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敗血症および重症急性呼吸不全患者におけるビタミンC輸液の臓器不全および炎症・血管傷害のバイオマーカーに対する効果。CITRIS-ALI Randomized Clinical Trial(CITRIS-ALI無作為化臨床試験).
敗血症および重症急性呼吸不全患者におけるビタミンC輸液の臓器不全および炎症・血管傷害のバイオマーカーに対する効果。CITRIS-ALI Randomized Clinical Trial(CITRIS-ALI無作為化臨床試験).
Effect of Vitamin C Infusion on Organ Failure and Biomarkers of Inflammation and Vascular Injury in Patients With Sepsis and Severe Acute Respiratory Failure: The CITRIS-ALI Randomized Clinical Trial JAMA 2019 Oct 1;322(13):1261-1270. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】ビタミンCの静脈内投与は、敗血症や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に伴う炎症と血管障害を抑制することが実験的に示唆されている。 【目的】敗血症およびARDS患者におけるビタミンC静脈内投与の臓器不全スコアおよび炎症と血管障害の生体マーカーに対する効果を明らかにすることである。 【デザイン・設定・参加者】CITRIS-ALI試験は、米国内の医療集中治療室7施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照多施設試験で、24時間以内に発症した敗血症およびARDSの患者(N=167)が登録された。試験実施期間は2014年9月から2017年11月、最終フォローアップは2018年1月。 【介入】患者をビタミンCの点滴静注(ブドウ糖5%水煮、N=84)またはプラセボ(ブドウ糖5%水煮のみ、N=83)に6時間おきに96時間無作為に割り付けました。 【主要評価項目】ベースラインから96時間後までのmodified Sequential Organ Failure Assessment score(範囲:0~20、スコアが高いほど機能障害が強い)により評価した臓器障害の変化、および0、48、96、168時間で測定した炎症(CRP値)と血管損傷(トロンボモデュリン値)の血漿バイオマーカーであった。 【結果】無作為化された167例(平均[SD]年齢:54.8歳[16.7],男性90例[54%])中,103例(62%)が60日目まで試験を完了した。主要評価項目であるベースラインから96時間後までの平均modified Sequential Organ Failure Assessment scoreの変化(ビタミンC群9.8から6.8[3点]、プラセボ群10.3から6.8[3.5点];差、-0.10;95%CI、-1.23から1.03;P = .86 )またはCRP値(54.1対46.1μg/ml;差、7.94。 【結論と関連性】敗血症とARDSの患者を対象としたこの予備的研究では、プラセボと比較したビタミンCの96時間点滴は、臓器機能障害のスコアまたは炎症と血管損傷のマーカーに有意な改善をもたらさなかった。敗血症とARDSの他の転帰に対するビタミンCの潜在的な役割を評価するために、さらなる研究が必要である。 【臨床試験登録】ClinicalTrials. gov Identifier.NCT02106975:NCT02106975。 第一人者の医師による解説 全死亡率には有意な改善効果 今後の研究継続を期待 射場 敏明 順天堂大学大学院医学研究科救急・災害医学教授 MMJ.April 2020;16(2) セプシスでは以前からビタミン C欠乏がみられることが知られており、またビタミン Cは抗炎 症作用や血管内皮保護作用を有することが報告されている(1)。そこで著者らは、急性呼吸窮迫症候群 (ARDS)合併セプシス患者に対するビタミン C静 脈投与の有用性をCITRIS-ALI試験で検討し、その結果を報告した。同試験は米国の7つの集中治療室で実施された無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。167人のARDS合併セプシス患者が登録され、介入群と対照群でそれぞれ6時間ごとに96 時間ビタミン C(50 mg/kg;n=84)もしくはプラセボ(n= 83)が静脈内投与された。主要評価項目として、治療開始から96時間までのSequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコアの改善、168時間までの炎症マーカー(CRP)の変動、 および血管障害マーカー(可溶性トロンボモジュリン)の変化が設定された。 その結果、SOFAスコアの改善に関して両群間に有意差はみられなかった(ビタミンC群:9.8→6.8; プラセボ群:10.3→6.8;変化の差 , -0.10)。 さらにCRP値(54.1 対 46.1μ g/mL;差 , 7.94 μ g/mL)、可溶性トロンボモジュリン値(14.5 対 13.8 ng/mL;差 , 0.69 ng/mL)についても有意差はなかった。したがって、ARDS合併セプシス患者においてビタミン Cの96時間注入による臓器障害、炎症反応、血管障害の改善効果は確認できなかった、と結論された。しかし、副次評価項目の全死亡率について統計学的に有意な改善効果が認められていることから(ハザード比 , 0.55;P= 0.01)、セプシスに対するビタミン Cの効果についてはさらなる検討が必要と考えられる。 CITRIS-ALI試験のベースは単施設後ろ向き研究におけるビタミン Cの劇的な予後改善効果である (オッズ比 , 0.13)(2)。この先行研究では院内死亡の改善以外にも昇圧薬使用期間の短縮やSOFAの改善が示されており、期待値が高まっていた。 本試験でやや奇異に感じられたのは、主要評価項目をセプシスの研究で伝統的に設定されてきた全死亡率の改善ではなく、SOFAスコアの改善、 CRPや可溶性トロンボモジュリンの低下としたことである。これは全死亡率の改善に関わる要因は多岐にわたるため、その達成が困難であると予想されることから、より直接的な指標を選択した結果であろうと考えられる。しかし結果としてそのことが裏目に出てしまったことについては、ただただ臨床試験デザインの難しさを感じる。今回の研究では目標は達成されなかったが、ビタミン C は安価で重篤な副作用もないと予想されることから、今後も研究が継続されることが期待される。 1. Wilson JXe et al. Subcell Biochem. 2012;56:67-83. 2. Marik PE et al. Chest. 2017;151(6):1229-1238. ビタミンC静注は急性呼吸窮迫症候群  合併セプシスの臓器障害を改善せず
高糖度スナックの20%値上げが英国における肥満の有病率に与える潜在的影響:モデル化研究。
高糖度スナックの20%値上げが英国における肥満の有病率に与える潜在的影響:モデル化研究。
Potential impact on prevalence of obesity in the UK of a 20% price increase in high sugar snacks: modelling study BMJ 2019 ;366 :l4786 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】高糖度スナックの20%値上げが肥満度指数(BMI)と肥満の有病率に与える潜在的影響を推定する。 【デザイン】モデル化研究。 【対象】英国の一般成人人口。 【参加者】英国のKantar FMCG(fast moving consumer goods)パネルから製品レベルの家庭支出に関するデータを有する324世帯、2012年1月から2013年12月まで。データを用いて、高糖度スナックの20%値上げに伴うエネルギー(kcal、1kcal=4.18kJ=0.00418MJ)購入量の変化を推定した。National Diet and Nutrition Survey(2012~16年)の第5~8波の成人2544人のデータを用いて、BMIと肥満の有病率の変化を推定した。 【主要アウトカム指標】高糖質スナックの3カテゴリー(菓子類(チョコレート含む)、ビスケット、ケーキ)の20%の値上げが、1人当たりの家庭用エネルギー購入に及ぼす影響について。値上げによる健康アウトカムは、体重、BMI(過体重ではない(BMI<25)、過体重(BMI≧25および<30)、肥満(BMI≧30))、および肥満の有病率の変化として測定された。結果は、世帯収入とBMIで層別化した。 【結果】収入グループを合わせた場合、高糖質スナックの20%価格上昇に対するエネルギー消費の平均減少量は8.9×103 kcal(95%信頼区間の-13.1×103~-4.2×103 kcal)と推算された。静的減量モデルを用いると,BMIはすべてのカテゴリーと所得グループにわたって平均0.53(95%信頼区間-1.01~-0.06)減少すると推定された.この変化により,1年後の英国における肥満の有病率は2.7%ポイント(95%信頼区間-3.7~-1.7%ポイント)減少する可能性がある.高糖度スナックの20%値上げがエネルギー購入に与える影響は、肥満と分類される低所得世帯で最も大きく、太り過ぎではないと分類される高所得世帯で最も小さかった。 【結論】高糖度スナックを20%値上げすると、エネルギー摂取、BMI、肥満の有病率を減少させることができた。