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食事脂肪の質と2型糖尿病の遺伝的リスク:個人参加者データのメタアナリシス。
食事脂肪の質と2型糖尿病の遺伝的リスク:個人参加者データのメタアナリシス。
Quality of dietary fat and genetic risk of type 2 diabetes: individual participant data meta-analysis BMJ 2019 ;366:l4292 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】2型糖尿病の遺伝的負担が、食事脂肪の質と2型糖尿病発症率との関連を修飾するかどうかを調査する。 【デザイン】個々の参加者データのメタ解析。 【データ入手元】適格な前向きコホート研究は、主要医学データベース(Medline、Embase、Scopus)の電子検索及び研究者との議論を通じて1970年1月から2017年2月に発表された研究中から系統的に調達された。[レビュー 【方法】ゲノムワイド遺伝子データが利用可能なコホート研究またはマルチコホートコンソーシアムから、ヨーロッパ系の参加者における食事脂肪の質と2型糖尿病の発生率に関するデータを探した。5年以上経過した前向きコホート研究が対象となった。2型糖尿病の遺伝的リスクプロファイルは、公表されている効果量によって重み付けされた68変量の多遺伝子リスクスコアによって特徴づけられた。食事は、有効なコホート特異的食事評価ツールを用いて記録された。 【結果】15の前向きコホート研究からの102 305人の参加者のうち、中央値12年(四分位範囲9.4~14.2)のフォローアップ後に2型糖尿病2例が記録された。多遺伝子リスクスコアのリスクアレルが10増加するごとの2型糖尿病のハザード比は1.64(95%信頼区間1.54~1.75,I2=7.1%,τ2=0.003)であった。炭水化物の代わりに多価不飽和脂肪と総オメガ6多価不飽和脂肪の摂取量を増やすことは、2型糖尿病のリスク低下と関連し、ハザード比は0.90(0.82~0.98、I2=18.0%、τ2=0.006;エネルギー5%当たり)、0.99(0.97~1.00、I2=58.8%、τ2=0.001:1g/日の増加あたり)であった。炭水化物の代わりに一価不飽和脂肪を増やすと、2型糖尿病のリスクが高くなった(ハザード比1.10、95%信頼区間1.01~1.19、I2=25.9、τ2=0.006、エネルギー5%当たり)。多価不飽和脂肪と2型糖尿病リスクとの全体的な関連については、研究効果が小さいという証拠が検出されたが、オメガ6多価不飽和脂肪および一価不飽和脂肪との関連については検出されなかった。2型糖尿病リスクに関する食事脂肪と多遺伝子リスクスコアとの有意な相互作用(相互作用についてはP>0.05)は認められなかった。 【結論】これらのデータは、遺伝的負担と食事脂肪の質がそれぞれ2型糖尿病の発症と関連していることを示すものである。この知見は、2型糖尿病の一次予防のために、食事脂肪の質に関する推奨を個々の2型糖尿病遺伝子リスクプロファイルに合わせることを支持せず、食事脂肪は2型糖尿病遺伝子リスクの範囲にわたって2型糖尿病リスクと関連することを示唆している。 第一人者の医師による解説 牛脂、豚脂にも多い単価不飽和脂肪酸 どの食材から摂取したかが重要 柳川 達生 練馬総合病院内科・副院長、医療の質向上研究所・主任研究員 MMJ.February 2020;16(1) 本論文は、2型糖尿病発症と既知のリスク遺伝子および脂肪酸量・質との関連を検討したメタ解析の報告である。主要医療データベース検索(1970 ~2017年)により、北米・欧州系102,350人のデータが収集された。68の2型糖尿病リスク遺伝子を選定、それぞれの相対的効果で重み付けし遺伝要因をスコア化している。 食事は半定量的食品頻度調査などから、脂肪酸別の摂取量をベースラインと累積平均で算出。交絡因子で補正後、以下の項目で糖尿病発症リスクが評価された:(1)遺伝要因 のリスクスコア値との関連(2)炭水化物を減らして等カロリーの総脂肪または各種脂肪酸に置換(3) 脂肪酸の種類と遺伝子リスクスコアの相互作用。 追跡期間中央値12年 で20,015人 が2型糖尿病を発症し、主な結果は以下のとおりであった:(1) 遺伝子リスクスコア 10ポイント増加あたりの発症ハザード比(HR)は1.64、(2)炭水化物を総多価不飽和脂肪酸(ほぼω3[エイコサペンタエン酸、 ドコサヘキサエン酸など]とω6[リノール酸など]) あるいはω6多価不飽和脂肪酸で等カロリー置換 した場合のHRはそれぞれ0.90と0.99、(3)炭水化物を総単価不飽和脂肪酸で等カロリー置換した場合のHRは1.10、(4)脂肪酸と遺伝子リスクスコアに相互作用はなかった。 これらの結果を解釈すると、炭水化物を総多価不飽和脂肪酸(ほぼω3とω6)に置換するとリスクが低下するが、ω6脂肪酸の影響はニュートラルであったことから、ω3脂肪酸のリスク低減寄与が大きいことが示唆される。 一方、炭水化物を単価不飽和脂肪酸(主にω9[オレイン酸など])に置換すると発症リスクは上昇するが、ω9の由来する食材の影響が重要であると考える。牛脂、豚脂は50%弱 がω9脂肪酸で、飽和脂肪酸は30 ~ 40%である。 オリーブ油は80%弱がω9である。地中海地域であれば、オリーブ油などからのω9摂取割合が高い[1]。 今回のメタ解析に含まれた研究は非地中海諸国によるもので、肉類などがω9の主な供給源と考えられる。肉過剰摂取は発症リスクである[2]。どの食材からω9を摂取しているかが重要である。 脂肪酸の種類と遺伝要因の相互作用は認められなかったが、アルコール脱水素酵素の遺伝子型は代謝に影響するのと同様に、脂肪酸代謝に影響する遺伝子型が糖尿病発症に影響する可能性はありえる。また、食事調査では加工食品などの主要油脂であるパーム油(脂肪酸組成はほぼ牛脂)のデータが 反映されているか疑問である。世界で最も消費されている植物油であり影響は大きい。 1. 柳川達生 . 月刊糖尿病「地中海食の応用と糖尿病の管理」. 2019; 11(5): 74-79. 2.Feskens EJ et al. Curr Diab Rep. 2013 Apr. 13(2):298-306
ナトリウム-グルコースコトランスポーター-2阻害薬と重症尿路感染症のリスク。人口ベースのコホート研究。
ナトリウム-グルコースコトランスポーター-2阻害薬と重症尿路感染症のリスク。人口ベースのコホート研究。
Sodium-Glucose Cotransporter-2 Inhibitors and the Risk for Severe Urinary Tract Infections: A Population-Based Cohort Study Ann Intern Med 2019;171:248-256. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】ナトリウム-グルコースコトランスポーター2(SGLT-2)阻害薬による重症尿路感染症(UTI)のリスクを評価した先行研究では、相反する知見が報告されている。 【目的】SGLT-2阻害薬の使用を開始した患者が、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬やグルカゴン様ペプチド-1受容体(GLP-1)アゴニストの使用を開始した患者と比較して、重篤な尿路感染症(UTI)のリスクが高いかどうかを評価すること。 【デザイン】人口ベースのコホート研究 【設定】米国の大規模コホート研究2件(2013年3月)。症例数は1,000例を超えているが、そのうちの1,000例を超えているのは、1,000例以上である。対象者は18歳以上、2型糖尿病、SGLT-2阻害薬とDPP-4阻害薬(コホート1)またはGLP-1アゴニスト(コホート2)の使用を開始した患者であった。 測定 【方法】一次アウトカムは重篤なUTIイベントであり、一次UTI、UTIを伴う敗血症、腎盂腎炎の入院と定義した。 【結果】2つのデータベースの中から、傾向スコアを1:1でマッチングさせた後、コホート1では123,752人、コホート2では111,978人の患者が同定された。コホート1では、新たにSGLT-2阻害薬を投与された人の重篤なUTIイベントは61件(1000人年あたりの発生率[IR]1.76)であったのに対し、DPP-4阻害薬投与群では57件(IR、1.77)であった(HR、0.98[95%CI、0.68~1.41])。コホート2では、SGLT-2阻害薬投与群では73件(IR、2.15)のイベントが発生したのに対し、GLP-1アゴニスト群では87件(IR、2.96)(HR、0.72 [CI、0.53~0.99])であった。結果は、感度解析において、年齢、性別、虚弱性のいくつかのサブグループ内で、カナグリフロジンとダパグリフロジンを個別に投与した場合でも、ロバストなものでした。さらに、SGLT-2阻害薬は外来UTIリスクの増加とは関連していなかった(コホート1:HR、0.96 [CI、0.89~1.04]、コホート2:HR、0.91 [CI、0.84~0.99])。 【限界】本試験所見の一般化可能性は、商用保険加入患者に限定されている可能性がある。 【結論】日常臨床でみられる大規模コホートにおいて、SGLT-2阻害薬治療を開始した患者における重度および非重度の尿路イベントのリスクは、他の第2選択抗糖尿病薬による治療を開始した患者におけるリスクと同程度であった。 第一人者の医師による解説 高齢者などの高リスク患者 引き続き注意が必要 稲垣 暢也 京都大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌・栄養内科学教授 MMJ.February 2020;16(1) SGLT2阻害薬は性器感染症を増加させることは 広く認められているが、尿路感染症との関連については不明な点が多い。また、米食品医薬品局(FDA) は2015年、SGLT2阻害薬の添付書類に重症尿路 感染症に関する警告を加えたが、服用時にみられる尿路感染症の多くは軽度~中等度であり、重症尿路感染症との関係は不明である。 本論文は、2013年3月~ 15年9月に、米国の 2つの民間保険請求データベースを用いて、18歳 以上の2型糖尿病患者を対象に実施されたコホート研究の報告である。