%であった。登録時の薬物 療法は、β遮断薬93%、アンジオテンシン 変換酵素(ACE)阻害薬77%、ループ 利尿薬93%であった。CRT導入から6カ月後に左室駆出率の平均は28から39%に有意に改善した。左室収縮末期容積(122.7→89.0mL)および拡張末期容積 (171.0→143.2mL)も有意に改善した。死亡例はなく、6カ月後に左房容積は60.3から47.9ml に改善し、NYHA II 患者の19%、III患者の69%で改善が得られた。小規模な研究であるが、化学療法関連心筋症に対するCRTの有望性を示しており、さらなる研究が期待される。 日本循環器学会の「不整脈非薬物治療ガイドライ ン」(1)によると、1年以上の余命が期待できない患者へのCRTは推奨クラス 3の適応となっており、化学療法関連心筋症患者に導入する場合は心不全のみならず原疾患の予後も勘案して治療を提案する必要がある。 1. 日本循環器学会 / 日本不整脈心電学会合同ガイドライン:不整脈非薬物治 療ガイドライン (2018 年改訂版 ) URL:https://bit.ly/3bXESEE
一次予防のためのアスピリンによる心血管系の利益と出血の害の個別化された予測。有益性-有害性分析。
一次予防のためのアスピリンによる心血管系の利益と出血の害の個別化された予測。有益性-有害性分析。
Personalized Prediction of Cardiovascular Benefits and Bleeding Harms From Aspirin for Primary Prevention: A Benefit-Harm Analysis Ann Intern Med 2019;171:529-539. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】一部の患者において、心血管疾患(CVD)の一次予防のためのアスピリンのベネフィットが出血の害を上回るかは不明である。 【目的】アスピリンが純ベネフィットをもたらすと考えられるCVDを持たない人を特定することである。 【デザイン】性別リスクスコアと2019年のメタアナリシスによるCVDと大出血に対するアスピリンの比例効果の推定値に基づく個別ベネフィット・ハーム分析 【設定】ニュージーランドのプライマリケア 【参加者】2012年から2016年にCVDリスク評価を受けた30~79歳のCVDが確立されていない245 028人(女性43.6%)。 【測定】各参加者について、5年間の大出血を引き起こしそうな数(大出血リスクスコア×大出血リスクに対するアスピリンの比例効果)から、予防できそうなCVDイベント数(CVDリスクスコア×CVDリスクに対するアスピリンの比例効果)を差し引き、アスピリンのネット効果を算出した。 【結果】1回のCVDイベントが1回の大出血と同等の重症度と仮定した場合、5年間のアスピリン治療による純益は女性の2.5%、男性の12.1%となり、1回のCVDイベントが2回の大出血と同等と仮定した場合は女性の21.4%、男性の40.7%に増加する可能性があることがわかった。純益サブグループは純害サブグループに比べ、ベースラインのCVDリスクが高く、ほとんどの確立したCVDリスク因子のレベルが高く、出血特異的リスク因子のレベルが低かった 【Limitation】リスクスコアと効果推定値は不確実であった。アスピリンのがん転帰への影響は検討されていない。 【結論】CVDを持たない一部の人にとって、アスピリンは正味の利益をもたらす可能性が高い。 【Primary funding source】ニュージーランド保健研究評議会。 第一人者の医師による解説 リスク予測モデル活用で 個別化した1次予防戦略立案の可能性 邑井 洸太 国立循環器病研究センター心臓血管内科冠疾患科/安田 聡 国立循環器病研究センター心臓血管内科部門長・副院長 MMJ.April 2020;16(2) アスピリンは心筋梗塞、脳梗塞、心不全入院といった心血管イベントを抑制する一方で、消化管や頭蓋内などにおける出血のリスクを上昇させる。すでに心血管疾患を有する患者に対する2次予防を目的とした場合、一般的にアスピリンのメリットは デメリットを上回るとされているが、1次予防での有用性は不明である(1)。近年、リスクモデルによる予測が実用化されている(2)。本研究では、心血管疾患の既往のない集団においてアスピリン服用によって享受できる利益(心血管イベント抑制)は害(出血)を上回るかどうかをリスク予測モデルで検証した。 本研究では、ニュージーランドのプライマリケア領域で広く使用されているウエブベースの意思決定支援プログラム「PREDICT」が用いられた。解析対象は2012 ~ 16年にPREDICTを利用して心血管イベントリスクが算出された患者245,028 人(女性106,902人、男性138,126人)。算出時 の入力データに加えて、ナショナルデータベースとも紐付けされて心血管リスクなどの患者情報が抽出された。各患者から得られた情報をリスク予測 モデルに落とし込み、5年間アスピリンを服用した場合に予測される心血管イベント(虚血性心疾患による緊急入院または死亡、脳梗塞、脳出血、末梢血管障害、うっ血性心不全)予防効果と大出血(出血による入院、出血による死亡)リスクを算出した。 その結果、1つの心血管イベントと1つの大出血イベントを対等とした場合、女性では2.5%、男性では12.1%においてアスピリンは大出血リスクを上回る心血管イベント抑制効果をもたらした。さらに1つの心血管イベントと2つの大出血イベントを対等とした場合、女性では21.4%、男性では40.7%の患者においてアスピリンの利益が勝る結果となった。なお、今回の対象集団では、高齢、ベースラインの動脈硬化危険因子が多い、降圧薬や脂質低下薬を服用している、がんや出血の既往が少ないなどの特徴がみられた。 本研究の結果から、1次予防目的のアスピリン服用によって利益を享受できる集団は一定数存在 しうることが示唆された。こういった解析対象は ニュージーランドの住民に限定されており、各イベントの重み付けが均一であるという制限はあるものの、将来的には予後予測ツールを用いて個別化した1次予防戦略を立案できる可能性が示された。 1. Hennekens CH et al. Nat Rev Cardiol. 2012;9(5):262-263. 2. Go DC Jr et al. Circulation. 2014;129(25 Suppl 2):S49-73.