この知見は、英国の文脈におけるものであり、砂糖入り飲料の同様の値上げについてモデル化されたものの2倍であった。 第一人者の医師による解説 肥満対策としての砂糖入り菓子への課税 選択肢として浮上 久保田 康彦 大阪がん循環器病予防センター/磯 博康 大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学 MMJ.February 2020;16(1) 砂糖の多い菓子を20%値上げすることで、値上げ翌年の肥満者の割合が2.7%低下する可能性が、 今回報告された英国のモデル研究で示された。 この40年間で世界の肥満者の割合は3倍にも上昇し(1)、世界中で肥満対策が進められている。砂糖は肥満の最も重要な危険因子の1つであり、肥満対策の1つとして、砂糖の主な摂取源と考えられる 清涼飲料水に対する課税がメキシコ、ハンガリー、 フィンランドなどで導入されてきた。その結果、清涼飲料水の購入量が減少し、世界保健機関(WHO) も砂糖入り清涼飲料水に対する課税を推奨してい る。しかしながら、英国では清涼飲料水よりも菓子の方が砂糖の摂取源として多いため、砂糖入り菓子の値上げがどの程度肥満解消につながるかは、 同国内の今後の肥満対策案を立てるためにも重要な研究となる。   本研究では、UK Kantar社(英国のマーケティン グ企業)が所有する商品ごとの家計支出や摂取エ ネルギー量などに関するデータ(対象:36,324世帯、期間:2012年1月~ 13年12月)と国民栄養 調査データ(対象:2,544人、期間:2012年~16年) を用いて行われた。前者を用いて需要の価格弾力 性(PED)を計算し、消費エネルギー変化を推定した。 さらに後者を用いて消費エネルギー変化に伴う体格指数(BMI)の変化を推定した。 砂糖入り菓子の価格を20%上げることで、平均で年間8,900kcal分の摂取エネルギーが減少すると推定された。BMIはそれに伴い0.53 kg/m2 低下すると推定された。このBMI低下は、英国における肥満者が2.7%減少することに相当する。価格上昇による摂取エネルギー減少度が最も大きかったグループは肥満かつ低収入群で、最も小さかったグループは非肥満かつ高収入群であった。砂糖入り飲料水に関しても同様の検討を行ったが、20% 価格上昇の効果は砂糖入り菓子の半分であった。 本研究の結果は肥満対策として砂糖入り菓子に対する増税の根拠となりうる。砂糖入り菓子に対 する増税は、食事に関する健康格差是正に貢献する可能性があり、政策評価に関するさらなる研究が望まれる。 1. World Health Organization. Obesity and Overweight URL:https://bit.ly/2ZYPfmo
未熟児網膜症を有する超低出生体重児の治療に対するラニビズマブ対レーザー治療(RAINBOW):非盲検ランダム化比較試験。
未熟児網膜症を有する超低出生体重児の治療に対するラニビズマブ対レーザー治療(RAINBOW):非盲検ランダム化比較試験。
Ranibizumab versus laser therapy for the treatment of very low birthweight infants with retinopathy of prematurity (RAINBOW): an open-label randomised controlled trial Lancet 2019 ;394 (10208 ):1551 -1559 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】未熟児網膜症(ROP)治療における抗血管内皮増殖因子製剤の使用は世界的に増加しているが、その眼に対する効果、適切な薬剤と用量、再投与の必要性、長期の全身作用の可能性に関するデータはほとんどない。ROPの治療における硝子体内ラニビズマブの有効性と安全性をレーザー治療と比較して評価した 【方法】この無作為化、非盲検、優越性多施設、3群並行群間試験は26カ国の87新生児センターと眼科センターで行われた。網膜症の治療基準を満たした出生体重1500g未満の乳児をスクリーニングし、ラニビズマブ0-2mgまたはラニビズマブ0-1mgの両側静脈内単回投与、またはレーザー治療を受けるよう平等に(1:1:1)患者を無作為に割り付けました。コンピュータ対話型応答技術により,疾患領域と地理的地域によって層別化された.主要評価項目は,24 週間以内に活動性網膜症,好ましくない構造的転帰,または別の治療手段を必要としない生存率とした(レーザー療法に対するラニビズマブ 0-2 mg の優位性は両側 α=0-05 であった).解析は intention to treat で行った。本試験はClinicalTrials. gov、NCT02375971に登録されています。 【解釈】2015年12月31日から2017年6月29日の間に、225名の参加者(ラニビズマブ0-2mg n=74、ラニビズマブ0-1mg n=77、レーザー療法 n=74)を無作為に割り付けました。治療前に7名が離脱し(それぞれn=1、n=1、n=5)、各群4名の死亡を含む17名が24週までのフォローアップを完了しなかった。214人の乳児が主要アウトカムについて評価された(それぞれn=70, n=76, n=68)。治療成功は,ラニビズマブ 0-2 mg 投与群では 70 例中 56 例(80%)であったのに対し,ラニビズマブ 0-1 mg 投与群では 76 例中 57 例(75%),レーザー治療後では 68 例中 45 例(66%)で発生した.階層的検定戦略により、レーザー治療と比較して、ラニビズマブ0-2 mg投与後の治療成功のオッズ比(OR)は2-19(95% Cl 0-99-4-82、p=0-051)、ラニビズマブ0-1 mg投与後は1-57(95% Cl 0-76-3-26)、0-1 mgと比較して、ラニビズマブ 0-2 mgでは1-35(95% Cl 0-61-2-98)であった。ラニビズマブ0-2 mg投与群では構造的に好ましくない転帰をたどった乳児が1人いたが,ラニビズマブ0-1 mg投与群では5人,レーザー療法では7人であった.死亡、重篤および非重篤な全身性有害事象、および眼の有害事象は3群間で均等に分布した。 ROPの治療において、ラニビズマブ0-2mgはレーザー治療より優れており、レーザー治療より眼の有害事象が少なく、24週間の安全プロファイルが許容できるかもしれない。 第一人者の医師による解説 適切な適応の検討が必要だが 未熟児網膜症に新たな治療選択肢 東 範行 国立成育医療研究センター眼科診療部長・視覚科学研究室長 MMJ.February 2020;16(1) 未熟児網膜症は失明につながる疾患で、日本における発症数は年間およそ4,300人と推定されている。治療としては、これまでに網膜凝固(冷凍凝固、光凝固 )、硝子体手術、抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法が行われてきた。本論文で報告されたRAINBOW試験は、未熟児網膜症に対する抗 VEGF抗体薬ラニビズマブ(RBZ)硝子体内注射の有効性と安全性をレーザー光凝固療法との比較で評価した初めての国際共同治験である。RBZはすでに成人における加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫、 網膜静脈変性など眼底の病的血管新生疾患に使用されている。 対象は出生体重1,500g未満の両眼性の治療を要する未熟児網膜症で、225人が登録された。参加国は26カ国で登録数は日本が最多であった。患者はRBZ 0.2mg(成人用量の40%)群、RBZ 0.1mg 群、またはレーザー光凝固群にランダム化され、初回治療が両眼同時に行われた。初回治療後に網膜症が悪化した場合は、治療後28日以降であれば同じ治療の追加が各眼で2回まで許されるが、28日未満であればレスキューとして別の治療が行われた。 主要評価項目は、治療の成功であり、治療開始24 週後 , 両眼とも活動性の未熟児網膜症がなく、網膜の牽引や剥離など不良な形態学的転帰もないことと定義された。各群ともほぼ90%以上の患者で試験が完了した。 結果は、治療成功率がRBZ 0.2mg群で80%、 RBZ 0.1mg群で75%、レーザー群で66%であったが、有意差はなかった。しかしRBZ 0.2mg群 で治療後20週に脱落した1人の結果を加えると、 RBZ 0.2mg群とレーザー群の間に有意差が認められた。0.1 mg群では有意差がなく、0.2mgの使用が推奨された。治療成功率において、患者の性、人種、年齢(出生週数、治療週数)、未熟児網膜症の病期分布による差はなかった。 眼合併症は結膜出血、網膜出血などで、成人の硝 子体注射でみられるものと差はなく、いずれも軽微であった。全身合併症は、未熟児特有の全身の問 題が中心で、治療によって惹起されたと思われる ものはなかった。VEGFは発生や成長に関連するため、眼内投与のRBZが血中に回って全身性に影響することが危惧されたが、RBZ投与直後以降の血中 VEGF値に低下はみられなかった。 本試験では、その後5年間にわたって眼底の変化や視力、全身への影響が追跡されるが、今回の結果を踏まえて、日本でも未熟児網膜症におけるRBZ の使用が最近承認された。RBZに関しては血管増 殖組織の収縮や網膜症の再燃などの問題も報告されており、適切な適応についてはさらなる検討を要するが、未熟児網膜症は新たな治療選択肢を得たことになる。
慢性腎臓病における経口抗凝固剤治療の有益性と有害性。A Systematic Review and Meta-analysis.
慢性腎臓病における経口抗凝固剤治療の有益性と有害性。A Systematic Review and Meta-analysis.