コホート 1(123,752人) では、SGLT2阻害薬 またはDPP-4阻害薬 を開始 した患者の間で、コホート 2(111,978人)では、 SGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬を開始 した患者の間で比較検討が行われた。それぞれのコホートにおいて、1:1の傾向スコアマッチングを 行っている。主要評価項目は重症尿路感染症(初回 尿路感染症、尿路感染症による敗血症、または腎盂腎炎による入院の複合)とし、副次評価項目は抗菌薬で外来治療を行った尿路感染症(非重症尿路感染 症)とした。 そ の 結果、主要評価項目 で あ る 重症尿路感染 症 の 発生率 は、コ ホ ー ト 1でSGLT2阻害薬群 1.76/1,000人・年、DPP-4阻害薬群1.77/1,000 人・年と有意差はなく(相対リスク[RR], 0.98; 95%信頼区間[CI], 0.68 ~ 1.41)、コホート 2で は、SGLT2阻害薬群2.15 /1,000人・年、GLP-1 受容体作動薬群2.96 /1,000人・ 年 で、SGLT2 阻害薬群においてやや低かった(RR, 0.72;95% CI, 0.53 ~ 0.99)。副次評価項目の非重症尿路感 染症についても、両コホートにおいて、SGLT2阻害薬群で有意に多いという結果は得られなかった。 SGLT2阻害薬を新たに開始した患者をそれぞれ5万人以上含むリアルワールドの本コホート研 究では、SGLT2阻害薬による重症・非重症の尿路感染症の増加は認められなかった。しかし、本研究では、尿路感染症の既往やリスク(水腎症、膀胱尿 管逆流、脊髄損傷、カテーテル使用など)がある患者、 腎機能障害や妊娠糖尿病、がんなどの患者、老人ホー ムやホスピス入所患者などが除外されている点や、 糖尿病の罹病期間、体格指数(BMI)、HbA1cなどに関する情報が不足している点に注意すべきである。 今後、重症尿路感染症のリスクが特に高い高齢者など、高リスク患者については、さらなるエビデンス が必要であるとともに、引き続き尿路感染症に注意する必要があると思われる。
肉食者、魚食者、菜食者における18年間の追跡調査での虚血性心疾患および脳卒中のリスク:前向きEPIC-Oxford研究の結果。
肉食者、魚食者、菜食者における18年間の追跡調査での虚血性心疾患および脳卒中のリスク:前向きEPIC-Oxford研究の結果。
Risks of ischaemic heart disease and stroke in meat eaters, fish eaters, and vegetarians over 18 years of follow-up: results from the prospective EPIC-Oxford study BMJ 2019 Sep 4 ;366:l4897 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】菜食主義と虚血性心疾患および脳卒中のリスクとの関連を検討する。 【デザイン】前向きコホート研究。 【設定】非肉食者の割合が多い英国のコホートであるEPIC-Oxford研究は、1993年から2001年にかけて英国全土で募集した。 【参加者】虚血性心疾患、脳卒中、狭心症(または心血管疾患)の既往がない188名の参加者は、ベースライン時およびその後の2010年頃に収集した食事情報に基づいて、肉食者(魚、乳製品、卵を摂取するかどうかに関わらず肉を摂取する参加者、n=24 428)、魚食者(魚を摂取するが肉を食べない、n=7506)、菜食主義者を含む菜食者(n=16 254)の異なる3食グループに区分されました(n=28 364)。 【主要評価項目】2016年までの記録連結により特定された虚血性心疾患および脳卒中(虚血型および出血型を含む)の発症例。 【結果】18.1年間の追跡で虚血性心疾患2820例、全脳卒中1072例(虚血性脳卒中519例、出血性脳卒中300例)が記録された。社会人口学的およびライフスタイルの交絡因子で調整した後、魚食者と菜食者は肉食者に比べて虚血性心疾患の発生率がそれぞれ13%(ハザード比0.87、95%信頼区間0.77~0.99)および22%(0.78、0.70~0.87)低かった(不均一性についてはP<0.001)。この差は,10 年間で人口 1000 人当たりの虚血性心疾患の症例数が,肉食者よりもベジタリアンの方が 10 人少ない(95%信頼区間 6.7~13.1 人少ない)ことに相当する.虚血性心疾患との関連は、自己申告の高血中コレステロール、高血圧、糖尿病、肥満度を調整すると一部弱まった(すべての調整でベジタリアンのハザード比 0.90、95%信頼区間 0.81~1.00 )。一方、ベジタリアンは肉食の人に比べて脳卒中の発症率が20%高く(ハザード比1.20、95%信頼区間1.02~1.40)、これは10年間で人口1000人あたり3人多い(95%信頼区間0.8~5.4多い)ことに相当し、ほとんどが出血性脳卒中の発症率が高いためであった。脳卒中の関連は、疾患の危険因子をさらに調整しても減衰しなかった。 【結論】英国におけるこの前向きコホートでは、魚食者と菜食者は肉食者よりも虚血性心疾患の割合が低かったが、菜食者は出血性脳卒中と全脳卒中の割合が高かった。 第一人者の医師による解説 肥満、高血圧、糖尿病は少なく LDLコレステロールの低値が影響か 的場 圭一郎1 /宇都宮 一典2 東京慈恵会医科大学 1)内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科講師 2)総合健診・予防医学センターセンター長(臨床専任教授) MMJ.February 2020;16(1) 近年の健康志向の高まりや動物福祉の観点から、 菜食者は世界的に増加している。菜食者における虚血性心疾患の発症リスクは非菜食者に比べて低いと考えられているが、これに関する大規模かつ前向きな研究は限られている。また、脳卒中リスクとの関連性についてはこれまでエビデンスがない。 本論文は、英国 Oxford大学のTongらが、同国コホート(EPIC-Oxford)における虚血性心疾患・脳卒中・狭心症の既往がない参加者48,188人を対象に、虚血性心疾患と脳卒中のリスクを調べた長 期前向き観察研究の報告である。研究開始時(1993 ~2001年)と2010年前後での食習慣に基づき、 対象者を①魚、乳製品または卵の摂取を問わず、肉を摂取する肉食群、②魚は摂取するが肉は摂取しない魚食群、③完全菜食主義者(vegan)を含む菜食群に分け、虚血性心疾患および脳卒中の発症につ いて検討した。 その結果、肉食群と比較して、虚血性心疾患の発症リスクは魚食群で13%低下、菜食群では22% 低下した。しかし、菜食群では脳卒中の発症リスクが20%上昇しており、これは主に脳出血の増加が原因であった。 肉食群に比べて、菜食群と魚食群で虚血性心疾患 が少なかった背景には、これら2群において肥満 や高血圧、脂質異常症、糖尿病が少なかったことが 関連していると思われる。一方、脳出血が菜食群で多い理由として、LDLコレステロールの低値や動物性食品に含まれる何らかの成分の不足を著者らは 想定している。EPIC-Oxfordコホートの菜食者では 血中のビタミン B12やビタミン D、必須アミノ酸、 n-3系多価不飽和脂肪酸が低値であり、脳出血増加との関連性が示唆される。しかし、人種を問わず同じ傾向がみられるか否かは不明であり、背景因子の解明にはさらなる検討が必要である。
血圧降下治療の4つの戦略の適格性とその後の心血管疾患の負担:レトロスペクティブ・コホート研究。
血圧降下治療の4つの戦略の適格性とその後の心血管疾患の負担:レトロスペクティブ・コホート研究。
Eligibility and subsequent burden of cardiovascular disease of four strategies for blood pressure-lowering treatment: a retrospective cohort study Lancet 2019 ;394 (10199):663 -671. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】血圧を下げるための世界的な治療勧告は,血圧の閾値によって主に導かれ続けているが,血圧を下げることの利点は血圧スペクトル全体にわたる患者に観察されるという強い証拠があるにもかかわらず,このようなことはない。本研究では,英国を例に,血圧治療の代替戦略の意味を検討することを目的とした。 【方法】心血管疾患を持たない30~79歳のプライマリケア患者を対象に,Hospital Episode StatisticsとOffice for National Statistics死亡率にリンクした英国のClinical Practice Research Datalinkからのデータを用いて,レトロスペクティブ・コホート研究を実施した。治療対象者を決定するための4つの異なる戦略を評価・比較した:2011年英国国立医療技術評価機構(NICE)ガイドライン、または2019年NICEガイドライン案、または血圧のみ(閾値≧140/90mmHg)、または10年予測心血管リスクのみ(QRISK2スコア≧10%)、を使用した。患者は、心血管疾患の診断、死亡、またはフォローアップ期間の終了(2016年3月31日)のうち最も早い発生までフォローアップされた。各戦略について、治療対象となる患者の割合と、治療により予防できる心血管イベント数を推定した。次に,英国の一般集団における10年間に発生するであろう適格性とイベント数を推定した。 【FINDINGS】2011年1月1日から2016年3月31日の間に,コホート内の1 222 670例が中央値4-3年(IQR 2-5-5-2)フォローアップされた。2011年のNICEガイドラインでは271 963例(22-2%)、2019年のNICEガイドライン案では327 429例(26-8%)、血圧閾値140/90mmHg以上基準では481 859例(39-4%)、QRISK2閾値10%以上基準では357 840例(29-3%)が治療対象であった。追跡期間中に32 183人の患者が心血管疾患と診断された(全体の割合:1000人年当たり7-1、95%CI:7-0-7-2)。各戦略の対象患者における心血管イベント発生率は、2011年NICEガイドラインでは1000人年当たり15-2(95%CI 15-0-15-5)、2019年NICEガイドライン案では14-9(14-7-15-1)、血圧閾値のみでは11-4(11-3-11-6)、QRISK2閾値のみでは16-9(16-7-17-1)であった。