冠動脈バイパス術後の抗血栓療法:系統的レビューとネットワークメタ解析。
冠動脈バイパス術後の抗血栓療法:系統的レビューとネットワークメタ解析。
Antithrombotic treatment after coronary artery bypass graft surgery: systematic review and network meta-analysis BMJ 2019 ;367:l5476. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】冠動脈バイパスグラフト手術を受ける患者における伏在静脈グラフト不全を予防する異なる経口抗血栓薬の効果を評価する。 デザイン]系統的レビューとネットワークメタ分析。 【データ入手元】インセプションから2019年1月25日までのMedline、エンベース、Web of Science、CINAHL、Cochrane Libraryのデータを用いた。の適格基準。研究選択について冠動脈バイパス移植術後の伏在静脈グラフト不全を予防するために経口抗血栓薬(抗血小板薬または抗凝固薬)を投与した参加者(18歳以上)の無作為化対照試験。 【MAIN OUTCOME MEASURES】主要評価項目は伏在静脈グラフト不全、主要安全評価項目は大出血であった。副次的評価項目は心筋梗塞と死亡であった。 【結果】このレビューで3266件の引用が確認され、20件の無作為化対照試験に関連する21件の論文がネットワークメタ解析に含まれた。これら20の試験は4803人の参加者からなり、9つの異なる介入(8つの活性と1つのプラセボ)を調査した。中程度の確度のエビデンスは、アスピリン単独療法と比較して、伏在静脈グラフト不全を減らすために、アスピリン+チカグレロル(オッズ比0.50、95%信頼区間0.31~0.79、治療必要数10)またはアスピリン+クロピドグレル(0.60、0.42~0.86、19)による抗血小板2重療法の使用を支持している。本試験では,抗血栓療法の違いによる大出血,心筋梗塞,死亡の違いを示す強力なエビデンスは得られなかった。感度解析の可能性は否定できないが,含まれるすべての解析で試験間の異質性と非干渉性は低かった.グラフトごとのデータを用いた感度分析では、効果推定値に変化はなかった。 【結論】このネットワークメタ分析の結果は、冠動脈バイパスグラフト術後の伏在静脈グラフト不全を予防するために、アスピリンにチカグレロルまたはクロピドグレルを追加することの重要な絶対的利益を示唆するものであった。手術後の二重抗血小板療法は、重要な患者アウトカムに対して薬物介入の安全性と有効性のプロファイルをバランスよく調整し、患者に合わせるべきである。[STUDY REGISTRATION]PROSPERO 登録番号 CRD42017065678. 第一人者の医師による解説 DAPTにおける心血管イベント予防と出血リスク上昇 長期的で大規模な検証を期待 北村 律 北里大学医学部心臓血管外科准教授 MMJ.April 2020;16(2) 冠動脈バイパス(CABG)術後の大伏在静脈グラフト閉塞は、術後1年以内に30~40%、10年以上では70%の確率で生じるという報告もある(1),(2)。 しかしながら、採取の容易さ、ハンドリングの良さなどの理由から、多くの患者で大伏在静脈グラフトが用いられる。術後の大伏在静脈グラフト閉塞予防のために、近年、アスピリンにクロピドグレル やチカグレロルなどのチエノピリジン系抗血小板薬を追加する抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を 用いることも多い。この効果についてのネットワークメタアナリシスが本論文である。 検討の対象は、主要医学文献データベース上にある2019年1月までに発表された論文のうち、18 歳以上、大伏在静脈を用いたCABG、複数の経口抗血栓薬またはプラセボとの比較、大伏在静脈グラフト閉塞を検討した論文3,266編から選ばれた、 解析に適切な20件のランダム化対照試験(RCT)である。術後経口抗血栓薬として、単剤療法にはアスピリン、クロピドグレル、チカグレロル、ビタミン K拮抗薬(ワルファリンなど)、リバーロキサバン、 2剤併用療法にはアスピリン+クロピドグレル、アスピリン+チカグレロル、アスピリン+リバーロキサバン、合計8種類が含まれた。有効性のエンドポイントは静脈グラフト閉塞、安全性のエンドポ イントは大出血、全死亡と心筋梗塞に設定している。 合計4,803人の患者が解析の対象となっており、 年齢は44~83歳、83%が男性、83%が待機手術であった。術後観察期間は1カ月~8年で、大伏在静脈開存はカテーテル検査かCTで評価された。 検討された薬剤すべてがグラフト閉塞を予防することが示されたが、アスピリン単剤と比較して、 アスピリン+チカグレロル(オッズ比[OR], 0.50; 95% CI, 0.31~0.79)、アスピリン+クロピド グレル(OR, 0.60;95% CI, 0.42~0.86)が有意にグラフト閉塞を予防することが示された。出血リスクに関する検討では薬剤間で有意差を認めず、いずれもプラセボと比較して出血リスクを上昇させる傾向にあったが、有意差はなかった。全死亡に関する検討では10件のRCT(1,921人)、心筋梗塞に関しては12件のRCT(3,994人)が 対象となったが、薬剤間で有意差を認めなかった。 RCT20件のうち、ランダム化バイアスのリスクが低いと判断されたのは5件のみであった。 DAPTによるCABG術後の心血管イベント予防効果および出血リスクの上昇については、より長期的かつ大規模な研究による検証が期待される。 1. Cooper GJ et al. Eur J Cardiothorac Surg. 1996;10(2):129-140. 2. Windecker S et al. Eur Heart J. 2014;35(37):2541-2619
中年期から晩年期の血圧パターンと認知症発症との関連性。
中年期から晩年期の血圧パターンと認知症発症との関連性。