Benefits and Harms of Oral Anticoagulant Therapy in Chronic Kidney Disease: A Systematic Review and Meta-analysis Ann Intern Med 2019 ;171 (3 ):181 -189 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】慢性腎臓病(CKD)における経口抗凝固療法の効果は不明である。 【目的】透析依存性の末期腎臓病(ESKD)を含むCKDステージ3~5の成人におけるビタミンK拮抗薬(VKA)と非ビタミンK経口抗凝固薬(NOAC)の有益性と有害性を評価する。[データ源]MEDLINE,EMBASE,Cochraneデータベースの英文検索(開始から2019年2月まで),レビュー書誌,ClinicalTrials. gov(2019年2月25日)。 【研究選択】CKD患者の任意の適応でVKAまたはNOACを評価した無作為化対照試験で,有効性または出血のアウトカムを報告したもの。 【データ抽出】2人の著者が独立してデータを抽出し,バイアスのリスクを評価し,エビデンスの確実性を評価した。 【データ合成】心房細動(AF)(11試験)、静脈血栓塞栓症(VTE)(11試験)、血栓予防(6試験)、透析アクセス血栓症の予防(8試験)、心房細動以外の心血管疾患(9試験)のために抗凝固療法を受けた34,082人を対象とした45試験を対象とした。ESKD患者を対象とした8試験を除くすべての試験で、クレアチニンクリアランスが20 mL/min未満または推定糸球体濾過量が15 mL/min/1.73 m2未満の被験者を除外した。心房細動では、VKAと比較して、NOACは脳卒中または全身性塞栓症のリスクを低減し(リスク比、0.79[95%CI、0.66~0.93];高確度エビデンス)、出血性脳卒中のリスクを低減した(RR、0.48[CI、0.30~0.76];中確度エビデンス)。VKAと比較して、VTEの再発またはVTE関連死に対するNOACの効果は不確かであった(RR, 0.72 [CI, 0.44 to 1.17]; 確実性の低いエビデンス)。すべての試験を合わせると、NOACはVKAと比較して大出血リスクを減少させるようであった(RR, 0.75 [CI, 0.56 to 1.01]; 確信度の低いエビデンス)。 【Limitation】進行したCKDまたはESKDに関するエビデンスは乏しい;大規模試験のサブグループからのデータがほとんどである。 【結論】早期CKDにおいて、NOACはVKAよりも優れたベネフィット・リスクプロファイルを有していた。進行したCKDまたはESKDについては,VKAまたはNOACの有益性または有害性を確立するには十分な証拠がなかった。[主たる資金源]なし。(prospero: crd42017079709)。 第一人者の医師による解説 進行期~末期腎不全ではエビデンス不足 田中 哲洋 東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科准教授 MMJ.February 2020;16(1) 慢性腎臓病(CKD)では静脈血栓塞栓症(VTE)や 心房細動(AF)のリスクが正常腎機能者よりも高い。 AFを合併すると脳梗塞や全身性塞栓症、うっ血性 心不全、心筋梗塞、死亡のリスクが高まり、VTE合 併も死亡リスクを上昇させる。ガイドラインでは 非弁膜症性 AF患者に対する脳梗塞予防、大手術後 の 患者 や 急性疾患入院患者 のVTE予防、VTE再発 予防として抗凝固療法を推奨している。しかし、AF を合併する進行期 CKDや末期腎不全(ESKD)患者では、腎機能正常者よりも経口抗凝固薬の処方が少 なく、その理由として出血リスクの上昇、有用性が 明確でないこと、ワルファリン関連のカルシフィラ キシスや腎症などが挙げられる。実際、抗凝固薬の臨床試験では全体の約90%でCKD患者は除外されていた。 昨今、腎機能正常者を対象に非ビタミン K拮抗 経口抗凝固薬(NOAC)の有効性と安全性の知見が 蓄積されつつある。そこで本論文では、CKDステー ジ 3 ~ 5の 患者 に お け る 経口抗凝固療法 のリス ク・ベネフィットが検討された。ビタミン K拮抗薬 (VKA)およびNOACを用いた45試験からデータ を抽出した。 クレアチニンクリアランス 20 mL/ 分未満またはeGFR 15ml/分 /1.73m2未満の患者を除外した早期 CKD患者群において、AFに対する抗凝固療法としてNOACはVKAと比較し脳梗塞 や全身性塞栓症のリスクを低下させ、出血性梗塞のリスクも低下させた。VTEに対する抗凝固療法では、NOACのVKAに対する優位性は明らかでなかった。また、NOAC̶プラセボ間にリスクに関する差はなかった。 すべての試験を統合すると、NOACは VKAよりも大出血のリスクを低下させる傾向を示した。ESKD患者を含めた試験は8試験のみで、多くはワルファリンによる透析アクセス血栓症予防 を評価していた。ワルファリンは透析アクセス血 栓症やカテーテル機能不全のリスクを低下させた が、出血性合併症への影響は未知であった。 経口抗凝固療法の治療利益は、どの程度の腎機能障害までリスクを上回るのであろうか? 観察研究において、AF合併 ESKD患者ではワルファリン使用によって塞栓性脳梗塞のリスクは低下せず、出血性脳梗塞のリスクは2倍上昇していた。NOAC はVKAに比べ、腎機能正常者や早期 CKD患者の出 血性脳梗塞リスクを低下させることを考えると、 ESKD患者にも潜在的な利益があるようである。 し かし、最近報告 さ れ たAF合併 ESKD患者 の 後ろ向きコホート研究をみる限り、NOACやVKAの 間に脳梗塞や全身性塞栓症のリスクに差はない。 今後見込 ま れ るAF合併 ESKD患者 の 試験、す な わ ちRENAL-AF試験(NCT02942407)お よ び AXADIA試験(NCT02933697)によって有効性 と安全性の評価がなされるであろう。
心臓手術を受けた患者における尿中dickkopf-3、急性腎障害、およびその後の腎機能喪失の関連性:観察的コホート研究
心臓手術を受けた患者における尿中dickkopf-3、急性腎障害、およびその後の腎機能喪失の関連性:観察的コホート研究
Association between urinary dickkopf-3, acute kidney injury, and subsequent loss of kidney function in patients undergoing cardiac surgery: an observational cohort study Lancet 2019 ;394 (10197):488 -496 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】心臓手術は、術後の急性腎障害(AKI)とその後の腎機能低下の高いリスクと関連している。我々は、AKIとその後の腎機能低下のリスクのある患者の術前識別のための腎尿細管ストレスマーカーである尿中dickkopf-3(DKK3)の臨床的有用性を検討した。 【方法】この観察的コホート研究では、派生コホートの心臓手術を受けた患者と検証コホートの心臓手術を受けた患者(RenalRIP試験)を対象とした。本研究は,ザールランド大学医療センター(ドイツ・ホンブルグ,派生コホート)で待機的心臓手術を受けた連続患者と,前向きRenalRIP多施設試験(検証コホート)に登録された待機的心臓手術を受けた患者(Cleveland Clinical Foundationスコア6以上に基づいて選択),および遠隔虚血性前処置または偽手術にランダムに割り付けられた患者で構成されている。術前のDKK3とクレアチニンの尿中濃度の比(DKK3:クレアチニン)と、Kidney Disease Improving Global Outcomes基準に従って定義された術後AKI、および推定糸球体濾過量によって決定されるその後の腎機能低下との関連性を評価した。 【結果】派生コホートの733例において、クレアチニンに対するDKK3の尿中濃度が471pg/mgより高いことは、ベースラインの腎機能とは無関係に、AKIの有意なリスク上昇と関連していた(オッズ比[OR]1-65、95%CI 1-10-2-47、p=0-015)。臨床検査値や他の検査値と比較して、尿中DKK3:クレアチニン濃度はAKI予測を有意に改善した(net reclassification improvement 0-32, 95% CI 0-23-0-42, p<0-0001)。尿中DKK3:クレアチニン濃度の高値は、退院時および中央値820日(IQR733~910)の追跡調査後の腎機能の有意な低下と独立して関連していた。RenalRIP試験において、術前の尿中DKK3:471pg/mgより高いクレアチニン濃度は、471pg/mg以下のDKK3と比較して、90日後のAKI(OR 1-94, 95% CI 1-08-3-47, p=0-026)、持続性腎機能障害(OR 6-67, 1-67-26-61, p=0-0072 )、透析依存(OR 13-57, 1-50-122-77, p=0-020)に対するリスクが有意に高くなることと関連しました。