英国人口に換算すると、2011年NICEガイドラインでは233 152イベント(1イベントを回避するために10年間治療する必要がある患者は28人)、2019年NICEガイドラインでは270 233(29人)、血圧閾値を用いた場合は301 523(38人)、QRISK2閾値を用いた場合は322 921(27人)が回避できると推測されました。 【INTERPRETATION】心血管リスクに基づく戦略(QRISK2≧10%)は、2011年NICEガイドラインより3分の1以上、2019年NICEガイドラインより5分の1以上、イベント回避あたりの治療数に関して同様の効率で心血管疾患イベントを予防できる。 【FUNDING】National Institute for Health Research【FUNDING】国立健康研究所。 第一人者の医師による解説 高血圧ポピュレーション戦略において 絶対リスクは血圧値よりも重要な可能性 田中 正巳(特任講師)/伊藤 裕(教授) 慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科 MMJ.February 2020;16(1) 国民の脳心血管病リスクを低下させるためには、 国民全体の血圧を低い方向へシフトさせるポピュ レーション戦略と同時に、高リスク者に積極的に介入する高リスク戦略も重要である。降圧治療が必要な患者を選定する際の指標として、脳心血管病の絶対リスクと血圧値が一般に用いられ、英国の NICEガイドラインは両者を組み合わせている。 本論文は、英国 で 心血管疾患の 既往 が な い30 ~79歳 の 患者1,222,670人 を 中央値4.3年 間追跡した後ろ向きコホート研究の報告である。 2011年 と19年 のNICEガ イ ド ラ イ ン、血圧 の み(140/90 mmHg以上)、10年間の心血管リス ク(QRISK2スコア 10%以上)のみの4つの戦略 が、降圧治療の適格性、降圧治療で回避しうる心血 管イベント数、治療効率性の観点から比較された。 QRISK2スコアは、年齢、性、民族性、貧困度、BMI、 血圧、脂質、糖尿病、慢性腎臓病、心房細動、関節リ ウマチ、冠動脈疾患の家族歴、喫煙などの要素から算出される。治療効率性は、1件の心血管イベン トを防ぐために10年間治療する必要がある患者数(NNT)に基づいて評価した。その結果、英国全 体では2011NICE、2019NICE、血圧のみ、リス クのみの患者選定によって予防できるイベント数 は そ れ ぞ れ233,152、270,233、301,523、 322,921件、NNTは28、29、38、27と推定され た。したがって、絶対リスクのみによる患者選定は 効率が高く、最も多くの心血管イベントを予防で きると考えられた。 本研究は後ろ向き研究であるため、この結果をもって「絶対リスクのみに基づく戦略が、リスクと血圧を組み合わせた戦略よりも優れている」と結論づけるのは時期尚早であろう。絶対リスク評価 の重要性が新たな手法で示された、と解釈するのが現時点では妥当である。   日本 の 高血圧治療 ガ イ ド ラ イ ン 2019で は、 JALSおよび久山町研究に基づくリスクスコアを用いて脳心血管イベントの絶対リスクを算出し、 診察室血圧を組み合わせてリスク層別化を行った。 リスクの高低に応じて血圧再評価や薬物療法の開始時期を変えている。動脈硬化性疾患予防ガイドラ イン 2019では「吹田スコアによる冠動脈疾患発症予測モデル」から予測されたリスクの高低に応 じて、脂質の管理目標値を変えている。このように 個々の患者に合わせた治療が可能になるため、絶対リスクと血圧、脂質値を組み合わせた日本のガイドラインは高リスク戦略の点では優れている。 一方、ポピュレーション戦略の観点からは、絶対リスクのみに基づく戦略によって脳心血管イベントをどれだけ減らせるのか、本研究と同様の研究を日本で検討する必要もある。
洞調律中の心房細動患者を識別するための人工知能を用いた心電図アルゴリズム:転帰予測のレトロスペクティブな分析。
洞調律中の心房細動患者を識別するための人工知能を用いた心電図アルゴリズム:転帰予測のレトロスペクティブな分析。
An artificial intelligence-enabled ECG algorithm for the identification of patients with atrial fibrillation during sinus rhythm: a retrospective analysis of outcome prediction Lancet 2019 ;394 (10201):861 -867. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】心房細動は無症状であることが多く、そのため発見が遅れているが、脳卒中、心不全、死亡と関連している。既存のスクリーニング法は長時間のモニタリングを必要とし、コストと低い収率によって制限されている。我々は,機械学習を利用して心房細動患者を迅速かつ安価に特定するポイントオブケア手段を開発することを目的とした。 【方法】我々は,10秒間の標準的な12誘導心電図を用いて正常洞調律中に存在する心房細動の心電図シグネチャを検出するために,畳み込みニューラルネットワークを用いた人工知能(AI)対応の心電計(ECG)を開発した。1993年12月31日から2017年7月21日の間にMayo Clinic ECG研究所で仰臥位で取得したデジタルで正常洞調律の標準10秒12誘導心電図を少なくとも1枚有する18歳以上の患者を対象とし、循環器医の監督下で訓練を受けた担当者によってリズムラベルが検証されたものを使用した。心房細動または心房粗動のリズムを持つ心電図が少なくとも1つある患者を心房細動陽性と分類した。心電図をトレーニング、内部検証、テストデータセットに7:1:2の割合で割り付けた。内部検証データセットの受信者操作特性曲線の曲線下面積(AUC)を算出して確率の閾値を選択し,これをテストデータセットに適用した.AUCと精度,感度,特異度,F1スコアを両側95%CIで算出し,テストデータセットにおけるモデル性能を評価した. 【所見】解析対象として正常洞調律心電図を持つ患者180 922人,649 931件を含む.テストデータセットの3051人(8-4%)の患者は、モデルによってテストされた正常洞調律ECGの前に心房細動が確認された。1回のAI対応ECGで心房細動を識別した場合のAUCは0-87(95% CI 0-86-0-88)、感度79-0%(77-5-80-4)、特異度79-5%(79-0-79-9)、F1スコア39-2%(38-1-40-3)、全体精度79-4%(79-0-79-9)であった.各患者の関心領域(すなわち、研究開始日または最初に記録された心房細動ECGの31日前)の最初の月に取得されたすべてのECGを含めると、AUCは0-90(0-90-0-91)、感度は82-3%(80-9-83-6)、特異度は83-4%(83-0-83-8)、F1スコアは45-4%(44-2-46-5)、全体の精度は83-3%(83-0-83-7)へと上昇しました. 【解説】正常洞調律時に取得されたAI対応心電図は、心房細動患者のポイントオブケアでの同定を可能にする。 第一人者の医師による解説 リスクの根拠は説明できず 現状の深層学習の問題点 津本 周作 島根大学医学部医学科医療情報学講座教授 MMJ.February 2020;16(1) 本論文で著者は、心房細動の発症1カ月前に構造 的変化が起こっているという仮説に基づき、心房細 動が発症した患者の1カ月前の正常洞性リズムから、心房細動が発症するかどうかを予測する人工知能(AI)分類器の性能を調べた。彼らは、これ以前に左室不全のリスクを心電図から推測する分類器を作成、曲線下面積(AUC)0.93, 感度86.3% , 特異度85.7%という好成績を収め、このAI分類器が陽性と診断した患者はオッズ比4.1のリスクを持っていることを示している(1)。 今回の対象は、メイヨークリニックで1993年 12月~2017年7月 に10秒 の12誘導心電図検 査(500Hz)を受けた患者210,414人(心電図数 1,000,000)から、洞性でない患者、データが不 完全な患者、心房細動より前に洞性リズムが観測 されていない患者を除外した180,992人(心電 図数649,931)からなり、これを70%の訓練標本、 10%の検証標本、20%のテスト標本にランダムに 割り付け、深層学習のアルゴリズムに適用した。分 類器はTensorfl owを用いたKerasパッケージで設 計、R3.4.2で解析した(2) (Appendix参照)。 訓練標本(正常例では最初に記録された心電図を indexとし、それ以降のすべての心電図、心房細動 例では心房細動が初めて観測された波形をindex とし、31日前以降のすべての心電図)で学習が行われた。訓練によってできあがった分類器で用いられるパラメータ(確率の閾値など)を最適化するため、検証標本を用いた。ただし、検証標本は、正常例は最初の波形、心房細動の症例は発症31日前以降の最初の洞性リズムのみである。最適なパラ メータを設定後、完成した分類器に対して、テスト標本(こちらも検証標本と同様の波形)のみで、心 房細動が1カ月後に発症するかどうかを判定した。 結果では2つの評価方法が示されている。第1 に、対象 と な る1つ 目 の 心電図 の み で の 評価 で AUC 0.87、感度79.0%、特異度79.5%、正答率79.4%。第2の複数の心電図(洞性のみを選んで)を用いた評価では、AUC 0.90、感度 82.3%、 特異度83.4%、正答率83.3%に改善している。 精度は他の検査、例えば心不全での脳性ナトリウム利尿ペプチドよりも高く、スクリーニングとしては有効ではないかと論じた。 また、メイヨーの別 の研究チームが心電図のさまざまな指標では高い分類精度が得られないことを示していることから、 何らかの心電図上の微妙な変化を深層学習で捉えられたかもしれないと論じている。ただし、今回どうしてこのような精度が得られたかは説明できていない。分類器に波形を与えれば、心房細動のリス クを予想するが、その理由が説明できない。これが 現状の深層学習の方法の問題点でもある。 1. Attia ZI et al. Nat Med. 2019;25(1):70-74. 2. François Chollet、J. J. Allaire(瀬戸山 雅人監訳、長尾 高弘訳). R と Keras によるディープラーニング . オライリージャパン、2018.