Association of Midlife to Late-Life Blood Pressure Patterns With Incident Dementia JAMA 2019 ;322 (6):535 -545. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】後期血圧と認知の関連は、過去の高血圧の有無と慢性度に依存する可能性がある。長期間の高血圧に続く後期の血圧低下は,認知機能の低下と関連する可能性がある。 【目的】中年期から後期の血圧パターンとその後の認知症,軽度認知障害,認知機能の低下との関連を検討する。 【デザイン、設定および参加者】Atherosclerosis Risk in Communities前向き集団ベースコホート研究では,中年期に4761人が登録され(訪問1,1987~1989),2016~2017年に6回の訪問でフォローアップした(訪問6,)。血圧は、訪問1~5回目(2011~2013年)の間に5回の対面訪問で24年間にわたり調査された。訪問5と6では、参加者は詳細な神経認知評価を受けた。舞台は米国の4つの地域である。メリーランド州ワシントン郡、ノースカロライナ州フォーサイス郡、ミシシッピ州ジャクソン、ミネソタ州ミネアポリス。フォローアップは2017年12月31日に終了。 【曝露】訪問1~5回目の正常血圧、高血圧(140/90mmHg以上)、低血圧(90/60mmHg未満)の縦断パターンに基づく5群。 主要アウトカムと 【測定】主要アウトカムは、Ascertain Dementia-8の情報提供者アンケート、6項目スクリーナーの電話評価、病院退院と死亡診断書コード、訪問6回の神経認知評価に基づいて、訪問5日後の認知症発症となった。副次的アウトカムは、神経認知評価に基づく訪問6日目の軽度認知障害であった。 【結果】参加者4761名(女性2821名[59%]、黒人979名[21%]、訪問5の平均[SD]年齢、75[5]歳、訪問1の平均年齢範囲、44~66歳、訪問5の平均年齢範囲、66~90歳)において、訪問5から6までの間に516(11%)が入認識症例であった。中年期の正常血圧(n=833)と晩年期の参加者の認知症発生率は、100人年当たり1.31(95%CI、1.00-1.72)、中年期の正常血圧と晩年期の高血圧(n=1559)は、100人年当たり1.99(95%CI、1.69-2.32)、中年期の晩年期の高血圧(n=1030)については、2.83(95%CI、2.69-2.72)であった。83(95%CI、100人年当たり2.40-3.35);中年正常血圧および後年低血圧(n = 927)、2.07(95%CI、100人年当たり1.68-2.54);および中年高血圧および後年低血圧(n = 389)、4.26(95%CI、100人年当たり3.40-5.32)であった。中年期および後期高血圧群(ハザード比[HR]、1.49[95%CI、1.06-2.08])および中年期高血圧および後期低血圧群(HR、1.62[95%CI、1.11-2.37])では正常血圧を維持した人々と比較してその後の認知症のリスクが有意に増加した。後期血圧に関係なく、中年期の持続性高血圧は認知症リスクと関連していた(HR、1.41[95%CI、1.17-1.71])。中年期と晩年期に正常血圧であった人と比較して,中年期の高血圧と晩年期の低血圧を有する参加者のみが,軽度認知障害(37人の罹患者)のリスクが高かった(オッズ比,1.65[95%CI,1.01-2.69])。BPパターンと晩年の認知機能変化との有意な関連は認められなかった。 【結論と関連性】長期追跡を行ったこの地域ベースのコホートでは,中年から晩年にかけての持続的高血圧と,中年および晩年の正常血圧と比較して中年高血圧および晩年低血圧のパターンは,その後の認知症のリスク上昇と関連していた。 第一人者の医師による解説 中年期から高齢期の血圧変動管理 認知症発症促進因子として重要 松村 美由起 東京女子医科大学附属成人医学センター脳神経内科講師 MMJ.April 2020;16(2) 認知症危険因子の1つとして高血圧が指摘されている。中年期における高血圧は、高齢期の認知症や認知機能低下の危険因子とされ、積極的治療が推進されているが、高齢期の血圧が認知機能に及ぼす影響および認知症発症との関連について十分な エビデンスは確立されていない。本論文は、中年期から高齢期にかけての血圧値の経年的変化と高齢期の認知機能低下および認知症発症との関連を検討した米国の地域住民対象コホート研究の報告で ある。 平均年齢44~66歳(平均54歳)の住民15,792 人に対して24年間にわたり血圧測定と認知機能検査を実施した。高血圧は140/90 mmHg超、低血圧は90/60 mmHg未満と定義し、認知機能は包括的心理バッテリーにより記憶、処理速度、実行機能、言語機能を加えて情報提供者へのインタビュー により評価した。1987~89年を初回調査とし、以降3年ごとに4回の血圧を中年期、その15年後とさらにその3年後の2回の調査を高齢期の血圧 とした。 中年期と高齢期の血圧を①中年期から高齢期まで正常血圧②中年期正常血圧、高齢期高血圧③ 中年期から高齢期まで高血圧④中年期正常血圧、高齢期低血圧⑤中年期高血圧、高齢期低血圧の5つのパターンに分類した。最終的に516人(11%)が 認知症を発症した。100人・年あたりの認知症発症率は、①は1.31、②は1.99、③は2.83、④は 2.07、⑤は4.26であった。③のハザード比は1.49、 ⑤は1.62であり、中年期から高齢期まで正常血圧を維持した群に比べ、中年期・高齢期とも高血圧の群と中年期高血圧・高齢期低血圧の群において認知症発症リスクが有意に高まっていた。 慢性的な血圧高値は脳循環自動調節能の異常や脳の小血管障害などを生じることが知られており、本研究の結果から中年期高血圧に伴うこうした脳の異常が認知症リスクを高めた可能性が推察される。一方、高齢期の血圧低下は、心循環機能障害や自律神経シグナル伝達の異常、動脈硬化によると推測されるが、高齢者は降圧薬を服用している割合も高く、晩年期低血圧は降圧薬の過剰投与によりもたらされた可能性も考えられる。脳循環自動調節能の障害がある場合、全身の血圧低下が脳血流低下を来しやすく、結果として認知機能低下に至った可能性もある。 本研究では、中年期高血圧で認知症発症例の脱落数が多く、病型診断との関連性が評価されていないなどの課題が残り、今後さらなる検証が必要である。