471pg/mgより高い尿中DKK3:クレアチニン濃度は、偽手術を受けた患者のみAKI(OR 2-79, 95% CI 1-45-5-37)および持続的腎機能障害(OR 3-82, 1-32-11-05)の有意に高いリスクと関連しており、遠隔虚血性前処理(AKI OR 1-35, 0-76-2-39 and persistent renal dysfunction OR 1-05, 0-12-9-45)には関連していないことが明らかになった。 【解釈】術前の尿中DKK3は、術後AKIとその後の腎機能低下の独立した予測因子である。尿中DKK3は予防的治療戦略が有効な患者を特定するのに役立つかもしれない。 第一人者の医師による解説 ヨーロッパ系人種対象の研究だが 尿中 DKK3はAKI予防に有用なツール 新田 孝作 東京女子医科大学腎臓内科教授 MMJ.February 2020;16(1) 心臓手術後の急性腎障害(AKI)発症率は30%弱と報告されている(1)。近年、心臓手術患者の高齢化と併存疾患割合の上昇に伴い、AKI発症率も上昇しつつある。一部の患者では、AKI後も腎機能の低下が認められ、AKIから慢性腎臓病(CKD)への移行 (AKI-CKD transition)として知られている。 今回報告されたドイツの観察コホート研究では、 ストレス下の腎尿細管細胞で発現されるWnt/β - カテニンシグナル調節糖蛋白 dickkopf-3(DKK3) に 着目し、心臓手術患者 に お け るAKI発症 とAKI 後の腎機能低下の予測因子として尿中 DKK3を検討した。対象は導出コホート 733人、検証コホー ト 216人(RenalRIP試験参加者)で、導出コホー トでは待機的心臓手術を受けた患者を退院後に中 央値820日間追跡 した。 そ の 結果、AKIは 導出 コ ホートの患者733人中193人(26%)に発症した。術前の尿中 DKK3高値は術後 AKI発症と有意に関連していた。この関連は、登録時の推算糸球 体濾過量(eGFR)などの交絡因子で補正後も維持 され、機械学習アプローチにより裏付けられた。術前の尿中 DKK3値が471pg/mg Cr超の患者では、471pg/mg Cr以下 の 患者 よりもAKI発症リ スクが有意に高かった。完全補正後のモデルでは、 登録時 のeGFR値 が 正常(90mL/分 /1.73m2 超)または低値(90mL/分 /1.73m2以下)の患 者 に お い て、尿中 DKK3高値 はAKI発症 リ ス ク 上昇と関連していた。 また、術前の尿中 DKK3値 が471pg/mg Cr以下 の 患者 に お け る 退院時 の eGFR値 は76.6mL/分 /1.73m2で あ っ た。対 照的 に、術前 の 尿中 DKK3値 が471pg/mg Cr 超 の 患者 で は 補正後 のeGFRが 有意 に 低 かった (72.3mL/分 /1.73m2)。中央値820日 の 追跡 後、登録時の尿中 DKK3値が471pg/mg Cr以下 の患者では、eGFRは67.0mL/分 /1.73m2であったが、尿中 DKK3値が471pg/mg Cr超の患者では、eGFRは63.1mL/分 /1.73m2であった。術前 の尿中 DKK3値が高いと、AKI後の中等度・重度の eGFR低下およびCKDに進行するリスクが高まっていた。 対象集団がヨーロッパ系人種であり、他の人種に適用できるかどうかは今後確認する必要はあるが、 今回の結果から、尿中 DKK3は心臓手術後にAKI を発症するリスクの高い患者を特定し、特に入院中のAKI発症を予測するのみならず、その後の腎機能低下も予測することが示された。尿中DKK3 は予防が有用な患者を特定するための新しいツー ルとなり得ると言える。 1. Neugarten J. et al. Clin J Am Soc Nephrol. 2016; 11(12): 2113–2122.
晩期早産の子癇症(PHOENIX)に対する計画的な早期分娩または妊婦管理:ランダム化比較試験。
晩期早産の子癇症(PHOENIX)に対する計画的な早期分娩または妊婦管理:ランダム化比較試験。
Planned early delivery or expectant management for late preterm pre-eclampsia (PHOENIX): a randomised controlled trial Lancet 2019 Sep 28 ;394 (10204):1181 -1190. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】 晩期早産の女性では、母体の疾患進行の制限と乳児の合併症とのバランスをとる必要があるため、分娩開始の最適な時期は不明である。この試験の目的は、計画的に分娩を早期に開始することで、後期早産の女性における妊婦の有害転帰が、新生児または乳児の転帰を実質的に悪化させることなく減少するかどうかを、予想される管理(通常のケア)と比較して明らかにすることであった。 【METHODS】イングランドとウェールズの46の産科ユニットで行われたこの並行群、ノンマスキング、多施設、無作為化比較試験では、妊娠34週から37週未満の後期早産の子癇前症で、単胎妊娠または二卵性双胎妊娠の女性を対象に、計画分娩と妊婦管理(通常のケア)を個別に無作為化して比較した。共起母体転帰は、母体の罹患率または記録された収縮期血圧160mmHg以上の複合値とし、優越性仮説を設定した。共一次周産期転帰は、非劣性仮説(発生率の10%差の非劣性マージン)を用いて、周産期死亡または新生児退院までの新生児ユニット入院の複合体とした。解析は治療意図別に行われ、周産期アウトカムのプロトコル別解析も併せて行われた。この試験はISRCTN登録(ISRCTN01879376)にプロスペクティブに登録された。本試験は募集を終了しているが、フォローアップは継続中である 【FINDINGS】2014年9月29日から2018年12月10日までの間に、901名の女性が募集された。450人の女性(分析対象は448人の女性と471人の乳児)が計画分娩に、451人の女性(分析対象は451人の女性と475人の乳児)が期待管理に割り付けられた。計画分娩群(289人[65%]女性)と妊婦管理群(338人[75%]女性;調整後相対リスク0-86、95%CI 0-79-0-94、p=0-0005)と比較して、共起母体転帰の発生率は有意に低かった。治療意図別の共一次周産期転帰の発生率は,計画分娩群(196[42%]の乳児)が予想管理群(159[34%]の乳児;1-26,1-08-1-47;p=0-0034)と比較して有意に高かった。プロトコールごとの解析結果も同様であった。重篤な有害事象は計画分娩群で9件、妊婦管理群で12件であった。 【解説】計画分娩は妊婦管理に比べて母体の罹患率と重度の高血圧症を減少させることを示唆する強いエビデンスがあり、未熟児に関連した新生児ユニットの入院は多いが、新生児の罹患率の増加を示す指標はない。このトレードオフは、分娩のタイミングについての意思決定を共有できるように、後期早産前子癇症の女性と議論されるべきである。 第一人者の医師による解説 新生児には早産分娩リスク 妊娠高血圧腎症発症の際はすみやかな母体搬送を 田中 守 慶應義塾大学医学部産婦人科(産科)教授 MMJ.February 2020;16(1) 妊娠高血圧腎症は、主として妊娠後期に発症し、 高血圧、蛋白尿などの全身性の障害をもたらし、母 体脳出血、腎障害、肝障害のみならず胎児発育遅延 など母児ともに重篤な後遺症をもたらす疾患である。全妊婦のおよそ10%が妊娠高血圧を発症し、さらに2~3%が妊娠高血圧腎症を発症するとされている。また、その原因は不明であるため、根本的な治療法はなく、分娩が最大の治療となる。妊娠 37週以降は、直ちに分娩することが母児の安全の ために推奨されているが、妊娠34週から37週未満の後期早産期での分娩の効果については明らか とされていなかった。 本試験は、後期早産期の妊娠高血圧腎症に対して 経過観察または積極的な人工早産のどちらが母児の予後に良いのかを明らかにするために実施された無作為化対照試験(RCT)である。妊婦4,498人 を対象として検討し、1,606人が適格条件に適合した。このうち901人が計画に同意し、450人が人工早産群、451人が経過観察群に無作為に割り付けられ、母体および新生児予後が評価された。 結果では、経過観察群では人工早産群に比べて5 日間の妊娠期間の延長が認められた。人工早産群において統計学的有意差を持って母体予後が良好で あり、一方、人工早産群においては有意に児の周産期合併症が増加した。また、母児にかかる医療費(英国)は、明らかに人工早産群で少なかった。妊娠34 週から37週未満の後期早産期の妊娠高血圧腎症においては、積極的に分娩を図ることによって母体 予後は明らかに改善するが、新生児に対しては明 らかに早産分娩のリスクが上昇するため、そのメ リット、デメリットを常に考えて分娩時期を決定する必要がある。 本試験は、早産後期に発症した妊娠高血圧腎症患者に対して、積極的に早産分娩とする医学的な根拠 を検討するために行われた英国における多施設共同 RCTである。日本でもLate Preterm Delivery の問題は議論されているものの、少なくとも新生児集中治療室(NICU)を有している周産期施設で は積極的な早産分娩を議論するべきである。したがって、産科診療の1次施設では、妊娠高血圧腎症 と診断されたら直ちにNICUを備えた周産期センターに母体搬送すべきであり、受け入れた周産期センターでは積極的分娩を含めた周産期管理を検討すべきであるというエビデンスが明らかにされたと言えよう。