50歳における理想的な心血管系の健康と認知症発生率との関連:Whitehall IIコホート研究の25年フォローアップ。
50歳における理想的な心血管系の健康と認知症発生率との関連:Whitehall IIコホート研究の25年フォローアップ。
Association of ideal cardiovascular health at age 50 with incidence of dementia: 25 year follow-up of Whitehall II cohort study BMJ 2019 Aug 7 ;366:l4414. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】50歳時点のLife Simple 7心血管系健康スコアと認知症発症率との関連を検討する。 【デザイン】前向きコホート研究 【設定】ロンドンの公務員部門(Whitehall II研究、研究開始1985-88)。 【参加者】50歳時点で心血管健康スコアに関するデータを有する7899人。 【対象】心血管健康スコアは、4つの行動的指標(喫煙、食事、身体活動、肥満指数)と3つの生物的指標(空腹時血糖値、血中コレステロール、血圧)を含み、3点スケール(0、1、2)でコード化されている。心血管健康スコアは7つの指標の合計(スコア範囲0~14)であり,心血管健康不良(スコア0~6),中間(7~11),最適(12~14)に分類された。 【主要アウトカム指標】2017年までの病院,精神保健サービス,死亡登録へのリンクを通じて特定された認知症の発症。 【結果】追跡期間中央値24.7年間に347例の認知症発症が記録された。心血管健康度が低い群における認知症の発症率が1000人年当たり3.2(95%信頼区間2.5~4.0)であるのに対し,1000人年当たりの絶対率の差は,心血管健康度が中程度の群では-1.5(95%信頼区間-2.3~-0.7),心血管健康度が最適の群では-1.9(-2.8~-1.1)であった。心血管系の健康スコアが高いほど、認知症のリスクは低かった(心血管系の健康スコアが1ポイント上がるごとにハザード比0.89(0.85~0.95))。行動学的および生物学的下位尺度についても、認知症との同様の関連が認められた(下位尺度1ポイント増加あたりのハザード比はそれぞれ0.87(0.81~0.93)および0.91(0.83~1.00))。50歳時点での心血管健康と認知症との関連は、追跡期間中に心血管疾患のない状態が続いた人においても見られた(心血管健康スコア1点増につきハザード比0.89(0.84~0.95))。 【結論】中年期にライフシンプル7理想心血管健康勧告を遵守することは、その後の認知症のリスク低減と関連していた。 第一人者の医師による解説 日本の特定健診 認知症予防にも結びつく可能性を示唆 長田 乾 横浜総合病院臨床研究センター長 MMJ.February 2020;16(1) 米国心臓協会(AHA)によれば、Lifeʼs Simple 7、 すなわち、禁煙、食事、運動習慣、体重の行動学的 4因子と、血圧、血糖、血清コレステロールの生物 学的3因子の合計7項目からなるCardiovascular Health Score(CVHS)が高い群は、低い群と比較し、冠動脈疾患や脳卒中の発症リスクが低いことが示されている(1)。高齢者では、CVHSが認知機能低下や認知症のリスクとも関連するとする報告はあるが、追跡期間が短い研究や高齢期の危険因子を評 価している研究が多く、必ずしも結果は一致しない。 本論文は、50歳の時に評価したCVHSと25年後 の認知症発症リスクの関連を検討した前向きコホー ト研究の報告である。対象は、英国 Whitehall II研 究の登録住民のうち、心血管疾患や認知症の既往が なく、50歳時にCVHSの評価を行った7,899人。 CVHSは、喫煙、果物・野菜の摂取量、1週間の運動量、体格指数(BMI)、空腹時血糖、総コレステロール、 収縮期・拡張期血圧をそれぞれ2、1、0点の尺度で 評価し、総点が12~14点を「最良群」、7~11点 を「中間群」、0~6点を「不良群」と判定した。不良群と比較して、中間群や最良群には、白人、高学歴、 高収入の人が多く含まれていた。認知症の診断にはNational Health Serviceのデータを用いた。 結果は、中央値24.7年の観察期間中に347人が認知症を発症し、1,000人・年あたりの同発症率は不良群3.2、中間群1.8、最良群1.3であった。社会経済的背景で補正した解析では、認知症発症リスク(ハザード比)は、不良群を1とすると中間群0.61、 最良群0.57で、CVHS1点上昇あたり0.88~0.89 と低下した。行動学的4因子および生物学的3因子についても同様の傾向がみられ、50歳時のCVHS は老年期の認知症発症リスクと密接に関連していた。ただし、観察期間中に心血管イベントを発症しなかった群でもCVHSは認知症発症リスクと関連したことから、老年期の認知症は心血管イベントですべて説明できるわけではなかった。サブ解析において3テスラ MRIで計測した全脳容積や灰白質容積は、CVHSと相関したが、海馬容積は相関しなかった。 実臨床では、中年期からLifeʼs Simple 7に含まれる心血管因子を厳格に管理することが老年期の認知症予防につながると考えられる。日本で40~ 74歳の被保険者を対象に行われている特定健康診査には、Lifeʼs Simple 7のうち5項目が含まれており、メタボリックシンドロームのみならず、老年期の認知症の予防にも結びつく可能性が示唆される。 1. AHA Life's Simple 7 ウエブサイト(https://bit.ly/2Nl4MHJ)
非心臓手術を受ける患者における周術期のcovert stroke(NeuroVISION):前向きコホート研究。
非心臓手術を受ける患者における周術期のcovert stroke(NeuroVISION):前向きコホート研究。
Perioperative covert stroke in patients undergoing non-cardiac surgery (NeuroVISION): a prospective cohort study Lancet 2019 ;394 (10203):1022 -1029. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】手術以外の環境では、covert strokeはovert strokeよりも一般的であり、認知機能の低下と関連している。顕性脳卒中は非心臓手術後の成人の1%未満に発生し、かなりの罹患率と関連しているが、周術期の隠性脳卒中についてはほとんどわかっていない。したがって,我々の主な目的は,周術期のcovert stroke(すなわち,臨床的な脳卒中症状を持たない患者の非心臓手術後のMRIで検出された急性脳梗塞)と術後1年の認知機能低下の関係を調べることである。 【方法】NeuroVISIONは9か国12の学術施設で行われた前向きコホート研究で,入院で非心臓手術を受けた65歳以上の患者で,術後に脳のMRIが得られた患者の評価を行うものであった。臨床データをマスクした独立した2人の神経放射線学の専門家が、それぞれのMRIについて急性脳梗塞の有無を評価した。多変量回帰法を用いて,covert stroke と主要転帰である認知機能低下(術前ベースラインから 1 年後のフォローアップまで,モントリオール認知機能評価で 2 ポイント以上の低下と定義)との関連を検討した.患者,医療従事者,アウトカム判定者はMRIの結果をマスキングした。 【FINDINGS】2014年3月24日から2017年7月21日の間に,本研究に募集した1114名のうち,78名(7%;95%CI 6-9)が周術期の隠微な脳卒中を発症していた。1年間の追跡調査を完了した患者のうち,術後1年の認知機能低下は,周術期のcovert strokeがあった69名中29名(42%),周術期のcovert strokeがなかった932名中274名(29%)で生じた(調整オッズ比1-98,95%CI 1-22-3-20,絶対リスク増加13%;p=0-0055)。また,covert strokeは周術期せん妄のリスク上昇(ハザード比[HR]2-24,95%CI 1-06-4-73,絶対リスク上昇6%;p=0-030),1年フォローアップ時のovert strokeまたは一過性虚血発作(HR 4-13,1-14-14-99, 絶対リスク上昇3%;p=0-019)にも関連していた. 【解釈】周術期のcovert strokeは、非心臓手術の1年後の認知機能低下のリスク上昇と関連しており、周術期のcovert strokeは非心臓手術を受けた65歳以上の患者の14人に1人で発生していた。周術期のcovert strokeの予防・管理戦略を確立するための研究が必要である。 【FUNDING】Canadian Institutes of Health Research; The Ontario Strategy for Patient Oriented Research support unit; The Ontario Ministry of Health and Long-Term Care; Health and Medical Research Fund, Government of Hong Kong Special Administrative Region, China; and The Neurological Foundation of New Zealand. 第一人者の医師による解説 周術期の潜在性脳梗塞 原因の特定と病態の解明が喫緊の課題 田中 亮太 自治医科大学附属病院脳卒中センター・センター長 教授 MMJ.February 2020;16(1) 非心臓手術例の周術期における症状の明らかな脳梗塞の発症率は0.1~1%程度と報告されており、その後の機能障害や生命予後に大きく影響する(1)。 