入院中の成人のせん妄を予防するための抗精神病薬。系統的レビュー。
入院中の成人のせん妄を予防するための抗精神病薬。系統的レビュー。
Antipsychotics for Preventing Delirium in Hospitalized Adults: A Systematic Review Ann Intern Med 2019;171:474-484. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】せん妄は、基礎的な医学的問題によって引き起こされる、注意力と認知力の障害を特徴とする急性障害である。抗精神病薬はせん妄の予防に用いられるが,その有益性と有害性は不明である。 【目的】成人におけるせん妄予防のための抗精神病薬の有益性と有害性を評価する系統的レビューを行う。 【データソース】研究設定,発表言語,追跡期間による制限なしに,開始時から2019年7月までPubMed,Embase,CENTRAL,CINAHL,PsycINFOを使用。 【研究選択】抗精神病薬とプラセボまたは別の抗精神病薬を比較した無作為化対照試験(RCT),および比較群を有する前向き観察研究。 【データ抽出】1名の査読者がデータを抽出しエビデンスの強さを評定し,2名の査読者がデータを確認した。2名の査読者が独立してバイアスのリスクを評価した。 データの統合]合計14件のRCTが含まれた。せん妄予防に使用されるハロペリドールとプラセボの間には、せん妄の発生率または期間、入院期間(証拠の強さが高い[SOE])、死亡率に差はなかった。認知機能、せん妄の重症度(不十分なSOE)、不適切な継続、および鎮静(不十分なSOE)に対するハロペリドールの効果を判断するエビデンスはほとんど見いだせなかった。第二世代抗精神病薬が術後設定におけるせん妄発生率を低下させる可能性があるという証拠は限られている。抗精神病薬の短期使用が神経学的有害性と関連するというエビデンスはほとんどない。いくつかの試験では、有害となりうる心臓への影響が抗精神病薬の使用により頻繁に発生していた。 【Limitation】抗精神病薬の投与量、抗精神病薬の投与経路、転帰の評価、有害事象には大きな異質性があった。 【結論】現在のエビデンスは、せん妄の予防のためのハロペリドールや第2世代抗精神病薬のルーチン使用を支持しない。第二世代抗精神病薬が術後患者のせん妄の発生率を低下させる可能性があるという限られたエビデンスはあるが、さらなる研究が必要である。今後の試験では,標準化されたアウトカム指標を用いる必要がある.(プロスペロー:Crd42018109552). 第一人者の医師による解説 今後は第2世代抗精神病薬と非薬理学的介入との比較研究が必要 中村 暖(助教)/岩波 明(主任教授)昭和大学病院附属東病院精神神経科 MMJ.April 2020;16(2) せん妄は、短期間のうちに注意力と認知機能が障害される意識障害の一種で、症状に変動性がみられるのが特徴である。身体疾患や手術などが原因で発症することが多く、発症後に日常生活動作 (ADL)や認知機能の低下、死亡率の上昇を引き起こすことが報告されている。このため、せん妄による2次障害の発生率や死亡率を低下させるためには、 せん妄の治療に加えて発症の予防が非常に重要となる。 せん妄予防を目的とした薬物投与については、 抗精神病薬の使用が複数の研究で報告されているが(1)-(3)、有効性と有害性について統一的な見解は得られていない。そもそも臨床の現場では、症状のない段階での抗精神病薬の使用自体に対する抵抗感が根強いため、予防的投与の有効性に関しての検討は臨床的な観点からも非常に重要である。 本論文は、せん妄の発症予防を目的とした抗精神病薬の有用性と有害性に関する大規模な系統的レビューである。せん妄の発症予防効果に関して、ハ ロペリドールまたは第2世代抗精神病薬とプラセボ、あるいはハロペリドールと第2世代抗精神病薬を比較した14件のランダム化比較試験を解析した。各文献から得られたデータの解析に際しては、認知機能、入院期間、せん妄の重症度、鎮静作用、抗精神病薬の不適切な継続投与、せん妄の発症率、せん妄の持続期間、死亡率、心臓・神経系の障害について評価をした。 せん妄の発症率と持続期間、入院期間、死亡率について、ハロペリドールとプラセボの間で差はみられなかった。認知機能、せん妄の重症度、抗精神病薬の不適切な使用、鎮静作用に関しても、ハロペ リドールの有効性を示す結果は得られなかった。一方で術後の予防投与に限り、第2世代抗精神病薬(リスペリドン、オランザピン)はプラセボと比較してせん妄の発症率を有意に低下させていた。神経系 の障害に関して差が認められなかった一方、心臓 の障害は抗精神病薬の使用によってより高い頻度で生じることが明らかになった。 結論として、成人の入院患者におけるせん妄の発症抑制を目的としたハロペリドールの予防投与は有用ではないことがわかった。術後せん妄の発症予防に関して第2世代抗精神病薬の有効性を支持する結果が得られたが、先行研究では非薬理学 的介入が術後せん妄の発症予防に有効であるとの報告もあるため、今後はこうした非薬理学的介入との比較研究が必要である。 1.Wang W et al. Crit Care Med. 2012;40(3):731-739. 2.Al-Aama T et al. Int J Geriatr Psychiatry. 2011;26(7):687-694. 3.Larsen KA et al. Psychosomatics. 2010;51(5):409-418
自然災害後の経済的弱者における社会サービスの改善と心的外傷後ストレス障害の負担:モデル化研究.