膵臓癌のスクリーニング。US Preventive Services Task Force Reaffirmation Recommendation Statement(米国予防医療専門委員会の再確認勧告)。
膵臓癌のスクリーニング。US Preventive Services Task Force Reaffirmation Recommendation Statement(米国予防医療専門委員会の再確認勧告)。
Screening for Pancreatic Cancer: US Preventive Services Task Force Reaffirmation Recommendation Statement JAMA 2019 Aug 6 ;322 (5):438 -444. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】膵臓がんは、年齢調整した年間発症率が10万人年あたり12.9人という珍しいがんである。しかし、膵臓癌の予後は不良であるため、死亡率は10万人年当たり11.0人である。発症率は低いものの、膵臓がんは米国で3番目に多いがん死亡原因となっています。膵臓癌の発生率は増加しており、他の種類の癌の早期発見と治療の改善とともに、膵臓癌はまもなく米国における癌死亡原因の第2位になると推定される。 【目的】膵臓癌のスクリーニングに関する2004年の米国予防医療作業部会(USPSTF)の勧告を更新することである。 【エビデンスレビュー】USPSTFは、膵癌スクリーニングの有益性と有害性、膵癌スクリーニング検査の診断精度、スクリーニングで発見された膵癌または無症状の膵癌の治療の有益性と有害性に関するエビデンスをレビューした。 【調査結果】USPSTFは、膵癌スクリーニングまたはスクリーニングで発見された膵癌の治療により、疾患特異的な罹病率と死亡率、全死因死亡率が改善するというエビデンスを見いだせなかった。USPSTFは、無症状の成人における膵がんスクリーニングの有益性の大きさは、小さいより大きくないという境界線が引けるという十分な証拠を見いだした。USPSTFは、膵がんスクリーニングおよびスクリーニングで検出された膵がんの治療の有害性の大きさは、少なくとも中程度に抑えることができるという十分な証拠を見いだした。USPSTFは、無症候性成人における膵癌スクリーニングの潜在的利益は潜在的有害性を上回らないという前回の結論を再確認する。 【結論と勧告】USPSTFは、無症候性成人における膵癌のスクリーニングを行わないよう勧告する。(D勧告)。 第一人者の医師による解説 早期膵がん患者の同定へ 新たな検診手段の開発が重要 岡崎 和一 関西医科大学内科学第三講座(消化器肝臓内科)主任教授 MMJ.February 2020;16(1) 米国における膵がんの罹患率は人口10万人あたり年間12.9人で比較的低いものの、年間死亡率 は11.0人、その部位別順位は3位と予後不良である(1)。5年生存率は膵がん全体で9.3%であるが、 局所進行膵がん37.4%、周辺臓器浸潤例12.4%、 遠隔転移例2.9%と診断時の病期に依存し、病初期での手術のみが生存率改善を期待できるため、早期診断が重要である。膵がん患者の85~90%は 遺伝的背景がなく、5~10%が家族性危険因子を有 し、3~5%がPeutz-Jeghers症候群などの遺伝的がん症候群とされている。 今回、米国予防医学特別作業部会(USPSTF)は 2004年の勧告と同じく、検診による不利益(harm)が利益(benefit)を上回るとの理由から、「無症状の一般成人を対象とする膵がん検診は推奨しない」 と結論した。しかしながら、家族性膵がん(第1度 近親者に2人以上の膵がん患者がいる場合)を含み、膵がんの家族性危険因子を考慮することが重要であり、本論文でも、今回の推奨はこれらの高リスク者には適用されないとしている。 実際、CAPS Consortiumは、膵がん患者の第1度近親者、第1 度近親者に罹患者を有するp16 /BRCA2 変異保 有者、Peutz-Jeghers症候群の患者、第1度近親者に膵がん患者を有するリンチ症候群患者を高リスク者と定義し、高リスク者に対して超音波内視鏡検査(EUS)またはMRI/MRCP によるスクリー ニングを推奨している(2)。系統的レビューでは、膵がん家族歴を有する無症状者を対象とした検診のみ、根治的切除および生存期間中央値の延長との 関連が示されている(2)。 Cancer of the Pancreas Screening 2(CAPS2)プロジェクトでは、無症状の膵がん患者の第1度近親者に対するEUSで 10%に浸潤前膵がんが発見され、高リスク者の検 診手段として有望である可能性が示唆されている(2)。 CAPS3 では膵がんリスクの高い無症状者に対して二重盲検下のCT、MRI およびEUS によるスクリーニングにより42%で異常がみられ、その検出率はEUS 42%、MRI 33%、CT 11%であった。さ らに高リスク者を平均4.2 年間追跡した前向きコ ホート研究では、32%の患者で膵臓に異常が認められ、MRI/磁気共鳴膵胆管造影(MRCP)もEUS の 補助的検査法または代替検査法になりうることが 示唆された。 将来的には、早期膵がん患者を同定できる新たな検診手段の開発が重要であると考えられる。現状では、全血中のマイクロ RNA、cell-free DNA、 血清代謝プロファイリングなどが新規バイオマー カー候補とされている。 1.National Cancer Institute (NCI). Cancer Stat Facts: pancreatic cancer. URL:https://bit.ly/2ZNfv2I 2.NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology:Pancreatic Adenocarcinoma(Version 3.2019).
食事脂肪の質と2型糖尿病の遺伝的リスク:個人参加者データのメタアナリシス。
食事脂肪の質と2型糖尿病の遺伝的リスク:個人参加者データのメタアナリシス。
Quality of dietary fat and genetic risk of type 2 diabetes: individual participant data meta-analysis BMJ 2019 ;366:l4292 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】2型糖尿病の遺伝的負担が、食事脂肪の質と2型糖尿病発症率との関連を修飾するかどうかを調査する。 【デザイン】個々の参加者データのメタ解析。 【データ入手元】適格な前向きコホート研究は、主要医学データベース(Medline、Embase、Scopus)の電子検索及び研究者との議論を通じて1970年1月から2017年2月に発表された研究中から系統的に調達された。[レビュー 【方法】ゲノムワイド遺伝子データが利用可能なコホート研究またはマルチコホートコンソーシアムから、ヨーロッパ系の参加者における食事脂肪の質と2型糖尿病の発生率に関するデータを探した。5年以上経過した前向きコホート研究が対象となった。2型糖尿病の遺伝的リスクプロファイルは、公表されている効果量によって重み付けされた68変量の多遺伝子リスクスコアによって特徴づけられた。食事は、有効なコホート特異的食事評価ツールを用いて記録された。 【結果】15の前向きコホート研究からの102 305人の参加者のうち、中央値12年(四分位範囲9.4~14.2)のフォローアップ後に2型糖尿病2例が記録された。多遺伝子リスクスコアのリスクアレルが10増加するごとの2型糖尿病のハザード比は1.64(95%信頼区間1.54~1.75,I2=7.1%,τ2=0.003)であった。炭水化物の代わりに多価不飽和脂肪と総オメガ6多価不飽和脂肪の摂取量を増やすことは、2型糖尿病のリスク低下と関連し、ハザード比は0.90(0.82~0.98、I2=18.0%、τ2=0.006;エネルギー5%当たり)、0.99(0.97~1.00、I2=58.8%、τ2=0.001:1g/日の増加あたり)であった。炭水化物の代わりに一価不飽和脂肪を増やすと、2型糖尿病のリスクが高くなった(ハザード比1.10、95%信頼区間1.01~1.19、I2=25.9、τ2=0.006、エネルギー5%当たり)。多価不飽和脂肪と2型糖尿病リスクとの全体的な関連については、研究効果が小さいという証拠が検出されたが、オメガ6多価不飽和脂肪および一価不飽和脂肪との関連については検出されなかった。2型糖尿病リスクに関する食事脂肪と多遺伝子リスクスコアとの有意な相互作用(相互作用についてはP>0.05)は認められなかった。 【結論】これらのデータは、遺伝的負担と食事脂肪の質がそれぞれ2型糖尿病の発症と関連していることを示すものである。この知見は、2型糖尿病の一次予防のために、食事脂肪の質に関する推奨を個々の2型糖尿病遺伝子リスクプロファイルに合わせることを支持せず、食事脂肪は2型糖尿病遺伝子リスクの範囲にわたって2型糖尿病リスクと関連することを示唆している。 第一人者の医師による解説 牛脂、豚脂にも多い単価不飽和脂肪酸 どの食材から摂取したかが重要 柳川 達生 練馬総合病院内科・副院長、医療の質向上研究所・主任研究員 MMJ.February 2020;16(1) 本論文は、2型糖尿病発症と既知のリスク遺伝子および脂肪酸量・質との関連を検討したメタ解析の報告である。