一方、症状は明らかでないが頭部 MRI拡散強調画 像などで初めて診断される潜在性脳梗塞は実臨床でしばしば観察され、その後の認知機能低下、認知症発症、精神運動速度の低下、そして新たな脳卒中発症のリスクになる。 全身麻酔を要する手術では、 術後の脳障害や記憶障害などが最も懸念される要 因であることが患者調査でも報告されている(2)。このような背景から、非心臓手術後に診断される潜在性脳梗塞(無症状だが、頭部 MRIで診断される急性期脳梗塞)と術後1年時の認知機能低下の関係を調べる多施設共同前向きコホート研究が実施され、 その結果が本論文で報告された。 アジアを含む9カ国、12施設から65歳以上の定 時非心臓手術症例1,116人が登録され、1,114人 が解析対象とされた。平均年齢は73歳、56%が男 性、術前の既往症は高血圧64%、糖尿病27%、心房細動6%、脳卒中5%などであった。整形外科、泌尿器科、婦人科、一般外科の手術症例が多かった。 MRI検査は術後中央値5日に実施され、そのうち 78人(7%)に潜在性脳梗塞が認められた。 潜在性脳梗塞は術後1年時の認知機能低下のリスクを 1.98倍(95% CI, 1.22~3.20)有意に上昇させ たが、麻酔の種類や施設間の影響はなかった。また潜在性脳梗塞は術後3日以内のせん妄(HR, 2.24; 95% CI, 1.06~4.73)、1年以内の有症候性脳梗 塞または一過性脳虚血発作の発症(HR, 4.13;1.14 ~14.99)に有意に影響した。死亡は潜在性脳梗塞群の8%、非脳梗塞群の5%に認められたが、統計学的有意差はなかった(HR, 1.66;95%CI, 0.71 ~3.88)。 本研究から、高齢者(65歳以上)の定時非心臓手術周術期において14人に1人が潜在性脳梗塞を合併し、1年後の認知機能低下の危険因子になることが示された。潜在性脳梗塞の45%は皮質梗塞、 13%は多発性梗塞であり、卵円孔開存や心房細動などの塞栓性の機序が疑われるが、大多数の脳梗塞の原因は不明である。 一方、脳梗塞の原因として悪性腫瘍に伴う過凝固状態、周術期の発作性心房細 動、大量出血に伴う血栓形成傾向などの影響は不明である。また、認知機能低下に影響する因子として術前からある認知機能低下やうつ状態などについても明らかにされていない。手術を受ける高齢者の増加が予想される中で、非心臓手術後の認知機能 低下の予防や長期的予後改善のためには、潜在性脳梗塞の原因、病態、そして関連する要因の解明が喫緊の課題である。 1. Mashour GA et al. Anesthesiology. 2011 Jun;114(6):1289-1296. 2. Matthey P et al. Can J Anaesth. 2001 Apr;48(4):333-339.
片頭痛予防薬4種類までが無効であることが証明された患者さんにおける片頭痛予防のためのFremanezumab対プラセボ(FOCUS):無作為化二重盲検プラセボ対照第3b相試験。
片頭痛予防薬4種類までが無効であることが証明された患者さんにおける片頭痛予防のためのFremanezumab対プラセボ(FOCUS):無作為化二重盲検プラセボ対照第3b相試験。
Fremanezumab versus placebo for migraine prevention in patients with documented failure to up to four migraine preventive medication classes (FOCUS): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3b trial Lancet 2019 Sep 21 ;394 (10203):1030 −1040. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)またはその受容体を標的とする抗体は、片頭痛発作の予防に有効であることが示されている。我々は、2~4種類の片頭痛予防薬が効かない片頭痛患者を対象に、完全ヒト化CGRP抗体であるfremanezumabの有効性と忍容性を検討した。 【方法】無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間第3b相FOCUS試験は、ベルギー、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ポーランド、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリス、アメリカにわたる104施設(病院、医療センター、研究機関、グループ診療クリニックなど)で行われました。過去10年間に2〜4種類の片頭痛予防薬が無効であったことが記録されている18〜70歳の片頭痛患者を登録しました。失敗の定義は、担当医師の判断により、安定した用量で少なくとも3ヶ月間治療しても臨床的に意味のある改善が見られない場合、治療に耐えられない有害事象のために中止した場合、または患者にとって片頭痛の予防治療に禁忌または適さない治療である場合とされました。参加者は,電子対話型応答技術により,フリーマネマブを四半期ごとに皮下投与(1ヶ月目は675 mg,2,3ヶ月目はプラセボ),フリーマネマブを毎月投与(1ヶ月目は片頭痛のエピソード型と慢性片頭痛の675 mg,2,3ヶ月目は両片頭痛サブグループの225 mg),またはマッチさせたプラセボの毎月投与に12週間ランダムに割り当てられた.主要評価項目は、12週間の治療期間中の月平均片頭痛日数のベースラインからの平均変化とした。本試験はClinicalTrials. govに登録されており、番号NCT03308968、現在終了しています。 【FINDINGS】2017年11月10日から2018年7月6日の間に、エピソード性(329[39%])または慢性(509[61%])片頭痛の患者838人を、プラセボ(n=279)、四半期フレマネズマーブ(n=276)、毎月フレマネズマーブ(n=283)へランダムに割り付けました。12週間における月平均片頭痛日数のベースラインからの減少は、プラセボに対して四半期毎のフリーマネマブ投与で大きく(最小二乗平均[LSM]変化量-0-6[SE 0-3])、LSM変化量はプラセボに対して-3-1[95%CI -3-8~-2-4]; p<0-0001)、月毎のフリーマネマブで大きかった(LSM変化量 -4-1 [0-34]; LSM差 -3-5[-4-2-8];p < 0-0001 )。有害事象は、プラセボとフレマネズマブで同程度であった。重篤な有害事象は,プラセボ投与群では277例中4例(1%),フレマネズマブ投与群では276例中2例(1%未満),フレマネズマブ投与群では285例中4例(1%)で報告された。 【解釈】最大4クラスの片頭痛予防薬が効かない治療困難な片頭痛患者に対してフレマネズマブは有効かつ忍容性が高かった。 【FUNDING】Teva Pharmaceuticals. 第一人者の医師による解説 片頭痛日数半減は30% 難治性患者にはまだ残るunmet needs 柴田 護 慶應義塾大学医学部神経内科准教授 MMJ.February 2020;16(1) カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は 37個のアミノ酸からなる神経ペプチドで、三叉神経節ニューロンなどに発現し、片頭痛の病態に深く関与している。近年、CGRPおよびCGRP受容体に対するモノクローナル抗体が片頭痛予防薬として開発され、欧米では既に臨床応用されている(1)。 本論文は、欧州・北米104施設において2 ~ 4 種類の片頭痛予防薬を用いても治療が奏効しなかった患者838人を対象に抗 CGRP完全ヒト化モノクローナル抗体であるフレマネズマブ (FRN)の 片頭痛予防における有効性と安全性を評価した多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照第3b相 (FOCUS)試験の報告である。対象は反復性片頭痛 (月に6日以上かつ15日以下の頭痛があり、そのうち4日以上で片頭痛の特徴を認める)または慢性片 頭痛(月に15日以上の頭痛があり、そのうち8日 以上で片頭痛の特徴を認める)を有し、過去10年間に3カ月以上の片頭痛予防薬投与で臨床的に意味のある改善が得られなかった、または有害事象で治療中止に至ったなど、2 ~ 4種類の予防薬が奏効しなかった患者である。 片頭痛の内訳は慢性片頭痛 61%、反復性片頭痛39%であった。その結果、主 要評価項目である12週間(治療期間)における1カ月あたりの平均片頭痛日数のベースラインからの変化量は、プラセボ群で-0.6日、FRN 675 mg 単回投与群で-3.7(プラセボ群との差 , -3.1日)、 FRN 225 mg毎月投与群で-4.1(プラセボ群との差 , -3.5日)であり、FRN群で有意な治療効果が認められた。副次評価項目である治療期間全体あるいは治療開始後4週目で片頭痛日数が50%以上減少した患者の割合に関してもFRN群でプラセボ 群と比較し有意な効果が確認された。一方、有害事象に関してはプラセボ群とFRN群の間に有意差はなかった。 以上より、既存の予防薬に対して抵抗性を示した患者や有害事象のために治療続行が不可能であった患者においてもFRNは有効かつ忍容性の良好な治療になりうることが示された。ただし、本試験ではFRN両群ともに50%以上の片頭痛日数減少が得られた割合は、プラセボ群に比べ有意に高かったとはいえ、およそ30%にとどまっていた。これは、他の抗 CGRP抗体であるガルカネズマブの臨床試験でもほぼ同等の成績であった(2)。したがって、 抗 CGRP抗体が登場しても、難治性片頭痛患者には“unmet needs”が存在し続けることも示唆されたといえよう。 1. Edvinsson L et al. Nat Rev Neurol. 2018;14(6):338-350. 2. Ru DD, et al. Eur J Neurol. 2019 Nov 6. Doi:10.1111/ene.14114. [Epub]