自然災害後の経済的弱者における社会サービスの改善と心的外傷後ストレス障害の負担:モデル化研究.
Improved social services and the burden of post-traumatic stress disorder among economically vulnerable people after a natural disaster: a modelling study Lancet Planet Health 2019 ;3: e93 –101 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】ハリケーンなどの自然災害は、公衆衛生や経済的な影響をもたらし、その直後よりもずっと長く続く。資源の喪失は、大規模な心的外傷イベント後の心的外傷後ストレス障害(PTSD)の中核的な推進力である。我々は、災害後の文脈における住宅および住宅関連財源の回復がPTSDからの回復に及ぼす効果を調べた。 【方法】我々は、有病率と持続性によって測定されるPTSD回復に対する異なる医療サービスアプローチの効果を検証するために、観察および実験データで経験化したエージェントベースモデルを構築した。心理的ファーストエイドに類似した社会サービスケースマネジメント(SSCM)アプローチを検証し、避難所ベースの社会サービス提供と、避難し所得を失った人々へのメンタルヘルス治療への連携を特徴とし、通常のケアのみ、SSCM付き通常のケア、ステップケアのみ、SSCM付きステップケアの治療効果を比較した。 【結果】大規模自然災害後に住居を失い、所得を失った人々に対して、住居を回復し、メンタルヘルスサービスへの連携を提供するSSCMアプローチは、1年目終了時に、SSCMを行わない状態に比べて1-56(95%CI 1-55-1-57)倍から5-73(5-04-6-91)倍の寛解PTSD症例をもたらし、2年目終了時には1-16(1-16-1-17)倍から2-28(2-25-2-32)倍の寛解症例をもたらすことが示された。 【解釈】自然災害の影響を受けた集団に経済的・住宅的資源を回復させることは、災害後の集団、特に資源喪失者の精神衛生負担を著しく減少させるであろう。 【資金】米国保健社会福祉省. 第一人者の医師による解説 災害後のPTSDの予防と回復 心理療法・精神療法だけでなく住居確保の支援が重要 岩井 圭司 兵庫教育大学大学院人間発達教育専攻教授 MMJ.April 2020;16(2) 人間は生きていくうえで常にさまざまな要求 (demanding)に対応しなければならない。資源維持(Conservation of Resources;COR)理論(1)によると、我々はふだん多様な資源を駆使してそれらに応じているが、そういった資源が減少ないし喪失すると要求に応えることができなくなり、ストレスが生じる。さしずめ自然災害の被災者における住居の喪失と収入の減少は、資源喪失の最たるものであろう。 本研究は、社会福祉的ケースマネジメント(social services care management;SSCM)が、米国のハリケーン災害被災者の精神健康に及ぼす効果を検討したものである。なお、ケースマネジメントとは、生活に困難さを抱える人々の支援にあたり、さまざまな資源を組み合わせ結びつけて提供することであり、ケアマネジメントやケースコーディネーションとほぼ同義である。ここでは、恒久的住居への帰住の援助と精神保健機関に直接接続することを目指して、SSCMが実施された。また、被災者の精神健康の指標としては、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の発生率と持続期間が用いられた。 まず、ハリケーン・サンディ(2012年)によって住居をなくし減収を余儀なくされた被災者は、「通常ケア群」と「段階的ケア群」に分けられた。前者にはサイコロジカル・リカバリースキル(skills for psychological recovery;SPR)(2)が適用され、 後者はスクリーニングによってさらに非 PTSDと PTSDに分けられ、それぞれSPRと認知行動療法が施行された。 そこにSSCMを適用したところ、「通常ケア群」においても「段階的ケア群」においてもPTSDの発生率は低くなり、PTSDを発症したケースでも罹病期間が短くなることが明らかになった。SSCMを適用した場合のPTSD の寛解率は、しなかった場合に比べて1年後では1.56 ~ 5.73倍、2年後では1.16 ~ 2.28倍であった。 以上から、住居資源ないし経済的資源の回復は、自然災害の被災者、特に災害によって資源を喪失した者の精神健康上の負担を有意に軽減すると考えられた。 災害後の被災者に対する心のケアは、狭義の心 理療法・精神療法に限ることなく、住居確保などの経済的支援を織り込んでいくことが必要であり有効であると、本研究は実証したといえる。 1. Hobfoll SE. Am Psychol. 1989;44(3):513-524. 2. 兵庫県こころのケアセンター.http://www.j-hits.org/spr/
ハリケーン・マリア後のプエルトリコの青少年における災害への暴露と精神的健康。
ハリケーン・マリア後のプエルトリコの青少年における災害への暴露と精神的健康。