主要医療データベース検索(1970 ~2017年)により、北米・欧州系102,350人のデータが収集された。68の2型糖尿病リスク遺伝子を選定、それぞれの相対的効果で重み付けし遺伝要因をスコア化している。 食事は半定量的食品頻度調査などから、脂肪酸別の摂取量をベースラインと累積平均で算出。交絡因子で補正後、以下の項目で糖尿病発症リスクが評価された:(1)遺伝要因 のリスクスコア値との関連(2)炭水化物を減らして等カロリーの総脂肪または各種脂肪酸に置換(3) 脂肪酸の種類と遺伝子リスクスコアの相互作用。 追跡期間中央値12年 で20,015人 が2型糖尿病を発症し、主な結果は以下のとおりであった:(1) 遺伝子リスクスコア 10ポイント増加あたりの発症ハザード比(HR)は1.64、(2)炭水化物を総多価不飽和脂肪酸(ほぼω3[エイコサペンタエン酸、 ドコサヘキサエン酸など]とω6[リノール酸など]) あるいはω6多価不飽和脂肪酸で等カロリー置換 した場合のHRはそれぞれ0.90と0.99、(3)炭水化物を総単価不飽和脂肪酸で等カロリー置換した場合のHRは1.10、(4)脂肪酸と遺伝子リスクスコアに相互作用はなかった。 これらの結果を解釈すると、炭水化物を総多価不飽和脂肪酸(ほぼω3とω6)に置換するとリスクが低下するが、ω6脂肪酸の影響はニュートラルであったことから、ω3脂肪酸のリスク低減寄与が大きいことが示唆される。 一方、炭水化物を単価不飽和脂肪酸(主にω9[オレイン酸など])に置換すると発症リスクは上昇するが、ω9の由来する食材の影響が重要であると考える。牛脂、豚脂は50%弱 がω9脂肪酸で、飽和脂肪酸は30 ~ 40%である。 オリーブ油は80%弱がω9である。地中海地域であれば、オリーブ油などからのω9摂取割合が高い[1]。 今回のメタ解析に含まれた研究は非地中海諸国によるもので、肉類などがω9の主な供給源と考えられる。肉過剰摂取は発症リスクである[2]。どの食材からω9を摂取しているかが重要である。 脂肪酸の種類と遺伝要因の相互作用は認められなかったが、アルコール脱水素酵素の遺伝子型は代謝に影響するのと同様に、脂肪酸代謝に影響する遺伝子型が糖尿病発症に影響する可能性はありえる。また、食事調査では加工食品などの主要油脂であるパーム油(脂肪酸組成はほぼ牛脂)のデータが 反映されているか疑問である。世界で最も消費されている植物油であり影響は大きい。 1. 柳川達生 . 月刊糖尿病「地中海食の応用と糖尿病の管理」. 2019; 11(5): 74-79. 2.Feskens EJ et al. Curr Diab Rep. 2013 Apr. 13(2):298-306
ナトリウム-グルコースコトランスポーター-2阻害薬と重症尿路感染症のリスク。人口ベースのコホート研究。
ナトリウム-グルコースコトランスポーター-2阻害薬と重症尿路感染症のリスク。人口ベースのコホート研究。
Sodium-Glucose Cotransporter-2 Inhibitors and the Risk for Severe Urinary Tract Infections: A Population-Based Cohort Study Ann Intern Med 2019;171:248-256. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】ナトリウム-グルコースコトランスポーター2(SGLT-2)阻害薬による重症尿路感染症(UTI)のリスクを評価した先行研究では、相反する知見が報告されている。 【目的】SGLT-2阻害薬の使用を開始した患者が、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬やグルカゴン様ペプチド-1受容体(GLP-1)アゴニストの使用を開始した患者と比較して、重篤な尿路感染症(UTI)のリスクが高いかどうかを評価すること。 【デザイン】人口ベースのコホート研究 【設定】米国の大規模コホート研究2件(2013年3月)。症例数は1,000例を超えているが、そのうちの1,000例を超えているのは、1,000例以上である。対象者は18歳以上、2型糖尿病、SGLT-2阻害薬とDPP-4阻害薬(コホート1)またはGLP-1アゴニスト(コホート2)の使用を開始した患者であった。 測定 【方法】一次アウトカムは重篤なUTIイベントであり、一次UTI、UTIを伴う敗血症、腎盂腎炎の入院と定義した。 【結果】2つのデータベースの中から、傾向スコアを1:1でマッチングさせた後、コホート1では123,752人、コホート2では111,978人の患者が同定された。コホート1では、新たにSGLT-2阻害薬を投与された人の重篤なUTIイベントは61件(1000人年あたりの発生率[IR]1.76)であったのに対し、DPP-4阻害薬投与群では57件(IR、1.77)であった(HR、0.98[95%CI、0.68~1.41])。コホート2では、SGLT-2阻害薬投与群では73件(IR、2.15)のイベントが発生したのに対し、GLP-1アゴニスト群では87件(IR、2.96)(HR、0.72 [CI、0.53~0.99])であった。結果は、感度解析において、年齢、性別、虚弱性のいくつかのサブグループ内で、カナグリフロジンとダパグリフロジンを個別に投与した場合でも、ロバストなものでした。さらに、SGLT-2阻害薬は外来UTIリスクの増加とは関連していなかった(コホート1:HR、0.96 [CI、0.89~1.04]、コホート2:HR、0.91 [CI、0.84~0.99])。 【限界】本試験所見の一般化可能性は、商用保険加入患者に限定されている可能性がある。 【結論】日常臨床でみられる大規模コホートにおいて、SGLT-2阻害薬治療を開始した患者における重度および非重度の尿路イベントのリスクは、他の第2選択抗糖尿病薬による治療を開始した患者におけるリスクと同程度であった。 第一人者の医師による解説 高齢者などの高リスク患者 引き続き注意が必要 稲垣 暢也 京都大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌・栄養内科学教授 MMJ.February 2020;16(1) SGLT2阻害薬は性器感染症を増加させることは 広く認められているが、尿路感染症との関連については不明な点が多い。また、米食品医薬品局(FDA) は2015年、SGLT2阻害薬の添付書類に重症尿路 感染症に関する警告を加えたが、服用時にみられる尿路感染症の多くは軽度~中等度であり、重症尿路感染症との関係は不明である。 本論文は、2013年3月~ 15年9月に、米国の 2つの民間保険請求データベースを用いて、18歳 以上の2型糖尿病患者を対象に実施されたコホート研究の報告である。コホート 1(123,752人) では、SGLT2阻害薬 またはDPP-4阻害薬 を開始 した患者の間で、コホート 2(111,978人)では、 SGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬を開始 した患者の間で比較検討が行われた。それぞれのコホートにおいて、1:1の傾向スコアマッチングを 行っている。主要評価項目は重症尿路感染症(初回 尿路感染症、尿路感染症による敗血症、または腎盂腎炎による入院の複合)とし、副次評価項目は抗菌薬で外来治療を行った尿路感染症(非重症尿路感染 症)とした。 そ の 結果、主要評価項目 で あ る 重症尿路感染 症 の 発生率 は、コ ホ ー ト 1でSGLT2阻害薬群 1.76/1,000人・年、DPP-4阻害薬群1.77/1,000 人・年と有意差はなく(相対リスク[RR], 0.98; 95%信頼区間[CI], 0.68 ~ 1.41)、コホート 2で は、SGLT2阻害薬群2.15 /1,000人・年、GLP-1 受容体作動薬群2.96 /1,000人・ 年 で、SGLT2 阻害薬群においてやや低かった(RR, 0.72;95% CI, 0.53 ~ 0.99)。副次評価項目の非重症尿路感 染症についても、両コホートにおいて、SGLT2阻害薬群で有意に多いという結果は得られなかった。 SGLT2阻害薬を新たに開始した患者をそれぞれ5万人以上含むリアルワールドの本コホート研 究では、SGLT2阻害薬による重症・非重症の尿路感染症の増加は認められなかった。しかし、本研究では、尿路感染症の既往やリスク(水腎症、膀胱尿 管逆流、脊髄損傷、カテーテル使用など)がある患者、 腎機能障害や妊娠糖尿病、がんなどの患者、老人ホー ムやホスピス入所患者などが除外されている点や、 糖尿病の罹病期間、体格指数(BMI)、HbA1cなどに関する情報が不足している点に注意すべきである。 今後、重症尿路感染症のリスクが特に高い高齢者など、高リスク患者については、さらなるエビデンス が必要であるとともに、引き続き尿路感染症に注意する必要があると思われる。
肉食者、魚食者、菜食者における18年間の追跡調査での虚血性心疾患および脳卒中のリスク:前向きEPIC-Oxford研究の結果。
肉食者、魚食者、菜食者における18年間の追跡調査での虚血性心疾患および脳卒中のリスク:前向きEPIC-Oxford研究の結果。