成人の多発性分裂病の急性期治療における32種類の経口抗精神病薬の有効性と忍容性の比較:系統的レビューとネットワークメタ解析。
成人の多発性分裂病の急性期治療における32種類の経口抗精神病薬の有効性と忍容性の比較:系統的レビューとネットワークメタ解析。
Comparative efficacy and tolerability of 32 oral antipsychotics for the acute treatment of adults with multi-episode schizophrenia: a systematic review and network meta-analysis Lancet 2019 ;394 (10202 ):939 -951 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】統合失調症は、世界中の成人に最も多く見られ、負担が大きく、費用のかかる精神疾患の1つである。抗精神病薬はその治療法として選択されているが、どの薬剤を使用すべきかについては論争がある。無作為化比較試験の情報を定量化することにより,抗精神病薬の比較とランク付けを行うことを目的とした。データベース開設から2019年1月8日までに,Embase,MEDLINE,PsycINFO,PubMed,BIOSIS,Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL),WHO International Clinical Trials Registry Platform,ClinicalTrials. gov で検索を行った。2名の著者が独立して研究を選択し、データを抽出した。統合失調症または関連疾患の急性症状を有する成人を対象とした無作為化対照試験を対象とした。治療抵抗性、初回エピソード、陰性症状または抑うつ症状が優位な患者、内科的疾患の併存、再発予防の研究は除外した。主要アウトカムは、標準化された評価尺度を用いて測定された全体的な症状の変化とした。また、8つの有効性と8つの安全性についてのデータも抽出した。研究結果の違いは、メタ回帰分析および感度分析で検討した。効果量の測定は、標準化平均差、平均差、または95%信頼区間(CrI)付きのリスク比とした。エビデンスの信頼度は、CINeMA(Confidence in Network Meta-Analysis)を用いて評価した。研究プロトコルはPROSPEROに登録されており、番号はCRD42014014919である。 【所見】54417件の引用を確認し、53463人の参加者のデータを持つ402件の研究を組み込んだ。効果量の推定では、すべての抗精神病薬がプラセボよりも全症状を軽減することが示唆され(6剤では統計的に有意ではなかったが)、標準化平均差はクロザピンの-0-89(95%CI -1-08 to -0-71)からレボメプロマジンの-0-03(-0-59 to 0-52)まであった(40 815 名参加)。陽性症状の軽減に関するプラセボとの標準化平均差(31 名)は、アミスルプリドで -0-69(95% CrI -0-86~-0-52) 、ブレクスピプラゾールで -0-17(-0-31~-0-04) 、陰性症状(32 名)で -0-62(-0-84~-0-39) と変動していた。から-0-10(-0-45 から 0-25、フルペンチオール)、抑うつ症状(19 683 名)では-0-90(-1-36 から-0-44、スルピリド)から 0-04(-0-39から0-47、フルペンチオール)であった。)プラセボとの比較では、全死亡(42 672名)のリスク比は0-52(0-12~0-95;clopenthixol)~1-15(0-36~1-47;pimozide)、鎮静(30 770名)は0-92(0-17~2-03;pimozide)となっている。から 10-20(4-72 から 29-41、ズクロペンチキソール)、抗パーキンソン薬の使用(24 911 名) から 6-14(4-81 から 6-55、ピモジド)。体重増加(28 名)についてはプラセボとの平均差は-0-16kg(-0-73~0-40;ジプラシドン)~3-21kg(2-10~4-31;ゾテピン)、プロラクチン上昇(21 名)については-77~05ng/ml (-120-23~33-54; クロザピン)~48~59ng/ml (-80-24; ゾルテピネ)であり、プラセボとの差は-0-16kg(-100-100;ゾルテピネ)となっている。から 48-51 ng/mL(43-52 から 53-51;パリペリドン)、QTc 延長(15467 名) から -2-21ms(-4-54 から 0-15;ルラシドン)から 23-90ms(20-56 から 27-33;セルチンドール)でした。)主要アウトカムに関する結論は、考えられる効果調整因子で調整しても、感度分析(例えば、プラセボ対照試験を除外した場合)でも、実質的に変わらなかった。また、エビデンスの信頼度は低いか非常に低いことが多かった。 【解釈】抗精神病薬間の有効性の違いはあるが、そのほとんどは個別的というよりは緩やかである。副作用の差はより顕著である。これらの知見は、臨床医が自国で入手可能な薬剤のリスクとベネフィットのバランスをとるのに役立つであろう。臨床医は、それぞれの結果の重要性、患者の医学的問題、そして嗜好を考慮する必要がある。 第一人者の医師による解説 統合失調症の急性期治療 安全性ファーストの治療が望ましい 三宅 誕実 聖マリアンナ医科大学神経精神科講師 MMJ.February 2020;16(1) 抗精神病薬同士の有効性と安全性を比較する際、 直接比較した無作為化対照試験(RCT)が少ないため、ランキングで比較するネットワークメタ解析 (NMA)の手法は、その限界点を考慮してもなお有益である。本論文は、急性期の成人統合失調症に対する抗精神病薬の有効性と安全性/忍容性を比較した系統的レビューとNMAであり、2013年に行われた同様のNMA(1)のアップデート版である。抗精 神病薬は15から32種類に、RCTは212から402 件に、対象者は43,049から53,463人に、評価 項目は7から17(有効性8、安全性/忍容性9)へ と大幅に増えている(2)。治療抵抗例、初回エピソー ド例、陰性症状や抑うつ優位例、身体合併症などは 除外されている。主要評価項目は全般的症状変化で、 副次評価項目として陽性症状や抑うつへの有効性、 体重増加や錐体外路症状の安全性などを評価して いる。 日本 で 上市されている抗精神病薬に結果を絞ると、全般的症状変化(効果量として標準化平均差 [SMD]:プラセボは0)ではクロザピン(-0.89)、 ゾテピン(-0.61)、オランザピン(-0.56)、リ スペリドン(-0.55)が他の抗精神病薬より優れ ていたが、薬剤差はわずかであった。 一方、安全性においては、体重増加(ゾテピン、オランザピンで 多く、アリピプラゾールで少ないなど)、抗パーキ ンソン病薬の使用やアカシジア(定型抗精神病薬で 多く、クロザピンで少ないなど)、プロラクチン値上昇(パリペリドン、リスペリドンなどで多く、クロザピンで少ないなど)やQTc延長(ブレクスピプラゾールで少ない等)などに関して、統計学的にも有意な薬剤差があった。 副作用に明確な薬剤差 があるのは前回のNMA(1)と同じ結果ではあるが、 shared decision-makingの時代において、このようなランキング比較が治療選択肢に及ぼす影響は 大きい。したがって、統合失調症治療においては、 有効性を重視した抗精神病薬の選択よりも、副作用 を最小限に抑える安全性ファーストの治療アプロー チが重要であることが再確認されたと言える。 1. Leucht S et al. Lancet. 2013 Sep 14;382(9896):951-962. 2. Correll CU et al. JAMA Psychiatry. 2019 Nov 6. [Epub ahead of print]
移行期のケアと長期的な自己管理支援を組み合わせた病院主導のプログラムが慢性閉塞性肺疾患入院患者の転帰に及ぼす効果。無作為化臨床試験。
移行期のケアと長期的な自己管理支援を組み合わせた病院主導のプログラムが慢性閉塞性肺疾患入院患者の転帰に及ぼす効果。無作為化臨床試験。