Disaster Exposure and Mental Health Among Puerto Rican Youths After Hurricane Maria JAMA Network Open 2019 ;2 (4):e192619 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】青少年の災害曝露とトラウマ関連症状の大きさを定量化することは,資金不足の環境における心理サービスの展開に不可欠である。2017年9月20日にプエルトリコに上陸したハリケーン・マリアは,大規模な破壊と前例のない死亡率をもたらした。 【目的】ハリケーン・マリア後のプエルトリコの若者の災害曝露の大きさとメンタルヘルスアウトカムを明らかにする。 【デザイン・設定・参加者】2018年2月1日から6月29日(ハリケーン・マリアの5~9ヶ月後)にプエルトリコのすべての学校の公立学校の生徒一人ひとりに学校を中心とした調査を実施した調査研究であった。参加資格のある生徒226 808名のうち,96 108名が調査を完了した。 【主要アウトカム・測定法】参加者は,スペイン語で実施された標準化自己報告尺度を用いて,ハリケーン関連ストレス因子への曝露,心的外傷後ストレス障害(PTSD),うつ症状について評価された。すべての結果変数について記述統計が作成され、PTSDまたはうつ病の臨床的に高い症状を報告する個人の頻度も作成された。これらの統計量の男女間の差もt検定で検討した。 【結果】プエルトリコの7つの教育地域すべてにおいて、3年生から12年生までの代表的な9618名の生徒が研究に参加した(回答率42.4%、女性50.3%)。ハリケーンの結果、83.9%の青少年が家屋の被害を受け、57.8%が友人や家族が島を離れ、45.7%が自分の家に被害を受け、32.3%が食料や水の不足を経験し、29.9%が生命の危険を感じ、16.7%がハリケーンの5~9ヶ月後も電気がない状態であることが分かりました。全体として,青少年(n = 6900)の 7.2%が臨床的に重大な PTSD の症状を報告した.臨床的に上昇した PTSD の症状を報告する頻度を性別に比較すると,有意差があり(t = 12.77; 差の 95% CI, 0.018-0.025; P < .001),女子(8.2%)が臨床カットオフスコアを超える頻度は,男子(6.1%)に比べて高かった.最後に,うつ病の男女間の差についても同様の解析を行ったところ,有意であった(t = 17.56;差の95%CI,0.31-0.39;P < 0.001)。女子では男子よりも高い平均(SD)スコア(2.72[3.14])を示し(2.37[2.93]),男子では女子よりも高い平均(SD)スコアを示していた。人口統計学的変数とリスク変数は,PTSDの症状の分散の約20%を占めた(r2 = 0.195; 95% CI, 0.190-0.200)。 【結論と関連性】調査結果は,ハリケーン・マリアがプエルトリコの若者を高いレベルの災害関連ストレス因子に曝し,若者が高いレベルのPTSDとうつ症状を報告したことを示すものである。結果は現在,プエルトリコ教育省によって,プエルトリコの青少年の精神衛生上の成果を改善することを目的とした,的を絞った持続可能なエビデンスに基づく実践に活用されている。 第一人者の医師による解説 日本での災害時の多国籍児童メンタルヘルス支援体制の構築検討に寄与 島津 恵子 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所行動医学研究部 MMJ.April 2020;16(2) 2017年9月にプ エ ルトリコ 南東部に上陸したハリケーンマリアの被害は死者推定2,975 ~ 4,645人を数え、米国史上未曽有の規模となった。家族や学校など子どもにとって重要な社会的支援 システムの長期的な崩壊・混乱は、社会的弱者である子どもの一層の脆弱化を招く(1)。先行研究では自然災害から1年以内に集中的な介入なしに子どもの約半数は適応し回復する一方で、3分の1にのぼる子どもでは心的外傷後ストレス(PTSD)、うつ病、 不安、薬物使用、自殺念慮、攻撃的な行動などが認められ(2)、米国本土の青少年サンプルではこれらの 症状はマイノリティー間でより顕著であることが示された(3)。 プエルトリコ青少年の被災後のメンタルヘルス ニーズに対処するためのエビデンスに基づくシステムの開発・実装の促進を目的とし、本研究はプエルトリコ教育省が主導するスクリーニングの一環として実施された。ハリケーンカトリーナ後に作成されたNational Child Traumatic Stress Network Hurricane Assessment and Referral Tool(NCTSN-HART)をもとにスペイン語に翻訳された自記式質問票を用い、被災5~9カ月後にプエルトリコの全公立学校生徒のうち3~12年生を対象に1,086校(対象226,808人)で調査が実施された。 その結果、83.9%が家屋損壊の目撃、57.8%が友人や家族の離島、45.7%が自宅の被害を報告、32.3%が食料・水の不足を経験し、 29.9%が自らの生命の危険を認識し、16.7%は被災5~9カ月後も停電の継続を経験していた。全体の7.2%が臨床的に重要なPTSD症状を報告し、その頻度は女子の方が男子よりも有意に高かった (8.2% 対 6.1%)。うつ病スコアの平均も女子の方が男子よりも有意に高かった(2.72 対 2.37)。 人口統計およびリスク変数はPTSD症状の分散の約20%を占めた。 本研究の限界として、スペイン語版質問票の妥当性の欠如、PTSD・うつ症状のみへのフォーカス、 被災前データの欠如が挙げられているが、倫理的に災害時の研究実施は非常に困難であること、青少年、その中でもマイノリティーのメンタルヘルスの研究データは希少であること、また模索的政策研究としての性質から質問票の内容を参加者の言語・ 文化的・社会的背景に適切に配慮したうえで調整していること、災害時メンタルヘルス介入でエビデンスの豊富なトラウマ・うつに焦点をあてたことは妥当であり評価に値する。災害大国の日本で増加する外国語を話す多国籍・多文化児童を対象とした体系的災害時メンタルヘルス支援体制の構築の検討は必須であり、今後実施が予定されているさらなる解析結果の発表が期待される。 1. Bonanno GA et al. Psychol Sci Public Interest. 2010;11(1):1-49. 2. La Greca AM et al. Child Youth Care Forum. 2013;42(4):351-369. 他 3. Perilla JL et al. J Soc Clin Psychol. 2002; 21(1):20-45.