Risks of ischaemic heart disease and stroke in meat eaters, fish eaters, and vegetarians over 18 years of follow-up: results from the prospective EPIC-Oxford study BMJ 2019 Sep 4 ;366:l4897 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】菜食主義と虚血性心疾患および脳卒中のリスクとの関連を検討する。 【デザイン】前向きコホート研究。 【設定】非肉食者の割合が多い英国のコホートであるEPIC-Oxford研究は、1993年から2001年にかけて英国全土で募集した。 【参加者】虚血性心疾患、脳卒中、狭心症(または心血管疾患)の既往がない188名の参加者は、ベースライン時およびその後の2010年頃に収集した食事情報に基づいて、肉食者(魚、乳製品、卵を摂取するかどうかに関わらず肉を摂取する参加者、n=24 428)、魚食者(魚を摂取するが肉を食べない、n=7506)、菜食主義者を含む菜食者(n=16 254)の異なる3食グループに区分されました(n=28 364)。 【主要評価項目】2016年までの記録連結により特定された虚血性心疾患および脳卒中(虚血型および出血型を含む)の発症例。 【結果】18.1年間の追跡で虚血性心疾患2820例、全脳卒中1072例(虚血性脳卒中519例、出血性脳卒中300例)が記録された。社会人口学的およびライフスタイルの交絡因子で調整した後、魚食者と菜食者は肉食者に比べて虚血性心疾患の発生率がそれぞれ13%(ハザード比0.87、95%信頼区間0.77~0.99)および22%(0.78、0.70~0.87)低かった(不均一性についてはP<0.001)。この差は,10 年間で人口 1000 人当たりの虚血性心疾患の症例数が,肉食者よりもベジタリアンの方が 10 人少ない(95%信頼区間 6.7~13.1 人少ない)ことに相当する.虚血性心疾患との関連は、自己申告の高血中コレステロール、高血圧、糖尿病、肥満度を調整すると一部弱まった(すべての調整でベジタリアンのハザード比 0.90、95%信頼区間 0.81~1.00 )。一方、ベジタリアンは肉食の人に比べて脳卒中の発症率が20%高く(ハザード比1.20、95%信頼区間1.02~1.40)、これは10年間で人口1000人あたり3人多い(95%信頼区間0.8~5.4多い)ことに相当し、ほとんどが出血性脳卒中の発症率が高いためであった。脳卒中の関連は、疾患の危険因子をさらに調整しても減衰しなかった。 【結論】英国におけるこの前向きコホートでは、魚食者と菜食者は肉食者よりも虚血性心疾患の割合が低かったが、菜食者は出血性脳卒中と全脳卒中の割合が高かった。 第一人者の医師による解説 肥満、高血圧、糖尿病は少なく LDLコレステロールの低値が影響か 的場 圭一郎1 /宇都宮 一典2 東京慈恵会医科大学 1)内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科講師 2)総合健診・予防医学センターセンター長(臨床専任教授) MMJ.February 2020;16(1) 近年の健康志向の高まりや動物福祉の観点から、 菜食者は世界的に増加している。菜食者における虚血性心疾患の発症リスクは非菜食者に比べて低いと考えられているが、これに関する大規模かつ前向きな研究は限られている。また、脳卒中リスクとの関連性についてはこれまでエビデンスがない。 本論文は、英国 Oxford大学のTongらが、同国コホート(EPIC-Oxford)における虚血性心疾患・脳卒中・狭心症の既往がない参加者48,188人を対象に、虚血性心疾患と脳卒中のリスクを調べた長 期前向き観察研究の報告である。研究開始時(1993 ~2001年)と2010年前後での食習慣に基づき、 対象者を①魚、乳製品または卵の摂取を問わず、肉を摂取する肉食群、②魚は摂取するが肉は摂取しない魚食群、③完全菜食主義者(vegan)を含む菜食群に分け、虚血性心疾患および脳卒中の発症につ いて検討した。 その結果、肉食群と比較して、虚血性心疾患の発症リスクは魚食群で13%低下、菜食群では22% 低下した。しかし、菜食群では脳卒中の発症リスクが20%上昇しており、これは主に脳出血の増加が原因であった。 肉食群に比べて、菜食群と魚食群で虚血性心疾患 が少なかった背景には、これら2群において肥満 や高血圧、脂質異常症、糖尿病が少なかったことが 関連していると思われる。一方、脳出血が菜食群で多い理由として、LDLコレステロールの低値や動物性食品に含まれる何らかの成分の不足を著者らは 想定している。EPIC-Oxfordコホートの菜食者では 血中のビタミン B12やビタミン D、必須アミノ酸、 n-3系多価不飽和脂肪酸が低値であり、脳出血増加との関連性が示唆される。しかし、人種を問わず同じ傾向がみられるか否かは不明であり、背景因子の解明にはさらなる検討が必要である。
血圧降下治療の4つの戦略の適格性とその後の心血管疾患の負担:レトロスペクティブ・コホート研究。
血圧降下治療の4つの戦略の適格性とその後の心血管疾患の負担:レトロスペクティブ・コホート研究。
Eligibility and subsequent burden of cardiovascular disease of four strategies for blood pressure-lowering treatment: a retrospective cohort study Lancet 2019 ;394 (10199):663 -671. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】血圧を下げるための世界的な治療勧告は,血圧の閾値によって主に導かれ続けているが,血圧を下げることの利点は血圧スペクトル全体にわたる患者に観察されるという強い証拠があるにもかかわらず,このようなことはない。本研究では,英国を例に,血圧治療の代替戦略の意味を検討することを目的とした。 【方法】心血管疾患を持たない30~79歳のプライマリケア患者を対象に,Hospital Episode StatisticsとOffice for National Statistics死亡率にリンクした英国のClinical Practice Research Datalinkからのデータを用いて,レトロスペクティブ・コホート研究を実施した。治療対象者を決定するための4つの異なる戦略を評価・比較した:2011年英国国立医療技術評価機構(NICE)ガイドライン、または2019年NICEガイドライン案、または血圧のみ(閾値≧140/90mmHg)、または10年予測心血管リスクのみ(QRISK2スコア≧10%)、を使用した。患者は、心血管疾患の診断、死亡、またはフォローアップ期間の終了(2016年3月31日)のうち最も早い発生までフォローアップされた。各戦略について、治療対象となる患者の割合と、治療により予防できる心血管イベント数を推定した。次に,英国の一般集団における10年間に発生するであろう適格性とイベント数を推定した。 【FINDINGS】2011年1月1日から2016年3月31日の間に,コホート内の1 222 670例が中央値4-3年(IQR 2-5-5-2)フォローアップされた。2011年のNICEガイドラインでは271 963例(22-2%)、2019年のNICEガイドライン案では327 429例(26-8%)、血圧閾値140/90mmHg以上基準では481 859例(39-4%)、QRISK2閾値10%以上基準では357 840例(29-3%)が治療対象であった。追跡期間中に32 183人の患者が心血管疾患と診断された(全体の割合:1000人年当たり7-1、95%CI:7-0-7-2)。各戦略の対象患者における心血管イベント発生率は、2011年NICEガイドラインでは1000人年当たり15-2(95%CI 15-0-15-5)、2019年NICEガイドライン案では14-9(14-7-15-1)、血圧閾値のみでは11-4(11-3-11-6)、QRISK2閾値のみでは16-9(16-7-17-1)であった。英国人口に換算すると、2011年NICEガイドラインでは233 152イベント(1イベントを回避するために10年間治療する必要がある患者は28人)、2019年NICEガイドラインでは270 233(29人)、血圧閾値を用いた場合は301 523(38人)、QRISK2閾値を用いた場合は322 921(27人)が回避できると推測されました。 【INTERPRETATION】心血管リスクに基づく戦略(QRISK2≧10%)は、2011年NICEガイドラインより3分の1以上、2019年NICEガイドラインより5分の1以上、イベント回避あたりの治療数に関して同様の効率で心血管疾患イベントを予防できる。 【FUNDING】National Institute for Health Research【FUNDING】国立健康研究所。 第一人者の医師による解説 高血圧ポピュレーション戦略において 絶対リスクは血圧値よりも重要な可能性 田中 正巳(特任講師)/伊藤 裕(教授) 慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科 MMJ.February 2020;16(1) 国民の脳心血管病リスクを低下させるためには、 国民全体の血圧を低い方向へシフトさせるポピュ レーション戦略と同時に、高リスク者に積極的に介入する高リスク戦略も重要である。