Effect of a Hospital-Initiated Program Combining Transitional Care and Long-term Self-management Support on Outcomes of Patients Hospitalized With Chronic Obstructive Pulmonary Disease: A Randomized Clinical Trial JAMA 2019 ;322 (14):1371 -1380. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪で入院した患者は、再入院率が高く、QOLが低下する。 【目的】COPDで入院した患者とその家族介護者に対する移行支援と長期自己管理支援を組み合わせた病院主導のプログラムが、転帰を改善できるかを評価する。 【デザイン、設定および参加者】240名の参加者でメリーランド州ボルチモアにて単一サイトの無作為化臨床試験を実施した。参加者はCOPDにより入院した患者であり,介入または通常ケアに無作為に割り付け,退院後6か月間フォローアップを行った。登録は2015年3月から2016年5月,追跡調査は2016年12月に終了した。 【介入】介入(n=120)は,患者とその家族介護者がCOPDの長期自己管理を行うための包括的な3ヶ月間のプログラムであった。標準化されたツールを用いてCOPD患者を支援するための特別な訓練を受けた看護師が実施した。通常ケア(n = 120)では、退院後の30日間、退院計画の遵守と外来診療への接続を確実にするための移行支援が行われた。 【主要アウトカムおよび測定法】主要アウトカムは、6ヵ月時点での参加者1人あたりのCOPD関連急性期医療イベント(入院および救急部訪問)の数であった。共同主要アウトカムは、退院後6か月におけるSt George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)で測定した参加者の健康関連QOLの変化とした(スコア、0[最高]~100[最悪]、4ポイントの差は臨床的に有意)。 【結果】無作為化された240例(平均[SD]年齢、64.9[9.8]歳;女性61.7%)において203例(85%)が試験を完了した。ベースラインの平均(SD)SGRQスコアは,介入群で62.3(18.8),通常ケア群で63.6(17.4)であった。6ヵ月時の参加者1人当たりのCOPD関連急性期イベントの平均件数は、介入群1.40(95%CI、1.01~1.79)に対して通常ケア群0.72(95%CI、0.45~0.97)だった(差、0.68[95%CI、0.22~1.15];P = 0.004)。6ヵ月時の参加者のSGRQ総スコアの平均変化は、介入群で2.81、通常ケア群で-2.69であった(調整済み差、5.18 [95% CI, -2.15 to 12.51]; P = 0.11)。研究期間中の死亡は15例(介入:8例、通常ケア:7例)、入院は339例(介入:202例、通常ケア:137例)であった。 【結論と関連性】COPDにより入院した患者の単一サイトの無作為臨床試験において、移行と長期自己管理支援を組み合わせた3ヶ月間のプログラムは、COPD関連の入院と救急部訪問が著しく多く、生活の質の改善はみられなかった。この予期せぬ知見の理由を明らかにするため、さらなる研究が必要である。 【臨床試験登録】ClinicalTrials. gov Identifier:NCT02036294。 第一人者の医師による解説 介入群に疾患活動性高の患者多く単施設での試験が影響か 真に効果的な支援について検証必要 小松 茂 神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科部長 MMJ.February 2020;16(1) 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は現在世界の死因第 4位で、2020年には3位になると予測されている疾患である(1)。COPD患者の生命予後を悪化させる原因として増悪(症状悪化により安定期治療の変更 が必要となる状態)と呼ばれる病態があり、増悪は患者の生活の質(QOL)や呼吸機能も低下させる2。 重度の増悪になると入院が必要となるが、増悪に よる入院患者は再入院率が高く、入院を繰り返すたびに次の増悪入院への期間が短くなりやすい(2)。 そのため退院後に再増悪させないことが予後改善にはきわめて重要となる。    今回の米国で実施された単施設ランダム化試験 では、COPD退院患者 240 人 をCOPD専門看護 師による3カ月間の統合プログラムが提供される介入群と一般看護師による30日間の移行支援を行う通常ケア群に割り付け、6カ月後のCOPD関連の急性期ケア(入院、救急外来受診)を要したイベント数およびQOLの変化が比較された。結果、 6カ月後の急性期ケアイベント数は介入群1.40、 通常ケア群0.72と介入群で有意に悪く、QOL指標として用いられたSt. George’s Respiratory Questionnaireの 総 ス コ ア の 平均変化 も 介入群 2.81、通常ケア群-2.69と有意差はないが介入 群の方が悪かった。   GLOBAL INITIATIVE FOR CHRONIC OBSTRUCTIVE LUNG DISEASE(GOLD) が 発行した2020 GOLD REPORTでは、系統的レビューなどの結果から、医療専門家との対話を伴う セルフマネジメント介入は健康状態を改善し、入院や救急受診を減少させる(エビデンスレベル B) としている(1)。日本のCOPDガイドラインでも増悪による入院時には、多職種チームによる在宅疾病管理プログラムの導入は再入院を減らし増悪による死亡を減らす可能性があると記載されている(2)。 今回の結果がこれらと正反対になったのは、試験が単施設で行われ、介入群に在宅酸素療法を受けている患者、現喫煙者、心不全合併者など疾患活動性が高い患者が多かったこと、介入群は医療者との連絡が密であり、さらにアクションプランにより早期に増悪の兆候をとらえることができ救急受診(およびその後の入院)が増えたことなどが考えられる。 本論文と同様に、COPDの包括的なケア管理プログ ラムはCOPD関連入院の減少につながらなかったという報告もある(3)。COPD患者にとってどのような介入が真に効果的なのか、今後さらなる検証が望まれる。 1.GOLD 2020 Report. URL:https://bit.ly/302IzTX 2. 日本呼吸器学会 COPD ガイドライン第 5 版作成委員会 . COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン 2018(第 5 版). 3. Fan VS et al. Ann Intern Med. 2012;156(10):673-683.
大気汚染への長期暴露と定量的に評価された肺気腫および肺機能の変化との関連性。
大気汚染への長期暴露と定量的に評価された肺気腫および肺機能の変化との関連性。
Association Between Long-term Exposure to Ambient Air Pollution and Change in Quantitatively Assessed Emphysema and Lung Function JAMA 2019 ;322 (6):546 -556 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】歴史的レベルの大気汚染物質は心血管疾患や呼吸器疾患と関連しているが、現代の大気汚染物質濃度への曝露が肺気腫の進行と関連しているかどうかは分かっていない。 【目的】周囲のオゾン(O3)、小粒子状物質(PM2.5)、窒素酸化物(NOx)、黒炭曝露とCT画像や肺機能で評価した肺気腫割合の変化について経時的関連を評価することである。 【デザイン、設定および参加者】本コホート研究は、米国の6大都市圏で実施されたMulti-Ethnic Study of Atherosclerosis(MESA)空気と肺の研究からの参加者を含み、2000年7月から2002年8月に募集した45~84歳の成人6814人と2005年2月から2007年5月に追加募集した257人が2018年11月までフォローアップに参加した。 【曝露】居住地特異的大気汚染物質濃度(O3、PM2.5、NOx、黒色炭素)は、1999年からフォローアップ終了までに決定したコホート特異的モニタリングを組み込んだ検証済み時空間モデルにより推定した。 主要アウトカムおよび測定法】肺のピクセルが-950ハウンスフィールド単位未満と定義した気腫率は、心臓CTスキャン(2000~2007)および肺CTスキャンの同等部位(2010~2018)により参加者ごとに最高5回評価された。スパイロメトリーは参加者一人当たり3回まで実施した(2004~2018年)。 【結果】研究参加者7071名(募集時の平均[範囲]年齢60[45~84]歳,3330名[47.1%]が男性)中,5780名がベースライン検査の年とフォローアップ期間に屋外住居大気汚染濃度を割り当てられ,最低1回のフォローアップCTスキャンを受け,2772名が最低1回のフォローアップスパイロメーター評価を,10年間中央値で受けていた。肺気腫の割合の中央値はベースラインで3%、10年ごとに平均0.58%ポイント増加した。PM2.5とNOxの平均環境濃度は、O3ではなく、追跡調査中に大幅に減少した。ベースライン時のO3、PM2.5、NOx、およびブラックカーボンの環境濃度は、10年当たりの肺気腫の割合の大きな増加と有意に関連していた(O3:0.13 per 3 parts per billion [95% CI, 0.03-0.24]; PM2.5: 0.11 per 2 μg/m3 [95% CI, 0.03-0.19]; NOx: 0.06 per 10 parts per billion [95% CI, 0.01-0.12]; Black Carbon: 0.10 per 0.2 μg/m3 [95% CI, 0.01-0.18]) となった。PM2.5濃度ではなく、追跡期間中の周囲のO3およびNOx濃度も、肺気腫の割合がより大きくなることと有意に関連していた。ベースラインおよび追跡調査中の他の汚染物質ではなく、環境中O3濃度は、10年当たりの強制呼気1秒量の大きな減少(ベースライン:10億分の3 13.41 mL [95% CI, 0.7-26.1]; 追跡調査:10億分の3 18.15 mL [95% CI, 1.59-34.71] )に有意に関連した。59-34.71])。 【結論と関連性】米国の6大都市圏で2000年から2018年にかけて実施した本コホート研究において、環境大気汚染物質への長期曝露は、CT画像と肺機能を用いて定量的に評価した肺気腫の増加と有意に関連していた。 第一人者の医師による解説 わが国でも上昇傾向の大気中オゾン 健康影響評価と予防施策が必要 島 正之 兵庫医科大学公衆衛生学主任教授 MMJ.February 2020;16(1) オゾン(O3)や微小粒子状物質(PM2.5)などの大気汚染物質に曝露されることによって慢性閉塞性 肺疾患(COPD)患者の死亡リスクが高くなることは知られている(1)が、肺気腫の進行に与える長期的な影響は明らかではなかった。 