福島市における東日本大震災および第一原子力発電所事故と出生率の関連性.
福島市における東日本大震災および第一原子力発電所事故と出生率の関連性.
Association of the Great East Japan Earthquake and the Daiichi Nuclear Disaster in Fukushima City, Japan, With Birth Rates JAMA Network Open 2019 ;2 (1):e187455 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】2011年3月11日、12日に福島で発生した東日本大震災とその後の福島第一原発事故と出生率の関連は、既存の文献では適切に検討されていない。 【目的】東日本大震災と福島第一原発事故の出生率に対する中期および長期の関連性を評価することである。 【デザイン、設定および参加者】コホート研究において、中断時系列分析を用いて、2011年3月1日から2017年12月31日までの福島市の住民の出生率の月次変化を、震災前の傾向に基づく震災なしの出生率の予測と比較して評価した。2007年1月1日から2017年12月31日までの福島市の出生率は、福島市役所の情報を用いて求めた。 【Exposure】東日本大震災と福島第一原子力発電所事故、出生率との関連性の5つの潜在モデルを通じて表現した:水準変化、水準と傾斜変化、時間水準変化、1または2の傾斜変化(複数)を伴う時間水準変化。 【主な結果・指標】出生率、出生数と総人口の月次データから算出 【結果】東日本大震災および福島第一原発事故前の平均出生率は10万人あたり69.8人/月、事故後の平均出生率は10万人あたり61.9人/月であった。東日本大震災・福島第一原発事故前の出生率と比較すると、福島市では震災後2年間は月別出生率が10%減少したと推定される(率比、0.90;95%CI、0.86-0.93)。その後、出生率のトレンドは震災前のトレンドとほぼ同じであった。震災前のトレンドは出生率の継続的な減少を示唆した(1年間の出生率比,0.98;95%CI,0.98-0.99).このギャップモデルは,他のモデルと比較して最適かつ簡略化されたものであった. 【結論と関連性】東日本大震災と福島第一原子力発電所事故の後、2年間出生率が有意に低下した。震災後3~7年の動向が震災前の動向と異なることを示す根拠は十分ではなかった。出生率の低下からの回復は、復興に向けた努力を示しているのかもしれない。東日本大震災や福島第一原子力発電所事故以前に見られた長期的な出生率の低下が継続していることから、行政レベルでの出生計画支援策の継続が検討されるべきと考えられる。 第一人者の医師による解説 2013年以降は事故前の将来推計値まで回復するも長期的な下落傾向は継続 小坂理子(助教)/梅﨑昌裕(教授) 東京大学大学院医学系研究科国際保健学専攻人類生態学分野 MMJ.April 2020;16(2) 本論文は、2011年3月に発生した東日本大震災とそれに続く福島第1原発事故以降の福島県福島市の出生率を、福島市の公表する人口動態統計を用いて解析したコホート研究の報告であり、出生率は 11年3月から2年間は平均で約10%低下したものの、2013年には震災・事故前に算出された将来 推計の水準まで回復していたことが明らかになった。 震災・事故によって、出生率が低下することはこれまでにも指摘されている。繰り返しメディアで流される衝撃的な映像をみることでカップルの性行動が抑制される可能性、震災・事故に伴う心理的ストレスが受精卵の着床確率または胎児死亡率に影響する可能性などが報告されている。 本研究では2007~17年の11年間を対象に出生率を解析した結果、07年1月から震災・事故までの平均出生率は人口10万人あたり毎月69.8人であったのに対し、震災・事故後から2013年2月までの2年間は59.5人まで低下したこと、2013 年3月には震災前の傾向から推計される水準まで上昇し、2013年3月~17年12月 の平均出生率は62.9人であった。解析では、複数の仮定(震災・ 事故後ベースライン値も傾向も変化する、一時的にベースライン値のみ変化する、ベースライン値の変化は一時的だが傾向の変化は長期的であるなど) がモデル化され比較検討された。加えて、季節性の調整の効果も検討された。最も当てはまりの良いモデルは「季節性を調整した上で、一時的にベースライン値のみが変化し、長期的傾向は変化しない」 というものであった。 著者も述べているように、この解析の潜在的な問題は、福島市の出生登録数が同市の実際の出生数とどのくらい一致しているかがわからないことである。よく知られているように、震災・事故後、放射線の被曝を恐れた人々、特に小さな子どもをもつ世帯やこれから子どもを育てようとする世帯が 福島県から県外へ居住地を移した。そのような世帯の中には住民票を福島市に置いたまま、他県で出産したものもあったはずで、そのような出生も、本研究で計算された出生率には含まれている。一方、 出生率を計算するための分母となる人口について も、震災後の人口移動の影響を大きく受けている。 今後、個別の調査によって市外移住者の人口学的属 性の解析、市外移住者と非移住者の出産行動の比較 などが可能になれば、震災・事故と出生率の関係に ついての理解がさらに進むと考えられる。
膵臓癌のスクリーニング。US Preventive Services Task Force Reaffirmation Recommendation Statement(米国予防医療専門委員会の再確認勧告)。
膵臓癌のスクリーニング。US Preventive Services Task Force Reaffirmation Recommendation Statement(米国予防医療専門委員会の再確認勧告)。