降圧治療が必要な患者を選定する際の指標として、脳心血管病の絶対リスクと血圧値が一般に用いられ、英国の NICEガイドラインは両者を組み合わせている。 本論文は、英国 で 心血管疾患の 既往 が な い30 ~79歳 の 患者1,222,670人 を 中央値4.3年 間追跡した後ろ向きコホート研究の報告である。 2011年 と19年 のNICEガ イ ド ラ イ ン、血圧 の み(140/90 mmHg以上)、10年間の心血管リス ク(QRISK2スコア 10%以上)のみの4つの戦略 が、降圧治療の適格性、降圧治療で回避しうる心血 管イベント数、治療効率性の観点から比較された。 QRISK2スコアは、年齢、性、民族性、貧困度、BMI、 血圧、脂質、糖尿病、慢性腎臓病、心房細動、関節リ ウマチ、冠動脈疾患の家族歴、喫煙などの要素から算出される。治療効率性は、1件の心血管イベン トを防ぐために10年間治療する必要がある患者数(NNT)に基づいて評価した。その結果、英国全 体では2011NICE、2019NICE、血圧のみ、リス クのみの患者選定によって予防できるイベント数 は そ れ ぞ れ233,152、270,233、301,523、 322,921件、NNTは28、29、38、27と推定され た。したがって、絶対リスクのみによる患者選定は 効率が高く、最も多くの心血管イベントを予防で きると考えられた。 本研究は後ろ向き研究であるため、この結果をもって「絶対リスクのみに基づく戦略が、リスクと血圧を組み合わせた戦略よりも優れている」と結論づけるのは時期尚早であろう。絶対リスク評価 の重要性が新たな手法で示された、と解釈するのが現時点では妥当である。   日本 の 高血圧治療 ガ イ ド ラ イ ン 2019で は、 JALSおよび久山町研究に基づくリスクスコアを用いて脳心血管イベントの絶対リスクを算出し、 診察室血圧を組み合わせてリスク層別化を行った。 リスクの高低に応じて血圧再評価や薬物療法の開始時期を変えている。動脈硬化性疾患予防ガイドラ イン 2019では「吹田スコアによる冠動脈疾患発症予測モデル」から予測されたリスクの高低に応 じて、脂質の管理目標値を変えている。このように 個々の患者に合わせた治療が可能になるため、絶対リスクと血圧、脂質値を組み合わせた日本のガイドラインは高リスク戦略の点では優れている。 一方、ポピュレーション戦略の観点からは、絶対リスクのみに基づく戦略によって脳心血管イベントをどれだけ減らせるのか、本研究と同様の研究を日本で検討する必要もある。
洞調律中の心房細動患者を識別するための人工知能を用いた心電図アルゴリズム:転帰予測のレトロスペクティブな分析。
洞調律中の心房細動患者を識別するための人工知能を用いた心電図アルゴリズム:転帰予測のレトロスペクティブな分析。
An artificial intelligence-enabled ECG algorithm for the identification of patients with atrial fibrillation during sinus rhythm: a retrospective analysis of outcome prediction Lancet 2019 ;394 (10201):861 -867. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】心房細動は無症状であることが多く、そのため発見が遅れているが、脳卒中、心不全、死亡と関連している。既存のスクリーニング法は長時間のモニタリングを必要とし、コストと低い収率によって制限されている。我々は,機械学習を利用して心房細動患者を迅速かつ安価に特定するポイントオブケア手段を開発することを目的とした。 【方法】我々は,10秒間の標準的な12誘導心電図を用いて正常洞調律中に存在する心房細動の心電図シグネチャを検出するために,畳み込みニューラルネットワークを用いた人工知能(AI)対応の心電計(ECG)を開発した。1993年12月31日から2017年7月21日の間にMayo Clinic ECG研究所で仰臥位で取得したデジタルで正常洞調律の標準10秒12誘導心電図を少なくとも1枚有する18歳以上の患者を対象とし、循環器医の監督下で訓練を受けた担当者によってリズムラベルが検証されたものを使用した。心房細動または心房粗動のリズムを持つ心電図が少なくとも1つある患者を心房細動陽性と分類した。心電図をトレーニング、内部検証、テストデータセットに7:1:2の割合で割り付けた。内部検証データセットの受信者操作特性曲線の曲線下面積(AUC)を算出して確率の閾値を選択し,これをテストデータセットに適用した.AUCと精度,感度,特異度,F1スコアを両側95%CIで算出し,テストデータセットにおけるモデル性能を評価した. 【所見】解析対象として正常洞調律心電図を持つ患者180 922人,649 931件を含む.テストデータセットの3051人(8-4%)の患者は、モデルによってテストされた正常洞調律ECGの前に心房細動が確認された。1回のAI対応ECGで心房細動を識別した場合のAUCは0-87(95% CI 0-86-0-88)、感度79-0%(77-5-80-4)、特異度79-5%(79-0-79-9)、F1スコア39-2%(38-1-40-3)、全体精度79-4%(79-0-79-9)であった.各患者の関心領域(すなわち、研究開始日または最初に記録された心房細動ECGの31日前)の最初の月に取得されたすべてのECGを含めると、AUCは0-90(0-90-0-91)、感度は82-3%(80-9-83-6)、特異度は83-4%(83-0-83-8)、F1スコアは45-4%(44-2-46-5)、全体の精度は83-3%(83-0-83-7)へと上昇しました. 【解説】正常洞調律時に取得されたAI対応心電図は、心房細動患者のポイントオブケアでの同定を可能にする。 第一人者の医師による解説 リスクの根拠は説明できず 現状の深層学習の問題点 津本 周作 島根大学医学部医学科医療情報学講座教授 MMJ.February 2020;16(1) 本論文で著者は、心房細動の発症1カ月前に構造 的変化が起こっているという仮説に基づき、心房細 動が発症した患者の1カ月前の正常洞性リズムから、心房細動が発症するかどうかを予測する人工知能(AI)分類器の性能を調べた。彼らは、これ以前に左室不全のリスクを心電図から推測する分類器を作成、曲線下面積(AUC)0.93, 感度86.3% , 特異度85.7%という好成績を収め、このAI分類器が陽性と診断した患者はオッズ比4.1のリスクを持っていることを示している(1)。 今回の対象は、メイヨークリニックで1993年 12月~2017年7月 に10秒 の12誘導心電図検 査(500Hz)を受けた患者210,414人(心電図数 1,000,000)から、洞性でない患者、データが不 完全な患者、心房細動より前に洞性リズムが観測 されていない患者を除外した180,992人(心電 図数649,931)からなり、これを70%の訓練標本、 10%の検証標本、20%のテスト標本にランダムに 割り付け、深層学習のアルゴリズムに適用した。分 類器はTensorfl owを用いたKerasパッケージで設 計、R3.4.2で解析した(2) (Appendix参照)。 訓練標本(正常例では最初に記録された心電図を indexとし、それ以降のすべての心電図、心房細動 例では心房細動が初めて観測された波形をindex とし、31日前以降のすべての心電図)で学習が行われた。訓練によってできあがった分類器で用いられるパラメータ(確率の閾値など)を最適化するため、検証標本を用いた。ただし、検証標本は、正常例は最初の波形、心房細動の症例は発症31日前以降の最初の洞性リズムのみである。最適なパラ メータを設定後、完成した分類器に対して、テスト標本(こちらも検証標本と同様の波形)のみで、心 房細動が1カ月後に発症するかどうかを判定した。 結果では2つの評価方法が示されている。第1 に、対象 と な る1つ 目 の 心電図 の み で の 評価 で AUC 0.87、感度79.0%、特異度79.5%、正答率79.4%。第2の複数の心電図(洞性のみを選んで)を用いた評価では、AUC 0.90、感度 82.3%、 特異度83.4%、正答率83.3%に改善している。 精度は他の検査、例えば心不全での脳性ナトリウム利尿ペプチドよりも高く、スクリーニングとしては有効ではないかと論じた。 また、メイヨーの別 の研究チームが心電図のさまざまな指標では高い分類精度が得られないことを示していることから、 何らかの心電図上の微妙な変化を深層学習で捉えられたかもしれないと論じている。ただし、今回どうしてこのような精度が得られたかは説明できていない。分類器に波形を与えれば、心房細動のリス クを予想するが、その理由が説明できない。これが 現状の深層学習の方法の問題点でもある。 1. Attia ZI et al. Nat Med. 2019;25(1):70-74. 2. François Chollet、J. J. Allaire(瀬戸山 雅人監訳、長尾 高弘訳). R と Keras によるディープラーニング . オライリージャパン、2018.
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