本研究は、米国6都市で実施されているアテローム性動脈硬化の多民族コホート研究(Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis)の 参加者7,071人 (45 ~ 84歳)を対象に、2000 ~ 18年の大気汚染物質への曝露と胸部 CT撮影によって評価した肺の気腫性病変や肺機能値の変化との関連を定量的に解析したものである。 対象者のうち5,780人は、調査開始時に加えて 追跡期間中に少なくとも1回の胸部 CT検査を受け、その間の大気汚染濃度が推計された。調査開始時の対象者の居住地における大気中 O3、PM2.5、窒素 酸化物(NOX)濃度が高いほど、追跡期間中に肺の気腫性病変の割合が上昇した。O3濃度との関連が最も大きく、3ppb上昇あたり気腫性病変の割合は10年間で0.13%上昇した。 追跡期間中の大気汚染濃度との関連では、O3濃度3ppb上昇あたり気腫性病変は10年間で0.18%(95% CI, 0.08~ 0.28)上昇し、29箱×年(pack-years;1日1箱 〈20本〉×年数)の喫煙による影響と同程度であった。追跡期間中のNOX濃度との関連も有意であったが、PM2.5濃度との関連はみられなかった。肺機能検査での1秒量の低下については、調査開始時および追跡期間中の大気中 O3濃度との関連は有意であったが、他の汚染物質とは関連がなかった。 PM2.5をはじめとする大気汚染は中国、インドなどの新興国において深刻な問題となっているが、 日本や米国などの先進国では年々改善している。 一方、大気中 O3濃度は気候変動などの影響により世界的に上昇傾向にある。本研究は、米国におけるコホート研究で、大気中 O3への長期間曝露は気腫性病変の割合や肺機能値で評価した肺気腫の進行と有意な関連があり、29箱×年の喫煙と同程度の影響であることを示している。PM2.5について、調査開始時の濃度との関連は有意であったが、追跡期間中の濃度との関連が認められなかったのは、この間にPM2.5濃度が低下したためであろう。 日本において環境基準が設定され、大気中濃度が 常時監視されている光化学オキシダント(OX)は、その大部分がO3である。光化学スモッグの原因物質として知られるが、わが国でも濃度は上昇傾向であり、全国ほとんどすべての測定局で環境基準 が達成されておらず、米国とほぼ同じ状況である。今後、日本でもO3への曝露による健康影響を評価し、 それを予防するための施策の確立が望まれる。 1.Hao Y et al. Am J Respir Crit Care Med. 2015;192(3):337-341
成人市中肺炎患者における早期臨床効果のための経口レファミュリンとモキシフロキサシンの比較。LEAP 2 Randomized Clinical Trial(無作為化臨床試験)。
成人市中肺炎患者における早期臨床効果のための経口レファミュリンとモキシフロキサシンの比較。LEAP 2 Randomized Clinical Trial(無作為化臨床試験)。
Oral Lefamulin vs Moxifloxacin for Early Clinical Response Among Adults With Community-Acquired Bacterial Pneumonia: The LEAP 2 Randomized Clinical Trial JAMA 2019 ;322 (17):1661 -1671. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】市中肺炎(CABP)の治療には、抗菌薬耐性の向上と標準治療の安全性の懸念から、新しい抗菌薬が必要である。 【目的】CABP患者におけるレファミン5日間経口レジメンの有効性と有害事象を評価する。 【デザイン、設定および参加者】Pneumonia Outcomes Research Team(PORT)のリスククラスがII、III、IVである18歳以上の成人、X線写真で肺炎が確認されている、急性疾患、3つ以上のCABP症状、2つ以上のバイタルサイン異常がある、19か国99施設で行われた第3相、非劣性ランダム化臨床試験。最初の患者訪問は2016年8月30日で、患者は30日間フォローアップされ、最終フォローアップ訪問は2018年1月2日であった 【介入】患者は、レファムリン(600 mg 12時間毎 5日間;n = 370)またはモキシフロキサシン(400 mg 24時間毎 7日間;n = 368)の内服を受けるよう1対1にランダムに割り付けられた。 【主要評価項目】米国食品医薬品局(FDA)の主要評価項目は、intent-to-treat(ITT)集団(無作為化された全患者)において、いずれかの試験薬の初回投与後96時間(24時間以内)における早期臨床反応とした。)奏効者は、生存しており、4つのCABP症状のうち2つ以上に改善が見られ、どのCABP症状も悪化しておらず、現在のCABPエピソードに対して試験薬以外の抗菌薬を投与されていない者と定義されました。欧州医薬品庁(EMA)の副次評価項目は、修正ITT集団および臨床評価可能集団における治癒判定(最終投与から5~10日後)の際の治験責任医師による臨床効果の評価としました。非劣性マージンは、早期臨床効果および治験責任医師評価による臨床効果について10%とした。 【結果】無作為化患者738例(平均年齢57.5歳、女性351例[47.6%]、PORTリスククラスがⅢまたはⅣの360例[48.8%])において、707例(95.8%)が試験を完了した。早期臨床効果率は、レファムリンで90.8%、モキシフロキサシンで90.8%でした(差は0.1%[1-sided 97.5% CI, -4.4% ~ ∞])。治験責任医師による臨床的奏功の評価率は、修正ITT集団でレファムリン87.5%、モキシフロキサシン89.1%(差:-1.6%[1-sided 97.5% CI, -6.3~∞])、臨床的評価可能集団では治癒判定でそれぞれ89.7%と93.6%(差:-3.9%[1-sided 97.5% CI, -8.2~∞] )であり、レファムリンはモキシフロキサシンの1/3以下であった。最も頻繁に報告された治療上緊急の有害事象は、消化器系(下痢:レファミュリン群45/368例[12.2%]、モキシフロキサシン群4/368例[1.1%]、吐き気:レファミュリン群19/368例[5.2%]、モキシフロキサシン群5/368例[1.0%])であった。 【結論と関連性】CABP患者において、初回投与後96時間の早期臨床効果に関して、5日間経口レファミュリンは7日間経口モキシフロキサシンに対して非劣性を示した。 【試験登録】ClinicalTrials. gov Identifier:NCT02813694、欧州臨床試験Identifier:2015-004782-92。 第一人者の医師による解説 現行抗菌薬の数倍の価格 使用を制限する要因となる可能性 藤田 次郎 琉球大学大学院医学研究科感染症・呼吸器・消化器内科学(第一内科)教授 MMJ.February 2020;16(1) 本論文は、市中細菌性肺炎を対象としたレファムリンとモキシフロキサシンの無作為化比較対照試 験(LEAP 2試験)に関する報告である。レファムリンは、プレウロムチリン系抗菌薬に分類され、細 菌リボソームの50Sサブユニットのペプチド転移酵素に結合することによって細菌の蛋白合成を阻害する新規抗菌薬である。 今回の第3相臨床試験は、世界19カ 国( 欧州、 南米およびメキシコ、米国、アジア、アフリカ)、 99の 医療施設 で 実施 さ れ た。対象者 は、18歳以 上 でPneumonia Outcomes Research Team (PORT)リスク分類 II、IIIまたはIVで、画像所見にて確認され、臨床症状や身体所見を有する急性細菌 性肺炎患者である。適格患者(738人)のうち、一 群(370人)はレファムリンの経口薬600mgを、 1日2回、5日間服用し、もう一群(368人)はニューキノロン系抗菌薬のモキシフロキサシン 400mg を、1日1回、7日間服用し、両者の市中細菌性肺炎 対する治療効果が比較された。米食品医薬品局 (FDA)の主要エンドポイントは96時間後の早期臨床効果である。 結果として、内服開始96時間以内に、急性細菌性肺炎が一定レベル以上改善する早期臨床効果が得られた割合は、レファムリン群90.8%、モキシ フロキサシン群90.8%で両群に差はなく、治療終了後5~10日時点の治癒率(test of cure)も両群 間で差を認めなかった。ただしレファムリンの有 害事象として、モキシフロキサシンと比較して、消化器症状(下痢12.2%、嘔気5.2%、嘔吐3.3%)の頻度が高い傾向を認めた。  今回の臨床試験により、市中細菌性肺炎に対する有効性においてレファムリンのモキシフロキサシンに対する非劣性が証明された。またモキシフロキサシンと同様に、レファムリンは多剤耐性肺炎球菌による肺炎またはレジオネラ肺炎に対しても有 用性を示した。   本論文に対してEditor’s Note(1)が併載されている。多くの大手製薬企業が抗菌薬開発から撤退する中で、小さな会社が新規作用機序を有する新たな抗菌薬を開発したことは喜ばしいものの、驚くのはモキシフロキサシンやレボフロキサシンよりも数倍高い価格(1日あたり注射剤は205ドル、経口薬は275ドル)であり、使用を制限する要因になりうる、と述べている。 わが国は、これまで多くの抗菌薬を開発してきた。世界で広く使用される抗菌薬として、レボフロ キサシン、クラリスロマイシン、メロベネムなどがある。近年、耐性菌対策で抗菌薬の使用制限が優先され、抗菌薬の開発を中止した製薬企業が多い。レファムリンの登場に際し、日本の製薬企業にも新規抗菌薬の開発を期待したい。 1. Malani PN. JAMA. 2019;322(17):1671-1672.
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