Screening for Pancreatic Cancer: US Preventive Services Task Force Reaffirmation Recommendation Statement JAMA 2019 Aug 6 ;322 (5):438 -444. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】膵臓がんは、年齢調整した年間発症率が10万人年あたり12.9人という珍しいがんである。しかし、膵臓癌の予後は不良であるため、死亡率は10万人年当たり11.0人である。発症率は低いものの、膵臓がんは米国で3番目に多いがん死亡原因となっています。膵臓癌の発生率は増加しており、他の種類の癌の早期発見と治療の改善とともに、膵臓癌はまもなく米国における癌死亡原因の第2位になると推定される。 【目的】膵臓癌のスクリーニングに関する2004年の米国予防医療作業部会(USPSTF)の勧告を更新することである。 【エビデンスレビュー】USPSTFは、膵癌スクリーニングの有益性と有害性、膵癌スクリーニング検査の診断精度、スクリーニングで発見された膵癌または無症状の膵癌の治療の有益性と有害性に関するエビデンスをレビューした。 【調査結果】USPSTFは、膵癌スクリーニングまたはスクリーニングで発見された膵癌の治療により、疾患特異的な罹病率と死亡率、全死因死亡率が改善するというエビデンスを見いだせなかった。USPSTFは、無症状の成人における膵がんスクリーニングの有益性の大きさは、小さいより大きくないという境界線が引けるという十分な証拠を見いだした。USPSTFは、膵がんスクリーニングおよびスクリーニングで検出された膵がんの治療の有害性の大きさは、少なくとも中程度に抑えることができるという十分な証拠を見いだした。USPSTFは、無症候性成人における膵癌スクリーニングの潜在的利益は潜在的有害性を上回らないという前回の結論を再確認する。 【結論と勧告】USPSTFは、無症候性成人における膵癌のスクリーニングを行わないよう勧告する。(D勧告)。 第一人者の医師による解説 早期膵がん患者の同定へ 新たな検診手段の開発が重要 岡崎 和一 関西医科大学内科学第三講座(消化器肝臓内科)主任教授 MMJ.February 2020;16(1) 米国における膵がんの罹患率は人口10万人あたり年間12.9人で比較的低いものの、年間死亡率 は11.0人、その部位別順位は3位と予後不良である(1)。5年生存率は膵がん全体で9.3%であるが、 局所進行膵がん37.4%、周辺臓器浸潤例12.4%、 遠隔転移例2.9%と診断時の病期に依存し、病初期での手術のみが生存率改善を期待できるため、早期診断が重要である。膵がん患者の85~90%は 遺伝的背景がなく、5~10%が家族性危険因子を有 し、3~5%がPeutz-Jeghers症候群などの遺伝的がん症候群とされている。 今回、米国予防医学特別作業部会(USPSTF)は 2004年の勧告と同じく、検診による不利益(harm)が利益(benefit)を上回るとの理由から、「無症状の一般成人を対象とする膵がん検診は推奨しない」 と結論した。しかしながら、家族性膵がん(第1度 近親者に2人以上の膵がん患者がいる場合)を含み、膵がんの家族性危険因子を考慮することが重要であり、本論文でも、今回の推奨はこれらの高リスク者には適用されないとしている。 実際、CAPS Consortiumは、膵がん患者の第1度近親者、第1 度近親者に罹患者を有するp16 /BRCA2 変異保 有者、Peutz-Jeghers症候群の患者、第1度近親者に膵がん患者を有するリンチ症候群患者を高リスク者と定義し、高リスク者に対して超音波内視鏡検査(EUS)またはMRI/MRCP によるスクリー ニングを推奨している(2)。系統的レビューでは、膵がん家族歴を有する無症状者を対象とした検診のみ、根治的切除および生存期間中央値の延長との 関連が示されている(2)。 Cancer of the Pancreas Screening 2(CAPS2)プロジェクトでは、無症状の膵がん患者の第1度近親者に対するEUSで 10%に浸潤前膵がんが発見され、高リスク者の検 診手段として有望である可能性が示唆されている(2)。 CAPS3 では膵がんリスクの高い無症状者に対して二重盲検下のCT、MRI およびEUS によるスクリーニングにより42%で異常がみられ、その検出率はEUS 42%、MRI 33%、CT 11%であった。さ らに高リスク者を平均4.2 年間追跡した前向きコ ホート研究では、32%の患者で膵臓に異常が認められ、MRI/磁気共鳴膵胆管造影(MRCP)もEUS の 補助的検査法または代替検査法になりうることが 示唆された。 将来的には、早期膵がん患者を同定できる新たな検診手段の開発が重要であると考えられる。現状では、全血中のマイクロ RNA、cell-free DNA、 血清代謝プロファイリングなどが新規バイオマー カー候補とされている。 1.National Cancer Institute (NCI). Cancer Stat Facts: pancreatic cancer. URL:https://bit.ly/2ZNfv2I 2.NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology:Pancreatic Adenocarcinoma(Version 3.2019).
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